一時1ドル=160円台突破も一転154円台に…為替介入か 神田財務官「ノーコメント」

やはり利上げはなるべく巡航速度でやりたいというのが本当のところだろう。

GWも真っただ中であるが、先週金曜日の日銀金融政策決定会合からドル円が160を一気につけにいく展開となったが、160円に達してから一定程度達成感が出たところでドバっと円高になり、財務省から為替介入が入ったのではないかとなった。
(ただし、実際に為替介入があったのか、その規模はどれぐらいかというのは5月末の統計にならないとわからない)

【ドル円のチャート】
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個人的にはロンドン時間入ってからやるんではないかと思っていたが、日本が祝日の市場が薄いところでしかけにきたというのは驚きであったとともに、これ自体が日銀は為替のために利上げはせんぞという断固たる決意があるものだと感じた。

世間では為替がちょっと円安になったところで利上げを今すぐすべしという人が数多く報道やXでは見受けられるわけであるが、こう発言する人は総じて負債を抱えていない人達である。
日銀が利上げをすると、多くの人が影響があるのはタワマン買っている人達の住宅ローンの金利上昇でタワマン破綻とか煽るわけであるが、この時点でほぼ世間知らずもいいところである。
というよりも現状住宅ローン組んだ人はこの2年のベアで給料が5%以上は底上げされていることを考えれば、金利が0.25~0.5%上がったところで大した話ではない。
どちらかというと影響が大きいのは、同じように短期プライムレートで資金を借りている中小企業なのである。
これまで30年間のデフレの中で、中小企業は苦境に遭いながらもここまで生き残ってきたわけであり、今後賃金上昇の好循環を続ける上ではここで梯子を外してはいけないと日銀の植田総裁は考えているわけで、前々回の金融政策決定会合でも中小・地方企業の実状についてヒアリングをしていると発言していたところからも、相当地方・中小企業に配慮して金融政策を動かさなければいけないと考えているわけである。

通貨危機とか言う人もいるが、別に円から対ドルでの調達金利に変な揺らぎが起きているわけではないので、根本から売られているような話ではなく、相当程度が投機筋のキャリートレード的側面が大きいわけで、これに釣られて利上げした日には歴史的な汚点もいいところである。
本当に金融危機の場合は短期金融市場で対ドルの調達金利がばーっと上に跳ね上がるわけで、そういうのがない時点で所詮今の円安というのはそういうタイプのものである。

また為替介入についても韓国をはじめ、多くのアジア新興国がドル高がきついという発言がでていたことも思い出したい。
円というのは単に日本国民に関係するだけでなく、その流動性の高さからアジア通貨への影響力も大きいわけで、過度に円が売られたり金利が上がったりすると、たちまちアジア通貨もそれに巻き込まれるわけで、その辺も含めて既にイエレン氏にはアジア各国から相談済みというのが実情だったのだろう。

アメリカ側からしてもかなり無理して高金利を維持していて、これから対中国で結束してもらわないと困るアジア各国において多少の為替介入についてはよしとするというところもあるだろう。
ドル高に対する為替介入という点でもドル安に対する為替介入と比べればハードルは低いということもあっただろう。

そういうわけで、今回の為替介入で対ドルで5円ほど押し下げに成功したが、このままアメリカの利下げまで時間を稼げるかどうかが焦点だろう。
前回の為替介入もそうだったが、少なくとも短期間ですぐに剥げないようにマーケットのポジション動向や金利動向の先行きなどの内部情報を考慮してやっているはずなので、まだ今回の為替介入は水準以外に理由(例えば実は市場予想よりもFRBはハト的姿勢だとか)があるかどうかも考えておきたいと思う。

なお、個人的には短期トレードが下手な上に、さらにFXは下手くそなので傍観していただけで、特段エッジの効いた取引はできなかった(泣)

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