シリコンバレー銀行破綻でFRB規制強化へ 中堅行が焦点

SVB・シグネチャー銀行の破綻については、短期金融市場を見る限りは落ち着いたものの、これによって様々な環境変化が生じた。
その一つはこれから米国で起こる米国金融当局によるしばき上げである。
今回のこの破綻ははっきり言ってしまえば金融当局・ようはFRBの大チョンボだったと言える。
理由として、銀行の管理管轄はそれぞれの連銀であり、その元締めがFRBであり、SVBのようなド素人みたいな基本的なALM管理さえできていない銀行が存在していたことは金融当局の汚点中の汚点と言える。
これによって、現在実質的に米国に存在する全銀行に対して監査が入っているようで、半沢直樹でいうと大量に黒崎監督官が全銀行に派遣されるわけである。

そして全銀行を検査をし直した後に起こり得そうな規制強化は以下の通りだ。

1、ストレステストの対象範囲変更
今回のSVB破綻ははっきり言えばストレステストを行っていれば未然に防げた可能性が十分ある案件であった。
SVBの有価証券ポートフォリオは明らかに金利上昇に弱く、ポジションが大きかった割にノーヘッジであったと、
トランプ政権下で緩和されたストレステストの範囲は再度見直される可能性は十分に高く、テスト対象の資産金額はトランプ前の数値に引き下げられるものだろうと思う。
(なお、トランプ前の規制だとSVBはストレステスト対象行)

2、金利上昇による有価証券含み損がどこまで許されるかという議論の再燃
現在銀行は大手も中小ももれなく投資有価証券について含み損を抱えている。
その原因はもちろんFRBの金融引き締めによる金利上昇にある。
ただし、銀行自体は余剰資金を債券に投資するのは非常に一般的な行為であり、現況下である程度の含み損を抱えていることはしょうがない側面が大きい。
それに満期まで持ち込めば一般的には元本が返ってくるので、しっかり預金確保が続けられれば大きな問題が生じるわけではない。
しかし、今回のSVB破綻をきっかけに、金利上昇耐性や含み損については満期保有目的といえどもどこまで許容されるべきなのかという議論は出ざるを得ないだろう。
市場ではまずネクストSVBを発見するために、CET1に対して本当にどれだけの含み損を抱えているのかを再検査されるだろう。

3、預金流出可能性の見直し
 ALMミスマッチによるSVB破綻はALM管理という基礎中の基礎動作がなされていなかったことによる。
そのため、検査によってどれだけ預金流出可能性があるのかをチェックされるだろう。
特に今回のように安定的なキャッシュフロー源がない企業による預金は安定性が薄いとして、是正が勧告されるだろう。

こうした隅から隅までの検査を受けている間は、銀行にとっては余計なことは一切できない期間になるわけで、貸出態度の厳格化を生み出すわけで、実質的にはシャドー的な金融引き締め効果が大きく出る効果がある。
これが米国の期待インフレ率を引き下げる効果を生んでおり、5年や10年ブレイクイーブンを2.5%以下に引き下げる効果を生んだ。
再びこの期待インフレ率が2.5%より上にならない限りは、基本的に再度のFRBによる過度な追加利上げ・またそれに伴った株価下落というのはさほど心配する必要性はないと思う。
特にナスダックはこの期待インフレ率の低下にもっとも効果が出ており、当面この期待インフレ率とにらめっこする形で相場は進展していくものと思う。

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