村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

投資スタイル

バリュー株投資なら3年移動平均線に着目

グロースだけじゃなくてバリュー株もという方向けの話。

一時期バフェット氏が日本の大手商社株を買ったと話題に上がったが、その後資源価格の高騰とともに商社株もかなり上昇したということもあり、バフェット氏のこの投資は成功でいいでしょうという結果になった。

<三菱商事の株価チャート>
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2月後半から3月初めにかけてはこのバリュー株投資が珍しくグロース株にはっきりと勝ったということもあり、割りの良いバリュー株投資をしていた人はなかなか報われた相場であったのではないかと思う。

そういうわけで今回はバリュー株投資について個人的なポイントを述べておきたいと思う。
バリュー株は基本的には徹底的に割安なものを買うというのがコンセプトであり、中途半端な値段で買うのは単なるモメンタム投資にすぎなかったりする。
バリュー株で特に割安狙いでいくなら3年移動平均線を大きく下回る銘柄を買うというのがひとつの目線になると思う。
目線としては3年移動平均線20-30%ぐらい下の銘柄が良いように思える。
これは過去3年平均と比べて非常に低い評価をなされていることを意味しており、それだけ評価が低ければ復活する可能性のある銘柄は十分に割安だと判断できるからだ。

ただし、買う際には重要な点がいくつかあり、以下の4点を全て満たすものでないといけない。

・財務が良い
・新規参入者が現れて価格破壊するような雰囲気ではない
・キャッシュフロー創出能力が減少する可能性が低い・あるいは下限がわかる
・状況が変化すれば一発逆転が狙える

 バリュー株投資で難しいのは上記のうち1個でも外すと目も当てられないパフォーマンスになってしまうことにある。
例えばJTは典型的な例だろう。
JTは財務が良く、規制業種なので新規参入者はいないものの、問題はたばこ需要はグローバルに減少していてキャッシュフロー創出能力が業界的に減少傾向であることに加えて状況が変化する可能性が低いことにある。
ESGS投資の流行のあおりで機関投資家資金が入らないことも痛手となっている。
この2つを外しただけで3年移動平均線より低いからといって安易に買った人は数年にわたって塗炭の苦しみを味わうことになってしまう。

<JTのチャート>
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商社群はJTと比べると資源価格次第で一発逆転が十分に狙える業種であり、JTより有利な賭けがしやすいということもあり今回は商社株投資に軍配があった要因なように思える。
個人的にはコロナ後のJREITの積み立て投資については、不動産投資というものの性格自体が一時的に低迷したとしても将来の安定したキャッシュフロー獲得を期待できるということもあり、東証REIT指数が3年移動平均線を下回っている間は積み立て投資をした理由ともなった。

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いくつかのバリュー株銘柄もやや投資家が前のめりになりすぎ


相場全体として行くところまで行ってやろうという感じがどんどん進んでいる。

ただ一部バリュー株はハイパーグロース株と同様にあきらかにやりすぎ・テンション高すぎな感じにきている。
バリュー株はグロース株と違い、安く買うことが鉄則であり、押し目で丁寧に拾うことが重要だ。
なので基本的に上値を追いかける人が続出している時点でバリュー株には既に投資妙味はないと見るべきだろう。
(グロース株は押し目でも上値追いかけ買いも局面によって両方やりながらポジション作りしたりできる。)

例えばエクソンモービルなんかはアウトオブザマネーオプション単価を見ると、もうこれはやりすぎ以外の何者でもない状況になっている。
プットよりコールの方が高いのでみんなまだまだエクソンモービル株はリスクよりも一発大逆転の芽の方が大きいというお前どこのグロース株だよみたいな取引が横行している。
普通に石油セクターのファンダメンタルズを考えるとだれがエクソンモービルがプットよりコールが高い状況で継続して買いたいと思うのだろうか。

<エクソンモービルの30日アウトオブザマネーオプション単価分布>
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これだったら、普通にマクドナルドとかスターバックスの方が参加者が冷静な分投資妙味は高いように思える。

<スターバックスの30日アウトオブザマネーオプション単価分布>
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あるいは普通に決算良好・需給動向が綺麗な状態にあるマイクロソフトを買った方が期待値が高いように思える。
なのでバリュー株で何か買いたいと思うならば、少なくとも同じストライク価格幅のプット価格がコール価格より高い銘柄に集中すべきだろう。
特にエネルギー株・航空株・クルーズ船株はだいたいプットよりコール単価が高いというリスク取る気満々みたいな取引してて、お前ら本気なのかと疑いたくなる状況である。
(まあロビンフッダーが大挙して大麻銘柄突撃してたりとかしていて、何が起こっていてもおかしくないけど)

なのでバリュー株においては投資家がオプション売買状況も踏まえながら前のめりになっていない銘柄をチョイスしていった方が無難だろうと思う。
あるいはこうした前のめりバリュー銘柄を追うにしても、おそらくバリュー銘柄触る人の大半は中長期投資が前提だと思うが、ここは逆に短期だと割り切った投資でチャレンジすべきだろうと思う。
ただ時間がたつにつれこうした前のめり投資家が消えて需給動向が綺麗になっていけばまだ投資環境も変化していくので、自分が狙っている銘柄は常に需給環境を注目しながらいきたいところだ。

なお、今回色々な銘柄のオプション状況については下記の自作Pythonコードで作成したものなので、興味のある方はのぞいてみてください。

<参考記事>
Pythonで米国個別銘柄のアウトオブザマネーオプションの行使価格ごとの単価・残高・IVカーブデータを取得し図を作成する方法

個人的に投資の際に重視している移動平均線の見方

個人的には3年移動平均線が好き。

自分は最近資産や銘柄の割安度・割高度を見るときは移動平均線を多用する。
具体的には1年・3年移動平均線を重視しているが、特に3年移動平均線を見ている。
1年ぐらいだと人間の浮き沈みを考えると、優良資産でも下回ったりすることはしばしば起こる。
例えばこのブログを読んでいる人でも自分の一年前と比較した時に自分が成長しているかどうかを考えると上回っているという人もいれば、あまり進化してないですねという人もかなりの割合いると思う。
一方で3年前と比べてどうですかと考えると、上手くいっている人は明らかに状況が良くなっているし、一方でさっぱりな人は3年前と何一つ状況が変化していないということが明らかな差として出てくるように思える。
そういった意味で3年間の平均の比較というのは、限りなく真の価値を示してくれていると思う。

1年移動平均線も併せて自分は利用するが、1年は結構なんとかショックが起こると割れることはしばしばある。
一方で本当に実力がある資産については3年移動平均線を割るということはめったにない。

<マイクロソフトの株価チャートと1・3年移動平均>
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また決まった利息収入があるインカム資産も利息収入コミコミのトータルリターンが3年移動平均を割るというのも基本的には一瞬で、よっぽど発行元がめちゃくちゃにデフォルトしない限りは3年移動平均線の上に戻る。
また今まで3年移動平均線より下にずっと潜り続けていた資産が相場の前提が変化することによって大復活を遂げる時もかならずこの3年移動平均線を上回っていく。
最近だと利上げ局面から利下げ・QEに変化と相場前提が大きく覆ったゴールドはまさにその典型だっただろう。

<ゴールドのチャートと1・3年移動平均>
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逆にあきれ果てられた資産群、相場の前提が変わってしまった銘柄、根本的に駄目なものについては3年移動平均線を割ることは確実である。
根本的に成長力がない企業の株価もこの3年移動平均を継続に上回るということも基本的には難しい。

<JALのチャートと1・3年移動平均>
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ただ一方で資産というのは過去と比較して明らかに加熱しすぎる・行き過ぎるということも多々ある。
自分はこれについても3年移動平均線との比較を結構重視している。
具体的には 3年移動平均線から過去3年ボラティリティに対して1σ以上上に乖離している時は手を出す際には十分な注意をしなければいけないと思っている。
少なくとも2σ上に離れちゃっている資産は限りなく割高であり、新規に買い建てすべき資産でないことだけは確実だ。
例えばテスラの暴騰時は3年ボラ100%の銘柄で3年移動平均線2σ上という強烈な動きを見せてから、さすがにそこより上は当面行きづらいという展開になっている。

<テスラのチャートと1・3年移動平均>
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特によりIT銘柄を重視しながら銘柄選別しなければいけない時はPERやPBRなどの指標がほとんどあてにならない例が多く、割安・割高度は下手するとこうした移動平均線ぐらいでしか計れないというケースも出てくることが多くなるように思える。

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高配当株投資に必要な分析スキル

なぜ高配当株信者はちゃんと分析しないのだろうか。

ここもと高配当株銘柄のパフォーマンス低迷から高配当株投資家ですと主張している人達のポートフォリオパフォーマンスが芳しくなく、批評される事態が発生している。
個人的にいくつか見ていると、最低限必要な分析さえせずに、単に今一時点で見える高配当利回りにつられて投資しましたという特徴が見える。
高配当株投資において必要なことはやはり「高配当の持続性の分析」が必要だと考えている。
その高配当の持続性はどのように分析すればよいのか。
ここでは必要な分析を3つ挙げておきたい。
またそれぞれの例において、配当の持続性に疑問がある高配当銘柄がいかに脆弱な株価動向をするかも合わせて示したい。

1、ビジネスモデル事態が根本から低調になってきていないか
いくら高配当銘柄といえでも、本業が退潮気味だと最終的には配当の維持が難しくなる。
例えば足元のタバコ銘柄はまさにその代表例であろう。
各社総販売数成長率がマイナスの状態が続いている上に、これを跳ね返せるだけの材料がない。
健康志向の増加に伴う嫌煙の広がり、たばこ税引き上げによる高価格化、スマホの台頭による常時娯楽に接続できてストレス軽減としての役割が代替されていることなどにより少なくともタバコ販売台数にプラスになる材料がなく、構造的なマイナス状況がタバコ銘柄の配当持続性に疑義を投げかけている。

<日本たばこ産業の株価チャート>
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2、そもそも配当を持続できるだけの財務を維持できているのか
これは財務分析という数字の分析になってくる。
配当を払うためには企業が払うだけの現金を揃えていなければいけない。
その配当を払うためには、それだけの現金を保有しているか、どこかから借りてくる能力が必要だ。
そのためには企業の手元現金残高、毎年創出することのできる営業CF、借入することのできる財務CFの量を予想する必要性がある。
これに加えて、あまりにも借入が大きすぎて利払いが巨額の会社は、場合によってはちょっとした業績変動によって売り上げ状況が利払いをできない状況に追い込まれる可能性がある。
そうなれば真っ先に削られるのは配当になるので、こういった配当の持続性の判定を行う必要性がある。
直近ではGEが典型例としてあげられ、元々重たい有利子負債状況から様々な減損がかさなったことで配当を削減しないと財務改善が不可能だと判断され減配された挙句、株価は死ぬほど下がったことがある。

<GEのチャート>
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3、隠れた減損リスクはないか
1と2を分析してとりあえず問題ないでしょと判断したとしよう。
しかしこれだけでは実は不十分である。
銘柄によっては見た目は上手くいっているように見えるが、実は特定の事業が不調で減損するリスクをはらんでいる場合がある。
その場合は、減損が示現した場合に大きな自己資本の毀損が発生し、これが減配トリガーになるパターンがある。
足元では米国の石油銘柄がこれに当てはまる。
米国の石油銘柄はシェールガスの資産がどの企業においても大なり小なり計上されている。
足元でシェールガスは国内の天然ガス価格の低迷によって採算が取れておらず、各社計上しているシェールガス資産の減損リスクを相当程度はらんでおり、これが出尽くしていない。
このリスクが出尽くさないと、減配されるリスクから離れることはできず、これが高配当銘柄でもその配当を全部ぶっとばすだけのキャピタルロスを発生させる原因になっている。

<エクソンモービルの株価チャート>
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以上の3項目を見極めた上で高配当株投資を実践してほしいと思う。
こういったのを見ると米国銘柄でいうとジョンジョン、P&G、マクドナルドあたりまではかなりキャッシュフローが見通しやすいし減配リスクもないでしょと考えられるが、一方でフィリップモリス・エクソンモービル・ベライゾン・IBMは上記3項目において不安感があるので避けておきたいかなあと思う。

過去に不正をやらかした企業の投資は、過去の不正の悪質度を見るしかない

東芝、東証1部復帰に影 子会社で不適切会計発覚

人間はそう簡単に変わることはできないが、根深さは場合によって違う。

東芝がまた子会社で不適切会計ということで、東芝株はぐだぐだな展開となっている。

<東芝の株価チャート>
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こういった企業不正というのは一度表に出てくると、大体は見えているのは氷山の一角で、その下にもっと膨大な不正があったりしていて実情はもっとひどかったりする。
それでも、その企業のビジネスが安定的な収益をあげやすい業態だと立て直しを行うのは意外と容易だったりする。

例えばオリンパスの場合は内視鏡ビジネスにおいて圧倒的シェアを誇り、いくらでもスポンサーが出てきたことからなんだかんだで立て直しすることができ、気づけば不正が発覚してボトムのところからテンバガーを決め込んだりしている。
またオリンパスの場合は事業自体で不正を行っていたわけではなく、財テクの失敗をごまかすための粉飾不正だったということも後から見ればかなり底の浅い不正だったともいえる。
それにオリンパスの企業構造も内視鏡以外はさほど大きい事業でもなく、投資家にとっても次に何が出てくるかわからないという恐怖感が薄れるのが速かった。

<オリンパスのチャート>
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一方で東芝の不正の重さと複雑さは全く別物である。
東芝の事業はほとんどがシクリカル性がある上に、事業が弱い状態の時にトップの圧力によって利益目標を達成させるために様々なクリエイティブな手法を通じて売上や営業利益を粉飾している。
これは東芝の抱えている事業が多すぎる上に、小粒で弱い事業が多いことから根本から不正を働いてしまっている。
そしてこの不正によってごまかされてきた数値をもとにトップが経営判断を行ってきてしまったことから、経営戦略自体も間違った方向に進んでしまった。
しかもトップからの圧力によって末端まで不正について馴れてしまっている体質で、各事業部においてバラバラに不正が発覚しているところも非常に真実の姿を特定するのを難しくさせている。
いわゆる不正が全社的に文化としてはびこってしまっている状態だ。

こういうのを見ると、オリンパスの不正については骨折といっても単純骨折ということもあり、粉飾を行ったトップの追放と外部資金の投入により治療が比較的容易なケースだったと言えよう。
一方で東芝の場合は、完全に複雑骨折・あるいは粉砕骨折に近いケースでこれで東芝の状態は治療できるという単純な処方箋が見つからない。
トップをすげかえてもそもそも下部組織が自主的に事業を維持するために不正を働いてしまっていることから、容易に組織体質を変えることは不可能だろう。

というわけで、不正・粉飾が絡んでしまった企業というのは、過去の不正・粉飾がどれだけ根深いものだったのかというのを見ながら投資判断するのが良いと思う。
もちろん根深い企業については投資を見送るのが吉という結論だ。
 
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村越誠

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