村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

債券

インフレ鈍化と景気悪化目白押し統計で月初から金利低下ムーブ

ユーロ圏インフレ率、ECB目標の2%を下回る-利下げ後押し

Manufacturing PMI® at 47.2%; September 2024 Manufacturing ISM® Report On Business®

月末クソムーブで債券ショートしていたプレーヤーはいきなりノックアウト。

9月末は相変わらず新規失業保険申請件数低いですよねというのとパウエル議長の経済が予想通りに動けば金利を急いで下げる気はないキリッ(予想通り動いたことあるんでしたっけ?)という発言を頼りに債券をまだ売ろう・どうにかして金利が上がってくれと願うプレーヤーが多い動向となった。
しかし月初一日目からそうした債券ショート組のはかない願いを粉々に砕くような統計しかでてこなかった。

まず一番手はユーロ圏インフレ率だ。
まだコアは一応前年比2.7%となっているが、総合インフレ率は前年比1.8%と2%割れしている。
しかもよくよく考えてほしいのは今下がっている最中なので、前年比という観点でも前半のインフレ率高いものが押し上げている効果があるので、直近値だけ考えれば実状は2%どころではないレベルで低いわけである。
そうなると、現在ECBは25bpsずつじっくりラガルド氏がニヤニヤしながら政策金利を下げているわけであるが、これはもはや25bpsずつとかっていう話ではなくないか?少なくとも毎回合25bpsずつ連発して下げないと景気減速ペース間に合わんやろというのを正直に表している内容であろうと思う。

実際にEUのインフレ率発表された後は、これまで金利についてかなり慎重に見ていて欧州時間になると金利に上昇圧力が働くぐらい債券ロングにやや懐疑的に見ていた欧州プレーヤーがいよいよ心折れる形でブンズは金利低下方向で動く形となった。

【10年ドイツ国債金利のチャート】
タイトルなし

そしてそこに追い打ちをかけたのが米国ISM製造業景況指数である。
まず結果は47.2と50割れがもうかれこれ数ヵ月続いている状態で、低調さが際立つ内容となった。
しかも内容を見てみると、雇用が43.9と非常に低調で、生産こそ増えているもののプライス下がって新規受注も弱いということで、もうこれはどう考えても景気減速ステージでしょというものを裏付けるものとなり、月末にパウエル議長のタカ派発言(と市場が勝手に思っているもの)で上昇した金利は全戻しの展開となり、皆債券を売るべきなのか買うべきなのか未だ目線が定まっていない状態である。

さらにこういうセンチメントの時に、イランがイスラエルを攻撃する計画があるとかうんぬんで地政学リスク上昇で心もとない株価動向は寄りから崩れる形となっており、10月がどうやら波乱本番の月となりそうな気配が出てきていると心した方がよさそうな雰囲気である。
その波乱を止められるのはやはり金融緩和だけで、どの時点で開き直りビッグレートカットが来るのかというのを待つだけだろうと思う。

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ADP雇用統計も滑って多くの人が意表をつかれた米債金利低下

米ADP民間雇用者数、21年初め以来の低い伸び-市場予想下回る

月初3連続で米債ショート勢が意表をつかれている。

月初の米国統計ラッシュが続いているが、3営業日目のADP雇用統計も雇用者数が市場予想比下振れとなった。
一応現職者・転職者の給与の伸び率は前月と同程度であり、過剰に給与インフレが落ちているというわけではないが、それでも雇用者数の下振れの方がフォーカスされる形になった。

これに対する米債は3営業日連続での金利低下となった。
上述したように給与伸び率には大きな低下は見られていなかったことから、ここまで2営業日の低下の仕方と比べれば緩やかであるものの、3営業日で10年債金利で20bpsもラリーしており、多くの米債ショートプレーヤーの意表をつかれる展開となった。

【米国10年債金利のチャート】
タイトルなし


そもそも現在の金融引き締め自体がインフレ抑制最優先でやってきていて、現在の米国経済に対して過剰引締めであるということを多くのプレイヤーが忘れている上に、どうせ機関投資家なんてのは給料高くて景気の不安定さなんて一番目に見えていない人達なので、そういうところで勘違いしたまま米国景気は強いしインフレ再燃もありそうだから米債ショートという謎論理をひねり出して腐ったポジションテイクを続けているわけである。
そう考えれば、アホな米国人が最後の最後にギブアップしてヤケクソ米債コールオプションロングに追い込まれるまでは米債ロングというのは非常にワークする戦略ではないかと思う。
この辺のオプションに対する考え方は下記を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
株価が上にも下にも行き過ぎる現象をオプション市場から考察する

これに対して迷走しているのが株である。
2022年後半~2024年前半では景気が強かったこともあり金利低下=株高という構図で動いていたわけだが、ここ2-3ヵ月ぐらいで景気後退懸念からこの関係性は変わっており、金利低下=株高になっていないし、金利上昇=株安ともなっていない。
株は純粋に景気後退懸念が企業利益にとってマイナスになるのではないかという純粋な懸念を持っているわけで、さらに言えばFRBがビハインドせずに利下げしてくれるのかという懸念を持っている。
既にドルの流動性は薄くなりつつあり、金利の多少の上下では株を買う動機にもならない。
そのため、株は決定的材料が出ない中で意味のない値動きをふらふらしているが、これが初心者から見ると何かトレードチャンスがあるのではと勘違いさせて、無駄なポジションテイクを促してしまう相場付きであり、こういう時はじっと我慢して取引参加者の決定的な動きが出るのを待つべきだろうと思う。

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JOLT求人が終わってるのと新発債ショートカバーで米債買い遅れ組が阿鼻叫喚

米国債の上値追い「危険」な水準に、大幅利下げ織り込みで反転リスク

米債の買い遅れプレーヤーばかり。

レイバーデー明けから米債の金利低下が激しく続いているので、まだ月初2営業日目ということもあるが、米債で何が起こっているのかまとめていきたい。

まず9/3にISM製造業が滑ったことに加えて、JOLT求人が市場予想812万人に対して結果は767.3万人とド滑りもいいところであり、ファンダメンタルズはじりじりと予想を下回る形の悪化を示し始めている。
ド滑り指標後はもちろん米債は金利低下でラリーしているわけで、ブルスティープする形でいよいよ2年-10年の逆イールドが解消されるレベルに入ってきている。

【米国10年債金利のチャート】
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また9/3のレイバーデー明けの米債の動きをよくよく考えると、債券需給が明らかにガチガチに強いことが判明した。
9/3のレイバーデー明けは、大統領選前が状況が非常に不安定そうということもあって、かつて見たことのないレベルで企業のドル建て社債発行が活発であった。

【参考ニュース】
米社債発行ラッシュ、FOMCと大統領選控え発行企業が殺到 

発行リストを見ると、もう見境ないレベルといってもいいレベルで、これは業者が消化するのは一苦労するレベルだろうなと思うような状態だ。
こういった新発債供給が大量に発生する時は、需給が悪化するのを見越して業者が先回りして米債をショートしたりするわけで、先月末の金利上昇は月末リバランスに加えて、この企業の新発社債ラッシュも一つの要因だったと思われる。
しかし、それだけ供給が重かったにもかかわらず、9/3はISM製造業景況指数が発表される前段階で急激にラリーしており、供給の重たさを理由にショートしていた業者もショートカバーにせまられてるだろうなというペースであった。

そういったファンダメンタルズと需給フローを考慮すると、米債需要はレイバーデー前と後でガラッと雰囲気が変わっており、米債を十分に積めていない投資家が多いことがうかがえる。

これに対して、ニュース報道は米債の上値追いは危険という見出しで出ているが、見た瞬間爆笑せざるを得なかった。
こういう相場雰囲気でこういうことを言う人間がいる時は「私は米債に買い遅れてしまいましたが、私が米債買うまでみなさん買いを控えてくださいお願いします」と白状しているのと一緒で、こういうやつらが全員ロングせざるを得なくなるまで相場というのは暴力的に動きケースの方がありそうだし、そうなってくれた方が面白いと個人的には思っている。
おそらく腹くくって米債ロングしているプレイヤーは今年5月あたりの米債10年4.6%付近はしっかりと買っているはずで、上値追い危険とか言ってるやつはずっと指しゃぶって見てただけのくせにまだそんなこと言ってるのかと高みの見物という状態だろう。

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フランスのサービスPMIから考える市場参加者の債券ショート傾斜のポジション

ユーロ圏総合PMI、8月51.2に予想外に上昇 五輪が寄与

まだまだ債券ロングは引っ張れる。

ここもとずっとグローバルに金利は景気鈍化を反映して低下傾向が続いており、一部では結構下がったんだからこの辺で一息とか予想する人が多い印象がある。

【米国10年金利のチャート】
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市場参加者は本当に債券ロングが正しいのかどうかというのが未だ疑心暗鬼なので、統計発表に非常に注目が集まりやすく、数値を皆凝視しているのである。
そして、先週の木曜日に欧州の各国PMIが発表されたが、その中でフランスのサービスPMIが市場予想に対して大幅に上振れるという事態が発生した。
しかし、ちょっと考えればすぐ思いつく話だが、このフランスのサービスPMIの集計期間はパリオリンピックが開催されていた時期である。
世界中から旅行客が来るわけなんだから、サービス業の景況感が良いなんてそんなの当たり前だろ・予想をきちんとその分織り込んでいないエコノミストが馬鹿という話なわけである。

なので普通に考えればこのフランスサービスPMIの想定外上昇は普通に考えればオリンピックノイズがあまりにも大きく、真実の景況感からかけ離れていることは当然な話なのである。
しかし、フランスサービスPMIが発表された直後のファーストリアクションは欧州債券金利上昇であった。
しかもその後ドイツの各種PMIが発表されるまではこの金利上昇リアクションが続いたのである。

こうした反応を見ると、以前の米国PCE発表の時もそうであったが、アクティブな市場参加者は未だ債券ショート戦略を捨てきれない状態にあるようだと思う。

【過去参考記事】

若干のコアPCE上振れを吹き飛ばすぐらい悪かった米国個人収入

債券ショート戦略を捨てきれないし、ロングしている側も未だびくびくした形のロングだし、さらに金利が天井付近から大分低下しているのでこの辺だろうという何の根拠もない利益確定をしたいというプレッシャーを常に受け続けるので、こういうちょっとでも上振れ経済指標が出るとよく考えずにショート追加したりロングを利益確定するという動きが出るのだと思う。

こういう反応がある限り、世界的な景気鈍化が緩やかに進行している中で債券ロングポジションはまだ比較的浅い状態であり、債券ロングポジションを引っ張った方がリスクリワードは高いだろうと思うし、とにかく金利ショートしているやつがこてんぱんにやられるのをのんびり見学したいところである。
(とはいえ個人投資家がそんなシビアに債券投資をする必要性はなく、これはどちらかというと機関投資家の世界の話であろう)

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どのシナリオでも米債金利低下を見込む機関投資家

FOMC議事要旨、9月利下げを示唆 円相場144円台に上昇

どのシナリオでも利益が出る可能性を考慮すると米債ロングということなのだろう。

ここもと相場は(特に米国株式市場)日替わり弁当で上がる銘柄・下がる銘柄が入れ替わり、非常に目まぐるしい状況となっている。
サマーバケーションシーズンなのによくやるなと思う一方で、ここでトレードしている人は毎日相場の雰囲気が変わるので、ポチポチ病の人は相当翻弄されているだろうなと感じる。
またそうした株が高値で頻繁に雰囲気が変わることに対して、機関投資家は段々と嫌になっていることもなんとなく想像が付くところである。

前のブログでも記載した通り、機関投資家の株に対する姿勢は非常に不安定な状況である。

【過去参考記事】

米国でも機関投資家が引いて個人投資家が強気な模様

もしかすると完璧な五点着地ソフトランディングで株価が上昇する可能性は多少はあるが、どちらかというとFRBのビハインドザカーブによって景気が想定より下振れることによる株価下落リスクの方がよっぽど可能性高そうだし、そもそも株価水準も無理して買うほど魅力的なバリュエーションでもない。
つまり機関投資家は複数のシナリオの中でどうすべきかと頭を悩ませているのが現状だ。

そういった中で機関投資家は想定している複数シナリオにおいて、どのパスでも成就する可能性が高い投資手法を採るしかなくなっている。
それは米国債金利低下である。
様々な米国経済統計を見ると底堅いかもしれないが、少なくとも以前ほどの盛り上がりがないことは確実だし、緩やかに鈍化していることも間違いない。
資源価格も過度に上昇する兆しもないというのもようやく市場に浸透し始めた。
さらに昨日は雇用統計の下方修正とFOMC議事録で利下げを支持する理事もいたということが判明し、利下げに関する障壁は全くないということも確認できた。
また、金利水準も絶対値ベースで高いところにいることを考慮すれば、米債ロングだけはどのシナリオにおいても少なくとも損するトレードにはならないだろうと考えている節がある。

【米国10年債金利のチャート】
タイトルなし


そうした思惑が現在の米債金利の低下を促していて、個人的には米債金利はまだ低下余地が十分にあるだろうと思っている。
少なくとも2Y-10Yがインバートしている間は米債金利低下は現在の水準でも不十分だと思われる。
そう考えると今ひたすら上値が重たいドル円についても、日米金利差の縮小から引き続き頭はおさえられた状態が続くわけで、150円より上のロングもちょっと助かる雰囲気にはないのではないかと思う次第である。

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