村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

日本個別銘柄

単なる高配当というだけの日本株銘柄の限界を考える

【三ツ星ベルトの株価チャート】
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配当増加余地がない+中堅企業だとこんなもんなのかなと。

これまで低PER・PBR銘柄は大幅増配をかますことによって株価を上昇させてきたわけで、個人的にその中で強烈な印象を持っているのは自動車部品メーカーの三ツ星ベルトである。
下記過去記事ではじめてそれについて言及したわけであるが、もう2年前の話なのである。

【過去参考記事】

三ツ星ベルトの株価から考える高配当株の潜在的上昇ポテンシャル

しかし、今回最新号の四季報をばーっと確認する中で、あらためて三ツ星ベルトの株価を見ると5000円手前をピークにじわりと下落している。
(もちろん増配前よりはまだ十分に高い位置ではあるが)

三ツ星ベルト自体はメイン自動車部品メーカーということで、言ってみれば足下でこれ以上すぐに増益して増配される見込みがない銘柄である。(場合によっては米国関税でマイナス影響が出る可能性もある)
そういった中で、既に一株当たり利益と比較した時にほぼ限界レベルで配当を同社は出しているわけで、これ以上の増配はなかなか見込みづらい。
こういった事情を総合的に勘案すると、現在同社の配当利回りは5%ぐらいなのであるが、増益増配期待が薄い銘柄で中堅企業みたいなのになると、配当利回り5%より低いバリュエーションは中々積極的に手掛けづらいよねという話なのだと思う。
例えば、米国の石油大手のエクソンモービルがPER15倍・配当利回り3%+自己株買いのセットがあるわけなので、これと比較した時にどっちに投資したいかという天秤があるわけで、その境目的なところにいるのだと思う。

四季報全体を見ていると、このようにオールド中堅銘柄で配当利回りは4~5%あるが、一株当たり利益と一株当たり配当金額の差が既に増配によって差が縮んでおり、さらに業績ネタがあんまり芳しくない企業はほとんど同じようなチャートになっており、大体そういう銘柄のPERはぎりぎり二桁(11倍とか)みたいなラインが多く、この配当利回り4~5%・PER10倍以上というのが業績アッパーポテンシャルがない無名銘柄の限界だなと感じるようになってきた。

ということで日本株はこれまでこのような東証改革による増配期待で押しあがってきたバリュー銘柄がわんさかあるわけであるが、概ね増配すべき企業は増配してきた中で、外国人からの認知度が薄い中堅企業以下になると株価上昇できる追加ネタがないと増配しきった銘柄をさらに上攻めするのは難しいわけで、単に増配期待が高い・配当利回りが高いという理由以外も見出していかないといけないなあと思う次第である。

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コマツの決算から考える欧米経済の先行き

コマツ、円安効果で減益幅縮小 25年3月期4%減に

さすがにFRBの経済見通しより利下げ回数剥落してるのはおかしくないかと思う感じ。

色々決算が発表されている中で、世界経済全体の景気を見る上では個人的にはコマツの決算に注目している。
よくマッドマネーで有名なジムクレイマーは書籍などで世界経済を見る上ではキャタピラーの決算コールを聞けと書いてあったりするが、キャタピラーの決算はどうしてもコマツより遅れて出てくるし、正直英語読むのめんどって思っちゃったりするし、コマツの決算資料の方がより情報が充実しているので、コマツの方の決算コールと資料を見て世界経済のファンダメンタルズを見ておこうと決めている。

【参考書籍】
ジム・クレイマーの“ローリスク"株式必勝講座

実際に今期のコマツの決算コールと資料の両方を見ると、欧米での建設機械の販売見通しが切り下がっているのである。

【コマツのIRページ】
https://www.komatsu.jp/ja/ir/library

【米国の見通し】
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【欧州の見通し】
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市場では欧米景気は堅調推移しているという見通しや、米国は大統領選後にトランプ政権であれば財政支出で景気堅調さが続くという見方が徐々に強まっている一方で、コマツの決算では欧米の建設機械販売見通しが4月当初の見通しから半年で切り下がっているわけである。
そう考えれば、4月に市場が予想していた経済見通しより実態は悪いことは確実であり、4月時点より上の米国債金利水準というのはさすがに米国大統領選でのオールレッドを織り込みすぎではないかと思う次第である。

個人的には、今回のコマツ決算はやはり欧米の景気は金融引き締めの継続で確実に鈍化している証拠だろうなと思っている。
特に欧州は当初から弱気見通しだったところからさらに下方修正されているわけで、結構深刻なように見えていて、ECBは粘らずにさっさと利下げしろと思う次第である。
米国についても、この時点で下方修正しているというのは、足下の米国景気は堅調という市場の見通しからは若干下の方向になっており、緩やかな景気軟調トレンドは続いているものと思われるし、コマツは決算コールで利下げ期待みたいなのを言っているが、利下げが実体経済に効くには1年半ぐらいかかることを考えると、やはり米国景気に期待しすぎではという感じがある。

ただ、景気に対して期待の高い欧米では失望的なものが出ているが、それ以外のところは逆に思ったより粘っているなという感じがある。
インドネシア・オーストラリアについては資源価格がそこまで下がらなそうということで販売見通しは特段変更していないこと・中国についてはさすがに過去3年死ぬほど販売減少してきた中で、さすがに景気刺激策が一応は出てきたことから一旦は販売底打ち的な感じになっている。
そういうことを考えれば全面的に世界景気が死んで株価暴落というよりは、どこかのタイミングできちんとFRBとECBが利下げコミットしてくれれば問題ないだろうという考えが妥当なように思う。
 
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タマホームの決算から考える地方住宅市場の厳しさ

タマホーム、6-8月期(1Q)経常は赤字転落で着地

注文住宅市場が完全に死んでる。

ぽちぽちと決算シーズンが始まっているわけであるが、その中で気になったのがタマホームの決算なので、これについて書いていきたい。

【タマホームIRページ】
https://www.tamahome.jp/company/ir/

ニュース記事通り、赤字転落しているわけであるが、一応利益変動要因の内訳見ると、もう言い逃れできないレベルで状況が悪いことがわかる。

【利益変動要因】

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タマホームはこれまで住宅分譲会社の中では比較的株価がしっかりしていた企業であるが、発表された決算は上記の通り非常に厳しい内容となった。
住宅分譲会社というのは売上計上について物件を引き渡した時に計上されるわけだが、引き渡し件数が減少して大赤字となってしまった。
引き渡しが減少しているだけであれば、受注が下げ止まっていればもしかすると先行きはいいのではないかと考えられる可能性もある。

では受注の方がどうだろうか?


【注文住宅事業の受注状況】

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これはあかんなあという数字である。
前年同期比で金額ベースで22%も受注が減っている時点で、注文住宅市場が死んでることは明らかである。

そして理由も非常に単純明快である。
単純に注文住宅の建築コストが上がりすぎているということが一つ。

【注文住宅販売価格の推移】
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そして日銀の利上げによって住宅ローン金利も上昇したし、注文住宅は基本的に転売・資産価値というのはあまり考えられずに発注されるものなので、価格と金利のどちらも折り合わなくなっているということである。

東京のタワマンしか見ていないという人だと、すぐに今すぐ日銀は利上げした方がいいとか言い出す始末だと思うが、実際は住宅市場は本当に東名阪都区部マンション・立地抜群の戸建て以外は死んでるという表現が妥当な状態になっている。
この状態で利上げを無理やり進めれば、地方住宅不動産市場なんてのは一瞬で終わりである。

こういうことを考えれば日銀の利上げが連発できる環境でないことは確かだろう。
そしてここの注文住宅についてはここから回復するには、建築コストの低下か発注する人の収入増を待つ必要性がある。
そして現実的な解は発注する人の収入増を待つしかないが、そうなると結局春闘待つしかなくなる。

といったことを考えると、日銀の利上げタイミングは結局春闘待ちというのが現実解になるわけで、米国が利下げサイクルに入っている中では年一回どうなるかというのだけ見ておけばOKという形ではないだろうかと思う。

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ソフトバンクGの投資が生成AIバブルを極めると思う理由

【参考書籍】
The Power Law(ザ・パワー・ロー) ベンチャーキャピタルが変える世界(上)

昔から頭のネジが何本も外れた投資スタイルだったのか・・・

上記はベンチャーキャピタルの歴史を書いた書籍で、上下巻ある書籍だが、その中で上巻の後半の方で気になる部分があったのでまとめていきたい。

上記参考書籍はVCに関する書籍なわけで、基本的にはアメリカのシリコンバレーから始まったVCの話が中心なわけであるが、上巻の後半に唐突に孫正義氏の話が出てくるのである。
孫正義氏のヤフー出資の成功についての具体的なやりとりが書かれていたわけであるが、その中で自分はてっきりこれはきっちり掘り当てて投資したものだと思っていたが、どうやらヤフーに出資する際も当時のVCではサイズとしては規格外であった1億ドルを用意しているとヤフー経営陣に告げながら、孫正義氏は「君たちの競合はどの企業かね?」と聞いた挙句、それをメモに書き留め、ヤフーの経営陣に「出資を受け入れなければその競合にこの金を投資する」と脅迫したのである。

これが1990年代の話であるわけで、2010~2020年のソフトバンクのビジョンファンドでも同じことをやっていたことを考慮すると孫正義氏の投資スタイルというのは昔から変わらず、レイトステージの企業が独り勝ちするための資金をどでかく投じる・投資しようと思っていた先が出資を断るのであれば競合に投資すると脅迫して株を強奪するのである。
VC自体がその当時段々とデューデリジェンスからスピードを重視した投資に変遷しつつある中で、投資金額サイズを武器に脅迫的に無理くり投資をするという独自スタイルはアウトサイダー・異色でありつつも、孫正義氏自体の投資スタイルは昔から変わっていないのである。

これを考えれば今はじっと我慢をしている孫正義氏が再始動すれば同じ投資スタイルで投資を実行することは想像に難くない。
最終的に孫正義氏を止めることは誰もできないことを考えると、バブル本番の時は同じようにAI関連銘柄に驚くような金額の投資を実施するだろう。
もちろんそれは自前の金だけでなく、借金を活用した投資であるわけで、昔から続いている頭のネジが複数本ハズれた、第三者から見れば気が狂ってるとしか思えない投資をするだろう。
そしてその時はソフトバンクで借り入れを増やせる時であり、金利が下がっていった時ということもなんとなく想像できるので、FRBの利下げ局面でバブルが本格化していくことに注目していきたいと思う。

【ソフトバンクGの株価チャート】
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若者へのディズニー文化が継承されなくなる懸念がオリエンタルランドの株価下落につながる

若者のディズニー離れが進む 10~30代の利用者は約10%減 TDR知識王が語る分岐点「大人料金が1万円を超えた時」

どこかで歯車が狂ったような感じがするけど、どこでテコ入れするのか?

上記記事はディズニーランドに行く層において若年層の比率が下がってきているという話
そして実際にオリエンタルランドの株価を見ると、確かに同社株は割高水準であったが、今年になってからピークから株価が30%以上下落するなど、株価動向といったところでも先行きが怪しくなっている。

【オリエンタルランドの株価チャート】
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これは上記若者やファミリー層のディズニー離れとリンクしている可能性は非常に高いと思うので、そのことをまとめていきたい。

確かにこれまではあまりにも遊園地が混んでいる上に、そもそもチケットが安かったということもあり一定程度の値上げというのはあってしかるべきだったように思う。
しかし、個人的にこの値上げ戦略について現在は良いとして、途中から価格の引き上げ方が杜撰になっていたことは将来的にまずいことが起こりそうな気配が出ているように思ってきている。
ディズニー遊園地はフェラーリのような本当にごく一部の富裕層向けというわけではなく、限りなく大衆娯楽の世界である。
大衆娯楽というのは一定のプレミア感はあったとしても、必ず若者に文化の継承をしていき、リピーターとして将来も利用の継続をしてもらう必要性がある。
実際マクドナルドはファミリー層を取り込んで、当時の子供が大人になった時に家族で同様に来てもらうようなビジネススタイルをしているわけであり、そこはかなり意識しないといけないビジネスなのである。
しかし、あまりのチケット価格の高さに、若者がそれについていけなくなってきて、気づけば古参ファンしかいないみたいな状態に徐々に陥ってしまっている可能性がある。

またディズニー遊園地のIPがディズニーに依存しているわけであるが、米国本社のディズニーの方もLGBT思考に囚われていて以降は魅力的なキャラを打ち出せなくなっており、アナ雪以降は子供が夢中になれるような作品を打ち出すことができていない。
親も子供に積極的に見せたいと思うようなディズニー映画が最近はリリースされなくなっており、IPという面でも心細さが徐々に出始めている。

そうなるとこのままでは気づけばディズニー遊園地に夢中になっている層は生い先短い人ばかりになって、若年層は「ディズニー?別にあんなところ行く必要性なくない?」と若者にディズニー文化を継承できなくなる可能性がある。
こういった懸念と株価の割高さがストレートに株価下落につながっているわけで、この状況をひっくり返せるまではEPSは下がらなくてもPERに是正圧力が働き続けるので、厳しい株価動向が続く可能性を見ておく必要性があるだろう。

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