〈新年度業績を聞く〉住友林業社長「米住宅、年後半に改善」

もっと物事を単純に・楽観的に捉えるべきなんだろうなと思う。

住友林業の決算質疑応答スクリプトを見ていると、足下の米国住宅市場について興味深いコメントがあったので、そのことについて今回はまとめていきたいと思う。
自分の目で決算コメント確認したい人は下記リンクから確認してもらいたい。

【住友林業IRページ】
https://sfc.jp/information/ir/

そもそも、なぜ住友林業の決算スクリプトを見ているかというと、住友林業は日本企業の中で米国での戸建て分譲事業をがっつりしているという意外性のある企業で(まあ四季報毎回見ている人はご存じの話だろうが)、日本語で米国戸建て分譲事業の状況を解説してくれるため、一つの参考になるなと思い、個人的には毎回確認している。

その中で興味深いコメントは以下の通りだ。

・市況は下げ止まり・東海岸が堅調
コメントの中で、昨年は市況が落ち込むとともにどこまで金利が上昇するか不明だったということや、金利上昇に伴ってローン審査が下りなかった物件が多かったということもあり不調であったが、今年はお客が新しく動き始めていて、需要に見合った在庫確保ができている。
また、東海岸の方が状況は良いということで、やはりリストラが進行中のIT企業が集中している西海岸より、業種が分散している東海岸の方が状況は安定しているとコメントされている。

・地銀融資が少し絞り込まれているが、集合住宅は比較的堅調
足下の米国地銀不安もあり、やはり地銀からの融資が承認されづらくなっていて、JV形式で投資目的の案件について動きが鈍いとコメントされている。
ただし、オフィスと比べるとずっと集合住宅動向は堅調であり、慎重ではありつつも、そこまで悲観視していないように見える。

・これ以上金利が上昇しないと見越した客が動き始める
ここが一番重要なポイントだろうと思う。
前年度第4四半期では一定の解約が発生して、さらに受注が落ち込んだこともあり厳しかったものの、今期はもう住宅ローン金利が現状の水準以上は上昇しないだろうという認識が顧客に広がって、6%台という高金利にもかかわらず契約が進み始めたとコメントしている。
理由としては中古住宅流通量は少なく、新築物件需要が相対的に強い。
しかも既存の住宅保有者は低金利時代に住宅購入しており、今の住宅を売却すると金利が高い住宅ローンへの借り換えとなるため、売却案件が増えず、中古住宅マーケットは低調ということである。

ここを見た時にピーンとこなければ、ファンダメンタルズ分析はできていないも同然である。
サブプライムローンの時は高金利で契約していた上に、変動金利ローンだったこともあり、住宅価格が下落するとともにどんどん差し押さえられる形になって住宅市況は崩壊した。
しかし、今回は多少住宅価格が下落していても、住宅を売却しないという決断ができているわけで、ようは差し押さえられるような低属性な購入者はいないし、投資用においても大してレバレッジをかけてマーケットに挑んでいるプレーヤーはいないということである。
つまり、投げ売らざるを得ないプレーヤーは少ないのである。
加えて、6%台の住宅ローン金利でも買いたいという購入希望者が一定いるということで、これから住宅を購入しようという人も健全な財務状況であることがうかがえる。

以上から以前のブログ記事で書いた通り、サブプライムローンと今の状況は大きく異なり、サブプライムローン型の経済破綻はまず起きえないだろうという推測について確信を得ることとなった。

【過去参考記事】

サブプライムローンショックと現在の住宅市場環境の大きな違いを考える

さらに重要なことは「もう金利が上昇しないことからリスク選好的な動きになっている」ことにある。
これは現在の株式市場でも同様ではないだろうか?
上記住宅市場コメントでは実質的に「もうこれ以上金利が上昇しない=投資した場合の負担が読める」ということから皆が住宅購入に動き始めているのである。
株も、企業の借り入れ負担はこれ以上上昇しないんだから、株買ってOKだろぐらいの軽いノリで動いているわけである。
悲観論者が利上げが停止されて利下げした後に株価が暴落すると念仏を唱えている間にリスクを積極的に取っている人は動き始めているのである。
結局、みんな資産が投げ売られるクレジットクランチはない前提で動いているということである。
なので、クレジットクランチがない前提で考えているなら、今はリスク資産は「買い」という判断で良いと思う。
なお、この考え方については下記を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
景気のハードランディングはどのように発生するのか?米国景気はハードランディングするのか?


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