Tewoo Debt Plan Shows China Is Allowing State Firms to Fail

助かるLGFVと助からないLGFVの選別が始まる

中国経済の一番大きな癌としてリスク所在がはっきりしてきたLGFV(地方政府投資ビークル)について昨今続々とデフォルトの話を耳にするようになった。
直近で最も大きなデフォルトとして天津省傘下のLGFVであるTEWOOグループがとうとう天津省の支援を得られずバンザイすることになった。
このLGFVは1000億円以上のドル社債を発行しており、数カ月前まではフィッチから投資適格と認定されていたのが、資金繰りが苦しいというニュースが伝わってからあっという間にB格まで真っ逆さまに格付けがおち、そしてあえなくデフォルトとなった。
この時点でまともにフィッチは中国LGFVの状況なんて見ずに格付けつけてるだろという話もあるが、この問題はとりあえず今はわきに置いておこう。

このTEWOOグループについては既に前からデフォルトしそうだという話はあったし、自分も何回か記事にしていたがとうとう天津省の支援を受けられずデフォルトしたかという感想しかない。

<過去参考記事>

中国天津省傘下のLGFVが本当にデフォルトしそう


そもそもLGFV自体が親会社である省から支援を得られることを前提としたファンディングアピールをしてファンディングをしていたので、特に大きなLGFVがデフォルトするとLGFVに対する選別眼は相当厳しくなるものと推察される。
今回のTEWOOグループのデフォルトではドル建て社債の債務再編がなされており、ニュースを見る限りでは以下のような条件のようだ。
詳細は下記SGXにおけるアナウンスを見てほしいが、見方がわからないという方のためにざっくりと債務再編条件をまとめる。

SGXでアナウンスされているTEWOOグループの債務再編案詳細

2019年償還予定社債・・・天津省傘下の別投資ビークル発行の満期2024年のゼロクーポン債に額面100につき66.7の割り当てで交換
2020年償還予定社債・・・上記と同様発行体から満期2026年の0.15%クーポン債に額面100につき57.3の割り当てで交換
2022年償還予定社債・・・上記と同様発行体から満期2029年の1.55%クーポン債に額面100につき53の割り当てで交換
永久劣後債・・・上記と同様発行体から満期2039年予定の1.6%のクーポン債に額面100につき36の割り当てで交換

つまり一応債務交換先は天津省傘下の投資ビークルが保証するが、50%以上の債務カットになるということのようだ。
ざっくり計算すると普通社債でクーポン込みで回収率40%、永久劣後債だと20%ぐらいのイメージになるかなと感じる。
上記のようにもはや全てのLGFVに100%の地方政府の暗黙保証があるという考え方はできず、これから自力で立てるLGFV、重要性を鑑みて助けてもらえるLGFV、助けてもらえないLGFVで峻別されていくものと思われる。

そこで一番の問題はちゃんと中国政府がこうしたLGFVに多大な融資をしている中小銀行を助けるかどうかだ。
以前記事にしたが、中国の大手銀はインターバンクを通じてシャドーバンキング的に中小銀行に資金を貸し付け、中小銀行はLGFVに暗黙の地方政府があることを前提に融資を行い、焦げ付き、これが目下中国の中小銀行の不良債権が爆増している原因となっている。

<過去参考記事>

BISの中国シャドーバンキング分析レポートが秀逸だったのでまとめてみました。


もし中国政府がここの救済コントロールをミスった場合にはインターバンク金利が跳ね上がり一気に中国の金融システムが瓦解する可能性がある。
ただ、前回の包商銀行のベイルインだけでもインターバンク調達が不安定化したことから、今のところ中国政府はそもそも問題を作った大手銀に対して中小銀行を救済するよう指導しており、問題は金融システムにまでは波及していない。

<過去参考記事>

中国金融当局は銀行の崩壊よりモラルハザードを選んだ


以上を考慮して中国政府はLGFV自体の一定程度のデフォルトは容認しながらも、金融システムが崩壊しないように中小銀行は絶対に支援するという姿勢が明確化しており今のところ中国経済崩壊シナリオは描きにくいが、中国共産党がここのコントロールをミスした場合にはあきらめて全リスク資産を売るしかないだろう。
その点については注意深く中国政府の動向を観察していきたいと思う。