村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2025年05月

米国一般市民の関税インフレ恐怖感は実態より大きすぎる

米ミシガン大消費者信頼感、5月速報値悪化 22年6月以来低水準

明らかに理論数値より一般米国民のインフレ恐怖感が大きすぎる。

金曜日に米国でPCE統計とミシガン大の消費者信頼感・期待インフレ率の統計が発表された。
その中でPCEはほぼ市場予想数値とぴったりであり、ここには何かあーだこーだいう余地はほとんどなく、市場影響もほとんどないという内容となった。

一方で個人的に注目したのはミシガン大の期待インフレ率の数値である。
4月段階だとまだ関税インフレがどれぐらいかという予想がつきにくかったが、色々なエコノミストが試算する中で、関税によるインフレ率上昇効果は大体+1.5%ぐらいと試算され始めていて、CPIも先行き半年ぐらいで前年同月比3.4%ぐらい跳ねたあとは徐々に低下すると見られている。

普通に考えるとその試算値に沿った期待インフレ率ぐらいになるはずなのだが、1年期待インフレは+6.6%と明らかに数理的計算から導かれる期待インフレとは全く異なる異次元な数値となっている。

【ミシガン大 1年期待インフレ率】
タイトルなし

https://tradingeconomics.com/united-states/michigan-inflation-expectations

1年はともかくだが、テンポラリー影響しかないはずの5年期待インフレでさえ4.2%に跳ねており、5年期待インフレにといては2022年でさえ変な跳ね方をしなかったことを考慮すると、米国一般人から見た関税影響への恐怖感が実態より大きいことがわかる。

【ミシガン大 5年期待インフレ率】
タイトルなし

https://tradingeconomics.com/united-states/michigan-5-year-inflation-expectations

実際にPCE物価統計の過去の推移を見ると、2022年は一般国民のインフレ懸念が強かったが、その時は1年期待インフレが5%に対してPCE物価は+7%となっていたので、一般国民の考えより実態の方がひどかったわけであるが、今回は完全に真逆の動向となっているわけである。

【前年同月比PCE推移】
タイトルなし

https://tradingeconomics.com/united-states/pce-price-index-annual-change

しかもミシガン大の期待インフレはこれまでガソリン価格に大きく振らされると言われていたが、原油価格がどんどん下がる中でそこでの上振れ心配はなく、過剰に期待インフレ率が上昇しているのは関税政策の不確実性が一般庶民の間であまりにも大きすぎるということである。
つまりそれだけ恐怖を感じている人が多く、これが中間選挙を気にしているトランプの足枷になることに加えて、消費を抑えて金利が下がる方向に働きやすいし、個人投資家の株式投資の取り組みもこのインフレ恐怖によって抑制されていると考えるのが妥当だと思う。

そう考えるとこの明らかに過剰なミシガン大インフレ期待統計結果は個人的には相場に取り組みやすい数値だなと思っており、相場に対しては引き続き楽観的な見方をしている。
PCE統計の実態と米国一般市民が予想する期待インフレのギャップが縮小するまでは不安に伴う景気下押し圧力が働くわけで、その間は金融緩和期待が働き続けるので粘り強くロングを持つことが重要だと思う。
 
日々金融市場で思ったことや金融データをつぶやいている村越誠のツイッターはこちらのリンクをクリック
 

ラッセル2000が再び最高値更新するまで大型株は引っ張れそう

ラッセル2000が相場バロメーターになりそう。

4月に相場が大混乱を迎えて、その後なんだかんだで関税措置が緩和されそうだったり、政治においてもトランプのあまりの無茶苦茶ぶりに 、ナスダックやS&P500は米ドルベースでは最高値更新が視野に入るレベルにまで回復してきている。

【ナスダック100のチャート】
タイトルなし

一方で、当ブログではインフレの世界の中で大型株>中小型株の展開が続きそうで、大型株は中小型株を踏み台にしていきそうだ・だからラッセル2000はS&P500やナスダック100に劣後するだろうから避けるべきと書いてきたが、概ねその想定通りに動いてきている。
 
【ラッセル2000のチャート】
タイトルなし


ここでラッセル2000のチャートで注目したいのは、結局トランプ当選で株価が盛り上がったところがピークであったわけであるが、その水準が2022年の最高値付近だったというなんとも呪われているようなチャートになっているわけである。
一方で下値はというと2023年の苛烈なFRBの金融引き締め中のところであり、状況は悪いものの2023年の一番ひどかった時期を底抜けるほどはひどくないよねというコンセンサスもどうやら出来上がったようで、関税政策の大混乱では概ねそのラインがボトムとなった。
つまり、現実世界の経済の雰囲気というのはこのラッセル2000のレンジの中で考えられているような側面があり、ラッセル2000がこのレンジに収まっている限りは米国景気はさほど良くないと考えるのが妥当だと思う。

そして足下で関税政策が妥当なラインに落ち着いていこうとしている中で、ラッセル2000の株価は回復途上にあるが、大型株とは違ってまだ下げ幅の半分しか回復していないわけである。
なんとなくであるが米国の景気が鈍化していると考えるのはこのラッセル2000の株価回復がまだ半分程度しか進んでいないところにあるなと思っており、現在の景気動向が悪いという判断がされて金融緩和やトランプの無茶な政策に是正は実際にラッセル2000が最高値を更新するまでは継続されるのではないかと思う。

そう考えると、ここからラッセル2000が最高値更新するとなるとさらに2割近く上昇する必要性があるわけで、その間に大型株はもっと上昇している可能性が高いわけであり、少なくともそこまではS&P500やナスダック100は引っ張れるだろうと個人的には考えている。
特に今相場のバブルになりそうというテーマである生成AIとプライベートクレジットの分野は、トランプ政権の混乱の中でも企業の積極投資姿勢はほとんど変わっていないことを考えると、この分野の投資エクスポージャーな次の金融サイクルが回ってくるまでは粘り強く持つこと重要だろうと思っている。
 
日々金融市場で思ったことや金融データをつぶやいている村越誠のツイッターはこちらのリンクをクリック
 

キューピーの値上げと株価上昇から考える値上げ戦略の重要性

キユーピー、マヨネーズなど118品目値上げ 9月以降順次

値上げできる企業が正義。

上記記事のように上場企業であるキューピーが色々とうにゃうにゃ理由を述べているが、値上げを決めたという報道が出ている。

キューピーの株価は去年9月頃に一回ピークをつけてから、PERでの調整や卵価格の上昇などから原材料コスト増加による収益圧迫が懸念されて調整していたが、この報道がされた直後にキューピーの株価は上昇しているし、上下はあれどこの値上げ発表前ぐらいからこれを察していた投資家の買いによって比較的値持ちがよく動いており、2022~2023年ぐらいから保有している投資家は別にバタバタ売買しなくてもええやんといった動きになっている。

【キューピーの株価チャート】
タイトルなし

日本がデフレから脱却してインフレになっていることは下記過去記事で書いてきたが、キューピーが2025年にも値上げが継続できていることを考えれば、インフレの世界は引き続き続いていることがわかる。

【過去参考記事】
デフレからインフレへなぜ世界は大きくレジームチェンジしたのか?

企業の株価は名目利益で動くわけなので、きちんと持続的に値上げできている企業は継続的な収益上昇が期待できるし、それを配当や自己株買いで株主還元ができるので、値上げさえできていれば比較的昔ながらの銘柄でも十分な株価リターンを得られるというのが足下の投資環境である。

逆に言えば、この環境下で値上げできない企業やインフレ恩恵がない企業が非常に株価は苦しいとしか言いようがない。
この経済環境で値上げできないやつは顧客にいくらなんでも忖度しすぎか、値上げできないほど売っているものに競争力がないどうでもいいものかのどちらかであるわけだが、過去のデフレ時代では顧客への過剰な忖度はあったものの、東証改革でより株主フレンドリーになることが要求されている中で、過剰な忖度で値上げをしないまま収益が低迷して株価が低迷した場合は、経営陣が真面目に経営していないと糾弾されてクビになる可能性が高まっていることから、米国ほどではないにしろ、持続可能性を探りながら値上げをするのが普通になっている。
つまり値上げできないのは本当に値上げしたら一瞬にして顧客がどっかにいってしまうほど、大したものを売っていない企業である。

なので、投資対象企業が値上げをきちんとできているのかどうかというのは、現在の投資戦略では最重要項目に置くべき投資判断項目だろうと個人的には考えている。


日々金融市場で思ったことや金融データをつぶやいている村越誠のツイッターはこちらのリンクをクリック
 

欧州株高は中国投資マネーが要因

Chinese investment rebounds despite growing frictions - Chinese FDI in Europe: 2024 Update

欧州株高の背景はこれってことやね。

今年は欧州株高が目立つ展開が進んでおり、米国からの資金シフトが進んでいると盛んに報道される展開となっている。

【DAX指数のチャート】
タイトルなし

しかし、個人的には単に証券投資ポジションの移し替えではちょっと説明できないレベルで比較的長く、かつ欧州でも主要国だけでなく、もっと微妙な欧州の国の株価(ギリシャ、ハンガリー、ポーランドなど)まで上昇しているのを見ると、もともと自力経済が弱い地域なことも考慮するともっと別の力学が働いていそうだなと思って感じていたが、どうやらその正体は中国であった可能性が高そうだなと冒頭のニュース記事を読んで思ったので、それについて書いていきたい。

中国では国内の不動産バブル崩壊の大不況・米国との貿易対立で非常に手詰まり感が強く、外への活路を見出す流れが続いている。
そういったこともあり、もはや中国国内での展望はほぼ活路が見いだせなくなっている中で、欧州への投資を行って事業姿勢の維持を続けようと言う直接投資が進んでいるのである。(特にEV周り)
これにより、これまで中国から欧州への直接投資は2016年以降ずっと減りっぱなしであったが、2025年に入ってからは今のペースなら150億ドルぐらの投資ペースになるのではないかという早い投資マネーが入ってきていることもあり、

実際に急速に欧州株高が進んだのは2025年に入ってからであることを考えると、単に米国からの投資資金シフトだけでなく、直接投資マネーというもっと足の長い資金投入があり、これが欧州株高の底上げにつながっているということである。

そういった意味では、中国株のリスクテイクをしたいと考えた時には、別に本当に中国・香港株に資金を投入する必要性はなく、中国マネーがどんどん入っている欧州株の方に振り向けた方がリスクリワード的にはプラスだと思われる。
逆に言えば、米国・日本・インド株がここまで欧州株に対して足下パフォーマンスが悪いのはこの中国投資マネーがさほど入っていないことによるところが大きいわけである。

ただし、注意しなければいけないのは、欧州株は米国・日本・インドと違いEPSが伸びていない中で中国投資マネーによる株高が発生しているわけで、欧州株は中国マネー依存度が高まっている。
つまり中国での市場変調があった時には、それに連動しやすくなっており、中国金融市場動向に常にアンテナを張っておく必要性が生じることには気を付けたいところである。

 
日々金融市場で思ったことや金融データをつぶやいている村越誠のツイッターはこちらのリンクをクリック
 

日本国債超長期発行減額観測でさすがに30~40年金利が大幅低下

【日本市況】超長期金利の低下加速、発行減額観測-円相場は下落転換

まあ馬鹿じゃないので、普通はこうするよねと。

米国三連休が終わった翌日相場にあれよあれよとこれまで上昇していた日本国債の超長期ゾーンの金利が下がっていき、これに伴って日本株も徐々に安定化の兆しが出てきたので、今回はこれについてまとめていきたい。

【日本国債30年金利のチャート】
タイトルなし


元々日本の超長期国債金利の上昇については財政懸念というよりも、単に需要と供給側の望む年限のミスマッチであり、そのミスマッチ原因は世界がデフレからインフレになる中で日銀の国債買い入れがなくなっているのに、あることを前提とした需要構造で供給側が国債発行しようとしたことが原因であることは下記過去記事で書いてきた。

【過去参考記事】

QEがない中で不人気化する先進国超長期国債


なので、これまでの日銀がJGB市場を買い漁っているがために需要者が長期ゾーンに追いやられていて供給側はとりあえず雑に超長期国債発行しとけという雑判断をあらためる必要性があり、加えて需要者側が望む需要ゾーンをきちんと把握したうえで国債発行計画の練り直しが必要ですねえ、最終的には一定程度超長期国債の発行減額の決断待ちですねえという状態であった。

問題はそれがいつなのかというところが問題であったがJGB30年金利が2%に達した時点ではまだ発行計画については修正がされなかった。
しかし3%に達成する中で、生保などからALMマッチはしてるけど、今の断面だけ見ると含み損が大きいぞという脅迫じみたコメントが出る中で、さすがに政府もこのクレームはむげにはできないということでPD懇(プライマリーで入札する機関投資家の集まり)であらためてどういう供給を行えばいいのかというのを丁寧に官僚がヒアリングして発行計画を調整するという準備が整ってきているというのが上記BBGニュースの話というところだろう。

このように傍から見れば相場は最悪な時に往々にして底打ちするもので、下記過去記事は株価について書いたが債券についてもこのように最悪な時ほど底打ちとなる材料が出てくる可能性が高まってくるわけである。

【過去参考記事】
なぜ株価は傍から見れば最悪な経済状況・タイミングで底打ちするのか

投資家側としても30年というリスクはあるが3%という数字は長期的インフレ率を考えるとかなり投資妙味があるところである一方で、年限別の需給状況が崩れていただけだが含み損で投げるやつもいそうで中々手を出せていなかったというところにようやく政府側が配慮したということだろう。
とりあえずはこれでJGB金利の変な大暴れはようやく落ち着くわけで、ここらへんは財務省の東大出身官僚が普通に当然のようにやらなきゃいけない仕事をしたというだけの話で、相場のかく乱要因からは消えていくだろうと思う。
 
日々金融市場で思ったことや金融データをつぶやいている村越誠のツイッターはこちらのリンクをクリック
 
記事検索
アクセスカウンター
  • 累計:

プロフィール

村越誠

投資に関して気づいたことのメモをしていく。 ご連絡の取りたい方は、makoto.muragoe★gmail.comまで(★を@に変換してください)
ツイッターで更新情報配信