村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

為替

石破氏の日銀利上げ催促思惑はフェードアウト

石破茂首相「追加利上げ環境にない」 日銀植田総裁と面会

支持基盤が弱いんだから、とにかく軋轢起こさない形で当面動くだろう。

石破政権誕生以降、あれはどうだこれはどうだと色々憶測が働いている中で、特に注目されていたのが、石破氏は日銀の金融政策についてどう思っているか・どのような働きかけをしそうなのかというところにあった。
石破氏は安倍政権以降は外様だったということもあり、掲げるものとしてはどうしても反安倍政策的なものであり、それが反アベノミクス・日銀の金融引き締め催促というものにつながるのである。
そして、市場では高市氏ではなく石破氏が総裁選勝利ということで、日銀の金融引き締めペースが早まるという思惑で日本株やドル円はぐちゃぐちゃな動きとなっていた。

しかし、以前のブログで記載した通り、現在の石破陣営の層が薄い状態で、はたして過去を全否定するような政策を強行できるのだろうかと下記過去記事では書いてきた。

【過去参考記事】

石破政権でも岸田政権路線から大きな方針に変更はないと見る理由

また世論支持率なども報道で出始めているが、大体50%ぐらいのスタートということで、歴代政権と比べると低い位置からのスタートとなっている。
こういったことを考慮すると、石破氏は各派閥の意見を上手くバランス取りながら自政権の政策を実行していく必要性があるわけで、ますます過去を全否定する政策発動は難しいという結論になっていった。

そして石破氏と日銀・植田総裁が懇談会をした後にいの一番に石破氏が発言したこととして
「日銀が追加利上げをする環境にはないと個人的には考えている」
と発言したのである。

これは日銀・植田総裁も米国次第なんだから、我々が無理くり追加利上げする環境にはないというのを石破氏に伝え、石破氏も一旦マーケットの不安感を払しょくさせる必要性がありそうだということで、こういう発言に至ったのだと思う。
米国が景気減速しそうという中で、変に不安材料を残したまま推移させたくないというのが政権の正直なところだろう。
現在政権支持率は経済と防衛という2つに支えられている側面が大きいため、経済の方向性を無理やり曲げるようなことはしたくないわけである。

こういったことを反映してドル円は140円を底として146円台まで上昇し、当面はこの140-150円という範囲でうろちょろするだけで、上にも下にも攻め手に欠ける面白味に欠ける動きが次の米国利上げサイクルまで続くだろうと思われる。

【ドル円のチャート】
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円安・米国債金利上昇のバイアスから逃れられないエコノミスト達

【米金利とドル円の展望】円高進行の3つの理由/米金利と円相場の関係/リセッションは深刻化しない/大幅利下げ期待は過剰/1ドル160円へ/
↑Youtubeの動画に飛びます

大外しした見通しを修正できていない典型例。

上記はPivotの元JPM佐々木氏の為替見通しに関するインタビュー動画であるが、最近彼の見通しは本当にJPMにいたんかレベルで頓珍漢・バイアスに偏りすぎているものとなっている。
下記過去記事の時も以前の佐々木氏のインタビュー動画について、その見通しはおかしくないかと書いてきた。

【過去参考記事】

人間・現実を無視した経済・金融政策議論は限りなく暴論だと思う

この時は佐々木氏は米国は利下げナシだし来年末の利下げも後退する・日本個人が円を売りまくっている・為替介入は効かない・日銀は利上げで3%・株は上がると言いながらドル円は170円より上に円安になっていく形で日本円最大の危機と煽っていた。
しかし、当ブログでは書いてきた通り、実際は150~160円は単に投機筋がコールオプションで火遊びをしたことによるオーバーシュートであり、結局相場の動きに意味を求めすぎるがために、相場が極端な動きをすると極論を述べてしまう典型例となっている。
なおオプションを使った相場のオーバーシュートについて下記過去記事を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
株価が上にも下にも行き過ぎる現象をオプション市場から考察する

そして最新動画で、佐々木氏は前回見通りでドル円が170円より上に行くという見通しについて大外ししたことについて、ヘラヘラしながらまたそれっぽい解説をしているのである。

【ドル円のチャート】
タイトルなし


あれだけ日銀の金融緩和について批判していたくせに、今回の動画では平然とドル円は2年日米国債金利差で説明できると平然と述べているのである。
しかし一度ぶち上げた円安論を引っ込めることができずにおり、ドル円は再度160円にシナリオをサポートするために、米国のリセッションはほど遠いので、利下げはFRBの見通し程は多くないという米国景気堅調論を唱え始めたのである。

しかし、佐々木氏の分析はいわゆる見えている統計データを使うだけの米国景気堅調論であり、それは既にほとんどの市場参加者は意識していることである。
特にエコノミスト系はこれを論拠に米国利下げ回数については、これまで年内3回以下、中立金利についても3%より上という見方をする人が多い状況であった。
しかし、多くのエコノミストの見通しから外れる形でFRBは初手50bps利下げをかましてきているわけである。
特に佐々木氏は年内利上げなしを今年7月の動画でもベースシナリオとして置いている。
こうしたことを考えると、既に佐々木氏のような米国景気堅調論は実体経済に対してビハインドしていると考えるのが妥当だ。

そしてビハインドしている人の思考は、自分が考えていたシナリオを全部かなぐり捨てるまではずっとビハインドし続ける。
しかし、エコノミスト肌であればあるほど、自分がこれまで述べてきたシナリオと矛盾するために、その修正には時間がかかるのである。
そのため、記事上部の佐々木氏の解説を聞くと、シナリオは微修正に留まっているし、おそらくドル円ロングや米国債ショートを引きずっているプレーヤーの大半は同じ考え方だろうと思われる。

しかし、これはさらに追加でシナリオが崩れて、今度は円ロングコールオプション仕掛けられたり、米国債ロングのコールオプションで攻められた時点で木っ端みじんに崩れるものだろう。
そして、こういった人達はその時点で相場の動きに釣られてシナリオを変更するが、相場に釣られて極論から極論へ移行するだけで、こうした人達の発信が消えるまで相場は彼らが思う方向とは逆方向に動き続けるだろうと思う。

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人民元安コンセンサストレードにやや疑問

人民元キャリー取引に投資妙味の可能性、円バージョンで大打撃後も

色々情報集めると、アンワインドされる可能性高そう。

為替の世界というのは常に各プレイヤーのスケベ心が反映されるなんでもありの梁山泊の世界である。
そういった中で2022年以降は国によって金利差が大きくなったことから、金利差を狙ったキャリートレードというのが流行りとなった。
直近まではこのキャリートレードを行う調達通貨が円であったが、円高で粉々にその目論見が崩れて、他に使えそうな通貨はないかということで上記ニュース記事の通り人民元ショートを使ったトレードがいいのではないかというのが市場コンセンサスになっている。

しかし、ちょっと立ち止まって考えてほしい。
2022年以降の為替レートの動向において非常に重要となったのが実質金利という考えである。
振り返れば2022~2024年の主要通貨トレードはほとんど実質金利で説明できるものであり、だから実質金利がマイナスであった円をショートして一時期実質金利2%近くあったドルを買う流れが生じていたのである。
貿易収支・経常収支についてはほぼ脇役中の脇役で、よくニュース記事で日本の貿易赤字で円の価値が~とか言うが、だったらアメリカはもっと貿易赤字(しかも対GDP比で)が多いんだからその理論はどう考えても間違っているだろという理論を平然と後付け理由で解説したりするYoutube番組とかあってなんじゃそりゃみたいな展開になっていた。

まあその話は置いといて、では実質金利と考えた時、中国の実質金利はどうであろうか?
中国の2年国債金利は1.4%ぐらい、3年の国債金利は1.5%だ。
これに対して期待インフレはどうであろうか?
まず2024年の期待インフレは余裕の0%台前半だし、さらに来年とかも一応まだ市場では1.3%ぐらいのインフレ率になるのではと言われたりするが、おそらく実際の市場参加者の見方はもっと低い可能性がある。
そうなると、中国の実質金利は最低でも1%より高い位置にいるし、本当にデフレ懸念を織り込むのであれば期待インフレ0%で実質金利1.5%という話になりかねない。
一方で米国はこれまで実質金利2%を維持してきたわけだが、景気・インフレが落ちていく中で実質金利が徐々に低下していっている。
既にブレークイーブンから見る実質金利は2~5年のところは1%に近づきつつある。
つまり中国の実質金利は既に米国より高い可能性があるし、今後米国の実質金利は下がるわけだから、より中国の実質金利が相対的に高くなる可能性がある。

さらに当ブログではこれまで書いてきた通り、中国政府は様々なしがらみでバズーカ的な金融政策も財政政策も未だ打てていないし、多くのセルサイドが街角景気とか見る限りそこまで悪くないと言っており、それに騙される形で習近平自体がバズーカ景気刺激の必要性を感じておらず、まだすぐに実質金利を急激に押し下げるような政策は出てこないだろう。

そうなると、実質金利において中国>米国がより鮮明になるわけだが、その時為替レートは本当に人民元安になるのだろうか?
キャリートレードといっても、現在は中国国内は人民元負債の返済でキャッシュが必要となっているため、国外流出は意外とおとなしい。
そして外国人はシビアに実質金利を見ていく限り勝負において分が悪くなっている。

ここまで考えると人民元安トレードについて黄色信号どころか赤信号になりかねないという発想にたどり着く。
しかも実際に為替レートを見ると対米ドルで人民元高が進みつつあることから、状況証拠と実物証拠が揃っている。

【人民元(対米ドル)のチャート】
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そう考えると、あまり個人投資家には関係ない話ではあるが、機関投資家の世界においては人民元をキャリー通貨としてショートして他通貨をロングするというトレード自体は戦略的にアンワインドされる可能性が高いのではないかと考えるのが妥当ではないかと思う。

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ドル円は140円前後で定着しそうだが、瞬間風速の円高に注意

ヘッジファンド、円の一段高を予想-オプション市場で賭け拡大

目先の円高7合目付近っぽいような。

上記ニュースでは、つい数か月前まで円について全力ショートだとして攻め立てていたヘッジファンドが、米国-日本の実質金利差の縮小を背景に円ロング戦略を組み始めているという話である。
そして、その円ロング戦略の中心はオプションで組まれているということである。

具体的にオプションでどのような内訳で戦略で組んでいるかというのはなかなか推し量るのは難しいが、オプションで戦略を組んでいるということが重要である。
オプションで戦略を組んでいるということは、基本的には損失を限定させながらトレンドを取りたいという力学が強く働いているわけであり、市場参加者のスケベ心を反映している。
その辺については下記過去記事を読んでもらいたい。

【過去参考記事】
株価が上にも下にも行き過ぎる現象をオプション市場から考察する

そのため、個人的にはここまで急速なペースで進んできた円高については大分終了が見え始めたように思っている。

【ドル円のチャート】
タイトルなし


しかし、とはいえじゃあここでドル円はボトムかというと、そこはもう一段の円高を待つべき時だろうと思う。
ようやく円をオプションでロングしにいくというニュースが出たばかりであり、逆にドル円160円のところで間違ってロングしてしまい捕まっている素人がまだポジションを処分しきれていない可能性が時間幅を考えると十分にある状態である。
実際はドル円というよりは、他のクロス円で捕まっているケースの方が多そうだが、少なくとも高値しこりのポジションが全部消えていないことは確実だろう。
実際にハイレバギャンブル代表のsmilemoheji氏は未だ円ショートで破滅の淵に立っており、損切りできない状態になっている。



なので、ようやく急速円高について7~8合目っぽいなというのが見えていても、最後の到達点ではこうしたハイレバロング勢の追証でボラティリティを増幅させるので、最後の一押し円高があるというところだろう。
米国株保有者で高値で掴んでしまった方はその辺で怖くなってポジションを投げるだろうから、そこで実質ドル円ロングをする形の米国株買いをしていくタイミングだろうと思う。

あとは、今回の件で一定の幅においては為替というのは非常に水物的なところがあり、予測の難しさが株や金利より強く、多少の上下幅はあることを前提として取り組むことが肝要であるし、水物であるからこそ極端論が跋扈しやすく、それに多くの人が惑わされやすいということもあらためて認識すべきところだろうと思う。
(ドル円200円とはなんだったのか?)

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Youtuberのメキシコペソ円ロング激推し動画を見て思うこと

メキシコ・ペソ下落、暗殺未遂事件でトランプ氏復権の予想強まる

本当に投資しているかというより、宣伝目的な側面が強そう。

個人的には、一般人の考えが今どの段階にあるのかというのをチェックするためにYoutubeの投資系動画を結構見ているのだが、そこで目につくのはメキシコペソロングの激推しである。

メキシコペソについては、確かに10%を超える高金利政策・中国からの製造業サプライチェーン移転期待・資源高などのファンダメンタルズの追い風もあり、特に対円では絶好調な動きをしてきた。
しかし、トランプ大統領再爆誕を控えている上に、左翼丸出し政権になって外国人投資家が一番嫌がる財政支出拡大を目論んでしまっている。
政権自体も大分為替自体が高いことを知っているのか、多少揺れたところで以前と比べれば非常に為替が高い水準にあるから許されるだろという段々と雑な政治対応が見え始めてきた。

そういったことを考えると、過去のファンダメンタルズが良かったことは確かであるが、先行きにも期待できるかというと結構危ないのではないかと思う。
特に米国景気が減速しそうという中で、FRBが利下げビハインドし始めていることは直接的にメキシコから米国への輸出金額減少を発生させかねないこともあり、それが懸念されると直接的にメキシコペソにダメージが行きかねないのではないかと思う。
さらに一度目の強烈な下げでの逆張りが一度上手くいってしまっていることが、一応現状まで成功体験的な位置づけになってしまっており、次のリスクオフの波の時にはたして耐えられるのかと疑問に思っているし、段々と動きも足下は怪しげになってきている。

【MXNJPYのチャート】
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特に個人的にウォッチしているFX破産師ことSmilemoheji氏がもはやメキシコペソロングに自分の運命を託してしまっていることは、多くの個人投資家が同様なポジションを持ってしまっているのではないかと危惧している。



そもそもプラスリターンの株や債券を積極的に推すのは百歩譲って理解できる話であるが、基本的にゼロサムゲームの為替を積極的に推すというのが個人的には理解ができない。
しかも、その投資対象は平気で政治情勢がコロコロ変わる新興国のメキシコペソである。
これに株の長期投資のようなスタンスで挑むこと自体は自分の投資スタンスの中ではありえなく、FX企業からの案件でやっていると考えるのが妥当であり、推している本人は大体は大したポジション持っていないか全然ポジション持っておらず、宣伝利益で稼ぐことが主目的ぐらいの感じで見ておいた方がよいので、あまり真剣に捉えるべきではないだろうと思う。

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