NYの視点:米失業保険継続受給者数は3年ぶりの高水準、今後の労働市場の冷え込み示唆

クビにしてないけど、雇ってもいないような。

米国景気の占う上で、大体市場参加者が見ているものは毎月頭に出てくる雇用統計と毎週出てくる失業保険関連統計で、その中でも新規失業保険申請件数と失業保険継続受給者数は毎週発表されていて毎月の雇用統計を待つより速報性が高いということで、2022~2024年秋頃の局面ではこの数値だけで金利が上に行ったり下に行ったりと大きく金利を動かす材料になっていた。

しかしここもとはあまり市場予想から大きく上にも下にも外れるような数値にならないことから、段々と市場参加者の関心も薄くなっていて、米国の利下げ織り込み回数は気づけばほぼノーランディングに近いような今年あと1回・来年2回程度という程度になっている。

しかし、個人的にはどうも失業保険継続受給者数の数値推移を見ていると、本当にそんな利下げ織り込みでいいのかと思うところがある。
新規失業保険申請件数については21.3万件と通常レベルの水準であり、確かにこれだけ見ると問題はない。
一方で失業保険継続受給者数はじりじり悪化しており、足下で190万件という数字になってきている。
この悪化については2024年6月頃から始まっており、6ヵ月程度で10万件増えている計算になる。

【失業保険継続受給者数の推移】
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クビ切りは行われていないものの、米国での雇用コストがあまりにも高いために企業側が新規雇用について非常に慎重になっていると言わざるを得ない状態となっている。
過去の失業保険継続受給者数を見ると、200万件というのが一つの目安となっており、200万件まで増加するとここ10年ぐらいの動きでいうと2017年ぐらいの状況までバックしているということになる。
 2017年頃から利上げが進んだことを考えると、失業保険継続受給者数200万件というのは政策金利の先行きを占う上で重要な数値ではないかと思う。

そういった意味で失業保険継続受給者数が200万件より上で推移している場合は連続的に利下げを行っていく必要性が生じる可能性がある。
今の悪化ペースが続くと来年4~6月頃にこの件数は200万件を上回っていく可能性もかなりある気がする。
そうなると、利下げの効果というのは1年~1年半程度のラグを持って効果が出ることを考慮すると、2025年もそれなりの回数利下げをしていく必要性があるわけであるが、現在のOIS織り込みは半年に1回で合計2回分しか織り込まれていないわけだが、さすがにそれは少なすぎるのではないかと直感的に思うところである。

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