Most rapid grocery apps fail to deliver for investors
参入障壁の少なさと短期間でのバブル発生・崩壊サイクルで風前の灯になる典型例。
上記FTの記事ではコロナ禍で爆発的に市場が拡大したことにより有象無象が参入したデリバリーアプリ企業について、ここもと需要が低下していることに加えて参入企業が多すぎて、とてもではないが投資資金が回収できる見込みが立たなくなり始めているということを背景にこれまで熱心に投資してきたPEやエンジェル投資家達が引き始めているという、デリバリーアプリ企業からするともはや風前の灯という状態になりつつあると報道されている。
既に上場しているデリバリーアプリ企業も上場来高値から株価80%下落なんてのはザラにある状態である。
【DELIVEROOの株価チャート】

これはごく短い間でバブルとその崩壊過程を辿った典型例として教科書に載せたいものだと思えるような内容だと個人的には考えている。
デリバリー企業はコロナ禍の外出規制や飲食店営業規制を背景に需要が急拡大したということで、有象無象の企業が参入して各種キャンペーンを打ちまくることによってシェアの拡大を狙ってきた。
しかしコロナ禍から2年半が経ち、中国以外の地域は国際的な往来の自由化も復活し、さらにリモートワークできる以外の仕事は完全復帰した。
リモートワークしている人間もデリバリー企業に頼むと無駄に配送料かかるし、一日中家に引きこもっているとやってられないということでわざわざ飲食店に出かけて家族や友人と食事をするのが再びメインになってきており、デリバリーを頼むということ自体がコロナ禍前とほぼ同じ意識にまで低下していっている。
そのためここにきて需要の伸びが鈍化どころか、需要自体が減少に転じ始めており、この時点で投資者はもはやまともなリターンは出せないと見切りをつけて、新規出資停止や場合によっては経営者をド詰めしてなんとか投資資金を回収しようと画策している。
ようは新しい資金を調達できなくなっているのである。
さらにデリバリーアプリ市場の問題点は、みんなやっていることは大して違わない・差別化要素がないということにあり、生活必需品でもないと需要動向が不安定かつ参入障壁が少ないというレッドオーシャンもいいところということで、短期間でバブルとバブル崩壊を体験しているということになる。
結局コロナ禍でぽっと出てきて破壊的イノベーションと謳っている企業の多くは一時的なバブルと参入障壁の低さから大量の企業が参入した挙句、誰も投資回収できないぐらいに短期間でレッドオーシャンになって全員死亡となっている。
単に大量の企業が参入しただけでなく、途中から資金力のある大企業が参入したというケースで、大企業以外誰もリターンをあげられないというケースも多数発生している。
採算性を無視して現金を燃やし続けながら事業を拡大するのは、誰でもできるとは言わないがどんぶり勘定経営者でも行うことが可能だ。
しかし、結局現金燃やし続けながら事業をしていいんだと多くの経営者が参入してきて競争過多になった状態から経済環境が変化して需要が減少したなんて日には、投資家はこんなの投資回収できる見込み立たないし追い銭するわけにはいかないと追加出資を拒み、場合によっては少しでも投資資金を回収しようとド詰めしてくる。
本当にその企業が良いかどうかというのは金がじゃぶじゃぶにあふれている時ではなく、金がないとなった時に耐えれるだけのポテンシャルがあるのかどうかというところにあり、打ち上げ花火ではなく永続性のある事業を経営者はきちんと目指していたのかどうかが今問われていると思う。
あとはこれらを考えると現在株価が底堅く推移している企業というのは、やはりかなり参入障壁が高い・事業に永続性が高い・現在需給がひっ迫しているときちんとファンダメンタルズに裏付けされた銘柄がほとんどで、2020年のバブルの時とは違い非常に納得感のある株価動向がほとんどだと思う。
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