【米国市況】ドル153円台突入、CPI予想上振れで-国債利回り急伸
そう事情は単純ではない。
先週の米国CPIの結果と市場の反応について、いまさらだが熟考したことをまとめていきたいと思う。
まず結果自体はもうみなさんご存じの通りやや市場予想より上振れしたわけだが、前年比で見ると総合もコアもともにほぼ前月比からさほどレベルは変わっていないが、少しだけ上がったのを見て市場は緊張感を抱いて、当日は金利の大幅高と株価の下落が発生した。
また、これに伴い、1970年代のようにインフレ再燃で再利上げだあああ!みたいな意味不明な過激路線をつぶやくXアカウントやYoutubeも随分増えた感触である。
具体的に何で上振れたかというとエネルギー・家賃・自動車保険であるが、家賃はそもそもゆったりとした動きだし、その他は金融政策でどうこうという話なんでしたっけ?という話で、やや市場のアクション(特に債券金利)は過剰なのではないかと感じた。
一部ではこれはインフレ再燃だとか、インフレはもう下がらない兆候だとかいう意見が出てきているが、物事はそこまで単純ではない。
世の中は黒白はっきりするものばかりではなく、どちらかというとグレーみたいなものが多い。
クレジットカードの延滞率は上昇している・商業不動産は高金利でプロジェクトはストップしている・銀行融資はそれほど緩んでいない・M2マネーサプライは相変わらず前年比マイナス・賃金上昇率は減少傾向で推移していると少なくとも2022年~2023年前半のようなインフレの上がり方は絶対にしないだろというのは見通しやすい。
マルチプルジョブホルダーが増えていることに加えて、雇用増加も低生産性部門が多く、少しでも経済環境変わると簡単にクビ切られる人であるということも、足下の米国経済の堅調さについては巷で言われるほど強いものではなく、かなり薄氷的なものだと思っている。
こういったことを諸々考えると、FRB当局でさえ足下のインフレ率・雇用環境・経済環境について相当どういう金融政策パスが適切なのか苦悩しているだろうと思う。
デフレの時というのは何もかもが供給過剰な上に、誰も借金して事業拡大投資や消費する意欲が削がれるため、実は意外と難しいことを考えなくても「これはデフレですねぇ」と判断することができる。
しかし、インフレの場合は正常な経済状況の中で、分野によってその状況は相当異なる。
そして、長年多くの金融当局者やエコノミストが苦悩したこととしてどのように分析すれば適切にインフレを計算できるのかは永遠の命題であり、下記参考記事でもその苦悩はわかる。
【参考書籍】
物価とは何か (講談社選書メチエ)
その状況の多様性はCPIとPCEが驚くほど乖離していることからもわかる。
実際に都市部しか分析範囲に入らないCPIとFRB当局が重視するコアPCEの乖離率はインフレ時代は大きくなりがちで、過去は1%前後の乖離率がある中で、現在コアCPIとコアPCEの差は同様に1%ぐらい生じてしまっている。
過去の統計推移を見ると、このズレは最大で1.5%ぐらい発生する可能性が十分にある。
2000年以降はデフレの時代だったので、CPIとPCEの乖離については非常に低水準で推移していたので、ここのところが市場で議論されることはなかったが、今後大幅な乖離が続く中でコアPCEは2%達成していてCPIが達成していない状態の時、皆どういうポジションを取るんでしたっけというのは市場で議論されるようになるだろうと考えている。
【コアCPIとコアPCE(前年比)の推移比較】
というわけで米債金利動向というのは実は現在の市場環境では一番動向予想が難しく、一方で株は金利動向の難しさを背景にしばらく躁鬱的な動きになるだろうが、多くの人が見ているレンジから下に切り下げてみんなが青ざめたところが絶好の買い場になるという前提で姿勢を維持したいと思う。
日々金融市場で思ったことや金融データをつぶやいている村越誠のツイッターはこちらのリンクをクリック
そう事情は単純ではない。
先週の米国CPIの結果と市場の反応について、いまさらだが熟考したことをまとめていきたいと思う。
まず結果自体はもうみなさんご存じの通りやや市場予想より上振れしたわけだが、前年比で見ると総合もコアもともにほぼ前月比からさほどレベルは変わっていないが、少しだけ上がったのを見て市場は緊張感を抱いて、当日は金利の大幅高と株価の下落が発生した。
また、これに伴い、1970年代のようにインフレ再燃で再利上げだあああ!みたいな意味不明な過激路線をつぶやくXアカウントやYoutubeも随分増えた感触である。
具体的に何で上振れたかというとエネルギー・家賃・自動車保険であるが、家賃はそもそもゆったりとした動きだし、その他は金融政策でどうこうという話なんでしたっけ?という話で、やや市場のアクション(特に債券金利)は過剰なのではないかと感じた。
一部ではこれはインフレ再燃だとか、インフレはもう下がらない兆候だとかいう意見が出てきているが、物事はそこまで単純ではない。
世の中は黒白はっきりするものばかりではなく、どちらかというとグレーみたいなものが多い。
クレジットカードの延滞率は上昇している・商業不動産は高金利でプロジェクトはストップしている・銀行融資はそれほど緩んでいない・M2マネーサプライは相変わらず前年比マイナス・賃金上昇率は減少傾向で推移していると少なくとも2022年~2023年前半のようなインフレの上がり方は絶対にしないだろというのは見通しやすい。
マルチプルジョブホルダーが増えていることに加えて、雇用増加も低生産性部門が多く、少しでも経済環境変わると簡単にクビ切られる人であるということも、足下の米国経済の堅調さについては巷で言われるほど強いものではなく、かなり薄氷的なものだと思っている。
こういったことを諸々考えると、FRB当局でさえ足下のインフレ率・雇用環境・経済環境について相当どういう金融政策パスが適切なのか苦悩しているだろうと思う。
デフレの時というのは何もかもが供給過剰な上に、誰も借金して事業拡大投資や消費する意欲が削がれるため、実は意外と難しいことを考えなくても「これはデフレですねぇ」と判断することができる。
しかし、インフレの場合は正常な経済状況の中で、分野によってその状況は相当異なる。
そして、長年多くの金融当局者やエコノミストが苦悩したこととしてどのように分析すれば適切にインフレを計算できるのかは永遠の命題であり、下記参考記事でもその苦悩はわかる。
【参考書籍】
物価とは何か (講談社選書メチエ)
その状況の多様性はCPIとPCEが驚くほど乖離していることからもわかる。
実際に都市部しか分析範囲に入らないCPIとFRB当局が重視するコアPCEの乖離率はインフレ時代は大きくなりがちで、過去は1%前後の乖離率がある中で、現在コアCPIとコアPCEの差は同様に1%ぐらい生じてしまっている。
過去の統計推移を見ると、このズレは最大で1.5%ぐらい発生する可能性が十分にある。
2000年以降はデフレの時代だったので、CPIとPCEの乖離については非常に低水準で推移していたので、ここのところが市場で議論されることはなかったが、今後大幅な乖離が続く中でコアPCEは2%達成していてCPIが達成していない状態の時、皆どういうポジションを取るんでしたっけというのは市場で議論されるようになるだろうと考えている。
【コアCPIとコアPCE(前年比)の推移比較】
というわけで米債金利動向というのは実は現在の市場環境では一番動向予想が難しく、一方で株は金利動向の難しさを背景にしばらく躁鬱的な動きになるだろうが、多くの人が見ているレンジから下に切り下げてみんなが青ざめたところが絶好の買い場になるという前提で姿勢を維持したいと思う。
日々金融市場で思ったことや金融データをつぶやいている村越誠のツイッターはこちらのリンクをクリック
無事に鞘寄せされる結果となった