銀行、苦肉の国債回帰 昨年度、保有残高5年ぶり高水準 コロナ下で預金急増

貸出先がなければ、市場有価証券への投資を増やすしかない。

ここで銀行のビジネスモデルをきちんと知っておきたい。
銀行は預金を集めて、それを別のどこかに貸し出してりざやを稼ぐビジネスモデルである。
この時に貸出金額が預金より多い状態をオーバーバンキングと呼ばれて、足りない分を市場で社債を発行することによって埋める必要性があるため、一般的には構造的に問題があると見られるため、通常銀行は貸出量が預金より少なくなるように調整する。

しかし、 逆に預金が貸出量を大幅に上回るということもある。
日本の銀行はこの状態が常態化している。
しかし、預金を受け入れるのを拒否することはできず、預かった分の預金については金利コストを支払う必要性がある。
なので、この預金が貸出量を上回った分の余りについては一般的な個人投資家のように市場へ投資をして銀行は利益を稼ぐのである。
ただ、銀行には金融当局から規制をかけられており、自己資本に対していくらまでしかリスクは取ってはいけないというルールがある。
なので投資といっても無暗にリスクの高いものに投資を行うことはできず、例えば株にも投資をするが、リスク掛け率が大きすぎるため無暗にできるものではない。
なので、まず資金が余った銀行が投資をするものは国債になる。
日本の銀行なら日本国債・米国債・EU通貨を使っている欧州国債・英国債・オーストラリア国債などがその中心になる。
銀行は時と場合に応じて国債よりリスクの高いものにも投資をしており、国債に次いで量が多い投資として社債・CLOが挙げられる。
その次はREITで最後に株やその他仕組み商品となる。
銀行はバランスシートと規制の特性上、満期まで持てば利益が計算できる債券をポートフォリオの主体としている。

そして上記日経新聞の記事では結局コロナ禍で集まった預金の貸出先がなく、国債などの有価証券に資金が集まっていることを報じているのである。
ちなみに日本国債に買いを回しているということは、米国債にも投資を回しているだろう。
米国債の場合為替リスクがあるじゃないかと思う人がいるかもしれないが、それは為替リスクをヘッジすればリスクゼロで投資できるため、日本国債と同様銀行は大量に米国債を保有している。
為替ヘッジしても十分利ザヤにおつりが来るのであれば喜んで銀行は積み増しをするだろう。
現在米国債10年の金利が1.6%、為替ヘッジコストが米ドルで0.2%でも払えばいいことを考えると、日本国債10年0.07%に投資するよりその時点だけを見ればリターンが高い。
もちろん米国債に投資する際には日本より金利上昇リスクがあるため、今後の米国の金融政策動向や経済動向・為替ヘッジコストの動向のそこそこ先の未来のシナリオを想定しなければいけない。
ただ現状で米国債については手前の金利調達がすごく安くて、一方で後ろ側のイールドカーブが立っていて、歴史的に比較するとかなり厚い利ザヤが取れる環境であることを考えるとインフレが懸念はされているが、普通にみんな米国債ポジションを積み増していることが想定される。

このように債券の金利や社債の利回り動向の予想を行う際には、金融機関(銀行だけでなく、生保なども含む)がどのようにポジションを振り分けようとしているのかを知っておくことはプロなら常識中の常識であるので、知らなかったという方は一度調べてみるといいと思う。
このブログでももう少し、銀行の自己勘定運用については整理がてら記載しておこうと思う。

ちなみにこうした債券周りは株と比べて市場規模は圧倒的に大きく、機関投資家がメインプレーヤーであることから、債券市場の揺らぎは大手機関投資家のポジションが揺れている最中であり、金融市場に大きな変動を起こす一要因になりがちである。

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