村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

地政学

ガザ紛争は実質的にハマス側の大敗で停戦

イスラエルとハマス、ガザ停戦で合意 まず人質33人解放

実質的にハマスの大敗。

上記ニュース記事の通り、ガザ紛争でずーっともめていたイスラエルとハマスの間で停戦合意がなされたということで、これについて今回はまとめていって評価をしたいと思う。

ガザ紛争自体は長い紛争の歴史とイスラエルに対するガザ地区の不満と昨今のアラブ諸国の情勢によって生じたものだと個人的には認識している。

当初ハマスの狙いは周りのアラブ諸国を巻き込んで、自分の立ち位置を明確化することにあった。
特にサウジアラビアをはじめ、アラブ諸国がイスラエルとの関係を米国の仲介のもと改善しようとしており、実際に関係改善してしまった場合は取り残されるという危機感があり、丁半博打に打って出たわけである。
しかし、これに対してアラブ諸国は冷淡であった。
サウジアラビアなどは一応口では色々いうが、特段ハマスに協力してくれることはなかった。
そして誤算としてイランの協力も非常に薄く、しかも途中からイスラエルがヒズボラにも攻撃をしかけたことにより、ハマスの支援どころの話ではなくなってしまった。
イランもイランで、ロシアがウクライナ戦争にかかりきりになってしまい、支援してくれるどころか武器をせびる頼りない存在になってしまい、表立ってイスラエル・米国と真っ向勝負する体力もなかった。
当初このガザ紛争は米国に複数の地域での戦線を作る非常に厄介な問題と表現する報道も多かったが、別に苦しいのは米国だけでなく、関係者みんながギリギリの状態だったりするわけである。
さらに中国も口では平和の使者(棒)みたいなかっこいいこというが、実際は何もやってくれないし、そもそも国内経済がズタボロでこれまでお得意の金満外交もできない状態でクソの役にも立たない状態であった。

そういった中で上記記事の通り、米国・エジプト・カタールの仲介の下でハマスは人質解放・イスラエルは停戦とパレスチナ囚人の解放を条件に停戦合意となった。
しかし、ニュースを見ていると具体的にパレスチナ囚人の解放人数が書かれておらず、これは下手するとイスラエル側は釣り合わない程度のごく少数のどうでもいい囚人だけ解放してお茶を濁して終わりにみたいになる可能性がある。

そうなると、結局ハマスの作戦は単に自滅したに過ぎないあまりにも杜撰で無計画な作戦だったという評価で、ガザに住んでいる人から見れば一体ハマスは何のために今回の作戦を決行したのだろうかとなるかもしれない。
まあ今回の停戦合意でハマスの存在感は大きく低下したので、グローバル市場から見れば既にどうでもいい存在に成り下がった。

また、これにてこれまで中東情勢混乱でリスクオフうんぬんとか言われてたりしていたが、結局本当の意味で市場に効果があったのはハマスの襲撃から数日だけで、その後はマーケットからはほぼ完全に無視されていたというどうでもいい材料でしたねという見方で終わったわけである。
イスラエルの通貨であるシュケルの動向も安定化しており、あれだけ株式市場の不安を煽る材料だったものは材料として完全に終了したのである。

【USDILSのチャート】
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シリアのアサド政権崩壊後の前途多難性について思うこと

【デスク解説】シリア アサド政権“事実上崩壊”なぜ?今後は?

独裁政権が倒れただけで国が発展するのであれば苦労しない。

ここ数日はこれまで多種多様な利害関係を持った組織が互いに武力衝突する形でずっと戦争が続いていたシリアにおいて、反政府組織が一気に拡大していき、アサド氏がロシアに逃亡したことにより、アサド独裁体制は瓦解した。
ニュースでは独裁政権の終了について好意的に報じる方向も多いが、個人的にはこれはこれでかなり前途多難であり、そう簡単に物事が進むのであれば苦労はしないと思い、シリアについては

独裁政権というのは独裁政権なりの成立理由があったりする。
大体は地理的な理由と民族的な理由が混ざり合うことによって、独裁政権以外では各カウンターパーティーの利害関係が調整できないために、国が結局分裂したままになってしまい、自国民がこんな最悪な状況であれば独裁政権の方がマシだと思うことによって成立する。
しかし、独裁政権は独裁政権で最初の方が比較的真面目に政策を実行するが、世代が進むにつれ自分の私服を肥やすことに一生懸命になったり、自分の地位を守るために利害調整することを放棄して一気に状況が悪化することによって崩壊するというのが常であり、最終的に暴力でひっくり返されるというのが繰り返されている。
結局独裁政権は必要悪として誕生するが、そこにどこかのタイミングで質の低い人間を就任することによって腐敗し、最終的には倒されるという文字面だけ見ると人間の性悪説を証明するかのようなムーブが歴史上何度も繰り返されている。

さて今回のシリアではアサド政権を支援していたロシア・ヒズボラが自分のことで精いっぱいになってしまい、支援が回らなくなり、そこを米国などが支援している反政府組織が間隙をついてアサド政権を打倒して新政権を樹立するという方向に動いている。
しかし、難しいのはこの反政府組織がイスラム過激派であることである。
世界を見渡すとイスラム教を強烈に推進する組織は基本的に独裁国家になっていく。
マレーシアやインドネシアは一応メインがイスラム教であるが、あそこらへんのイスラム教は非常にゆるゆるであり、普通のショッピングモールにいけばとんかつ屋があったりするし、イスラム教でない人にイスラム教を強制することも基本的にはないため、民主主義国家として体裁を保てている。
しかしイスラム教を強烈に推進することは、自分のところの信義以外は認めないといっていることとほぼ同義であり、部族内のルールを強制するのである。
しかし、民主主義というのはこういう信義の違いについて妥協を重ねて進めるというシステムであるため、決定的に過激派イスラムと相性が悪い。

そのため、最初に民主主義国家をめざそうとしたり、これまで抑圧されていた人達の解放を新政権は目指すのだが、途中で利害関係の調整がスムーズにいかないがために徐々に国内治安が不安定になり、最終的に新しい実質独裁政権が誕生するという歴史の繰り返しに過ぎないオチになったりする。

なので、今回のシリア・アサド政権の崩壊はロシア・イランの支援組織が自分のところが手一杯になり、これまで面倒見てきた地域の面倒が見られなくなってきていることを示しているものという評価に留めるべきだろうと思う。
実際ロシアは政策金利を21%にまで引き上げているが対ドルで下落が止まっておらず、経済的な追い詰められ方は進んでいるというのが浸透しつつある。

【USDRUBのチャート】
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アメリカはアメリカで世界の警察官の負担が大きくどうにかバランス取れたものにしたいとして縮小させるとしてアメリカの影響力は落ちつつあるという評価もあるが、これに対抗している国家は国家で正直言ってギリギリで回っているに過ぎなかったりするため、はっきり言えばどっちもどっち的な言い方が正しいように思う。

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単なる茶番出来レースとなったイスラエルのイランへの報復攻撃

イスラエルがイランに報復 軍事施設を標的―応酬続けば中東情勢悪化

出来レース茶番に落ち着きました。

日曜日にイスラエルがイランへの報復攻撃を実施したとして、これについて思ったことと市場の反応をまとめていきたい。

中東情勢についてはハマスがイスラエルへテロを行ったことからイスラエル周辺が非常に流動的になっていて、イスラエル側はヒズボラにまで攻撃をしかける大胆行動に出ていた。
これに対してヒズボラのバックにいるイラン側も建前上国内世論や政権トップの間で不満がもたれないように一定程度の報復攻撃をする必要性があり、これがイスラエルとイランの間での報復攻撃合戦のような雰囲気になっていた。

そしてこの前の日曜日にイスラエルがイランへの報復攻撃を実施したという背景になる。
ニュースの見出し自体はセンセーショナルではあるが、きちんと内容を精査すると、今回のイスラエルの報復攻撃はアメリカ政府の制止姿勢に対してほぼ満額回答の内容となり、相当自制した報復攻撃となったなと感じた。
まず攻撃対象が核施設でも石油関連施設でもなかったわけで、この時点でイランに決定的なダメージを与えられる施設への攻撃ではなかったし、ミサイル製造工場への攻撃というのも、はっきり言えば自称ミサイル製造工場と言える話でもあり、人的被害も大したことがなかった。
イスラエル側からは精密攻撃と表現していることからも、非常に限定した攻撃であることを強調した内容となった。
はっきり言えば、これはほぼ軍事的意味合いを持たない攻撃だったと言える内容である。

しかも攻撃が日曜日に行われたということも非常に大きなポイントである。
日曜日ということは世界中で市場は閉まっている最中であり、イスラエルの報復攻撃が茶番であることをしっかりと市場に織り込ませることができる猶予時間ができる。
また、日曜日だからミサイル製造工場にも人がいないという論理が成り立つわけで、人的被害がない中で、これでイラン側も一旦はこれで報復のやり合いはおさめようという理屈が成り立つわけである。

以上を勘案するとイスラエルのイランへの報復攻撃はほぼアメリカ政府の指図通りの内容になったと言えるだろう。
実際に月曜日市場が開いた時点で供給途絶懸念が後退したことから原油先物価格が大きく下落してスタートしたことからも、ニュース記事見出しは中東情勢悪化懸念みたいな文章となっているが、実際は金融市場はほっと一安心という内容となったことをストレートに反映した内容となった。

【WTI原油のチャート】
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イラン側もアメリカ政府から伝達を受けているのか、この攻撃に対してはすぐには報復しないというニュアンスの発言、ようは一応口だけは言っておくけど今日はこれぐらいにしといてやるという形で矛を収めたわけで、中東情勢については不安定な中でも一定の安定に戻ったと評価できそうだ。
 
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アメリカの脅迫的介入でイスラエルがイランへの過激報復を断念

イスラエル首相、イラン石油・核施設を攻撃しないと米に伝える-報道

さすがにアメリカが脅迫的に止めたと考えるのが妥当なように思う。

足下の原油価格は世界的な景気減速と中東情勢リスクが綱引きする形で上下していて、特にイスラエルのテンションの高さから原油は先物やコールオプションが買われる形で若干上に跳ねてきた。
特にイスラエル政府がイランの核関連施設や原油関連施設を爆撃するかもと発言してきたところで緊張感は非常に高まった。

そこにアメリカがちょっと待てと介入した。
これまでイスラエルはアメリカの制止についてかなりの部分を無視してヒズボラを攻撃していたりしていたので、イランの核関連施設や原油関連施設がマジで起こるのではないかという可能性を原油市場はうっすらと織り込んでいた。

しかし、いくらユダヤロビーが強力でイスラエル支援をやめられないという事情があっても、これについてはアメリカ政府はいくつか許容できない部分があった。
まず、イラン側からはこれまでの動きを見れば、イスラエルがイラン側への報復を止めればこちら側からは追加の報復はしないというシグナルが送られていた。
ハマスやヒズボラと違って、イランは人口が9000万人弱いる国であり、ここと戦争となればただでさえウクライナ-ロシア間の戦争があるのに、二正面作戦になるわけで、イラン側も戦争したくないというシグナルが送られているのにそれを無視する形でイスラエルが報復攻撃をイラン本土で行うのはアメリカ側にとってはリスクしかなくてリターンが全くない。

また原油関連施設を攻撃した場合にいたずらに原油価格を上昇させる要因になり、ただでさえ物価高・景気鈍化で貧困層の生活が厳しく、さらに大統領選挙前で世論の方向に非常に神経質になっているところで、原油価格が急騰した場合には民主党の選挙結果がひどいことになりかねない。

そういう事情を考えていくと、アメリカ側の今回のイスラエルとの交渉はこれまでとレベルが違う形での制止になったと考えるのが妥当だろう。
ユダヤロビーもイスラエル政府があまりにも暴走しすぎると困るという事情もあることを考えれば、ユダヤロビーの思惑含めで今回イスラエルにはいますぐイランへの報復攻撃を止めないと支援を停止するぞという脅しまで踏み切った可能性は高い。
イスラエルは結局アメリカの支援なしでは存続できない国なわけで、そこまで言われればさすがに右派強行のネタニヤフ氏でも手を引っ込めるしかなくなる。

というわけで、こうしてとりあえずイスラエルの過激報復攻撃リスクがほぼなくなったことから、原油価格急騰シナリオは再び空振りで終わりだなということで良いように思う。

【WTI原油価格のチャート】
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中東リスクはイスラエルにボールがある状態

イスラエル、レバノン空爆拡大-イラン報復に複数の選択肢

中東リスクじゃなくてイスラエルリスクという言い方が正しそう。

ここもと世界情勢では中東リスクというのがワイルドカードになっている。
ただし、一般的に中東リスクといった時にはイランというイメージがみんなあるわけで、確かにニュース報道ではイランがどういう行動をするのかというのが注目されているが、実際は中東リスクのボールはイスラエルにあることを今回はまとめていきたいと思う。

【WTI原油価格のチャート】
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ここまでイスラエルはハマスせん滅に動いていたところから、ヒズボラせん滅に向けてポケベル爆破や、実際にレバノン首都のベイルートを空爆したりと、これまでないほどイスラエルは事態をエスカレートさせており、これに対してイランが報復としてイスラエル北部にミサイル攻撃をしたわけである。

しかし、色々な言動・実際の行動を見ると、イランの行動はどちらかというと抑制的である。
わざわざなんども警告を重ねた上に、結局攻撃について事前に米国政府へ通知した可能性が高く、イスラエル側に人的被害が出ないようにかなり配慮した形でミサイル攻撃をしている。
ミサイル攻撃については見た目の攻撃のインパクトは大きいが、上記を考慮するとポーズ的・国内アピール向けの意図が非常に大きいものとなっている。
イランとしても確かに自分の傘下組織が攻撃されるのは非常に不愉快であるものの、イラン国内が窮乏しているわけで、国民もイラン外のことに対してどこまで首をつっこむのかということに対してあまり熱心ではない。
さらにイランは現在後ろ盾になっていたロシアが全く役立たずになっており、さらに他のアラブ諸国も極めて冷淡な目で見ているだけであり、イランがアラブ諸国の中でも孤立していることが如実に出ており、イラン側はなるべく事を荒立てたくないという姿勢が明らかに強い。

一方、どちらかというと危ないのはイスラエル側である。
ネタニヤフ政権の右翼的な動きが強まっており、自分達の存亡がかかっているというお題目の下に、とにかく対立しており、イスラエルに隣接している組織にかつてないほどの攻撃をしかけているわけである。
特にハマスまではともかく、レバノンのヒズボラにまで攻撃範囲を拡大し、実際に首都ベイルートに空爆とかをしているわけで、しかも国民はそれが正しいということで極右的動きをしている政権を支持しているわけで、この暴走は止まりづらい状態になっている。
さらにネタニヤフ自体がアメリカ政府の言うことを聞かず、俺らを切ることはできないだろという方向にベットして動いていることも非常に事態をややこしくしている状態である。

以上を鑑みると、中東リスクのボールはイランではなくイスラエルにある状態で、イランよりイスラエルの動向に注目すべき状況となっていると感じる。

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