村越誠の投資資本主義

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その他先進国

スウェーデンの不動産市場崩壊はスウェーデン固有事情

スウェーデン商業用不動産家主SBB、配当支払い停止-格下げ受け

知ってる人は半年前には知っていたので、今さらである。

上記記事ではスウェーデンの不動産デベロッパーであるSBBがジャンク格付けに落とされて、信用危機が生じているという報道になっている。
株価も社債も以下の通り、もう悲惨の一言に尽きる動きである。

【SBBの株価】
タイトルなし

【社債価格の推移】
タイトルなし
(EUR建て満期2028年で社債利回り12%)

https://www.boerse-frankfurt.de/bond/xs2271332285-sbb-treasury-oyj-0-75-20-28

記事の中では「炭鉱のカナリア(キリッ)」みたいなことが書いてあって、一部ツイッターでもこのニュースを先行き相場の懸念事項として書いている人もいるが、このスウェーデンの不動産市場崩壊については当ブログでは去年の11月時点でスウェーデンの不動産市場は壊滅的になっていることは書いてきているわけで、スウェーデンみたいな小さい国の不動産市場崩壊が極東のメディアに日本語で出てきた時点で「お前いまさらそんなこと言ってるの?」という次第である。

【過去参考記事】

世界の住宅不動産価格は軟調推移だが、その事情は大きく異なる

ここであらためてスウェーデンの不動産市場がなぜ崩壊したのか書いていきたい。
というよりも不動産市場崩壊の一般プロセスのおさらいになるので、それをあらためて確認する流れになる。
スウェーデンはリーマンショックでは不動産バブルとは完全無縁な国であったこともあり、リーマンショックで欧米日のように壊滅的なダメージを受けた不動産デベロッパーがいなかった。
そのため、その後の先進国デフレに伴う超低金利政策にて不動産デベロッパーはほぼゼロみたいな金利コストで負債を調達できるようになったために、痛い目を見てこなかったスウェーデン不動産デベロッパーは一気に借金をして不動産開発に金を注いでいった。

しかし、その速度が完全にスピード違反であった。
上記の記事にあるSBBのバランスシートを見ると、2016年から2022年で資産総額は20倍以上の数値になっている。
そして、このレバレッジのかけ方はSBBだけでなく、他のスウェーデン不動産デベロッパーも似たり寄ったりという状況である。
そして、そこに急に高インフレが訪れて、先進各国が高金利政策を取らざるを得なくなり、スウェーデンの政策金利もゼロから3.5%まで引き上げられていき、それに伴い不動産デベロッパーのベース調達コストは急速に上昇した。

金利上昇によってスウェーデンの不動産デベロッパーは物件売れ行きが悪くなっていき、追加で借金返済のための物件売却をせざるを得なくなった。
しかし、この時問題なのは買い手候補になるプレイヤーが全て同じように借金を抱えているために、誰も降ってくる売却案件をキャッチできないのである。
そのため、いつまでたっても保有不動産を現金化できずに、全員がスパイラル的に信用悪化に遭遇しているのである。
この辺の考え方は下記を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
景気のハードランディングはどのように発生するのか?米国景気はハードランディングするのか?

そういった意味で、このスウェーデンの不動産市場崩壊はかなりスウェーデン固有の事情であると言える。
ここからスウェーデンの不動産市場が回復するには、国内プレイヤーは全員借金返済に追われて死んでいるので、最終的には外資ハゲタカが安値で買い漁ってくるまでひどい状況は続くだろう。
逆にリーマンショックで痛い目を見てレバレッジを抑えてきた欧米日の不動産デベロッパーは大した傷を負っていないのが現状だろう。

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オーストラリア中銀も金融引き締めペース減速でピボット

オーストラリア中銀、7会合連続利上げ 2.85%に

カナダ中銀に続いてオーストラリア中銀もピボット。

これまでいくつかの中銀で先行き政策金利引き上げによる金融引き締めペースについて変化したり、変化を示唆する声明文を出すところが出始めてきている。
少し前ではカナダ中銀が市場予想75bpsの利上げ予想に対して50bpsしか利上げせず、ECBも次回利上げ幅については75bpsではなく50bpsになりそうなことを声明文でほのめかしているような状態である。
そのような中で、オーストラリア中銀であるRBAは前回政策決定会合で50bpsの利上げをしたのだが、その次からは25bpsにするようなほのめかし方をしたことからRBAのPivotも意識されていた。

オーストラリアについてはもうそろそろ金融引き締めペースについて考えなおしていいんじゃないですかという材料はそれなりに揃っていた。
まず米国と違って労働賃金は前年比3%増と通常の伸びにプラスアルファ程度の伸びしかしていない。
そして米国と同様に既に住宅価格は毎月1%ぐらい下落するペースで下落しており、RBAのレポートは小さいデベロッパーがぽつぽつデフォルトしているとの報告レポートも出ている。
M2マネーサプライも、もう例年レベルにまで落ちており、インフレ率以外を見ればもう過激な金融引き締めは正当化できないような状態になっていた。
ただ、オーストラリアのインフレ率は最新データでなんだかんだで前年比7.3%あるので、このインフレ率で本当に金融引き締めペースが減速するのかと疑問に思う人もそれなりにいて、本当にここでPivotするのかは市場参加者もやや半信半疑であった。

しかし、蓋を開けてみれば結局25bps利上げに留める結果となった。
結局見た目のインフレ率は足下だけ見れば相変わらず高いものの、景気指標を見れば鈍化していることは確実であり、既にデフレ時代から比べればかなり高い政策金利水準にあることから、ここからはじっくり25bpsずつの利上げで様子を見ていきながら、いざとなれば利下げでも対応できるように地ならしする方向に舵を切ったということである。
またオーストラリアの景気に大きく影響する中国景気も崩壊レベルで悪化していることを考えれば、先行きについて異例の複数回まとめての幅の利上げというのはやはりこれ以上は難しそうだという話ということだ。

さて、こう考えると既にカナダ・オーストラリアはPivotを決めて、ECBも次回からPivotがほほ決まっている。
とりあえずこの3先進国地域のPivotは市場にこれ以上の金利上昇という影響は与えずにこなしてきた。
このような環境下で米国FRBが11月75bps利上げした後に12月も75bpsまでやるのは無理であり、12月50bps・2月25bpsまでが確定で、あとは3月にあと25bpsやるのかやらないのかというだけの話になる。
この話を受けて市場がどう反応するかは日本時間では木曜日明け方のFOMC後にお楽しみということで・・・

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金融引き締めスピード緩和で先頭に躍り出たオーストラリア

RBA、6会合連続で政策金利を引き上げ―利上げ幅0.25ポイントは市場予想下回る

まずは賃金インフレが低いオーストラリアから金融引き締めペースは鈍化。

昨日はオーストラリア中銀(RBA)の金融政策決定会合であったが、市場予想50bps利上げに対して25bps利上げと予想を下回ったことにより、ハト派的として各種資産は上昇する展開となった。

オーストラリアは他の先進国と比べるといくつかの点で金融引き締めをもうこれ以上過激化させる必要性がないという理由があった。
まず一つ目は既に住宅価格が5ヵ月連続で低下し始めていることにある。
オーストラリアでは日本と同様に変動金利で住宅ローンを組む習慣が強い国であるが、これだけ政策金利を引き上げた上に、オーストラリアの住宅価格はどう考えても高すぎるみたいな数値にあったために、現在の金利水準で十分抑制効果が生じており、先行きでまだまだ価格下落を続けられそうな状態になっている。
二つ目は労働者賃金の上昇率が大したことないというところにある。
米国では賃金上昇率が5%みたいな数値で、これがスティッキーなインフレとしてFRBは抑え込むために必死に金融引き締めを進めたわけだが、オーストラリアの場合は四半期毎の発表ではあるものの6月の賃金上昇率は2.6%程度である。
ようはさほど賃金インフレは起こっていないわけで、住宅価格が下落して消費者コンフィデンスが非常に下がっている中で、これ以上は50bps利上げを連発する必要性はないだろう・一旦25bpsで様子見姿勢利上げするのが妥当という判断に傾いたというわけである。

この決定によって10月50bps・11月25bps・12月25bps・来年2月25bps・3月25bps・4月25bpsで最終着地点4.1%みたいな数値を先物インプライド金利は織り込んでいたのが、10月25bpsだったことから11月25bpsやって以降はせいぜいあと四半期毎に3回やって最終着地点は3.6%というところまで一気に金利織り込みが剥落した。
この剥落分がストレートにオーストラリアの株価に反映され、昨日の米国株上昇分に加わる形でオーストラリアの株価は3.75%という形になった。
国債金利もブルスティープの形で金利低下しており、中長期ゾーンは概ね3.5%近辺に金利が集まってきている。

とにもかくにもこれまで金融引き締めの先頭を走って来た先進国群の中で金融引き締めペースを市場予想比で緩める国が出てきて、ようやく中央銀行が現状発している先行き金融政策のメッセージに市場予想が寄せていく形で適正化される形となった。
ただ、これは変な外的インフレが低い+賃金インフレがさほど大きくないオーストラリアだからという話であり、各国によって多少ペース変化は異なることに注意が必要だ。
 
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対照的な様相となったECBとRBAの金融政策決定会合

ECB理事会後のラガルド総裁発言要旨

国によって金融引き締め環境にばらつきが生じ始めた。

今週は欧州ECBの金融政策決定会合とオーストラリアRBAの金融政策決定会合の2つがあったが、見てみると随分対照的な内容となった。

欧州ECBの金融政策決定会合では75bpsの利上げとなり、先行き金融政策についても複数回の大幅利上げが必要と示唆したため、次回もう一回75bps、その後もこれまで示していた中立金利1.5%を大幅に超える形で政策金利が引き上げられ、さらに高い金利水準で長引きそうだという形になった。
本人達はリオープンに伴う経済活動の活発化・雇用は依然として非常に堅調といった言い方をするものの、エネルギーコスト上昇でグローバルに見ても非常に高いインフレ率の水準になっていることから今回の金融引き締めに至ったと説明。
方々から中立金利はとか色々つっこまれていたが、データ次第とにやにやしながら応える感じで、何にやにやしとんねんとなんともECBの意味不明さが露骨に出る内容となった。
結局欧州は異常なエネルギー価格の高騰というファクターが大きいしラガルド氏も米国はデマンドプッシュ型インフレだが欧州は外的要因インフレが大きいと言っているにも関わらず米国同様に75bps利上げするといった発言と行動が完全に矛盾した金融政策となってきている。

一方でオーストラリアの中銀であるRBAについては明らかにハト派的な雰囲気が出てきている。

【参考ニュース】
豪中銀、今後利上げ減速も 最終的な金利水準はデータ次第=総裁

まだ50bps利上げをする余地は残しつつもスピーチの頭から利上げペースの落ち着きを示唆するような発言をしており、利上げピークが見え始めるような内容となった。
QTに関してもやるつもりはないと否定し、さらに中立金利に近づきつつあることも示唆され、住宅の落ち込みも他の先進国より大きいことから次回決定会合ではそれなりに25bpsに利上げ幅を縮める可能性が出てきており、明確に金融引き締め速度が緩み始める観測が出ている。
これを受けて豪州国債金利は金利上昇が鈍りつつある。

【オーストラリア10年国債金利のチャート】
タイトルなし


中国も発表されたインフレ率は2%ちょっととデフレ傾向鮮明になっており、既にアジア圏はインフレピークアウトが見えている。

米国もインフレピークアウトが見え始めていることを考慮すると以上から金融引き締め度合いは欧州>米国>アジアというのが見えてきており、為替についてドル高一辺倒はこの辺までではないかと考え始めている。
あと欧州株はこれのせいで他の先進国株にはビハインドする可能性が高いだろう。

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カナダの量的金融緩和縮小は大国では当てはまらず

Canada scales back bond purchases and raises growth forecast

ノイズだとは思うけど、一応頭には入れておきたい。

ここにきてカナダ中銀が量的金融緩和縮小をしてきている。
理由としては足下のインフレ率と経済成長率の見通しが改善したことによると発表している。
ちょっと個人的にはカナダの状況を負うところまではカバーしていないので報道ベースのところを見てのところなので、本当に調べたい方は中銀声明文を読むべきだろう。
問題はこの流れは先進国全体の話なのか、それともカナダだけの特殊な話なのかである。

カナダの場合、隣国米国財政の規模感を比べるとカナダの財政はゴミみたいな数値である。
なのでカナダの景気にとって自国財政支出よりも米国財政支出のインパクトの方がよっぽど大きい。
特に今回みたいに米国が意味不明な財政拡張政策を取っている時はますますそのインパクトは考慮すべきところだろう。
なので米国拡張政策が続き、カナダのGDP成長率にプラス効果が続くのであれば確かに量的金融緩和プログラムの縮小は自分達がコントロールできる範囲の中では妥当な判断だろう。

ただこの報道を見ると本当にこの流れがすぐに欧米先進国の金融政策トレンドになるかどうかは微妙だ。
EUではECBが先月量的金融緩和については早期撤退はないと主張したばかりである。
(これはリーマンショック後に早すぎた金融緩和の撤収の反省もあるだろうけど)

なので自分の頭の中では米国は未だ

米国財政拡張策の終了→FRBによる量的金融緩和の縮小

というのが基本的な流れであるという予想は個人的には変更しなくてよいと思っている。

特に今回のような大きな経済変動においてGDP絶対金額がそこまで大きくない国の量的金融緩和はどうでもいいのだが、大国の量的金融緩和となると一歩間違えるだけで大惨事になりかねないことを考えるとFRBとECBは相当慎重を期した金融緩和撤収になると思われる。
そのためには、まず市場でゆっくりと量的金融緩和縮小を時間をかけて織り込ませていき様子を見ながら行わなければいけない。
公開されているシャドーレートの数値を見ていけば、おそらく量的金融緩和の縮小正式発表前にはまずこのシャドーレートの深掘りが止まるはずなので、それを見てから量的金融緩和縮小の心配をすればよいと思っているので、とりあえずはカナダの量的金融緩和縮小はあくまでノイズだと思っている。

<シャドーレート参考サイト>
https://muragoeinvest.com/ustmarket

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