Saudi Arabia faces weeks without full oil production after attack



こういう事象はグローバルニュースソースあるいは公的アナウンスしか参考にならない。

サウジアラビアの原油処理施設がテロリストに爆破された事件についてとりあえず今わかることをまとめてみようと思う。
この時点で確定事項とニュースで報じられている事項を分けて書いていこう。

「確定事項」
・今回の攻撃は無人機による攻撃(サウジアラビア政府公表、ただしドローンなのか巡航ミサイルなのか不明)
・アブカイクとクライスにある石油処理施設が爆破され、日量570万バレルの原油生産減少(サウジアラビア政府公表)。
サウジアラビアの産出量の半分、全世界生産量の5%ぐらいが影響する。
・原油高騰に対して米国は石油備蓄放出の用意がある(トランプ大統領アナウンス)
・サウジアラビア自体も在庫を放出して対応する予定。(サウジ政府)
・イエメンフーシ派が犯行声明発表(ただし本当に行ったのかは不明)
・犯人の候補に挙がっているイエメンフーシ派はイランの支援を受けている(これは一般常識)
・石油処理施設の復帰状況については土曜日から48時間以内に途中経過報告を報告する(サウジアラビア政府)
・元々サウジアラビアの石油施設の攻撃は小規模なものも含めてここもとで100回以上行われている(米政府発表)

「ニュースベースで確定していない事項」
・石油生産の完全復帰までに数週間かかる見込み(FTなど、サウジ政府関係者)
・攻撃はイエメンにいるフーシ派からの攻撃(日経新聞では確定なように書かれているが、イラン・イラク・イエメンいずれの方面からの攻撃も可能で犯人は不明)
・米政府はイランかイラクからの攻撃と分析(日経新聞、米高官関係者)
・サウジアラムコ自体が国内およびオランダ・日本など海外拠点に数週間は支障なく供給できる量を備蓄できている(各種ニュースソース)
・失った生産量の半分は月曜日中には復旧できるだろう(ブルームバーグ)

さてここまで情報をまとめて、自分なりに次に起こりうる事象について考えてみる。
これは当たるものもあれば外れるものもあるので、各人自分なりに考えて相場に取り組んでもらいたい。

・不透明感は月曜日朝時点がMAXであり、復帰時期見通しが数週間であれば相場全体は落ち着いてくるだろう

・無人機技術の進化で低コストで千キロ以上先の原油施設にダメージを与えれるレベルの攻撃が可能。
つまりサウジアラビアの原油施設はこれだけサウジアラビア政府が防衛費に金をつぎ込んでも、守り切れる保証がなくなりつつある。
これだけで原油価格は従来より少し底上げされる要因になるだろう。
ただし米国シェールガス勢が増産させるインセンティブが大きくなるので、その要因がどれだけ原油価格の上昇をオフセットできるかに注目。
かつての第一次オイルショック時は北海油田の開発を促進するきっかけにもなり、こうした中東での原油絡みの事件は中長期的には代替産出の促進でオフセットされてきた。

・すぐに復帰できるという説を唱えている人もいるが、FTなどもう少し信頼性おけるニュースソースは基本的には数週間という言い方が大勢なので、それをベースに考えておくべきだろう。

・世界的には原油依存度、あるいは中東の原油に依存する割合を減らすための取り組みが加速する可能性が高い。

・航空株は燃料費高騰に加えて地政学情勢も加わって基本的にはどの要素を見てもマイナス。

・原油価格は上昇したとはいえ、未だWTIベースで60ドル/バレルと昨年9月の水準にも届いていないので、航空株以外は特に慌てる必要性はないと思う。(デイトレの方々については別ですが)

・イランと交渉を行おうとしていたトランプ大統領の姿勢は硬化する可能性がある。
逆に言えばこれで硬化しないならボルトンがいなくなった後のトランプ政権の外交は大きく変わったことを意味する。

・米政府が攻撃はイエメンからではないという発表はイエメンに米兵を派遣したくないからかもしれない。
イエメンのフーシ派が犯人なら少なくとも政府組織ではないのでサウジアラビアから米陸軍の派兵要求に応える必要性があるが、イランならそう簡単に政府に攻撃を加えるわけにもいかないので派兵は避けるべきと結論づけられる。

・サウジアラビアはイエメンフーシ派撲滅のために米陸軍の派遣が欲しい。サウジアラビアから空爆は行っているが、ほとんど効果は出ていないので、米陸軍投入が必要と考えていそうだ。なのでサウジアラビア政府からはイエメンフーシ派からの攻撃だというアナウンスが続くだろう。

・今回の原油輸出量の減少をサウジアラビアはSWFから資金を抜くことで穴埋めするかもしれない。その場合には2015年のような原油安による中東SWFの無理やりなリスク資産投げというのも考慮する必要性があるかもしれない。 

・足元の相場は今のところ単純な株安・金利低下というリスクオフの動きしかしていない。
本当に差し迫った原油供給不足問題なら株安と金利上昇が同時に発生する。
そう考えれば市場の捉え方は原油供給については短期的な問題でしかないと捉えている。