村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

参考資料

誰にも株価暴落が読めないという言説は大嘘

【参考書籍】

金融大狂乱 リーマン・ブラザーズはなぜ暴走したのか

株価暴落は必ず予想していた人は少数派だが存在する。

時々、様々な投資に関する迷信などを目にするが、その中で最も有害だなと思うものは「株価暴落は誰にも読めない」というものである。
これについては、自分も昔はそんなものと思っていたが、上記参考書籍を読むとそのような考え方は相場に真面目に取り組んでおらず、思考放棄しているのではないかという思いが非常に強くなったので、今回はこれについてまとめていきたい。

上記書籍はリーマンブラザーズで働いていた従業員の回顧録であるが、米国のサブプライムローンが詐欺のような商慣習を背景に拡大していた上に、リーマンブラザーズが明らかにそれに悪乗りする形でリスクを無視してのめりこんでいき、最後には大爆発していった経過を克明に描写されている。
その過程の中で、複数のリーマンブラザーズの幹部はこれはまずいことが起こると感じ、しかも単なるまずいことではなく、会社が大爆発するレベルの事態になることを予期して辞表を提出して会社を辞めている人がいることも書かれている。
これは下記考え方にもつながるものだろう。

【過去参考記事】
熱狂的バブル相場の天井を捉えるために見るべきモラルハザード・不正行為とは?

このことが示すことは、確かにサブプライムローン問題・リーマンショックによる大暴落は大多数の人間にとっては予想できなかったことであるが、大暴落を予想できた人はゼロではなく少数派だが確実にいたことを意味する。
しかも、上記書籍のケースではインサイダーにいたからこそ予見できたという側面が大きいように思う。
このようにバブル崩壊の爆心地に近い位置にいる人ほど、暴落というのは予想できる可能性が高い傾向にある。
こうした爆心地に近い人間が資産を売却し始めるために、この売りに押される形で資産価格は下落を始めるわけで、これが株価が先行きを予想して動く要因であったりする。

もちろん森羅万象を知っていて、全ての暴落を当てられる人間というのは一人もいない。
しかし、特定の暴落時期というのは、起こる前兆を知っていてあらかじめ売り抜けている人間は上記書籍を読む限り、必ず存在するのである。
特にその爆心地にいる人間であればあるほど、その予想は正確になるため、暴落を読めない人がゼロなんてことはあり得ないのである。

そういった意味で、投資系Youtuberの「誰にも株価暴落は読めない」という思考停止するのは間違いで、常に自分で組み立てたファンダメンタルズストーリーと株価動向に乖離がないかどうかを考え続けることは決して放棄してはいけないことだと思っている。
 
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「石油の呪い」を読んで考えるロシア・プーチン政権の先行き


石油の呪い――国家の発展経路はいかに決定される

今回は上記書籍を読んで考えたことのまとめ記事です。

ようやく相場も落ち着きつつあるということで、相場を追う以外に勉強する時間が再開できつつあるということで、今回は上記書籍を読んで考えたことを書いていきたい。

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昔から言われていることだが、石油産出国というのは通称「石油の呪い」と呼ばれる状況に陥ることが多く、それは石油で利益が出るために他産業育成が全く進まず、国家としての発展がなくなる状態を示す。
今回の書籍ではなぜこのような状況が発生するのかを書いている。

やはり石油によって利益を得られる政府において最大の問題は、そこから得られる膨大な利益をきちんと開示してどのように適切に使うかが問題となる。
人間は概して巨額の利益を目の前に見せられると、それを独り占めしたいと思うもので、原油で多大な利益を得られるようになるとこれをネコババするか自分の権威を保つのに私的に利用するのかに大きく傾き、自国の適切な発展・産業育成を考えなくなるようになる。

まず一つ目に考えることは石油で得られた利益の不適切利用構造にある。
石油で利益が得られるようになってまず初期に現れる不正は、得られた利益の隠匿である。
得られた利益を開示すればあちこちからたかられる可能性があるし、黙って自分の財布に入れておけば大金持ちだと考えるのは容易な話だろう。
さらにこうしたことを繰り返していく中で、徐々に石油で得られた利益の使い方が合理性の欠片もない不適切使用がまかり通るようになり、資金の非効率性が目立ち、国家としての発展がなくなっていくというのが多くの腐敗石油国家で見られるパターンである。
また、こうした石油で得られた利益を軍備に回すことも可能であり、これも石油国家独裁政権が転覆しづらい要因の一つにもなっている。

二つ目に石油利益を利用して権威を保つことについて言及していきたい。
一般的に政府と民主主義下における国民の関係は、国民が自分達に対して適正なメリットを出す政府であれば信認し、適正でないと感じた時は選挙で交代を迫るという関係性にある。
特にここで注目したいのが「税」であり、税の使い方に不平がある場合は特に選挙での交代というのが促されやすい。
一方で石油国家は、石油で得られた膨大な利益によって税の徴収が必要ないと考え、税負担を軽くする傾向が強い。
これによって国民は税を納めずに自分の生活が可能となる一方で、政府に対するきちんと要求というのを出せなくなる。
加えて、選挙がある石油国家では選挙前に石油で得られた利益をばらまくことによって票を獲得することが可能であり、これも民主主義を阻害する要因となっている。
さらに、政府は税徴収金額を増やすために産業育成を真剣に考えて政策を行うが、石油国家はそうしたインセンティブが低いために、結局こうした相乗効果で石油国家ではその他産業が育ちにくいという構図に陥っていく。

その極地にいるのがやはりサウジアラビアとロシアであろう。
特に今ウクライナ侵攻で注目されているロシアについては、石油によって得られた利益によって国民を政府が養っているという関係性にあり、国民はプーチン氏に対していまだそこまで大きな不満を持っていないというのが現状だろう。
戦争で兵士が死んでいても、そもそも税金を払っているわけではなく、貰っているという精神であることから民主主義の先進諸国とは違い、政府と国民は対等ではなく、政府が国民を養っているという形で一定の不満を抑えている。
ロシアという経済についてはエネルギー利益を除けば国民一人当たりが生む税金や生産なんてたかが知れているわけで、単純に戦争で人が死んでいるというだけでは政権をひっくり返すほどの不満は出にくい。
国民がプーチンに本格的な不満を持つには現状原油価格の値下がりによる利益減少とそれに伴う政府への不満爆発がなければ中々崩しにくい状態のように思う。

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「石油国家ロシア」を読んで考えるロシア経済の構造と資源外交戦略

【参考書籍】

石油国家ロシア

参考にすべき点が多く書いてあったので今回は上記書籍を読んで考えたことを共有したい。
上記参考書籍について読んだ感じ以下のような内容となる。

昔からロシア(その時代はソ連)は外資の技術がなければ満足に原油・天然ガスの生産量を増やすことはおろか維持することも難しいのが現状だ。
1900年代前半は常にセブンシスターズといった欧米石油会社の技術と運営頼みであり、機器があっても運営する力がないのでやはり色々な取り仕切りを欧米メジャーに依存するしかなかった。

そしてロシアの資源エネルギー戦略は極端に振れやすい性格を持っている。
原油価格が安くて自分が窮地に陥っている時は様々なインセンティブをつけることによって外国企業を呼び込む。
しかし、一度エネルギー価格が上昇してロシアに余裕ができると途端にエネルギー資源は我が国のものであるといわんばかりに法律を無視して資源を国有化するというのを何回も行ってきた。

これは外国企業だけでなく、実はロシア国内の民間企業にも言えることである。
ロシアの民間企業というのはソ連崩壊時のドタバタに様々な反則を駆使して株をかき集めたオリガルヒ達がほとんどなわけで、ロシアの富豪達も言ってみれば米国企業のようなたたき上げではなく、元々の国の資産を収奪して金持ちになってきた。
しかし、これに対してプーチンは国有化を進め、法律を完全無視してオリガルヒ達を逮捕・粛正していくことによって国有化を進めてきた。
(特にプーチンが大統領になってからは国有化の動きが加速している)

天然ガスについてはロシアは自国産ガスを売り込むために他の地域のパイプラインプロジェクトの邪魔を続けてきた。
ロシアを通らないパイプラインプロジェクトが立ち上がろうとすれば、はるかに割安な価格での天然ガス供給を約束することによって立ち上がろうとするプロジェクトを潰してきた。
欧州もこの誘惑に抗うことはできず、結局この戦略に乗せられてロシア産ガスへの依存度を高めてきたというのが現在の歴史である。

ロシアはこのように強力なエネルギー資源外交を進めてきたわけだが、必ずしもロシアが有利とは限らない。
結局ロシアは産業が高度化する前に財政の基盤を原油・天然ガス輸出に依存していることになり、それ以外のあらゆるものは外国からの輸入によって賄っている。
この原資はエネルギーを輸出しなければ得られないものである。

ーーーーー
ここまでがざっくりと上記書籍に書かれている内容のまとめになるが、読めば読むほどまあロシアに株式投資というのは常に全額失うリスク・法律を無視して収奪されるリスクに怯えることになるのでまあほんと難しいなと思う次第である。

他にも思うところは今回のウクライナ侵攻の件でもうロシア産ガスとは決別しなければいけないという覚悟がEUで固まりつつある。
すぐには削減できないものの、まずはカタール産と米国産LNGで代替していく形になる。
そして次にロシアを通らないパイプラインを建設することを考えるだろう。
アゼルバイジャン・トルクメニスタンなどカスピ海周辺の国の天然ガス資源をあてにする形に変化していくかもしれない。

ロシアは欧米などから物資を輸入できなくなるわけなので、今後は中国・インドという迂回路を使って輸入をしていくしかない。
特に中国からの輸入依存度は大幅に高まることになるため、実質的には中国の属国的な地位に落ちるものと思われるが、当の中国も習近平の頭がアホすぎるので、結局中国と合わせて株式投資不適格国家という烙印を押されることになると思う。

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