村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

フロンティア

中国とパリクラブ間の相互不信で進まないドベ新興国債務問題

焦点:新興国に債務危機、IMF会合の主要議題に 高金利直撃

絶対に揉める上に、借りてる側が決断できない時点で終わってる。

上記日経新聞の記事にある通り、かれこれ数年多重債務的な状況にあって連鎖的にデフォルトが多発している新興国債務問題について、中々問題解決が進展していない。
なぜ中々債務再編にこぎつけないかというのを考えていると、財務省で為替介入を指導した神田暴威こと神田眞人氏の下記書籍を読んでいると以下のような文言が書いてあり、これが問題なんだろうなというのをなんとなく感じたので、今回はこれについてまとめていきたい。

【参考書籍】

図説 ポストコロナの世界経済と激動する国際金融

新興国債務については、過去はパリクラブ(いわゆるG7諸国)がメインの債権者であったのが、2010年以降になって中国が無節操に新興国に貸付を行ったことから、パリクラブ外(まあほとんど中国であるわけだが)の債権者が増加した。
特に中国は貸し付け先の新興国の内政には口を出さない上に大盤振る舞いであった一方で、融資において契約内容の秘匿・他債権に対する優先返済などの不透明性や国際ルール違反を内包している。
このままだとパリクラブ債権者が債務再編しても、中国側の債権の弁済が優先されるために、同じ債権者であるにもかかわらずパリクラブ側が一方的に損してしまう可能性が高い。
そのため、中国側が契約内容の公開と妥協をする必要性があり、債務者側も公平的な交渉をするように中国側に促す必要性がある。

しかし、やっかいなのは当の借りてる側の品性である。
そもそもパリクラブ側が人権だの、もっと真面目に経済政策しろと口うるさく迫ってきてつらかった(完全に被害者意識)こともあり、内政に口うるさくない上にいくらでも融資してくれると言ってくれた中国から大量の金を借りたわけである。
この時点で、思考は多重債務者特有のだらしなさがある。
そして今回の債務問題自体が、中国が自分のところの経済が駄目になっていって海外に金ばらまいている場合じゃないと融資から手を引いてしまったために、借りている側は借りまくった挙句に自らの行動を反省しないまま現在の大量デフォルト劇になっているわけである。

そしてこうした多重債務新興国側が理解していないのは、もはや中国はまとまったお金を貸してくれないことにある。
これは既に当ブログで、今の中国経済が如何に駄目なのかを読んでくれている人であればすぐに理解できるところだろう。
しかし、当の多重債務新興国側はこれまでほいほいお金をあれだけ条件良く貸してくれていたんだから、まだ貸してくれるという淡い期待を中国に抱いている。
そのため、中国側に強く債務再編に対して情報公開を強く要請できていないのである。

しかし、これは情勢が全く読めていないに等しい。
これではパリクラブ側も借り手新興国が円滑に経済が回せるように債務再編をしたくてもできない。
パリクラブ側はこうした債務再編はこれまで何度もやってきたので債務再編自体についてはノウハウを持っているが、当の中国は債務再編されてしまうと貸すことを決めた政治役人の政治的汚点になってしまうため、やりたくないというデッドロック状態になってしまっている。

そう考えるとこの新興国債務問題はすぐに解決するような代物ではないことがわかるだろう。
とはいえ、この多重債務新興国というのは、報道上「新興国」と言っているが、G20に入っているような国ではなく、世界のGDPに占める割合はすごく小さく、ツアーリズムや出稼ぎ労働者でしか外貨を稼げないドベフロンティア国家である。
こうしたことを考えれば先進国株式に与える影響はほとんどなく、影響ある資産はせいぜい米ドル建て新興国債券(EMBなど)やフロンティア株式(FMなど)に限定されるだろう。
特にEMBは問題ど真ん中の資産なので触るべきではないだろう。

【EMBのチャート】
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ドベ新興国が米ドル建て国債の償還でのたうち回る状況は続く

新興国、債務危機広がる IMFの支援残高最大 G20、財務相会議で協議 中所得国にも破綻リスク

新興国というよりは、永遠に興ることがない国中心。

これが起こった背景は2010年から2015年の時を調べる必要性がある。
この2010年から2015年というのは、リーマンショックの余波で米国がゼロ金利政策+全力QEによって米国債金利が大きく押し下げられたことによって、高利回りを求めた投資家が色々投資先を探る中で、これまで米ドル建て国債を発行したことがなかった新興国(いや、新興国とも呼べない国がメインだったが)が投資家ニーズがあることに調子乗って、バンバン米ドル建て国債を発行した。

ただし、この債券発行の問題は米ドル建てであったことにある。
自国通貨建てであれば、自国で通貨を印刷して債権者に渡すだけで解決する問題なのだが、米ドル建てであるのでその国が稼げる外貨と貯蓄している外貨準備高によって返済能力は決まる。
なので、外貨が稼げない上に外貨準備高もない場合は借りっぱなしで最終的にバンザイして死ぬしかない。

そしてこの2010年~2015年の米ドル建て新興国国債ブームでは何が起きたのか?
上記日経新聞の記事を見ればわかるが、今この債務危機で苦しんでいるのはスリランカ・ザンビア・マリ・アルゼンチン・エジプトなどである。
彼らに共通することはなんだろうか?
それはそもそもこいつらは外貨を稼げない国である。
まず高度な輸出産業は基本的に皆無だ。
資源も国によってはほとんど出ないみたいなところである。
政治の運営はいたってでたらめで、政治家が平気で財政をポケットにしまうので、タックスヘイブンとしての魅力もない。
唯一の外貨を稼ぐ手段は観光客と出稼ぎ労働者からの送金だけだが、危なくて観光客もいかない地域だったりする。

このように米ドルで金を借りたのはいいが、じゃあ米ドルで返すあては?と聞かれれば最初からないみたいなやつらである。
いってみればデフォルトして当然といった国ばかりである。

【過去参考記事】
新興国経済を見る上で重要な「国際収支の天井」という概念

こうした現在債務危機に陥っている新興国というのは資源もないし、製造業拠点も持っていないといった、言ってみれば世界経済に対する影響は非常に小さいと言わざるをえない国ばかりである。
こうした国は雑に言えばデフォルトしたところで大した話ではない。
デフォルトした規模とか見ればわかるが、ソフトバンクグループ以下の借金しか抱えていない国がほとんどで、世界全体から見れば大した話ではない。
絶対金額の影響度は常に全体の規模はいくらなんでしたっけというところから始まるので、この話が世界全体のリスク資産に影響を与えることはないだろう。

ただし、特定資産は影響が出ることは必至である。
まず、直接的に影響あるのはこうした新興国のドル建て国債ETFであるEMBといったETFであり、それはチャートを見れば一目瞭然だ。

【EMBの株価チャート】
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そして最近一部で人気のあるFMがこれに該当する。
【過去参考記事】

フロンティア国ETFは本当に投資対象として適切なのか?


このわけのわからない国の債務危機はまだまだ続くだろう。
なぜなら世界経済にとって重要でもないし、地政学的にもどうでもいい地域にいるので、先進国や中国が助けるインセンティブがないからであり、そうなれば放置され続けて当該資産だけ状況が悪化しつづけると考えるのは容易い。
やはり基本こうしたわけのわからない国のリスクポジションを取ることは避けておきたいというのが正直なところだろう。

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フロンティア国ETFは本当に投資対象として適切なのか?

よくこんなダメ国家群集めた国の株に投資しようと思うな。

最近、一部投資インフルエンサーの間でFM US ETFを推奨する流れがちらほら見えている。
このFMというETFはいわゆるフロンティア国家・つまりG20に入らないようなまだ未発展国家群を中心に株式を構成されているETFになる。
流れを見ていると、このETFについてよく情勢わからずに推薦している人がいるなあと思い、単に市場で出来高ができているからこれは買いだみたいな猿みたいなテクニカル判断で鼻息荒い人が多い。

そもそもこうしたフロンティア国家というのはどういう性格なのだろうか?
全く知識がない人から見たら、成長ポテンシャルが高い国家のように見えるが、知識がある人から見れば実力がないし国家運営がでたらめなところが多いとんでも国家群という認識である。
当のETFを運営しているブラックロックのHPでポートフォリオ構成国家を確認してみたいと思う。

【FMの構成国家】
https://www.blackrock.com/jp/individual/ja/products/239649/ishares-msci-frontier-100-etf


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個人的には上記に含まれている国家群を見ると、ドン引きするような国が多い。
まずカザフスタンは内陸国家かつロシアと非常に近いということもあって、こんな国がまずまともな発展の仕方をすることはない。
ルーマニアなんてのは現在ロシアとドンパチしているウクライナのすぐ横である。
それからコロンビアはこれまで麻薬を売りさばいて暴力を行使していたテロ組織みたいなリーダーが政治家になったりする国である。
エジプトはロシアのウクライナ侵攻で小麦輸出がストップした時に真っ先に食糧難に直面した国である。
ペルーは現在絶賛反政府デモが過激化してぐちゃぐちゃになっている。

このように上記でいうとまともな国家運営がぎりぎりできている国はせいぜいベトナム・フィリピン・モロッコあたりぐらいまでで、あとは棒にも箸にも引っかからないようなダメ国家群で占められている。
新興国でG20に入るような国でも度々政治面で問題が起こるわけであるのに、こんな弱小国家がまともな政治運営できるわけなく、さらに言えばその国家内の企業がまともに企業運営ができるとは思えない。
投資家は命と同等である投資資金については、少なくとも略奪される心配がないところにしか資金を置きたがらないことは下記書籍を読んでもらえればわかる話である。

【参考書籍】

「豊かさ」の誕生(上) 成長と発展の文明史 「豊かさ」の誕生 成長と発展の文明史

しかし、その条件を上記国家群は満たせているとは思えない。
さらに言うと、まともな国家運営ができていないので経常収支でさえ黒字を達成できている国が少ないというクソみたいな事情も含まれている。
この考え方については下記を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
新興国経済を見る上で重要な「国際収支の天井」という概念

さらに言うと、上記国家でまともに為替が取引できる国がいくつあるかご存じだろうか?
はっきり言えばフィリピンペソぐらいしかまともに取引できるような通貨を保有している国はなく、為替面でも投資不適格に近い国家群しかない。

というわけでG20に入る新興国ぐらいまでの投資は個人的にはありだと思うが、それ以下でまともに為替の取引もできないような、歴史的にも勃興してこなかったダメ国家群にお金を預けたら抜かれたい放題抜かれるだけでまともな投資パフォーマンスを長期的に出せるとは思えない。
ちなみにこのETFの設定来パフォーマンスが以下の通りであることを見ても、こうしたドベ国家に投資するis意味は何?という感想しか出てこない。

【FMのチャート】
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最後の最後で国民の民度が出てしまったスリランカのデフォルト劇

独立以来最悪の経済危機に陥るスリランカ デモ隊が大統領公邸を占拠、大統領は辞任の意向

最後の最後は民度に国の命運が左右される。

先週末はスリランカで中央銀行や政府官邸にデモ隊が突撃し、ラジャパクサ大統領が国外逃亡したために実質的に無政府状態となったというニュースが出てきた。

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スリランカについては既に外貨建ての借入金の利払いができないということでデフォルトしているわけであるが、その後もIMFとの交渉がうまくいかず中々外貨資金援助を貰えず、それによって燃料・食料など生活必需品を入手することができないために国民生活がズタズタになっていた中で、とうとう国民の不満が大爆発して暴動が起き、それが中央政府を崩壊させてしまった。

スリランカは以前にブログ記事で書いたように思うが、元々2009年頃まで内戦でインフラがズタズタになっていたせいで、内戦終了後はインフラ復興のための投資が大幅にかさんで経常赤字・財政赤字が経済に見合わない比率になってしまっていた。
それに加えて政府がポピュリズム的な政策として減税などの国内消費を喚起する政策をしてしまったためにさらに経常赤字・財政赤字が拡大してしまったために、コロナ前の時点でかなり政府の資金繰りは危うい状態になっていた。
コロナ禍前はまだ米国の金融緩和による外国からの低利の借り入れや中国からの大盤振る舞い融資によって、駄々洩れ外貨流出を穴埋めしていた。
そこにコロナ禍がぶつかったことによって、重要な外貨収入源であったツアーリズムが壊滅した。
そこに加えて金づるであった中国が不動産バブル崩壊でお金が貰えなくなり、さらに最後は原油高・食料高でジエンドとなった。
この辺のデフォルトになった背景については以下の考え方を参考にしてもらえれば理解しやすいと思う。

【過去参考記事】
新興国経済を見る上で重要な「国際収支の天井」という概念

しかし、最後の最後はどうしてもその国の民度が出てくる。
成熟した国家であれば国としての一体感があるため、デフォルトしても復活に向けて国民が一丸となり、国の代表を入れ替えるにしても暴力ではなく選挙を通じて行う。
ロシア危機のロシアしかり、アジア通貨危機の韓国しかりデフォルトやデフォルト瀬戸際まで追い込まれたが国民が一丸となって耐えきった歴史がある。
一方で、スリランカは食料や燃料が物理的にないという話もあるのだが、我慢が出来ず国民が一斉に暴力に走った上に、政府中枢機関への侵入を許したことは軍の掌握さえ実は曖昧だったのではないかと思われる。
(そういった意味ではベネズエラ以下の政府の能力だっと言える) 

これからスリランカはどうなるのだろうか?
実質無政府状態になったことから、IMFは救おうと思っても交渉相手がいない状態だし、中国もこれまでの投資や融資を全てご破算にされる可能性が高く追加の追い金ができない状態なので完全な孤立状態に陥ってしまった。
これによってスリランカは実質的には輸出や出稼ぎ労働者が送金してくれる外貨だけで燃料やその他生活必須物資を輸入することになるため、さらなる国内でのインフレ急進が見られるわけで、スリランカが国際的な表舞台に戻ってくることは数年単位で見ることはできないだろう。
(下手すると10年以上?)

また問題はこうした資源輸出国ではない新興国(大半が出稼ぎとツアーリズムに外貨収入を依存しているところ)で似たような案件が出てくる可能性が否定できず、新興国のドル債ソブリン関連はなかなか厳しい状態が続きそうである(ETFでいうとEMBらへん)

【EMBのチャート】
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相変わらず暴力がはびこるアフリカ地域

南アフリカ暴動で2500人超逮捕、状況は沈静化=大統領

アフリカの状況はより深刻になっている。

アフリカの中では南アフリカが断トツに経済規模が大きいのだが、その南アフリカで大規模な暴動が起きてショッピングモールで略奪が発生するなど、ひどい状況になっていた。
足下ではどうやら一旦鎮静化した模様だが、ただでさえ厳しい経済状況の中、コロナ禍でより厳しいアフリカ経済の実状が浮き彫りになっている。
なぜアフリカはこれだけひどい状況が続いているのだろうか?
そのヒントはやはり下記書籍を読めばなんとなくわかるところがある。

<参考書籍>

ルポ 資源大陸アフリカ―暴力が結ぶ貧困と繁栄

アフリカ地域というのは結局暴力の連鎖から逃れられていない。
まず全ての国の国境が第二次世界大戦後にでたらめに引かれたということもあり、全く民族を考慮しない国境線となってしまった。
これにより、民族間対立が非常に勃発しやすい状況が生まれている上に、勃発した後は難民が周辺の国に分散されていく。
通常国境線というのは守りやすい・攻められづらい位置に引かれる。
アジア各国を見れば、どこも国境線は川・海・山という守りやすく攻めづらい地域に引かれている。
しかし、上述した通りアフリカは国境線がそういう考慮なしで引かれたものであるため、国境警備が実質的にザルである。
加えて政府が警察に十分な給料を払っていなかったりするため、賄賂文化が定着してしまっており、国境警備隊に賄賂を渡せば平気で入国することができる。
場合によってはノー警備である。
そのことを考えれば貧民が大量に押し寄せるせいで一気に治安が悪化するのは火を見るより明らかだ。
犯罪も賄賂を渡せばスルーされることが当たり前と、正義もくそもないというのが実情だ。
仕事もなく、政府も民族間対立で一体感がないため内輪もめに大きく財政を使ってしまっており、産業振興などに資金が全然回らない。
そして多くの人間が食い扶持を確保するために犯罪を犯すことが当たり前なのである。

そしてコロナ禍でよりその傾向は顕著になっているというのが南アフリカの暴動から読めることだろう。
特に南アフリカは国営電力会社への投資を怠ったため停電が頻発するなど、段々と国家としての体をなさなくなりつつあり、昔流行った南アフリカランド投資が復活することなんてまずないよなあと思う次第である。

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