村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

外国銘柄

スーパーマイクロコンピューターの粉飾会計疑惑がハイテク株に水を差す

スーパー・マイクロの監査法人が辞任、ガバナンス懸念-株急落

こういうエポック的なニュースは結構投資家心理に影響与えがち。

決算シーズンで企業決算が続く中で、ここもとのAIブームで一気に株価を上昇させてきたスーパーマイクロコンピューター(SMCI)について粉飾疑惑が生じているが、そこにさらに監査法人がもはや擁護しきれないということで辞任しており、これをきっかけにSMCIの株価はもう一段下落している。

【SMCIの株価チャート】
タイトルなし

下げ幅としてはAIブームの上昇分の3/4ぐらい吐き出している状態で、相当評価は厳しくなっている。

この監査法人辞任というのは非常に悪いニュースである。
監査法人は監査してこの企業の決算は適正ですよという見識を示す適正意見を出すことが仕事であるが、この適正意見を出したにも関わらず、明らかにその上場企業が誰の目から見ても不正を働いている場合というのは監査法人は投資家から訴訟されて賠償するリスクが生じる。
そのため、訴訟された場合にどう考えても抗弁が難しいような決算については監査法人は決算書に対して適正意見を出さないし、企業に対して是正しろと指導するのである。
そして十分な是正をしなかった場合は適正な決算であるという表明をしないと企業につきつけるため、こうして適正意見を出さない監査法人と適正意見を出してほしい企業で揉めにもめて、結果として監査法人が辞任するのである。

普通上場企業の中でも大きめの企業の監査法人なんてのは続けることが当然なのである。
なぜなら監査法人は企業から手数料をもらって監査しているわけで、何の問題も起こしていない大企業の監査は続けたいのは当たり前である。
しかし、不正を働いていて訴訟に巻き込まれるとなるとこの限りではなくなり、このSMCIの監査法人辞任はこの事象が生じていると考えて間違いはないだろう。

つまり、これはAI関連と標榜して無理やり不正をしてまで自社評価を高く見せようとしている企業がやや増え始めていることを示しており、非常に雑にアグレッシブな企業ほどこういった不正の誘因に駆られてやりがちな不正をしているということになる。
一応SMCIは上場企業の中ではそこまで大きくない企業なので、これでAIブームが終わりとはならないが、とはいえ大分先走る形で上昇してきたAIブームという株価上昇トレンドに乗っていた代表格銘柄ということもあって一定程度水を差しかねない話だろうとは思う。
なぜそう思うかは下記過去記事を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
熱狂的バブル相場の天井を捉えるために見るべきモラルハザード・不正行為とは?

というわけで、FRBの利下げペースも不透明だし、こういうエポックメイキング的な悪材料ニュースが出てくると、個人的には少し身構えておきたいという感じである。
 
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擦られ過ぎてノーサプライズなエヌビディア決算

NVIDIA株、時間外取引で一時8%安 荒い値動きに

これだけ皆注目してるなら市場効率仮説があてはまるのでは?

8月後半であまり相場的にはネタなしとなっている中で、8月最後のビッグイベントとしてエヌビディア決算が非常に注目されていたのは、米国株を追っている人には常識の話である。
個人的にも一応注目はしつつも、いくらなんでも世界中の投資家が注目しすぎていてこれは擦られすぎているなと感じつつも、一応今日は朝起きて決算とその反応だけは見ておこうと思い、見ていたので、その内容についてまとめていきたい。

・・・とはいっても先ほど上述したようにエヌビディア決算の内容自体はもう擦られ過ぎだし、自分より半導体に詳しい人間が詳細に記載しているのでここでは書かないし、そもそも内容的には概ね想定内みたいな内容であった。
逆に言えばこれだけ注目されていれば、そもそも決算外れそうであれば決算前に株価はもっと下にいっているやろと思うので、その理由について書いていきたい。

先ほど書いた通り、世界中の投資家が血眼になって注目しているわけだが、ここまで注目されていると、エッジのあるトレードはほとんど無理である。
世界中で気にしていない投資家は存在しないわけで、エヌビディアの先行き動向を予想するために決算情報だけではなく、出荷先の動向(GAFAMなど)の投資動向を確認したり、流通メーカーの在庫状況を確認したり、GPUの納入期間を調べたり、オルタナティブデータを活用したり、あるいは出荷先や流通企業などから状況ヒアリングしたりなどあらゆる手段を駆使して調べられるし、インサイダーに近い人間も知っている情報を基に売買したりしているわけである。
S&P500やナスダックで大きなウェイトを占める上にその値動きは暴力的でもあり、多くの機関投資家がエヌビディア株をアンダーウェイトしていたがために負けてしまったというトラウマがあり、エヌビディア株については動向については何が何でも外さないような態勢にしておくという脅迫観念がある。

ようはほぼ調べ尽くされているに等しい状態で、アップサイド方向についてはこれこそ市場効率仮説でいう通りにほぼ全ての材料が織り込まれているみたいな状態である。
一方で、マイナス材料についてもこれでもかと調べられているはずで、ダウンサイド方向もほぼ全ての材料が織り込まれている。
個人的にはあまり市場効率仮説というのは信じていないのだが、エヌビディアほど世界中の投資家から注目されていたらさすがに市場効率仮説に当てはめられるぐらい調べ尽くされていると考えてもいいのではないかと思っている。
ようは擦られ過ぎているという表現が正しいと思う。

一応決算を迎えて、アナリストコンセンサスはクリアしているが、一方でアフターの株価は▲7%ということで、これを基に市場の予想に届かなかったという話なようだが、そもそも120ドルという株価水準が馬鹿コールオプション買いで作られた水準であるため、株価動向的には同社株のボラティリティの高さを考えれば誤差の範囲なようにも見える。

【エヌビディアのアフター決算の株価チャート】
タイトルなし


さらに寄ったら普通に買い凸する人間もいそうで、おそらくアフターと実際の寄ってから数十分ぐらいの株価の位置さえ相当違う位置になる可能性があり、あまり深く考える必要性はないだろうと思う。

【エヌビディアの株価チャート】
タイトルなし


結論としては市場効率仮説が当てはまるぐらい調べ尽くされていて、決算もノーサプライズでアフターは数値的には少し大きめに下がっているようにも見えるが、ほぼ何か有意な株価動向ではないのではないかと思っている。
ようは目先の株価動向について、ほぼ何か意味のある値動きをしているとは思えない。
個人的には多少下に押すと思っているが、根本的にAI相場が終わりだとは全く思っておらず、株価が下がればきちんと買っていくべきだと思っている。
このAI相場はどこまで続くのかは借金サイクルを見ていけば良いと思っており、それについては下記過去記事を参考にしてもらえればよいと思う。

【エヌビディアの株価チャート】
なぜ借金のサイクルが経済・株価にとって重要なのかを解き明かす

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アルファベットの満点決算で滑る株価が意味すること

アルファベット、売上高が予想上回る-クラウド・広告需要が寄与

この決算内容で株価滑られるとちょっと嫌だよねえ。

ここもと米国株は非常に重たい動きとなっており、特にその中でもこれまでポジションが偏っていたテック系銘柄においてその重たさが如実に出ている。
そのため多くの投資家が決算に望みをかけている状態であることは疑いようがなく、とりあえず決算待ちだよねという流れになっていた。

そして決算シーズンに入って、テック銘柄一番手としてアルファベットの決算が発表された。
内容としては若干YoutubeがTiktokとの競争で伸び率がやや厳しめだが、広告も伸びてるしクラウドも伸びている、AIの取り組みについてもとりあえず取り組みを進めていることは確認できた。
セルサイドの質問も特段業績に対する懸念はなく、AIに関する取り組みについての質問ばかりで、将来への取り組みについてのヒアリングということでポジティブな内容ばかりであった。

株価についてはヘッドラインが流れた一瞬だけアフターで+2%と伸びて、多くのXで米国株決算つぶやいているアカウントを賑わしたが、決算説明会後は-2%まで下がるといった形で逆方向に噴射する流れとなった。
(しかもより前はさらに下落している)

【アルファベットの寄り前株価】
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個人的にはこれについては足下の相場の重たさ、つまりポジションがいっぱいいっぱいなので利益を確定したいという人と、上値を追って買ってくれる人が少ない、つまり多くの人がファンダメンタルズを考慮すると割高と考えているのではないかと推察している。
既にアルファベット自体は非常に図体の大きい企業であるため、伸びるにしてもその伸び率には天井的なものが存在しているわけで、それが増収増益率前年比+20%というラインである。
増収は特にこの伸び率の天井というものが如実に存在するし、メイン収益源は広告収入なのでマクロ経済の変動に影響を意外と受けやすい。
そして増益率については+20%というラインを超えようとすると、ゆるふわ広告営業人員にメスを入れる必要性がある。

それらに着手していない中でほぼ満点の業績を出したにもかかわらず株価は下げていることは、今後のマクロ経済の鈍化が考慮されているか、アルファベット株のPERが高すぎて是正が必要だと見られているかのどちらか・あるいは両方である。
利下げがないとマクロ経済がもっと悪化するというミニ逆金融相場みたいな状態である可能性もあるだろう。

以上を考えるとこの決算シーズンはあまり期待すべきではないだろうし、調整は入って当然という当方が今年4月以降のメインの流れで考えていた動きに沿うものになるだろう。
ただし、FRBの利下げにブーストがかかれば解決する問題で、やはりFRBの金融政策スタンスの劇的変化が必要な局面になっているような気がしている。
 
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エヌビディアの株価は一度屈伸が必要だと思う理由

米国株式市場=S&Pとナスダック大幅安、半導体株の急落重し

上値買う人がおらんのよ。

半導体・テック株を中心にギクシャクし始めている状況であり、特に最注目されているのがエヌビディア株であることは疑いようのない事実である。

【エヌビディア株のチャート】
タイトルなし

エヌビディア株について多くの人が上だー!下だー!とわーわー言っており非常にノイズが多いわけだが、一旦自分なりの考え方をブログに書いていってまとめていきたいと思う。

まず大局観でいうと、生成AIブームはまだ5合目にもたどり着いていないと考えている。
自分が生成AIバブルの予感に気づいたのは下記過去記事の通り、Chat GPTの登場によるものであった。

【過去参考記事】

ChatGPTなど対話型AIバブルがスタートの予感


あの衝撃からまだ1年半程度しか経っていないのである。
スマートフォンだって登場した時の衝撃から、実際市場ピークになるまでは10年かかっているわけで、1年半で設備投資が終わるとはとてもではないが思えない。
そういった意味で大局観ではまだまだ上値が狙える確率が高いだろうし、積極的に取り組むべしと個人的には考えている。

しかし大局観と短期的な相場については頭を切り替えて考える必要性がある。
ここもとエヌビディア株はかなり無茶な買われ方をしていたことは確実で下記オプション売買数を見てもらいたい。

【エヌビディアの2024年日次オプション売買数】
タイトルなし

https://www.cboe.com/us/options/market_statistics/historical_data/

見ればわかるが、今年5-6月のエヌビディア株の急騰劇の裏にはコールオプションの大量買いが原因なわけであることは明白で、この辺の原理は下記過去記事を読んでもらいたい。

【過去参考記事】
株価が上にも下にも行き過ぎる現象をオプション市場から考察する

盛り上がったはいいが、やはりあまりにも派手なお祭りをやれば一旦息切れは当然で、オプション売買数がついてこない状態になってしまった。

つまり現時点でこれまでエヌビディア株を上昇させてきた主な理由であるコールオプション買いが現状ではパワー不足であり、上値を追いづらくなっているということである。
どちらかというと皆エヌビディア株のポジションは十分に持っていてお腹いっぱいで、利益確定をどのようにするか考えている人がメインであるというのが現状のように思う。

こういう時は一度売りたいと思っている人が売って、上値を抑えているポジション動向が一掃される必要性があると考えている。
つまり一度調整的なものが必要になり、誰も彼もが売ることに躍起になる必要性がある。
つまり下落とともに現物株の売買高増加と、ついでにプットオプションの買いも大きく膨れてくれればなお変なポジションが一掃されてくれるのが確認できるので良いと思う。

というわけで、短期的にはやはり一旦屈伸してもらうことが、大局観に沿った上昇を続けるには必要だと思うので、皆がこれは慌てて売っているなと思えるポイントで買い向かいたいと思う次第である。

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ミーム株を手掛ける際に見るべきポイントはどこか?

ミーム株急騰、空売りヘッジファンドの痛み軽度=銀行

ミーム株はオプションについての理解なくして手掛けるのは自殺行為。

5月は再度以前に話題になったミーム株(GMEやAMCなど)が上昇して市場を賑わせたが、既に祭りは終了して雰囲気としては下がり気味となっている。

【GME(ゲームストップ)の株価チャート】
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Xではごくわずかであるが、一部で変なタイミングでミーム株に投機して損切りもできずに死んでいる人がいたりするのも発生してきている。
そういうのを見て、今回は自分なりにミーム株を手掛けるとすればどういった点に注意すべきかというのを、ミーム株はどのようにして急騰するのかという仕組みから考えて、どういった点を見て判断すべきなのかを書いていきたい。

ミーム株はなぜ上昇するのかというと、これは検索すればいくつか言及されている記事やYoutube動画などが見つかると思うが、基本はオプションを使ったことによるショートの踏み上げである。
ミーム株は業績が悪い上に将来の展望も薄いので、ショートでリターンを取ろうとするヘッジファンドなどがネイキッドショート(いわゆる裸売り)を大量にしているわけで、そいつらを強制追証に追い込んで強制買いをさせるためにコールオプションを大量に買うことによって実現させる急騰劇なのである。
なぜオプションを使うかと言うと、普通に株を買う形ではかなりのお金が必要な上に、上手くショート勢を追い込めなかった時に受けるダメージが大きい。
しかしコールオプションなら少ない元手で一気に実質的な買いポジションを構築でき、上手くいかなかった時の損失も限定でき、コールオプションを買えば業者が勝手にアービトラージのために生株買いをしてくれるので、ワンチャン上手くいけば少ない元手で一攫千金が狙える手法である。
これが2020年以降、ロビンフッダーをはじめ、米国で個人が気軽にオプション売買ができることによって頻発しているミーム株急騰劇の仕組みである。

つまりミーム株で上手くライドするためにはオプションのフロー特性を理解していないといけない。
一般的にオプションはインプライドボラティリティ(IV)が低い時に買われ、インプライドボラティリティが高い時に売られるものである。
これはオプション自体がIVの上下に比例する形で価格が上下するので、IVが低い時に売った後にIVが高くなってオプション価格が上昇したら破滅だし、IVが高い時に買った後にIVが低くなると同じように破滅したりするのである。
なので、ミーム株を買うかどうかというのを判断するのは、コールオプションが安い時でなければいけないのでIVが低い時に買わなければいけない。
これは言うは易し行うは難しで、単にIVが低いというだけで買い向かうと、実は誰もエントリーしていないだけで、その後死ぬほど株価が下がったりする。
そういった意味では、実際エントリーするとすれば、IVが上昇する一発目で買い参戦しなければいけない。

そして問題は売り時である。
売り時はその逆で2回目~3回目にIVが急上昇した時に売るのである。
コールオプションを買う側もそもそも業績の悪いミーム株が長期戦に向いていることは百も承知なので、大量コールオプション買いで勝負するとしても2~3回が限度である。
これがコールオプション買いでショート側を追い込む勝負を仕掛ける側の事情だ。
逆に既にミーム株のポジションを保有している人はコールオプションの売りを考え始める。
IVが過去と比べ物にならないぐらい上昇しているわけで、オプションが非常に割高になるので、単に持っている株を売るよりコールオプションを売った方がプレミアムが得られて二度おいしいという展開になるのである。
なので、IVが上昇すればするほどコールオプション買う側は不利になるし、コールオプションを売る側は有利になるため、徐々に天井感が出てくる。

このようにして、ミーム株ド天井というのは総じてIVが馬鹿高くて株価が急騰しているところになる。
なので、IVを見ずに米国ミーム株を手掛けるというのは自殺行為もいいところである。
特に直近高騰した皆が大好きなGME株が高騰後にIVが下がり始めているのを見逃してしまい、株価が下がったところで押し目だとか意味不明なことを言って買った挙句、数日でマイナス50%みたいな食らい方をしている人がXでは見かけられるようになっている。

なのでミーム株を手掛けるにはオプションに対する理解がないと勝負にならないわけで、オプションについて基本的なところを理解するには下記書籍らへんを読んで勉強するべきだろうと思う。

【参考書籍】
最新版 オプション売買入門 

実務家のためのオプション取引入門

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