日銀、金利操作を修正 長期金利0.5%超え容認

予想外で発表直後こそかなり動いたが、市場インパクトは薄れていくだろう。

ここまでFRB・ECBとほぼ無風で市場は通過していたのだが、注目の日銀金融政策決定会合で深夜に日経新聞で金融政策修正リーク記事が出てきたことに加えて、実際にYCCについての枠組みは一部修正されたということで、発表直後こそ市場は円高・株安・国債金利やや上昇とヒステリックな動きとなった。
しかし後場になって徐々に材料を消化したこともあり、落ち着いてきたということもあり、今回は何についてどう反応したいのかまとめていきたい。

今回の日銀の金融政策修正については、YCCについて10年国債を0.5%で連続指値オペをしていたものを、上限1%に引き上げた。
これによって、必ずしも10年国債0.5%で日銀は買い入れを行う必要性はなく、10年国債が1%到達すれば無制限購入しますよと、上限金利を変更してきた。
ただし、10年国債金利0.5%を中心値とし±0.5%を許容幅とするとしており、国債買い入れ量の枠は変更しておらず、0.5~1%の間においては臨時オペなどで随時日銀が適切だと思う範囲でコントロールを継続するという姿勢を示した。

市場は最初のYCC上限変更を見て、かなり過剰反応をした。
しかし、これは確かに先行きインフレが想像よりも伸びてしまった時の対処というのもあるが、同時にデフレに戻りそうになってしまった時も臨時オペをぶつけることによって10年国債金利を押し下げるオペレーションができるよう両建てな政策になっており、必ずしも日銀としては金融引き締め一辺倒というシグナルではないと個人的には考えている。
どちらかというと、全面的緩和とも引き締めとも捉えられないようにかなり注意深く決めたものという見方ができるだろう。
2023年インフレ率見通しは引き上げたが、2024年のインフレ率見通しを若干引き下げたことや2025年インフレ率見通しが変わっていないことからも、かなり微修正の範囲を逸脱しない修正だろうと思う。

この措置を見ると、外国人はすぐに日本国債ショートトレードを1%まで行うのではないかと考えている人もいるが、それはかなり難しい。
10年金利については0.5~1%の水準の間で、日銀が適切だと思うレベルでの推移をさせるという意味合いであり、問題は日銀はこの0.5~1%の間はどこが適切なのかというのは明らかにしていない。
今年1~3月にあったようなあからさまな外国人ショートが起きた時は、日銀が外国人がショートのために借り入れた国債の借入コストを締め上げることによって踏み上げ祭りを実行し外国人投資家に大損を食らわせる必殺技があるため、カレント銘柄で大規模にショートはできず、せいぜい先物でちょこちょこショートするしかない。
本当に10年国債利回りが1%に到達するには、邦銀勢のポジション削減売りが必要であるため、かなり距離があるように見える。

また為替についても円ショートトレード一辺倒のお祭りはこれにて完全終了となった。
ドル円140円で10年JGB利回り0.5%+欧米金利ピークという組み合わせだったところから、場合によっては10年JGB1%+欧米金利ピークという組み合わせまで可能なため、少なくともドル円145円より円安水準を攻めるのは非常にハードルが高くなった。
(140円で毎回円暴落煽る投資系インフルエンサーはいつも天井フラグ)
とはいえ、じゃあ過度に円高になるかというと、デフレもケアしながらの政策調整であることからもそれは難しく、為替介入後ひろゆき信者絶滅ラインである130円以下というのも難しく見える。
このことからドル円レンジは130円~143円程度の一定レンジで動くイメージ感でよさそうだ。
そういった意味では円安に依存したトレードは完全に旬が過ぎたと言えよう。

日本株は発表直後こそかなり激しい反応をしたが、上記で述べた通りインフレにもデフレにも対処可能な枠組みにしただけであり、これを持って当面政策変更の必要性がなくなったことを鑑みると、一通り間違って株を売っちゃった人達のポジションを飲み込んで大型・高配当・低PER・低PBR銘柄を中心に再度上昇していくものと見込む。
また、木曜日深夜はこの日銀の金融政策修正報道で米国株が調整したが、これも是正されるだろうと思われる。

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