村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

セクター投資アイデア

飯田GHDの業績下方修正から考える戸建て市況

飯田GHDが6割減益 前期最終、戸建ての低調響く

もしかして戸建て市況底打ち?

上記記事はパワーハウスビルダー最大手(ようは戸建て分譲会社)の飯田GHDが業績を下方修正したニュースであり、実際に適時開示でも開示されている内容である。

しかし、この大きな減損が発表されても市場はいたって冷静であり、飯田GHDの株価は下記の通りさほど下落しなかった。
(まあもちろんその前から大分下落していたというのがあるが)

【飯田GHDの株価チャート】
タイトルなし

寄りこそやや弱く寄ったものの、その幅もたったの1~2%の範囲で、さらに引けにかけては下げ幅を縮小させていき、最終的に0.2%ほどの下落に留まった。
何も知らない人であれば、あれだけの下方修正がありながらこの下げ幅なの?と思うかもしれない。
しかし、業績の下方修正自体は余剰在庫の損切りのために安値で在庫販売したことによる影響が大きい。
しかし、きちんと状況を見ている人は、大分同社の在庫損切りが進んだことを知っているのかもしれない。
逆にいうと、2022年以降だらだらと株価は下げてきたのはこうした戸建て市況の冷え込みと過剰在庫の損切には時間がかかるよねということを認識して動きであったわけである。
在庫調整が終わればこれ以上業績が下がることもないし、逆に攻めに打って出る準備が出ていると考えることもできる。
つまり業績は最悪だが、株価的にはこの辺がいいところではないかという認識があるのかもしれないということであり、最悪期に株価は底打ちするという見方と合致するかもしれない。

【過去参考記事】
なぜ株価は傍から見れば最悪な経済状況・タイミングで底打ちするのか

本当にやばい銘柄はこういう減損が発表されて業績が下方修正されると、市場では普通に投げ売り大会になって株価は死んだりするので、上記株反応は相当戸建ての在庫調整局面が終盤に向かっていることを示唆している可能性がある。
少なくとも戸建て市況が相当寒いことは飯田GHDだけでなくオープンハウスもその話は知っている上に、ほぼ全戸建てプレーヤーが認識しているところであった。
(それに伴って建設を抑えたがために最近弱小建設会社がバタバタ潰れてる)
そう考えると、パワービルダー最大手の飯田GHDが在庫調整終盤と考えれば、最悪級に市況の悪い戸建て市況もこの辺が底なのではないかという考え方も可能なのではないかと思う。
この考え方については下記過去記事を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
住宅不動産価格の先行きを予想するために知っておくべき不動産需給サイクルとは?


日々金融市場で思ったことや金融データをつぶやいている村越誠のツイッターはこちらのリンクをクリック

不動産・REIT物色にビッグネームが動く

ブラックストーンの大型投資で拍車、米アパートREIT指数が大幅高

ついに巨人動く。

上記ニュース記事を見た時に、個人的にはいよいよリスクオンに伴って、あらゆる利回り系の資産が物色されるステージになってきたなと思ったので、そのことについてまとめていきたい。

これまで米国不動産・REIT株は高金利およびオフィスの空室率が懸念されて、主要セクターに対して大幅に出遅れていた。




しかし、さすがに出遅れ幅が大きすぎること・利下げ前夜・社債などのクレジット物のスプレッドが限界まできていることを考慮すると、不動産・REIT株がインフレ対策的にも投資妙味的にも高いものになりゆつつあった。
個人的にも3月のJREIT爆下げは投資チャンスとしてちょこちょこつまんでいたわけで、世界的にこれまで上述したような悪材料コミコミでもいくらなんでもその値段は安くないか?と思えるレベルになっていたわけで、あとはきっかけ待ちというのが正直なところだったと思う。

そこに今回上記のように何でも屋のハイエナであるブラックストーンがついに動いたのである。

【参考書籍】
ブラックストーン Kindle版

上記ニュースの通りブラックストーンが賃貸アパートを所有するREITを買収する計画だと発表し、米国アパートREITが大幅高となった。

【参考銘柄】
タイトルなし


これについては色々考慮すべきポイントが多い。
ブラックストーンはこれだけ不動産があーだこーだと言われている中で金を大量投入しようとしているわけで、これは普通に考えると裏に太い金主がいることはほぼ間違いない。
しかもその資金はすぐに抜かれるようなものではなく、おそらくはSWF・年金・生保などの実質パーペチュアル資金みたいなものである可能性が非常に高い。

つまり、これ一回で終わるような話ではないし、短期でキャピタルゲインを狙うような投資でもないのである。
まだ不動産セクターには数々の逆風がある懸念はあるが、ここから下に下がるのであれば粘り強く買い向かう覚悟のある人達による投資である。
しかも巨額の資金を持っているわけなので、その覚悟の入れ方も違う。
そういうことを考えれば、この金主達は究極の逆張り組であり、市場を形成しに行っているわけなので、これにどのようにライドしていくかというのと、やはり先進国で高金利のせいで馬鹿下がりしている伝統的資産についてこのまま景気が死んで暴落するという考え方はナイーブすぎるだろうと思う。
 
日々金融市場で思ったことや金融データをつぶやいている村越誠のツイッターはこちらのリンクをクリック

日本の中古マンション市場動向(2024年2月)

http://www.reins.or.jp/library/2024.html
↑中古マンション市場統計を出しているレインズデータライブラリーのHP

マンションから戸建てシフト起きてる?

毎月レインズデータライブラリーで発行されている首都圏の中古マンション市場動向の2024年1月データを今回は確認していきたいと思う。

【中古マンション市場概況】
タイトルなし

実は今回はマンション市況は成約数の伸びが落ちている以外は大して見るべきポイントはない状況である。
成約単価とかはまあこんな伸び率じゃないですかねという中で、在庫も微妙な感じ・成約数もなんか微妙な感じとなっている。

【中古マンションの在庫状況】
タイトルなし

在庫増加は落ち着いている一方で、成約数が伸びていないので、なんとなくトレンドに変化が生じるようには見えない。
春闘で賃金上昇3%以上が見えていて、与信増加というイベントが控えているので、現状でも中古マンション市場においては崩れるような気配はないと思われる。

地域別成約では神奈川以外はまあそこそこの成約状況、成約価格は郊外奥地以外は概ね前年比+5~+10%で推移するといった、熱すぎず冷たすぎずでインフレ連動っぽい感じの動きとなっている。

どちらかというと今回注目したいのは中古戸建市場の方である。

【中古戸建市況概況】
タイトルなし

前月の市況では全体として中古戸建は良くないと書いてきたが、ここに少し変化が生じてきている。
価格とかは伸びていないが、明らかに成約数が伸びている。

【中古戸建成約件数】
タイトルなし

横浜・川崎は前年比マイナスだが、東京区部・埼玉と前年比+10%以上の成約件数である。
これは普通に考えると新築マンションは異常価格だし、中古マンションもなんとなく割高だよねえとなった時に、新築戸建てだと変に価格乗っけられてるけど、中古戸建なら指値チャンスあるし適正価格でしょということで成約が増えているように見える。

【在庫推移】
タイトルなし

在庫については中古戸建はまだ重たいものの、成約数が上にジャンプしてくれたおかげで、ようやく在庫の上げどまりが見えてきたように思われる。

これまで不動産悲観論を維持している人はマンション価格は高すぎて下落するという論調が多いが、現実論はマンション高くて買えなければ供給が絞られている中で他に選択肢がないかと探しているのが実需の動きである。
そして、実需の動きは適正価格で推移している中古戸建に着目されるようになっている。
多少駅遠でもええでしょという現実的な妥協をしているという点もあるだろう。

そう考えると、結局現在はマンションと戸建てでシーソーのように実需層は動いているだけで、特段業者や現在住宅を保有している人が投げ売りして市況を崩すといった兆候はないものと思われる。

日々金融市場で思ったことや金融データをつぶやいている村越誠のツイッターはこちらのリンクをクリック
 

ワンルームマンション投資のオワコン化が一気に進む

マンション家賃、最高更新 1月 東京23区は前年比1割高 販売価格高騰、賃貸へシフト

さすがにこの時代でワンルームマンション投資を新規で始めるのはセンス×。

上記記事では都心マンション家賃がファミリータイプを中心に上昇しているというのが報じられており、記事の中を見てもらうと実際に家賃推移が掲載されている。
しかし、注目したいのはそこではなく、シングル向け物件の家賃がビタ一文上がっていないところにある。
ファミリータイプとカップル向けの家賃が上昇しているのに、シングル向けの家賃が上昇しないのはなぜか?

シングル向けというのは、もう一言で言えばワンルームマンションである。
そして日本市場においてはとにかくワンルームマンション投資が多すぎる。
ワンルームマンション投資は色々調べればわかるが、いわゆる年収が400-500万円しかない日本の平均年収程度しか持っていない人でも始められる投資としての代表みたいな感じになっている。
しかし、年収400-500万円程度の人がなけなしの与信を気軽に使う時点でこの投資はどうかしている。
しかも多くの人が現物を見ずにその投資を決定していたりと、そのプロセスは末期である。

【過去参考記事】
熱狂的バブル相場の天井を捉えるために見るべきモラルハザード・不正行為とは?

一方で、ファミリータイプの物件になると、都心だと少なくとも23区であれば現在は築25年以内のまともな物件だと4000万円以上は払う必要性が生じる。
(中心の区になると6000万円からスタートみたいな感じ)
そうなるとワンルームマンションの過剰供給の原因となっている年収400-500万円で頭金を持っていないような人は年収倍率10倍近くになってしまうため、投資ができない。
そういう手軽さがないファミリータイプにまでは都心での投資物件は進んでいないということである。
だからシングル向けは供給過剰で家賃が全然上がらないのに、供給が絞られている2LDK以上の物件の家賃上昇は進むわけである。

実際にSUUMOで23区の賃貸物件を見てもらいたい。
ワンルーム・1LDKまでは大量に賃貸物件が存在するが2LDKより広い物件になると途端に選択肢がなくなるのである。
それを見るだけでも、どう考えても低属性が行うような不動産投資に限界が来ていることがうかがえる。
それにネットサーフィンをしていると死ぬほどこの低属性マンション投資の広告があふれている上に、ワンルームマンション投資を押し込んでいる上場企業の株価が上昇しているのを見ると、引き続き賃貸ワンルームマンションの供給は増えていることがわかる。

【FJネクストの株価チャート】
タイトルなし


なのでこれから不動産投資を始めるとすれば、ファミリータイプしか勝ち筋はないと個人的には考えるが、それは札束自体を積む必要性があり、一般世帯で投資できるものではないと思う。
普通に住宅ローンで自分が住むファミリータイプ物件買うのが一番真っ当だと思われる。

日々金融市場で思ったことや金融データをつぶやいている村越誠のツイッターはこちらのリンクをクリック

SMCIの転換社債起債はAIバブルの初動

Super Micro Computer Plans $1.5 Billion Convertible Notes Offering

安易な資金調達手法が登場し始めたが、まだブーム初動だろう。

上記記事は1年でテンバガーになったことで話題になっているスーパーマイクロコンピューター(SMCI)が15億ドルをコンバーチブルボンド、つまり転換社債を発行して資金調達すると発表した。
この転換社債というのは一定以上株価が上昇した場合に株に転換できる社債で、企業側は低いクーポンで、投資家側は株が上昇すればアップサイドを狙えるという一見するといいとこどりみたいな金融商品となっているが、今回はこのSMCIの転換社債発行についてまとめていきたい。

【SMCIの株価チャート】
タイトルなし


この転換社債による資金調達が成功するにのはそう簡単ではないが、一度波に乗ると一気に調達が進みやすい傾向にある。
理由としては転換社債自体の性格にある。
転換社債は企業側にとっては非常に低い利息で資金調達できる錬金術的な資金調達手法であったりする。
しかし、投資家側も馬鹿ではないので、株価が上昇する見込みないような企業の転換社債なんてのは買うわけがない。
つまり、転換社債を発行する条件として、将来株価が上昇する期待材料がなければいけないのである。
逆に言えば、株価上昇期待があれば一度ならず何度でも転換社債の発行による資金調達というのが可能になるわけで、実際にテスラはこの手法を過去に活用して多額の資金調達をした。

そういった意味でブームとなっているセクターで新興企業が生まれる分野では、投資家側が株価変動リスクを嫌う一方でブームには乗ってアップサイドを取りたいというわがままみたいな考え方をして、いざとなれば投資元本は回収できるように転換社債に投資したいということで投資ニーズが生まれ、一気に転換社債での資金調達が進むわけで、だからこそこのSMICの転換社債による資金調達はブーム初動であることがうかがえる。

しかし、この転換社債による資金調達はもろ刃の剣である。
株価が狙ったように上昇してくれれば、負債が資本に変わるため返済不要の資金になるので、非常に嬉しい展開となる。
しかし、一方で事業運営に失敗して株価が上昇しなかった場合は企業側はいつか返済しなければいけない負債として抱えることになる。
しかもそもそも論、最初の資金調達の時点で転換社債を選んでいる時点で、普通の手法で資金調達できない財務構造だったりするわけである。
なので、ブームがはじけてしまった時は全てが負債として重くのしかかるため、株価はあっという間に負債の重みにつぶされて無価値になるのである。
なので、まだSMIC第一号の調達なのでこれだけでブームは終わりというのは馬鹿げているが、こういう安易な資金調達が他の企業においても続発してくればどこかのタイミングで警戒すべきタイミングは来るだろうと思われる。

日々金融市場で思ったことや金融データをつぶやいている村越誠のツイッターはこちらのリンクをクリック

記事検索
アクセスカウンター
  • 累計:

プロフィール

村越誠

投資に関して気づいたことのメモをしていく。 ご連絡の取りたい方は、makoto.muragoe★gmail.comまで(★を@に変換してください)
ツイッターで更新情報配信