Santander to repay capital bond one year after spooking market



爆発的に将来のコールスキップリスクが増大している。

スペインの大手銀行サンタンデールが昨年初回コールをスキップしたAT1債について、新規発行したほうがコストが安いということで新発債を発行してコールスキップしていたAT1債をコールする予定だと報道された。
この事象についてどういうことなのか少し解説する必要性があるだろう。

AT1債とはこのブログでも何回か記事にしている通り、満期がなく、いつでも利払いを停止されることが可能であり、債券の中でも限りなく弁済順位が一番下の社債である。

<過去参考記事>

ドイツ銀行がいきなり破産申請をするということは現状ありえない

また金融ショックなどにより当該金融機関が窮地に陥った場合には自国金融当局の命令によって元本の削減や株式転換を命じることができ、足りない自己資本を債券保有者に負担させることができるスキームになっている。
ただし、その分上乗せ金利もたっぷり乗っており、昨今の金利低下による運用難の中投資家が増加している市場でもある。

昨年2019年2月にサンタンデールは初回コールを迎えたAT1債についてコールスキップを行った。
初回コールスキップを行うと投資家にとってはいつコールがかかるかよくわからなくなるケースが多々あるため、社債の価格変化リスクにおいてスプレッド変化による価格感応度の計算が非常に複雑になる。
(例えば1年後償還するのか10年後償還するのかでスプレッド10bps変化の価格感応度が大幅に変わる。)
そのため投資家としては初回コール日にコールしてくれることを期待するのだが、バーゼル3規制以降ステップアップ発行が禁じられたことから金融機関は初回コール日にコールするのかどうかをシビアに経済合理性で見てくるようになった。
そういった意味で、サンタンデールがコールを見送ったのはそちらの方が得だと思ったからだろう。

しかし、その後社債市場での投資家の買い意欲が増大していったことにより、新しく社債を発行したほうがコストが安くなりそうという観測が出始めてきた。
去年コールスキップしていたAT1債の上乗せ金利は541bps、該当社債格付けはBB+である。
おそらく足元で5年コールのAT1債を出せばもっと少ない上乗せ金利で発行できるだろう。
だからサンタンデールは既存AT1債を償還し、新しくAT1債を出すという決定をしたのだ。

しかし、これは逆にAT1債のリスクが以前よりも高まっているということを意味する。
上述したようにAT1債にはコールスキップされてスプレッド変化による価格感応度が大きく変わるリスクが存在する。
つまり低スプレッドで発行されたAT1債は高スプレッドで発行されたAT1債よりもコールスキップされるリスクが大きくなるのだ。
この低スプレッド期間が長ければ長いほど、多くの金融機関が高スプレッドAT1債を償還し、低スプレッドAT1債を発行するだろう。
最終的に帰結するところは、市場に低スプレッドだらけのAT1債市場が生まれ、次回の不況時に一気に市場のスプレッドが拡大することにより、ほとんどのAT1債がコールスキップされることを前提とした債券に変わってしまうということだ。
しかもその後コールされる確率も高スプレッドAT1債よりも極端に低くなる。
そのため、一斉に売りが殺到し流動性危機に陥ることは火を見るより明らかだ。
この変化はどうしても不可逆的であるため、おそらく実際にスプレッドの拡大が起こったらまさに買い手がつかない地獄絵図が見れる市場へ早変わりするだろう。