NY株ハイライト JOLTSに揺れた市場 米金利低下で買い広がる

ようやく金融引き締めが雇用に効き始めた。

今週になっていくつか来月雇用統計前に前座的に見物される米国雇用関連指標があった。
一つ目はJOLTS求人数だが、市場予想950万件に対して882.7万件と大滑りな結果となった。
市場予想より大きく下に滑ったが、これはIndeed親会社であるリクルートの決算コメントから、これだけ滑ったとしても不思議ではないなと感じる。

【過去参考記事】

米国の雇用需給緩和が続いていることを示したリクルートの決算

この統計結果はこれまで過度に米国債金利上昇におびえていた市場に安心感を与えて、米国株式市場の上昇に貢献してくれた。
また、単にJOLTS求人が滑っただけでなく、その後のADP雇用統計も滑った。

【ADP雇用統計ページ】
https://adpemploymentreport.com/

ADP雇用統計の滑り方は、市場予想19.5万人に対して17.7万人と、これまでは市場予想に対して上振れるケースが多かったが、久々に大滑りした。
ただしADP雇用統計はあまり雇用者数の数字自体は当てにならないと言われることが多いため、市場はどちらかというと精度の高いADP雇用統計で見れる給与の伸び率に注目していた。
Job-Stayers、つまり転職していない人達の給与伸び率はYoY+5.9%、Job-Changers、つまり転職した人の給与の伸び率はYoY+9.5%であった。
これは両者とも2022年9月に伸び率ピークを付けた後は着実にじりじり低下していることを示しており、ここもとは毎月YoYの伸び率が0.2~0.3%ずつ低下してきてくれている。
つまり、あと10ヵ月ぐらい現在の金利水準を続ければ、賃金インフレも2%台に押しとどめることができる。
これはCMEで見れる政策金利予想で、政策金利引き下げ開始が2024年6月という予想と整合性がある数字だと思われる。

雇用が下に滑り始めたのにも理由はいくつかあるだろう。
これまでFRBが一生懸命景気を冷やすために金融引き締めをしてきた中で、米国民の過剰貯蓄が尽き始めた・住宅ローン金利が高くて中古住宅が全然売れない・米国人給与が高すぎて輸入した方がよっぽど米国内生産よりコストが安いなどいくつか挙げられるが、これが複合的に絡み合って米国人を雇うコストがリターンに見合わなくなってきたために、新規雇用を手控えてきているということである。

そういった意味で、ここにきてようやくFRBの金融引き締め効果が目に見える形で効果が出始めていると評価でき、素直にソフトランディングシナリオのパスが見えてきたことから、米国債金利低下と株高が期待できる地合いになりつつあると思われる。

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