焦点:銀行業界から「FRBはいったん利上げ休止を」の声

OISの解釈は難しくなりつつある。

米国地銀問題とクレディスイスの救済合併問題で揺れに揺れている金融市場であるが、これを受けてCMEのOISから確認できる政策金利見込みを見ると、3月25bps利上げ確率がこれまで100%超えだったのが気づけば半分ぐらいまで下がっており、さらに言えば25bps利上げしても6月から利下げをするという織り込みさえ発生してしまっている。

【CMEの政策金利見込みデータ】
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https://www.cmegroup.com/markets/interest-rates/cme-fedwatch-tool.html?redirect=/trading/interest-rates/countdown-to-fomc.html

これだけ見るとついにリセッションかという話であるが、経済的にはそうでも相場的には金融ショック的な下げが起こるかどうかは今のところ微妙であり、動きを見る限り金融ショックというのとは性質が異なる動きをしている。

金融ショックというのは誰もが強制的に資産を投げ売りさせられる羽目になっている状態をいう。
しかし、足元の相場はそれとはかなり様相が異なる。
その最たる動きを見せているのが、ゴールドとビットコインの値動きである。

【ビットコインのチャート】
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これらが上昇している背景というのは、もちろん金利低下と金融引き締め終了による市場への資金供給拡大期待が出ているからである。
しかし、金融ショック的なのであればビットコインなんてのは真っ先に売られるべき資産であることは以前のブログ記事でも書いてきた内容である。

【過去参考記事】

仮想通貨の価格上昇と金融市場との関係性を改めて考察


結局足元の相場は中央銀行に対してもうこの辺で手打ちで十分でしょう、だからさっさと金融政策の方向転換してねという催促相場となっているわけである。
特に、これを強く反映しているのは2~3年債で、一時期はパウエル議長がイキって5%を超えたところから一気に3.7%割れまで持っていかれた挙句に、これまでずっと相場の焦点にあたっていた逆イールドの幅は2y-10yで40bpsまで縮小してきており、デフレーショナリーを正当化する動きとなっている。
ようはもはや市場の焦点はインフレでなく、銀行の融資引き締めによるデフレを見ていることになる。

一応まだ3月に25bpsの利上げ確率はあるものの、6月時点で1回分の利下げを織り込んでしまっており、このままでは3月利上げしたとしても記念的な利上げになってしまうが、政策金利ってそういう記念的なもので決めるんでしたっけ?という話になる。
データディペンデントと突っぱねることは可能としても、さらなる催促を受けた時に果たして耐えられるのかという話にもなる。
そう考えると、まだ5月分まで含めると25bps利上げ確率は80%ぐらいあるものの、据え置き期間なしでの政策金利を動かすということはあり得るのかという話にもなってしまい、据え置くことが一定の合理性を伴う。

問題はFRBが政策金利据え置きにする理論が立つかどうかである。
単に金融システムに脆弱性が見れたからというだけでは、これまで戦ってきたインフレとの整合性が合わないので難しい。
説明としてありうるとすれば、フォワードルッキングでいうとインフレーションスワップを見れば7~8月のCPIは3%台前半はかなり高い確度であるわけで、これを理由に先行きインフレ率を見守ることに一定の合理性があると言い切れる可能性はある。
あるいは25bps利上げはするが相当ハト派的なコメントをして市場の動揺を抑えるという可能性もあるが、じゃあわざわざ25bps利上げしなくてもよくない?という話にもなってしまい、いずれにしても次回FOMCはどういう金融政策判断をするのか最大注目点になっていると言えよう。

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