村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

投資雑感

グローバル化が終わった今、波に乗れなかった新興国は見捨てられる

JPモルガン、新興国高利回り債の予想デフォルト率引き下げ

新興国全体のボーナスステージはとっくに終わっている。

現在株価動向を見ると、中国株が金融緩和や景気刺激策期待で盛り上がったり、インド株ブームは来ているが、それを除けばおしなべて新興国株というのは非常に低調なパフォーマンスしか出ておらず、基本的に先進国株に投資していた方がずっとパフォーマンスが良いという状態がリーマンショック以降続いているし、最近はその差もより顕著になってきている。
その理由について、今回思ったことをまとめていきたいと思う。

そもそも新興国がこれまで成長できたのは、経済のグローバル化にあり、フラット化する地球という現象の中で安い労働力を求めて先進国企業が投資してくれたことで成長してきた。
しかし、下記過去記事にも書いた通り、このグローバル化は終焉している。

【過去参考記事】
フラット化する世界の終焉とブロック化する世界

この30年で多くの先進国企業は安い労働賃金を求めて様々な新興国への投資を実践してきて、それにあたっては綿密な調査や国家間交渉などを各プレーヤーは行ってきた。
そういった意味で地球で未活用な人間の発掘というのはIT技術の進化によるコミュニケーションの高速化もあり開発されきったのではないかと思っている。

そうなると、ここまできて進化することができなかった新興国というのは先進国企業が色々目をかけてサポートしてくれたのに、自国の人材の潜在力を引き出して成長することができなかったということを意味する。
もちろん現在成長中途上の国(インドやベトナム)といったところは少数あるが、片手で数える程度しか現在先進国企業が熱心に投資してくれて成長している国はなく、大多数の新興国は結局この30~40年ぐらいのグローバル化の波に乗ることができなかった。

実際に大型新興国より小さいフロンティア国家の株を集めたETFであるFMというETFを見ると、この10年一切株価として成長していないのが観察できる。

【FMのチャート】
タイトルなし

フロンティア国家というのは、言ってみれば新興国より一人当たりGDPが低い国のことであるが、多くの人はそういうところはこれからの成長余力が高く、投資先として夢があると思うかもしれないが、実態は結局この30~40年のグローバル化に乗れなかったクズ国家ばかりである。

こうしたクズ国家は与えられてきたチャンスが活かせず、それにほとほと呆れた先進国の人達はもう投資は勘弁ということでもう完全に見捨ててしまったのである。
そして、消費したり略奪したり搾取したり騙すことしか能がないクズ国家は自ら作り出した借金に押しつぶされる形でデフォルトしていっているだろうなということが上記ニュース記事の背景だろうと思う。

そう考えれば、新興国投資は本当に有望と思える1~2ヵ国への投資というのがせいぜいで、新興国全体への投資なんて何が面白くてそんなことやるんでしたっけという話になると思う。

 
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長期間株を保有することによって得られる配当を侮るなかれ

高配当株復活、個人が導くか

中長期で投資するなら、なるべく配当が成長する株を長く持ちたい。

ここ数ヵ月は相場が停滞しているということもあり、XやYoutubeを見ていると右往左往しているケースや、なんとかボラティリティ高い中で無理やりトレードをして利益をねん出しようと四苦八苦している人が多い印象を受ける。
しかし、こういう相場の時こそ長く株を保有して配当をもらいながらじっと耐えるということが重要であることを主張していきたいと思う。
今回は、配当が増加するということの威力について書いていきたい。

例えば2018年にS&P500を買うと、この時の配当利回りは1.8%ぐらいである。
その後2024年になって2018年に対してS&P500は約2倍になっている。

【S&P500のチャート】
タイトルなし


足下で配当利回りは1.3%ぐらいと下がっているが、2018年の時の株価に対しては2.6%となっている。
ようは今資金を投じたことによって得られる配当利回りは、将来において投資元本に対しては上手くいけばどんどん増えていくのである。
実際に自分が保有している個別銘柄において、2011年ぐらいから持ちっぱなしみたいなものについては、今の株価だと配当利回り2%ぐらいだが、投資元本に対しては8%みたいな状態になっているものもある。
投資元本に対して年間配当利回りが8%もあれば、別に無理して株の細かい上下を取るトレードは必要なく、じっくり腰を据えて配当利回りをもらって待とうと構えることができる。

これが長く株を保有して成長した配当を受け取るという戦略に関する一番の強みになる。
これは一度株を買って売らずに長く持ち、企業が成長していって株価が上昇して一株当たり配当金額も成長していると、その恩恵は数年経っていると非常に威力が大きくなる。
相場をよく見ているほどついつい頻繁に売買したくなり、売買を繰り返すと毎回利益のうちいくらかを税金で取られてしまうので、この配当の増加という恩恵を受けづらくなってしまう。
相場が今のようにはっきりしない動きをしている間は、よっぽど上手い人でなければ細かいトレードで利益を取れない一方で、逆に過去に投資した株が順調に配当を払い出してくれている場合はこういう相場の時でもじっと待ちながら利益を得ていくことができる。

もちろん細かくレバをかけたトレードで取ることを否定するものでもないし、実際に将来の配当成長をきちんと得ようと思ったら、漫然と株を中長期保有するのではなく、利益成長・配当成長しないよねという株を細かく損切りしていくというきめ細やかな作業も必要になるので、決して楽な道のりではないが、これができるだけで5年後あたりからインカムゲインの積み上がりが気づいたら大きくなっているということを実感できるようになると思う。

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投資においては最前線にいる人達を謙虚に知ることが重要

【参考書籍】
「トランプ時代」の新世界秩序 三浦 瑠麗

安倍晋三 回顧録

素人が思いつくことなんて、最前線で気張ってる人達はとっくのとうに考えている。

上記参考書籍を2冊読んだ時に、非常に考えさせられることがあったので、今回そのことについてまとめていきたいと思う。

まず上記の三浦瑠麗氏の書籍では2016年にトランプ政権が誕生して翌2017年に
ここではアメリカと日本の関係において、多くが日本は米国に犬のようにしっぽを振るしかない、日本政府は無能だからこんな私が考えることなんて気づいている由もないといったような、非常に上から目線の書き方が目立ち、自分の頭の良さを半ば喧伝するような内容となっていた。

しかしこの後に今は亡き安倍氏の書籍を読むと雰囲気は随分異なる。
安倍氏はまずトランプ氏が大統領になった場合における準備をかなり行っており、だからこそトランプ氏の自宅での個人会談にこぎつけた。
また、米国-日本の安保体制についても粘り強く知識のないトランプ氏にアドバイスを行ったことに加えて、中国の封じ込めの重要性を粘り強くアメリカだけでなく西側諸国に訴え続けていくことにより、実際に2022年のロシアのウクライナ侵攻以降にこれまでの日本の対応が見事にヒットし、現在西側諸国において中国包囲網的な形を形成させることに成功した。
こういったことから、トランプ政権になった時にどうこれまでと違ったことが起き、どう交渉すべきかを暗中模索しながら、かなりうまい具合にコントロールしていったことが確認できた。

両書籍を見比べてみると、まるで大人と小学生ぐらいの知識の差があることになる。
三浦氏の書籍に書いてることは何も知らない人から見ればなるほどと思うかもしれないが、最前線にいて状況を知っている人から見れば
「そんなことは知っとるんじゃボケ!状況を腐してるんじゃなくて具体的な対応策言えよ!こっちだって必死に考えてるのに文句だけはいっちょ前な上に役に立たないなこいつ!」
というのが正直なところではないだろうか?
それぐらい両者において状況に対する知見と行動力の深さは違っていた。

そういうことを考えると、我々投資家というのは何もかもにおいて知識は中途半端である。
世間一般平均よりは物事は知っているかもしれないが、最前線にいる人間からすればおままごとに等しい知識しか持っていないといっても過言ではない。
そういった意味で、投資家というのはよっぽど自分が知識に大きなアドバンテージを持っている分野でなければ、どちらかというと最前線にいる人達がどのような考えを持っているのかを、彼らの言動や報道からつぶさに観察していき謙虚に知ることが必要なのではなかろうか?
さもなければ、投資家というのはせいぜい衆愚に毛が生えた程度の存在であり、投資において最も重要な情報を持っている最前線にいる人達とズレた考えしかできず、結果として投資の判断ミスをしてしまうのではないかと思う。

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株式投資には常識からの一工夫が必要だと思う理由

【参考書籍】
株の投資大全――成長株をどう見極め、いつ買ったらいいのか

常識だけでは勝つことが難しいことの証左。

色々投資関連書籍を読んでいる中で、上記の書籍を読む機会があり、読んでみて思ったところがあるので、今回はそれをまとめていきたいと思う。

この書籍に書いてあることは、株式投資するにあたって「極めて真っ当な考え方」であり、特に異論をはさむ余地はない。
財務諸表の見方・配当利回り・PER・PBR・株価チャートの形状・景気サイクル・リスク管理・日常生活から成長株を探す・各業界の注目ポイント・会社四季報を活用・成長シナリオを考えるにあたって参入障壁や経営者の質を見る・業績トレンドを見るなど、どれもこれも金融プロであれば「常識」であることは間違いない。

しかし、この書籍を書いたとうのひふみ投信自体はここ数年余裕でベンチマークに負けていることは多くの人が知るところである。

【2024年7月末のひふみプラスの成績】
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そういったことを考慮すると、これら常識だけでは相場で勝っていくことはできないことを意味するのではないかと思う。
金融プロが当たり前に知っていることだけでは、αは出せないのである。
日本語が読めない人は「じゃあ常識なんて知ってても無駄なんだ!」とか言い出しかねないが、常識は「知っていなければまず話にならない部分」であり、常識を知らなければ大負けする可能性だけが大幅に増加することは、多くの常識を知らずして大勝負かまして退場していった人達を思い出せばすぐにわかる話だろう。

つまり、我々投資家は教科書や多くの投資書籍に書かれている「当たり前の常識は知っていることがスタートライン」である一方で、これとは違う考え方を持って投資に挑む必要性があるという論理を個人的にはひねり出している。
しかもこの違う考えというのは「他の投資家の大半がまだ知らないor考えてもいないこと」を「適切なタイミングで思いついて投資実行する」という思考法の正しさとタイミングの正しさの2つを同時に求められる、非常に難易度が高く、針の穴に糸を通す難しさを要求される。
逆に上記2つの項目に確信度が高いのであれば、大勝負に出てもいいわけであるが、さらに投資段階ではこの2つに対して「適切な量の資金を投下する」ということも要求される。


こういうものが必要であることが、アクティブファンドでαを出す難しさであると個人的には考えている。
この3要素の全てが合致しないと相場でインデックスに勝っていくことは難しい。
まず「他の投資家の大半がまだ知らないor考えてもいないこと」をひねり出すことは、人より一歩進んだ知性を持たなければいけない。
「適切なタイミングで思いついて投資実行する」ことも非常に難しく、10年後の未来を適切に予想できたとしても、その未来が実現するまでに平気でインデックスにボロ負けするような投資では意味がないのである。
そして「適切な量の資金を投下する」というのも、ビビりで正しく考えられたにもかからず少額しか資金を投下しなければ十分なリターンが得られないわけで、大きな資金を張る勇気が必要なのである。
このように書籍一つ読んでも色々考えるべきポイントは多いなと感じた次第である。

ちなみにこういった教科書的な当たり前のことを色々書いて、これを投資の必須法であると吹聴し上から目線で色々述べるものの、お前のところのファンドはベンチマークのTOPIXにもS&P500にもボロ負けやんけというのは「おおぶねファンド」でも同じことが言えるのが下記書籍を読んでいるとわかるところである(辛辣)

【参考書籍】
ビジネスエリートになるための 投資家の思考法――The Investor's Thinking

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中国連休前後で起こった東証上場の中国株ETFの珍事件

まるでチューリップバブル 中国株ETF「狂乱相場」の真相

どうしてそこで買いを入れるやつがいるのか全然意味がわからん。

上記日経新聞の記事の通りあるが、中国国慶節連休前に中国が景気刺激策を発表してきたことから、過剰な期待感を持ったまま連休に入ってしまった。
中国市場は動いていないが、中国以外の市場で中国株ETFが存在するわけで、そこが盛り上がる形で上昇していたりしていたのだが、東証にもいくつか上場している中国本土株ETFがある。
ETFは一般的に裏付けになっている原資産の元価格に基づいて計算されたNAVという価格が毎営業日に開示されているわけであるが、中国本土株が香港株の上昇も考慮すると連休前から+10%近く上昇してもおかしくないよねという雰囲気があり、普通はそれを織り込んでETFの時価は動いていく。

しかし、今回はなんとETFにもよるが、アセワンの中国本土株ETFがNAV1700円ぐらいであったにもかかわらず、なんと6万円以上にまでETF価格が上昇したのである。

【2553のチャート】
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NAVに対して40倍近くのプレミアムが付くという珍事件であり、中国の連休が明ければ100%暴落が保証されるような状態になっていたにもかかわらず、むしろNAVから大幅乖離してから出来高がバカバカできているわけである。
まあ百歩譲って、連休によるスクイーズの話とかがあって上がるというのは理解したとしよう。
しかし、一度下がり始めたら、NAVに対して異常な程の乖離が生じているわけなので、一般的にはNAVまでETF価格が暴落するのなんてニュートンの法則並みに一般常識だと思われる。
特にETFではNAVという指標があるわけで、どんなに流動性が不足したとしてもNAVに対して50%もプレミアムが付くなんて普通は考えられないわけである。

しかし、10月8日から始まった暴落からNAV付近まで顔面着地するに到った10月16日にまでに出来高が20万株近く成立しているのである。
出来高は売りと買いが両方同じ価格にマッチしないと成り立たないわけで、20万株近く成立しているということは20万株近く買う投資家が存在しているということである。
上昇している最中で買い入れるならまだわからなくはないけど、ETFの時価がNAVの10倍以上離れているところから買いを入れているやつは99.9%損をするのに一体何を考えているのかわからなかった。
そして実際に10月16日時点でほぼNAV付近に時価は着地しており、結局ババ抜きで抜けれなかった人は丸々大損したという極めて当然の結果に着地したわけである。

まあ結局投資の世界はこういう理論も常識も全く理解せず、値動きだけでなんとなくーで買ったり売ったりしている人が大量にいるわけで、少なくとも大損しないようにするには一定の理論と常識は知っておいてしかるべきだろうという事案になった。

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