村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

セクター投資アイデア

エヌビディア決算前にヘッジポジション構築が進む市場

Options Traders Line Up Hedges Before Pivotal Nvidia Earnings

エヌビディア株への取り組みは、オプション市場から見る限りは比較的皆理性的だと思う。

現在ご存じの通り、注目される米国株の決算の中でもエヌビディアはもう世界中の投資家がその決算動向に注目している。
単にプロの期間投資家だけでなく、個人投資家の注目度も一企業としてはありえないレベルの高さとなっている。

ただし、その注目度はどちらかというと警戒感的な側面が大きい。
まだ生成AI自体がビジネスとしてきちんと金になっているという実績が薄い中で、メガテック各社が設備投資を積極的にしているわけであるが、この設備投資が少しでも翳ればエヌビディアのPER51倍というのは正当化できないでしょという警戒感が非常に大きく、この警戒感は機関投資家から個人投資家まで幅広く持っている考え方だと思われる。
ここらへんは根本的な需要がマネロン需要しかない仮想通貨界隈のどんな草コインでも買いだみたいなテンションとは全く真逆と言えるだろう。

実際に投資家の警戒感が高まっているかどうかはインプライドボラティリティを見てもらえればわかる。

【エヌビディアの30日インプライドボラティリティの推移】
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https://fintel.io/siv/us/nvda

インプライドボラティリティはオプション市場でオプションの価格を決定する際に重要な指標であるが、これが高いほどオプション(コールもプットも)の値段が高くなる。
つまりオプションの需要が高まっているわけで、エヌビディアの株価が不安定なことを考えるとヘッジ売りのポジションニーズが全般的に高いことを意味する。

【エヌビディアの株価チャート】
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特に決算月にDeepseekショックが起こったところからインプライドボラティリティーは上昇したままで、決算が無事通過するとこを見るまではヘッジを組んでおかなければという機関投資家が多い様子がなんとなくうかがえる。
そしてこのヘッジ売りというのはエヌビディア株でやろうとするとインプライドボラティリティがめちゃくちゃ高いがためにコストが割高なので、ナスダック100などの代替物で行ったりしているために、他のハイテク株も巻き添えを食う形で下落していたりするのである。

しかし、これだけ生成AIというものが次世代技術として注目されている中で、みんな高PERにびくびくしながらあーでもないこーでもないと四苦八苦しているわけで、株価だけ見ると過熱感があるようにも見えるが、センチメント的にはあまり過熱感を感じない。
個人的にはエヌビディアの株価が本当に死ぬときは決算で死ぬのではないと思っており、なぜなら世界中のテック企業がエヌビディアのGPUを発注していて在庫がひっ迫する中で、その在庫のひっ迫度合いを見ている人はごまんといるわけで、在庫ひっ迫度合いに変化があれば真っ先にこの先に事情を知っている人達が一斉に売りに回るはずで、決算の数値しか見れていない人達が先手を取れるわけがないのである。
決算が無事通過すればヘッジ売りは順次アンワインドされていくことが期待できるわけで、そういった諸々を考えていくと、エヌビディア決算でどうのこうのという株価動向にはならないと思う。

ということで、市場を上下に大きく揺さぶるオプション市場から考えると、エヌビディアの決算後の反応はおそらく大したネガティブニュースにはならないと思っており、オプション市場から株価の考察の仕方については下記過去記事を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
株価が上にも下にも行き過ぎる現象をオプション市場から考察する



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生成AIブームを背景に再度盛り上がるサイバーセキュリティ銘柄

【参考書籍】
AI覇権 4つの戦場

サイバーセキュリティーがあらためて注目されそう。

ここもと米国株相場を見ていると、メタを除くとメガテックの株価がやや足踏みとなる中で、その他のナスダック銘柄が好調推移することによってナスダック100は好調推移している。
メガテックの株価がやや足踏みとなっているのは、生成AI投資負担がかなり重たいことと、最終的に商売になるのかどうかという疑問がある中で、一方でその他銘柄はメガテックが投資を継続してくれるんだからその恩恵を得られるよねという動きを反映しているように思われる。

その中でも実はサイバーセキュリティ銘柄が好調推移している。
下記のサイバーセキュリティ関連ETFであるHACKの株価が明らかに好調推移しており、かつて2022年にSPACバブル崩壊で死んだテーマだと思っていたところから再度盛り上がりを見せている。

【HACKのチャート】
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実際にいくつかのサイバーセキュリティ関連の米国企業の決算コールから好決算+強気コメントが出ており、ビジネスとして拡張されていることは把握していた。

しかし、これがはたしてAIブームに牽引されたものかどうか個人的には本当なのか確証を得られていなかった。
イメージとしてはわかるが、本当に生成AIブームがかつてのサイバーセキュリティーブームを超えるようなサイバーセキュリティー需要を生むかどうかを、やはり実務として携わったことがないために確証を持つに至れなかった。

しかし、そんな疑問を上記書籍を読んでいる中の下記文章から解決に至った。

「AIテクノロジーは強力だが、弱点が多い。機械学習システムは、データに偏りがあるか、敵がデータを汚染していたときには、間違ったことを学んでしまう。AIシステムは、そのシステムがどう”考える”かにつけこまれて、操作されるおそれがある。コンピューターのソフトウェアへのサイバー攻撃に似た、認知(コグニティブ)ハッキングと呼ばれるものもある。AIテクノロジーにはこういった特徴があるために、変形したり、壊れたりしやすい。」

よくよく論理的に考えれば確かにその通りだとしか思えなかった。
生成AIの安全・安心な運用のために、元データの保護が必要であり、これは明らかなサイバーセキュリティー需要であることは疑いようがない。
しかもAIテクノロジーというのは、昨今のパランティアの株価高騰を考えれば軍事技術と密接にかかわっていることには疑いがない。
こういったことを総合的に考えれば、安全・安心なAIテクノロジー運用にはサイバーセキュリティーがセットになることは自明の理ということになる。

このような情勢変化から、サイバーセキュリティーは2022年のSPACバブル崩壊で一度死んだテーマであったが、生成AIブームによって息を吹き返し、まだまだ相場テーマとしては継続する可能性が高そうだと考えた。
ただ、どの個別銘柄に資金を投じれば良いのかというのは、そこまで細かい技術に自分も詳しくなく、よくわかっていないというのが現状で、自信がなければ大手の中からバラっと銘柄分散して資金を投じれば良いのではないかと思う。
そうなると、ぱっと思いつくのはCRWD・PANW・FTNT・NETあたりで、そこからそのベンダーとしてACN・IBMなどがばっと思いつく範囲じゃないかなと思う。

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水素投資ネタがトランプ政権爆誕で爆散

Hydrogen still holds promise as a fuel

しばらくは駄目な投資テーマ。

トランプ政権再爆誕してからクリーンエネルギー関連はプロジェクトが撤回されたり補助金の見込みがなくなってしまったことで採算性に疑問がもたれてしまい、ばーっと株価が下落しているが、そうした中でこれまで期待されていた投資テーマである水素ネタも死にかかっているという話が上記FTの記事で紹介されているのでそのことについてまとめていきたい。

クリーンエネルギー会社の株価が下落したら水素ネタも死ぬのは個人的にはまあそりゃそうだろうなという話だと思っている。
理由としては、そもそも水素ビジネスというのは再生可能エネルギーで余ったエネルギーを水素として蓄積するという発想から生じているものであり、再生可能エネルギーが採算性ある形で普及しないと成立しないというボトルネックが存在する。
そのため、トランプ政権下で再生可能エネルギーのプロジェクトが進まないとなると、水素の商用化も遠いわけで、そうなるとこれまで進められてきた投資ネタも一旦バックせざるを得ないというところだろう。

実際に株価の動きはどうだろうか?
日本の水素関連銘柄の代表格と言えば、真っ先に思いつくのは岩谷産業だろう。
では岩谷産業の株価を見ていきたい。

【岩谷産業の株価チャート】
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うーん、これは・・・という動きだろう。
どうやらトランプ政権になりそうというあたりが株価のピークとなり、その後はひたすらだらだら下がり続け、トランプ当選後もひたすら下がり続ける厳しい動きとなった。
やはり、水素事業が商用化・実際にキャッシュフローを生むまでにはまだ相当長い時間がかかるわけで、かつ世界的に金利が高水準で推移する中でディスカウント率を高く計算すると遠いキャッシュフローの価値が以前より評価されない中で
大体こうした夢を追ってしまっている銘柄というのは実現可能性がかなり遠いキャッシュフローを勝手に織り込んで高くなってしまっていることは下記書籍でも分かる話で、非常に注意してもらいたいところである。

【参考書籍】
企業に何十億ドルものバリュエーションが付く理由 ──企業価値評価における定性分析と定量分析

こうして特定テーマで一度盛り上がった後にシナリオ前提が完全に狂って爆散してしまった株価というのは復活するまでには大分長い時間かかってしまうので、一旦ここらへんをネタにした投資をしてしまっている場合は損切り・検討していた場合は忘れてしまうのが吉だろうと思う。
特に岩谷産業とかは結構年金勢や機関投資家勢が期待を持って投資してしまっているケースが多いため、すっぱり諦めるのが吉だろうと思う。
 
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仮想通貨市場に資金をぶっこ抜こうとする悪い大人が続々出現

仮想通貨、新規トークン急増により評価が困難に-コインベースCEO

悪い大人が資金ぶっこぬくステージになってる。

トランプ当選の大統領選以降仮想通貨市場は盛り上がってきたが、そこに若干水を差すような事件が起きた。
それはトランプがトランプコインという自分自身のミームコインを就任前に出したことにある。
一夜にして大きい時価総額になったわけであるが、このトランプコインはSolanaチェーン上のトークンということもあってSolanaも暴騰する形となった。

【トランプコインのチャート】
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トランプコインが出てわーっと市場が盛り上がったと思ったら、そこからメラニアコインが出たと思ったらバロンコインまで出てきて、百歩譲ってトランプコインにはなにかしらの経済的意義を見出すことも可能だが、メラニアコインとかバロンコインとかお前それなんかキャピタルゲイン以外の何かリターンが存在するのか?と疑問符がつく状態になっている。

また、下記の通りFXくるみちゃんの作者が全くあずかり知らぬところでくるみちゃんコインが発行されてプライスがついていたりともはや意味がわからない状態となっている。



このように冒頭のニュース記事にあるように、謎トークンがたくさん発行されていて、コイン上場リターンを狙おうとする人達が急増しているわけである。
これは外から見ていると、なんとなく2020年に話題になったSPACと似ている白紙小切手のようなものに近いのではないかと思っている。
明確に投資家にとって価格の上下以外でリターンがあるのかどうかわからないトークンをネームだけで売りつけるという、日本でもかなり前だが話題になったVALUE的なものに近いものだなあと思っている。
そういった意味で、現在仮想通貨は皆が買いたいと盛り上がる中で、これを利用して実質的な経済価値のないトークン発行して資金ぶっこぬいてやろうという悪い人が急速に増加しているわけである。
とにかくそれっぽいものを売りつければ金になるという錬金術に悪い大人たちが着目しないわけがない。
資金ぶっこ抜いてやろうという人が増えていることは、恒常的に仮想通貨のマネーロンダリング需要に対して、実際にマネロンをしようとすると資金を引き抜く人がいる分コストが嵩む可能性がある。
そうなると、マネロン需要組も一旦様子見姿勢になる傾向は強いだろう。

今後まだ仮想通貨は上昇するかもしれないが、既に悪い大人がたくさん資金をぶっこぬくための様々な画策をしている中で、これに巻き込まれにいくのは短期でバチバチに取引できる人であればまだしも、長期投資でとかいう人はカモ以外の何物でもないように思えるチキンレース感が出てきたので、参戦するのであればそういうフェーズだという認識を持ちながらポジション繰りを考えるべきだろうと思う。

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Deepseekで米国ハイテク株の終わりという結論はあまりにも雑だと思う

DeepSeekショック、米AI株急落 NVIDIA時価91兆円消失

とりあえず現状考えていることをまとまっていないが、書けるだけ書いておこうと思う。

中国Deepseekが低コストで高パフォーマンスのAIを開発したとして、GPUを始めとした半導体需要に対する懸念てメガテックに対する収益懸念から、株価的に影響が大きかった順に書くと、半導体>AI関連設備>電力設備関連>メガテックという形で米株ハイテク中心に大幅に株価は下落した。
様子を見ていくと、相場大幅下落から1日が経ち、ナスダックも半分ほど値を戻す中で、自分の相場に対するスタンスを書いていきたいと思う。
なお、Deepseekの技術的な面は全く門外漢でわからないので、あくまで金融市場的な話にフォーカスしているという点には注意してもらいたい。

個人的な感覚としては限りなく過剰反応だと思っている。
特になぜそう思うかと言うと、今回のAI相場のスタートはそもそも事業会社による自発的な投資からスタートしているからだというところである。
例えばEVの場合はあまりにも政府補助金や政策に頼り切ったもので、顧客の真の利便性といったものについては十分な考慮されず見切り発車的にブームになったことから、欧州では政府の支援姿勢が崩れていくにつれその販売状況は芳しくなくなっていった上に、中国でもBYDがかなり無理な資金繰りをさせながら低採算で走っており、既に株価テーマとしてはまさに完全に死んだものとなっている。
一方でAIブームはOpenAIの登場からメガテックが自発的に投資を始めたわけで、政府の政策ありきからのスタートではない。
しかも、AIブームで株価上昇している銘柄についても半導体企業はともかくとして、メガテック系企業の企業価値はこれまでのクラウドサービスや広告サービスによる収益が根源にあるわけで、AIはあくまでこれらサービスの提供に使われる補助ツール的なものであり技術革新は歓迎的なものである。
そういった意味で、GAFAMが借金増やしてAI投資をする流れが止まるというのは、この辺の分野で真剣勝負している人達を侮りすぎな一般人の考え方に過ぎないように思う。
自発的に借金増やしての投資というのはそうそう簡単に終わるものでもないし、それが続く限りAIブーム相場は続く可能性の方がずっと高いと思っている。
こうした考え方については下記過去記事を読んでもらいたい。

【過去参考記事】
なぜ借金のサイクルが経済・株価にとって重要なのかを解き明かす

また、Deepseekの発表について性能は多角的な専門領域の人達によるレビューがされているが、たった500万ドルで作ったという話・現在の価格設定で採算が成り立っているのか・みんなが同時接続した時の負荷に耐えられるのかなど、様々なことを大げさに発表してしまう中国企業のことを考えると発表を鵜呑みにするのはナイーブすぎるように思う。

こうした技術的な真偽・米企業群の動きが未確定であることに加えて、そもそもAIという分野自体が色々進化の途上の中で低コストでできることが増えることはさらにAI活用幅が広がり利益が出る形で商用化できる可能性が高まるという可能性を無視した形で売りが飛ぶのは市場の過剰反応もいいところなのではと個人的には思っている。

こうしたことを考慮しながら、相場に対する皆の反応はどうだっただろうか?
ネットではもうDeepseekの話一色という状態となっていたわけだが、見ていると売りスタンスで今まで外してきた人達がこれ見よがしに解説をするのがXでもYoutubeでも大量に出現し、みんな株が急落するのを待ち望んでいたんだなあというのが非常に透けて見える状態であった。
そこまで状況は単純でもないし、そもそも急に横から入ってきた事象についてしたり顔で解説しているところに株ベア勢に対して大きな驕りがあるように思えた。
VIXが急上昇し、実際にプットオプションでのヘッジも大量に見られる中で、てきとーに株買っとけばこんなん許されるんじゃないかとしか思えないように個人的には感じている。
むしろ適度にこういう形でガス抜き下落が発生することは、一方通行で急騰されるよりずっと長期投資しやすく、個人的には歓迎したい動きだと思う。
ただし、レバETFだとこういう大きめな上下をするだけで瞬殺されちゃったりするケースもあるし、個別株では実際にこれまでの高PERを正当化できないとなってしまう可能性もあり、個別ではどうなるかちょっとわからない部分があるが、迷ったらナスダックのノンレバETFをてきとーに買えば普通の個人投資家にとっては十分なやり方ではないかなと思う。

【ナスダック100のチャート】
タイトルなし


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