村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

セクター別動向

マイクロストラテジーとビットコインの花見酒的な関係

マイクロストラテジー時価総額が米国トップ100に、ビットコイン史上最高値更新受け

花見酒がどこまで通用するのか。

大統領選以降ビットコインが上昇しているが、ビットコインが上昇しているだけでなく、仮想通貨関連銘柄も上昇しており、その中でもマイクロストラテジーの株価上昇が注目されていたりする。

【ビットコインのチャート】
タイトルなし

【MSTRの株価チャート】
タイトルなし


自分は気持ち悪くなって大統領選前に全部うっぱらってしまい、個人的にはもう少し売るタイミング後ろであったなあという反省があるものの、この仮想通貨バブルについては上記を見ているといよいよ危ないステージに入り始めたと考え始めているので、今回それについてまとめていきたい。

まず、仮想通貨のここ数年の値動きから振り返りたい。
2022年後半からのビットコインの暴落~反発は、FTXの破綻懸念に伴ってFTXが保有している仮想通貨が強制投げ売りさせられている中で、さらに下落ヘッジのために先物やプットオプション買いなどのポジションが急増したことによる本来の実力以上に下押しされたいたところから、実際にFTXが破綻したところから悪材料が全て出尽くしたことからこうしたヘッジポジションが次々とアンワインドされていく形で促進され、その後は反発上昇が継続していった。
この時はマイクロストラテジーなどの株はさほど上昇せず、ビットコインの上昇も実力に対して過小評価されていた分の是正であったと思っており、健全な上昇だったと言えるだろう。
(ちなみにビットコインの実力というのはマネーロンダリング需要のことである)

しかし様相が異なり始めたのは2024年頭からである。
2024年頭からビットコインの上昇だけでなく、急激にマイクロストラテジーなどのビットコインを闇雲に買っている企業の株価も上昇し始めたのである。
これは何がきっかけであったのだろうかと考えると、下記ニュースがきっかけであったと思う。

【参考ニュース】
マイクロストラテジーが2回目の起債、ビットコイン追加購入で

ようはマイクロストラテジーが資金調達してビットコインを買い、ビットコインが上昇したのでマイクロストラテジーの株価が上昇したという構図なのである。
この時はシニア債であり、借金であったわけであるが、冒頭のリンク記事ではマイクロストラテジーは転換社債によって資金調達をしている。
この転換社債で調達された資金はビットコインにぶち込まれるわけで、これがビットコインを上昇させ、さらにマイクロストラテジーの株価を押し上げるという要因になるわけである。

ようは現在のビットコインとビットコイン関連株は花見酒のような関係になっているのである。
マイクロストラテジーがビットコインを買い、ビットコインが上昇することによってマイクロストラテジーの株価が上がり、この株価上昇を利用して転換社債にて資金を調達し、その資金をまたビットコインにつぎ込むというループをさせている。
さらにコールオプション買いでマイクロストラテジーの株価を吊り上げる動きが見られた。
これはやわらかい言い方をすれば花見酒であるが、悪い言い方をすればポンジスキームである。
これはもはや健全とは言い難い状況であり、下記過去記事のようなモラルハザードとも言える展開に入り始めているだろうと思う。

【過去参考記事】
熱狂的バブル相場の天井を捉えるために見るべきモラルハザード・不正行為とは?

そして実際にこの熱狂の熱に浮かされて急に飛びついてしまった人達も散見される危険地帯になりはじめている。



この花見酒的熱狂はいつまで続くかわからないので、上昇目途がどの辺かは非常に読みづらいが、少なくともチキンレース入りしたことだけは確かであり、その辺を念頭に入れながらビットコイン・仮想通貨関連株については参戦するのか撤退するのかを意識して勝負する必要性があるだろう。
 
日々金融市場で思ったことや金融データをつぶやいている村越誠のツイッターはこちらのリンクをクリック
 

DRホートンの決算から考える米国経済の先行き

D.R. Horton Stock Tumbles as Q4 Results, 2025 Outlook Disappoint

もう今の物件価格と金利水準だと家買えるやつ残ってないんでは?

企業決算シーズンということもあり、順繰りに決算に異変がないかをバラバラと見ている中で、一つ気になったのが米国戸建て分譲大手のDRホートンの決算であったので、まとめていきたい。

DRホートンの決算を見ると前年同月比で売上・利益ともに減少する減収減益となっており、モーゲージレートの高さと物件の高さや可処分所得の少なさがネックとなって住宅販売動向があまり芳しくない状態になっている。
単に前年同月比でマイナスという話だけでなく、市場予想を下回っていた数値として、一般的にはなるべく米国企業はアナリストを裏切らないために保守的な予想を出すわけだが、それさえも下回っている数値として、実際に状況は悪いということがうかがえる。
実際に決算発表後は大きめに株価が下落していることもその証左といえるだろう。

【DRホートンの株価チャート】
タイトルなし


アメリカの場合住宅を購入するという行為は、日本人が住宅を購入する時のような賃貸と購入どちらの方が得かみたいな考え方はなく、どちらかというと賃貸自体が浪費であり、節約するために住宅を購入するという考え方が非常に強い。
実際にアメリカではリーマンショックを除けば基本的には住宅価格は上昇を継続しているわけだし、世界の中でも安定したインフレが続いているアメリカでは家賃も引き上げられるので、住宅を購入する方が様々な面で節約になるし、いざとなれば売却すればどうにでもなるだろという完済なにそれおいしいのという考え方であり、これが常にアメリカ人の生活の中で根強い住宅ニーズを生み出している。

そうした考え方を持っているからこそ、この高金利状態でもアメリカ人は住宅を購入し続けていたわけであり、中古がないから新築を買おうという流れでDRホートンなどのデベロッパーは恩恵を受けていた。
またデベロッパー側も単に手をこまぬいていたわけではなく、以前の記事でも書いた通り、1-2バイダウンといって、1~2年間はデベロッパー側が1~2%の住宅ローン分を払うみたいなインセンティブをつけてニーズの掘り起こしを行っていた。
高金利でも1~2年内に金利が下がり始めれば、住宅購入者は借り換えをしてモーゲージレートを下げることができるので、過去2年ぐらいはそういった考え方と買い方をしていたと思われる。

しかし、そうした状態が2年以上続いていく中で、中々モーゲージレートは下がらず、未だ6%ある状態が続いてしまった。
金利が一向に下がらないので、今1-2バイダウンで住宅が買える層というのはかなり掘り尽くしてしまい、過剰貯蓄もなくなってクレカリボ払いも限界が来ている中、住宅ローンにおける審査を潜り抜けられる人が少なくなっているのではないかと思う。
そしてアメリカ経済にとっても最大のエンジンというのはこの住宅にあるわけで、それを考えればいよいよ米国景気の鈍化は目の前に迫っていると考えるのが自然ではないかと思っている。

しかし、こう書くと早とちりする人はすぐ金融危機だの株価大暴落だのと考えたりするが、DRホートンの決算コールを聞く限りそんなことは現段階ではないなと下記過去記事の考え方を理解すればすぐわかる話であると思うので、せいぜいそれなりの調整ぐらいだし、そこは買うべき押し目だろうと考えるぐらいで良いと思う。

【過去参考記事】
景気のハードランディングはどのように発生するのか?米国景気はハードランディングするのか?
 
日々金融市場で思ったことや金融データをつぶやいている村越誠のツイッターはこちらのリンクをクリック

米国株の決算早い組の決算発表をばーっと見ていった感想

書きなぐり的にメモ。

ここまで米国株で決算早い組が決算を出してきているので、目立つトピックのところを所感としてまとめてみました。

・米銀決算について
米銀決算はとにかく投資銀行部門が悪いの一言に尽きる。
米国でのIPO・株式交換によるM&A・債券発行がストップしていて、実質的にプライマリー市場がフリーズしていることから投資銀行部門が稼げる案件が軒並み駄目になっており、これが決算の足を引っ張るのはプライマリー市場がフリーズしていた時点で市場参加者は皆織り込んでいっていたので、改めて決算が出たところで特段驚きはなく、今がほぼ最悪ということを考えれば、回復すればアップサイドがある的な考え方もあるだろう。
不良債権向け引当金については、単なる正常化範囲程度の積み増ししかしていないので、貸出のところで現状大きな問題が起きているというわけではない。
もちろんここから米国景気がハードランディングするというなら話は別だが、ソフトランディングなら投資銀行部門も案件復活で業績回復も見込みやすくなるだろうと思えた。

・台湾セミコンダクター(TSMC)の決算について
半導体需給についてはかなりものによるという表現が強いように思えた。
現在余っていて厳しいのはいわゆるPC・スマホ向け半導体で特にメモリはマイクロンやSK Hynixが投資削減を発表していることを考えてもリモートワーク特需の消滅で余剰感が出ていることは周知の事実で、TSMC決算でもその点は触れられていた。
一方でデータセンター向けは引き続き強い需要があるという話となっており、半導体は全体で見ると悪化しつつあるという話は合っているが、比較的データセンター向けが堅調なことを考えれば、そこまでIT全体に対して悲観的になることはないだろうと思っている。

・ジョンソンアンドジョンソンの決算について
ドル高が業績に影響が出る範囲だというのが言われ始めているが、JNJではドル高が影響しているといった話が明らかになった。
ただし、ドル高以外については逆に悪影響範囲はないという雰囲気が出ており、ドル高さえ是正されればすべて解決するという見立てが出てきているように思う。

・ネットフリックスの決算について
ネットフリックスはこの2四半期はサブスクライブ数が予想に届いていないということでめちゃめちゃな売られ方をしていった。
これによってPER60倍から18倍ぐらいに叩き売られたわけだが、そこまで劇的にEPSは変わっていないですねえということで、PER18倍ならバリュー株的にはええやろという話が出ているのだと思う。
加えて下記の投げ売りパターンの一つに該当する形になっていることから、いやいや加入者数減ってるのになんで株価上昇すんねんという話は、まあ売られすぎと言われればそれまででしょという話だと思う。

【過去参考記事】
どのようにして株式相場で投げ売りされていると判断すべきか注目すべき3つのポイント

概して言えば、ここまで出てきた米国株決算で波乱含みのものはなかったと言えるだろう。
ネットフリックスなどもう雰囲気悪いと見られている銘柄についてはPERが既にグロースじゃなくバリューの領域にまで下がったことから、ちょっとやそっとの悪さではもうこれ以上下がりようないっすわというレベルになったと思う。
景気がソフトランディング着地と見るなら、比較的エントリーしやすい環境にあるのではないかと思う。

 2000円相当のビットコインがもらえるキャンペーン開催中 コインチェック

シェールガスオイル投資からPEが撤退したため開発は再開されず

US oil drillers ‘dying on the vine’ as PE flight prompts funding drought

そういうことだったのねと。

原油価格はWTIベースで既に60USDに達しているということもあり、すでにシェールガスは損益分岐点より上の価格で原油価格を販売できるはずなのに、ベーカーヒューズのリグカウントを見ていると戻りが鈍いのが見えていた。

<ベーカーヒューズ水平リグ稼働数>
タイトルなし

<出所元>
https://muragoeinvest.com/oil

これはなんでだろうと思っていたが、上記FTの記事でようやく理由がわかった次第だ。

シェールガス開発勢は新興勢力が多く、手元資金がない中でプライベートエクイティファンドからの出資と銀行からの借り入れによって開発資金を迅速に確保し、拡大を進めていた。
しかし2016年大暴落以降はまず銀行が融資でそこそこダメージを受けたことから、手を引き始めた。
しかし上記FT記事を見るとプライベートエクイティファンドは手を引かず、粘り強く資金の拠出を継続していた。
しかし、プライベートエクイティファンドもコロナウィルスによる原油価格暴落でついにバンザイをし、一気にシェールガスから手を引くことになったとのことだ。
上場すればワンチャンイグジットということでだいぶ粘っていたのだが、ESGでシェールガスも叩かれる例が増えてきたということもあり上場イグジットも難しくなり、大手原油開発業者も何度も繰り返し発生する暴落で買収どころの話でなくなってしまったため、ここで2020年で夢破れるという形になった次第だ。
2021年になって予想外に原油価格は劇的な回復を遂げたが、それでも完全に資金の出し手がいなくなったことから、開発したくても誰も資金を融通してくれず、開発資金を集めることができないという状態だということだ。

これを考慮すると米国で再度プライベートエクイティファンドや銀行が資金の融通を行わない限りは損益分岐点以上の原油価格になったとしても、開発の資金を得ることができずすぐには生産の開始をすることはないだろう。
足元でサウジアラビアがここまで比較的原油価格が回復してきたのに減産維持と意固地になっていたところからやや減産緩和に転じてきたのは、この情報をいち早く掴んでいたからではないかと思う。

ということでプライベートエクイティファンドと銀行が再びシェールガス勢に資金を融通するまでは想像よりも堅調な原油価格が続きそうな雰囲気がする。
急速に価格を切り上げながら上昇するわけではないと思うが、不思議と底値が固いみたいな動きになるのではなかろうか。
あとは米国の財政拡張策がいつまで続くか次第だろう。
 
記事検索
アクセスカウンター
  • 累計:

プロフィール

村越誠

投資に関して気づいたことのメモをしていく。 ご連絡の取りたい方は、makoto.muragoe★gmail.comまで(★を@に変換してください)
ツイッターで更新情報配信