ユーロ圏8月PMI、サービス業にも鈍化の兆し

やっぱり欧州の景気鈍化が米国より早そう。

米国では未だ景気の足腰がしっかりしていると見られており、さらなる金融引き締めが必要みたいな話が出ている。
(もちろん中古住宅販売状況とか諸々見ると、金融引き締め効果は徐々に出ていると見るのが一般的だが)
一方で、投資家のスコープから最近外れがちで、話題になることが少なくなっているのは欧州地域であるが、個人的には欧州はグローバルな金利上昇のストッパーとなる本命ではないかと最近考えている。
理由としては上記日経新聞の記事にもある通り、既に欧州景気はかなり弱くなっているように見えるからである。
少なくとも米国よりは明らかに悪い。
今回は米国と欧州の景気状況の差はどこで生まれているのかをまとめていきたいと思う。

欧州と米国の違いはいくつか挙げられる。

一つ目はコロナ禍の過剰貯蓄である。
米国ではご存じの通り、国民に直接金をばらまく形でコロナ禍の支援をした。
しかもバラマキ方は世界の中でも最大であった。
このために過剰貯蓄が生まれて、これが金融引き締めをしているにも関わらず、中々消費が落ちない要因となっている。
一方で欧州は国民に直接ばらまく量は少なく、どちらかというと失職しないように企業側に補助金を出してしのいでいた。
このこともあり、国民には過剰貯蓄がない。
そのため既に欧州の消費は落ちてきていることは、以前にブログでも記事にしていた。

2つ目は財政支出の違いである。
これも以前にブログで書いた通り、現在米国は脱中国のために国内産業への補助金を大量に出していることもあり、財政支出がかなり拡張的に推移している。
一方で、欧州についてはIMFの予想データを見る限り米国ほどの支出は行われていない。
一部フレンドショアリングなど、やはり米国と同様に脱中国のための製造業移転補助金などは行っているものの、EUの財政ルール縛りもあって支出動向はIMFのデータを見ても例年のレベルに留まる。
本当にそうなのかと思う人はIMFのワールドエコノミックアウトルックのデータベースを見てもらいたい。

【参考ページ】
https://www.imf.org/en/Publications/WEO/weo-database/2023/April

こうしたことから、金融引き締めの影響は米国より早く出てきているように思われる。
当初は米国より政策金利引き上げのピーク時期は後ろではないかという話も年初時期にはあったが、既に政策金利はピークとなったという見方が市場のコンセンサスになっている。
こうしたことからみんな米国に目が向きがちであるものの、実は欧州の方が景気鈍化に伴う金利低下は早い可能性があるのではないかと考えている。
現在のグローバルな金利情勢は中国は金利低下の先頭を走っており、日米で金利上昇圧力が働いている中で、欧州は切りあがっているように見えるが米国ほどの金利上昇にはなっていない。

【ドイツ10年国債金利のチャート】
タイトルなし


そのため、欧州が金利低下に転じると、中国に続いて世界の金利アンカーとなる地域が増えるため、よりグローバルな金利安定感につながると思われる。

なお、欧州という話を今回したが、欧州の一か国であるイギリスについては働かないくせに労働スト起こして賃金引上げムーヴメントを起こしており、景気が落ちると同時に賃金がまだ上昇し続けている、こちらは巷でいうところのスタグフレーションチックな現象が起きており、少しイギリスについては大陸欧州とは異なると考えておいた方が良いように思われる。

【過去参考記事】

イギリスのインフレスパイラルはかつての英国病になるのか?



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