村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

中国

お互いギリギリな状態での暫定合意になった米中関税交渉

米中が双方の関税115%引き下げで合意 90日間、共同声明発表

お互いギリギリでの勝負。

週末にトランプが「株を買え」とか言ってて、週末の米中関税交渉で何か進展させるんかいなと思っていたら、なんとこれまで言葉遊び的にどちらの関税が最強かみたいなクソバトルをしていたところから、実務的にちゃんと交渉期間儲けましょうよと言うことで、現実的な関税数値まで一旦ほぼ全ての分野を戻して90日間交渉しようという話になった。

この展開に至った原因としては米国側は中間選挙に向けての余裕のなさとトランプの興味が関税政策から薄れてきたことだろう。
あまりにも実務からかけ離れたクソみたいな関税政策で国内供給状況は大混乱に陥り、このまま駆け込みで輸入していた在庫がなくなったら、関税分を全部消費者に転嫁するしかないという状態が迫りつつある中で、FOXニュースでさえ擁護できない関税政策のあまりの不人気状態から、早期のディール成立方向に動くしかないとベッセント氏を中心に動く形になった。
また、トランプ自体も関税政策ではもはや人気取りは難しいと判断したのか、リベレーションデイまではトランプ・ナバロ・ラトニックの3者で秘密裏に決めてぶち上げたのが、最近ではインパクトのある数値は口にするが、その検討を関係省庁に丸投げするような無責任発言が目立ち、関係省庁もそんな大混乱招くようなことはやんねーよ馬鹿となるに決まっている形でトランプの興味は既に薄れていっていることから、ベッセント氏がひーひー言いながら取りまとめている感じになっている。

一方で中国は中国で、一部の新中派が言うよりは余裕がない。
足下で中国は過去体験したことのない深刻な不況に陥っており、日本がかつて苦しんだデフレ経済ド真ん中状態になっている上に、容易に解消できない事態になっている。
個人的には中国経済は金融危機に発展していないだけで、経済状況は相当終わっているという評価であることは、これまでも下記過去記事のように言及してきた。

【過去参考記事】
中国経済の低成長を招いた原因と再成長に必要な要素についての考察

これから中国が長いデフレに苦しむ理由

そのため、米国への輸出貿易が途絶えた場合は即失業問題の深刻化となり、社会不安の深刻さが加速しかねない一歩手前に陥っている。
ここで意地張って唯一と言える関税交渉機会を逃したら、もう習近平に経済は任せられないという機運が生まれかねないところまで緊張感は高まっていたことが、中国も早い段階で妥協した要因だろうと思われる。

そういうこともあり、お互いが既に我慢できるスレスレの中にいる中で、もうここしか交渉できるタイミングはないというところでとりあえず交渉期間を設けてどうにか落としどころを見つけようという当局者間の努力で、暫定関税緩和合意になったわけである。

結局、米国側はトランプがもうちょっと思慮深く関税政策やれればこんなことにならんかったんではという話と同時に、中国側も米国から完全な妥協を引き出せる程は国内に余裕がないことが明らかになり、どちらもかなりの痛み分け的な展開のクソ展開となったわけである。
そして、この過程で死んだのはレバかけて調子こいていた人達で、もうこの辺まで株価が戻ると現物しかやっていない組はほぼ無傷というレベルにまで戻っているわけで、レバをかけた取引はよくよく工夫しないとダメなんだよねえということを痛感させる歴史的事件だったんじゃないかなと思う。
あとはリベレーションデイより下で間違って空売りした人達は一切助からないという展開だろうと思う。

【S&P500のチャート】
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複数年の景気刺激策にも関わらず中国のデフレは深刻化

中国CPI、2月は0.7%下落 昨年1月以来のマイナス

ノリとテンションでどこまでいけるのか?

ここもと中国株はDeepseek期待と中国政府の景気サポート策を好感して、香港株を中心に株価はそこそこ上昇して推移している。

【香港ハンセン指数のチャート】
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しかし、その裏で統計結果はより状況の深刻化を示している。
特に最大の問題は物価統計である。
去年の春節とのズレの影響もあるが、2月のCPIについて市場予想-0.4%に対して結果は-0.7%とデフレ具合はより深刻化している。
PPIも市場予想-2.1%に対して結果は-2.2%とPPIのマイナスは2年半連続となっていて、金融緩和と財政支出策を2022年からやっているわけだが、一切経済統計に効果が出ていないというのが現状だ。
結局中国経済の最大の問題は過剰供給体制にあり、それに対して需要が少なすぎるし、不動産バブル崩壊後に需要を盛り上げるだけのエンジンがやはり見つかっておらず、容易にデフレから脱却できていないということである。
これは下記過去記事で書いた通り、いかにデフレになっている経済を立て直すのが難しいかを如実に表しているものだと思う。

【過去参考記事】
なぜデフレをやっつけるのはインフレをやっつけるのより難しいのか?

そういった景気刺激策はほとんど効いていない中で、香港ハンセン指数と香港テック指数はDeepseek期待でテック銘柄が数多く入っていることもあり、ノリとテンションで上げているように見える。
しかし、このようなテック株が入っていない上に、無能が極まっている国営企業が中心の上海総合指数やCSI300は上値を追えていないのが現状である。
一応全人代で財政赤字目標対GDP比4%と拡張したが、たった1%と既存の延長線上の対策に過ぎず、こういったこともハイテクを含んでいない株価は上値を追えない状態となっている背景だろう。

【CSI300指数のチャート】
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さらに言えば、Deepseek期待も結局中国テックが国内需要で閉じ込められていることを考慮すると、中国景気自体の足腰がしっかりしていないといけないわけで、この上昇も基本的にこのデフレ深刻化を考えると持続性がどこまであるのかというのは相当疑問符だと思っている。

ワンチャン投資するとすればテックしかなく、それ以外の中国・香港株は相変わらず投資不適格であることには変わりないが、さらに問題はテック企業が儲かった場合に本当にその利益は習近平に収奪されないのかという話もあり、これらを投資すると短期はともかく中長期投資はやっぱりやりたくないというのが正直な感想だ。

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中国・香港株は世界の株価のしんがり

中国、株式市場安定化で年金投資など拡大へ-本土株は5日ぶり下落

中国・香港株が横ばいで推移してくれるのが一番心地よい。

当ブログではずっと中国・香港株については駄目だと書き続けてきており、経済の駄目さ加減も想定した通りの推移をしているが、そうした中でも当局のできる範囲での対策もあり、なんとか中国・香港株というのは横ばい程度をひーひー言いながら維持している状況である。

【香港ハンセン指数のチャート】
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多くの外国人投資家が割安なのか・景気対策はどうなのかとのたうち回ってポジション売買していたりするが、個人的にはそもそもこんな微妙な状態の市場でバタバタやっていること自体が滑稽でならないという感じで観察しているわけで、個人的には足下のファンダメンタルズでは一切中国・香港株には興味は持てないのだが、この横ばいで推移してくれるというのは米国株や日本株に投資する上では非常に良いことであり、そういった意味でこのままぐずぐずとした推移をしてくれることを期待しているので、それについて今回まとめていきたい。

現在世界の中で、もっともリスク資産にアゲインストな状態にあるのが中国・香港株である。
デフレだし、国は増税かましてるし、中国共産党は自分達の立ち位置を守るために国民から資産を収奪している状態である。
さらに政治も最悪で、現在の景気を改善させるような行動が全くとれない状況にある。
この辺の内容については下記過去記事を参照してもらいたい。

【過去参考記事】
中国経済の低成長を招いた原因と再成長に必要な要素についての考察

そして、その状態をなんとか維持するためにPBOCが必死に金融緩和しているというのが現在の中国経済の立ち位置であり、世界の金融政策のしんがりなわけで、だからこそ日銀が多少金融引き締めをしたところで世界の株価は崩れないという環境が生まれているのである(これは以前の記事にも書いてきたことであるが)

この中国・香港株は上がらずとも下がらずの横ばいを維持しているとは、個人的には非常に興味を持って観察している。
中国・香港株に投資している人には申し訳ないが、非常にこの状態が良いのである。
もし本格的に上昇してしまった場合はPBOCが勘違いしてい金融緩和の手綱を緩めてしまう可能性がある。
そうなれば、以前にも書いたが世界主要国の金融政策において最後尾にいる中央銀行が金融引き締めに転じてしまい、世界の株価は流動性が干上がるにつれて下落に転じてしまう。
一方で過度に中国・香港株が下落するのも良くない。
これは中国経済が現状維持さえ難しくなり、中国・香港株の下落に巻き込まれる形で世界の株価も場合によっては下落してしまう。
また場合によってはPBOCの金融緩和が間に合っていない証拠として、よりPBOCが強い金融緩和を求められる中で躊躇してしまい金融ショックを起こす可能性が生じてしまう。
この2つのケースが良くないのである。
特に中国・香港株が上昇するケースが一番よろしくない。

以上を踏まえると中国・香港株が横ばいで推移していることは、米国株や日本株に投資する上では非常に良い金融環境なのである。
中国・香港株が特に大きな変化を起こしていないのに、勝手にもう株価上昇しすぎだからという理由で米国株や日本株を売ってしまうのは悪手だろうと思っているので、粘り強いホールド姿勢を継続したいと思う。

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中国地方政府系不動産デベロッパーの万科のCEOが連行で全てが終了

China Vanke's CEO taken away by authorities, state media reports

斜め下の方向で終了。

これまで当ブログでは中国不動産デベロッパー大手で、シンセン政府傘下で一応地方政府系デベロッパーとして最大手クラスである万科(Vanke)についてデフォルトしそうという話を書いてきた。

【過去参考記事】

中国不動産大手の万科が理財商品の返済ができずデフォルト一直線コース

去年夏頃から借金の返済が難しくなりつつあり、もうデフォルトまでカウントダウンに入っていると考えていたが、なんとここでCEOが当局に連行されたという報道が入ってきた。
当局に連行=ゲームオーバーであり、これにて万科の命運は尽きたと言えるだろう。

【万科の株価チャート】
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これにて万科は実質的に破綻は決定したわけであるが、最悪なのはこの幕引きの仕方である。
単に破綻しただけならまだしもCEOを連行するというのは、つまり無駄なバブルを引き起こした挙句に借金返せずにデフォルトするような不動産会社のCEOは社会的に即刻処刑ということになる。
しかも、これは不動産会社に限定されない可能性が高いわけで、借金を返せないとすぐに連行されて社会的地位を失う可能性がある。
そして、現在中国社会は一度社会的地位を失うと二度と復活することができない状態にあるわけで、その恐怖に皆震え上がることになる。
特に中国では法律はあってないようなものなわけなので、連行された場合自分の身がどうなるか全くわからないので、その恐怖感は先進国での比ではないだろう。

そうなると次に起こることはなんだろうか?
皆なんとかして借金を返そうとするだろう。
つまり、デレバレッジが進むわけで、現在起こっている中国の景気低迷にさらに拍車をかけるものになるだろう。
また、借金を返すためであれば、自分より地位の低い人間なんてのはゴミ同然に扱うわけで、労働者の多くが搾取される対象になるだろう。
そうなれば、給料減からの さらなる消費減を招くわけで、これが経済に対して心理的に大幅な悪化を引き起こしかねない事件だろうと思う。

おそらくこれぐらいのことなら誰でも思いつくはずなのだが、実質小卒の習近平とそれにこびへつらう人達はそこまで頭が回らないわけで、短絡的にやらかしたやつをしょっぴけば全てがどうにかなるという方策でこうした方針を決めているのだと思う。
下記過去記事に書いたことをきちんと中国ができれば経済の再成長があるかもしれないが、結局変えられないまま時間を無下に使ってしまっているので、引き続き中国の景気回復なんてのは夢のまた夢と考えるべきだろうと思う。

【過去参考記事】
中国経済の低成長を招いた原因と再成長に必要な要素についての考察


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米国政府のテンセント軍事企業指定の深刻さを考える

米国防総省、テンセントとCATLを「軍事企業」に指定

結構相場へのインパクトは大きそう。

上記記事は米国政府が中国大手ネット企業のテンセントと電池製造大手のCATLを軍事企業に指定したというニュースであるが、ニュースの字面以上に実は投資的インパクトが大きいのでまとめていきたいと思う。

CATLは元々本土株でしか上場していないのでそこまで影響は大きくないが、テンセントの軍事企業指定というのは、グローバルに投資家に影響が大きい話になるのではないかと思っている。
なぜかというと軍事企業指定されると海外の機関投資家はアンチマネーロンダリングの観点から投資について強制売却を迫られる可能性があるからである。
昨今アンチマネーロンダリング規制というのは非常に厳しく、米国政府からそういった指定を受けた企業や国というのはいきなり米ドルのアクセスを断ち切られる可能性がある。
もし投資を続けた場合、アンチマネーロンダリングにかかわったとして、米国政府から厳しい罰を受ける可能性があり、海外機関投資家は本社コンプライアンス部から保有状態についてヒアリングされ、今後の対応策について協議をしなければいけなくなる。
場合によっては強制売却などの措置さえ行われる可能性があるのである。
株というのは常にフレッシュな資金が入ってくる必要性があるわけで、軍事企業指定によって海外投資家が一切新規で投資できなくなるということは

これが本当にバリュエーション激安企業ならともかく、テンセントはPER20倍近くある普通のバリュエーションの企業であり、しかも海外投資家の保有比率は非常に高い。
そのため、どちらかというと売り圧力が強まる可能性の方がずっと高いのである。
このことを察知してか、だったら今まとめて売っちゃった方がええやろという先回り売りが既に活発化しているし、そもそも中国株自体がオワコンになっている中でこれまで中々売る理由を見つけられていなかった投資家もこりゃあかんわという形で売りに入ってしまっているということだと思われる。

【テンセントの株価チャート】
タイトルなし

ただでさえ、一度中国政府の見掛け倒し金融政策と財政支出のテンションで株価上昇したあとにだらだら下げていたわけであるが、そこにとどめを刺す形で下落して全戻しを食らっているわけで、ファンダメンタルズもスマホゲームが認可されない・スマホゲームやる若者のお金がない・習近平からにらまれている・米国政府から軍事企業指定ということで、中国ネット企業は一切なにも支援なくだらだらファンダメンタルズが悪化し、株価も下がる展開が継続しそうである。

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