村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2025年04月

トランプ関税の大混乱で米国求人大幅減で金融緩和が促進されそう

【市場反応】米4月消費者信頼感指数はパンデミック来で最低、3月JOLT求人件数は予想下振れ、ドル買い一段と後退

トランプ関税による雇用減退がはっきり。

月末だが、JOLT求人が発表され、関税政策以降の雇用状況の統計が発表されたので内容を確認したい。

市場予想は求人件数は750万件であるが、結果は719万件とかつてない下振れの仕方をしており、求人件数自体が既にコロナ禍前に戻っている状況となっている。
求人件数は増加しているものの、クビ切り件数については伸びていないという相反するような結果も出ており、まとめて個人的に考えていることを書いていきたい。

まず、求人件数の下振れは文句なくトランプ関税政策の混乱が影響している。
あまりの混乱っぷりで設備投資計画をまともに立てられない状況では新規で雇用して設備投資を進めるわけにはいかず、これがダイレクトで求人数に響いてしまっている。
なにが解放日だよアホが!という話としか言いようがない。

ただし、影響的には新規の雇用を保留するのに企業側は留めており、過激なリストラにまでは至っていない。
これはコロナ禍の時に激しいリストラをした後にその後の人手補充に苦しんだ記憶が企業側にある中で、過去30年のデフレからインフレの時代に変化している中で、一気呵成のリストラをするほどは企業側が追い詰められていないことを意味している。
デフレからインフレれのレジームチェンジについては下記過去記事を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
デフレからインフレへなぜ世界は大きくレジームチェンジしたのか?

つまり、雇用はリストラではなく新規雇い止めによって調整させていく形で動いているということになり、これは過去のハードランディングのようなリセッションのようにはなっていないということになるわけで、利下げでサポートしていきながら市場は動いていくことが比較的予想しやすい状態となっている。

JOLT求人が発表されて数分は米債金利は下げ渋っていたが、結局金利は低下する動きが顕著になり、米債金利は以下の通りのような下がり方となった。

【米国10年債金利のチャート】
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米債金利が素直な低下をしていったこともあり、市場は安心感と金融相場への期待もあり株価は上昇で反応しており、
以上を考慮して、基本的に経済指標が悪いものが出ている方が株式市場には都合が良く、株式市場にとって唯一のリスクは関税政策の追加的な混乱だけといったところであり、頼むからナバロとラトニックは引っ込んでろというのが個人的な想いである。

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スタートアップバブル崩壊の呪縛から逃れられない新興企業株

ソフトバンクG出資の新興企業、創業者が謝罪-粉飾に至った経緯語る

バブった時の悪習慣がまだ残っている。

上記はソフトバンクGが投資していた新興企業が、そもそも最初から不正会計でまったく財務諸表がでたらめだと吐露して死んだという記事であるが、。こうした新興企業がそもそも不正会計でいきなり死ぬケースがニュースの字面で多く見るようになったように思う。
直近でも上場したてのオルツという会社が、内部からその売上高の大半は不正で詐称されたものとして告発されており、2021年のSPACバブル以降に新興企業の醜悪な不正会計事案が目立つようになっている。

【参考ニュース】
謎のAIスタートアップ「オルツ」で何があったのか?

そもそもなぜこのような不正事件が新興企業で起きやすくなっているのか?
それは2000年以降のPEやVCのスタートアップ投資の姿勢に関係している。
ドットコムバブル以降、米国を中心にPEやVCがスタートアップ投資で巨額の利益を儲けるトラックレコードができたことから、多くの金融関係者がこの分野に参入してきた。

しかし、そうした中でいかに投資を素早く決定するかが重要なファクターに変わっていき、そしてソフトバンクGが孫正義の即断即決でまともにデューデリせずにいきなり大金をぶちこむという流れに変わったことから、もはやPE・VCはザルデューデリで投資を決定せざるを得なくなっていった。
そこらへんは下記参考書籍を読んでもらえればわかる話である。

【参考書籍】
The Power Law(ザ・パワー・ロー) ベンチャーキャピタルが変える世界(上)

投資を受ける側の新興企業は、単に資金繰りが苦しいから藁にもすがる思いで悪いと思いつつ不正会計に突っ走るケースから、そもそも最初から金をだまし取るという100%悪人というものまで様々であるが、共通しているのは人間は目の前に大金を積まれたらいくらでも悪魔に魂を売るということである。

このように未公開系の株はもはやデューデリが機能しないままステージが進んでいき、大企業が買収してくれなかった場合は無理やり詐称したまま上場を目指しにいくのである。
昔であれば企業価値が大きくなる前に詐欺が発覚して死ぬわけであるが、名だたるPE・VCがデューデリせずに投資を決定してしまうために、後に引けないまま上場してしまうのであり、結局これが上場した企業の大半が上場ゴールとなって株価が上場時をピークとして暴落していくメカニズムとなっているおり、新興企業株は現在も2010年代~2021年までゼロ金利下で行われたバブルの呪縛からまだ逃れられていないことを示していると思われる。
結局は下記過去記事のような考え方をしていれば、まあ当然だよなあという動きになっているわけである。

【過去参考記事】
熱狂的バブル相場の天井を捉えるために見るべきモラルハザード・不正行為とは?

なので、基本的に新しく上場してくる銘柄の全部とは言わないが、95%ぐらいはそもそも上場ゴールを前提にした単に投資家からお金をだまし取ることが横行する世界になっているわけである。
一部で未公開株を個人にもみたいなサービスを展開しようとしているところがあるが、実態はともかく有望そうであれば孫正義がなんのデューデリもせずにお金をぶち込むので、未公開株サービスで個人に提供される未公開株なんてのは95%どころか99.9%は割高で押し込まれるかそもそも詐欺同然のものという残飯未満のものしか出てこないので、

個人的にはこうした考えがあるので、常にクソ株が構成銘柄に供給されてしまう東証グロース250について指数ベースでは絶対に投資しないと決めているのであり、チャートを見れば大体お察しであることがすぐわかるだろう。

【東証グロース250指数のチャート】
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なので、投資・金融市場に詳しくてそのリスク込みで許容できるという手練れならともかく、投資初心者がいきなりそこで投資銘柄を見つけてテンバガー狙おうなどというのはカモ同然なのでやめるべき話だろうと思う。

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日経新聞のリークで利上げ見通しを後ろ倒しさせる日銀

日銀、政策金利据え置きへ 成長率見通し下方修正

ゴールデンウィークみんな休みたいよね~という対話(棒)

最近の日銀の市場とのコミュニケーションは、事前にマスコミにリークして内容を織り込ませにいくことを頻繁にやっているわけであるが、5/1の発表を前にしてここにきてリークを出してきたというわけである。

上記の記事通りであれば、成長率見通しを下方修正すると同時に、これは日銀が想定していないパスであるとして、その分のインフレ率見通しも若干引き下げる可能性もあり、これを持って利上げ見通しを後ろ倒しにさせることを意図したリークになっただろうと思う。
足下の総合インフレ率の相当の部分が食料インフレであるわけで、これは利上げでどうこうできる話でもなかったりするので、この部分については記者会見で何かしら言及する可能性もあるだろう。

まずなぜこのタイミングでのリークかというと、ゴールデンウィークで市場の流動性が薄くなりがちであることや、火曜日の祝日に市場変動が起きたときに変な金利の動き方をしないように牽制する意図は大きいだろう。
加えて、トランプ政権がドル安を指向するために日銀に利上げを迫り、これに日銀が屈するのではないかという思惑が市場にある中で、逆にトランプ関税で利上げをより慎重にせざるを得なくなってるんだから、そんな変な思惑は織り込ませずに、トランプ関税でマイナスの影響を受けている中小企業を支援するために金利を抑制したい、特に中小企業の借入に一番影響のある短期金利はしばらく様子見としたいよねというのが正直に出たリークだろうと思う。

【日本5年国債金利のチャート】
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こうした米国のせいで世界経済が混沌としている中でそう簡単に利上げを進めていくことは無理だし、そのことを周知して少なくとも国内要因で市場が荒れたり、経済が本来は起こる必要性がなかったダウンサイドを日銀のせいで発生する事態は防ぎたいよねということが全面に出ているリークだろうと思われる。

これは利上げを材料にして日本株の中でも突出して上昇してきた銀行株にはマイナス材料であるが、利下げに転じるわけでもないので銀行株は一旦上昇が鈍化する中で、市場全体はサポートができたよねと好感されていく流れだろうし、世界の金融市場の主要プレーヤーの中で唯一利上げを進めていた日銀の利上げがストップすることは世界の金融市場にとってもプラスに働くものと思われる。
 
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米債金利を人質に取られてドル安指向政策の修正が明らかになった日米財務相会合

ベッセント財務長官「為替は緊密協議続ける」 日米財務相会合で

現状の米国金利市場を考慮すると、ドル安ごり押しは無理と言う話。

上記日経新聞記事の通り、日米の財務相会合ではずっと報道では噂されていたドル安修正のために日本に為替について何かしらの対応を迫るのではないかという話は結局出てこなかったわけで、これについて今回まとめていきたい。

これまでトランプとその取り巻きは関税をかけると同時に、これがドル高効果があるということでセット技でドル安圧力をかけていこうという方向で自国に全面有利な展開で持っていこうと考えていたわけである。
しかし、為替というのは債券金利以上に相手国という自国だけで完結しない関係性があるため、そのセンシティブさを完全に見誤ったために、セット技で圧力をかけたところで米債金利市場が壊れたために、ベッセント財務長官がトランプを説得して一部主張を引っ込めさせる形になっている。
そしてどうやらこの為替の複雑性はトランプとその他雑魚取り巻きではもはやコントロール不能ということで、ベッセント財務長官が取りまとめるという方向になっているようである。

そして迎えた日米財務相会合であるが、ここではトランプが脅迫していたドル安圧力についてはベッセント氏は完全に封印した。
ここでドル安を全面に押し出した場合は、せっかく落ち着きかけてきている米債金利市場が再び壊れて、米国経済が瓦解してしまうのでここでは提起できないということになったのだろう。
為替についてドル安指向を押し出すにしても、ぐちゃぐちゃ関税問題を一通り市場が納得行くレベルにまで緩和してからでないと無理なわけで、それは元々この辺の分野のプロであるベッセント氏であれば自分のテリトリー範囲内で当然の思考である。

結局米金利が人質に取られる形で為替の主張はベッセント氏がトランプを説得して封印するという立ち回りとなったわけである。
こういうところを考えると、足下のあまりにもハイペースなドル安というのは一旦打ち止めという感じになるだろうと思う。

【ドルインデックスのチャート】
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もちろんいつでもトランプが口先介入をかましてくる可能性があるので、ドルインデックスでいうと100台後半に戻る可能性は低いし、レンジ的にはやや切り下げという感じになるだろうが、過度な変動がないことが金融資産にとっては重要であるわけで、今回の相場の大混乱は一応米債市場がぶっ壊れたという最悪事態が起きて、そこから反省が始まったというわけで、下記過去記事のような考え方のサイクルで相場が回ったと考えるので良いように思う。

【過去参考記事】
なぜ株価は傍から見れば最悪な経済状況・タイミングで底打ちするのか

まだすぐに一直線に株価が回復していくわけではないが、一応底値は概ね4月前半水準だねというのが確定した形だと思われる。

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アドホックな自社株買いができる企業の株を選好したいステージ

2025年の世界成長率0.5ポイント下げ IMF予測、米国にも関税が打撃

不景気の時に株主のために行動を起こしてくれる企業とそうでない企業で相当株価は変わるだろう。

上記の通り、直近でIMFが世界の経済成長率を0.5%引き下げて2.8%としており、3%という節目を割る展開となり、過去のトレンドを見るといわゆる景気後退領域に入っているという事態になっている。

こういうニュースだけ見るとすぐにもう株価はおしまいで暴落継続という人がいるが、実際は中国以外はインフレの世界になっており、過去と比べると名目の成長率は高くなっているし、中銀が色々なツールを現在は保持していることもあり、株価下落期間が長引くとすぐ1929年の株価暴落チャートとチャートを重ねて興奮しちゃう人は、下記過去参考記事でも読んで落ち着いて欲しいというところである。

【過去参考記事】
1929年~1933年の長期間大恐慌による株価暴落は現代ではよっぽどのことがなければ起こらないと考えられる理由

まあ、そういうことはさておき、少なくとも景気はトランプのせいで以前よりも弱まっていることは確実であり、2024年後半のなんでもテンションで上がるという相場ではなくなっており、選別色が強まるだろうと思う。
ではどういう順番に株価は回復していくのかというところであるが、そのヒントは金曜日の米国株であるように思えた。

米国株の主要株価指数であるダウ・S&P500・ナスダック100・ラッセル2000は関税懸念から実際に関税が発表されてから漏れなく全員同じようにばーっと下落したわけであるが、底からの回復の仕方はナスダック100>S&P500>ダウ>ラッセル2000となっている。
そして金曜日もこれとほぼ同じ流れになっていた。
これは景気が鈍化していく中で、どれだけ構成銘柄の企業が資金的な余裕があり、株価が下落している中でアドホックに自社株買いを行って企業側が株価を支える意志があるかどうかというのを投資家は見ているように思われる。
少なくとも業績が世界的な景気鈍化で伸びにくくなる可能性があるのであれば、株価が下がった時にその下落を止めてくれるように自社株買いをしてくれるのかどうかというのは非常に重要な投資ファクターになるのである。

実際に株価が暴落中に颯爽と自社株買いの上積みを発表したブロードコムの株価下落は、他の半導体株と比べるとこれまでの上昇幅を考えれば小さく、設備投資が景気不透明で決断しにくい分は株主に還元するという気力と体力を持つ株はそう簡単に暴落は継続しない。

【ブロードコムの株価チャート】
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逆に苦しいのはこういう状況で新しい資金調達をしなければいけない企業群であり、業績の悪化にプラスして、不安定な金融市場の中で過去より高いファイナンスコストを払う必要性に迫られるので、そういった企業はこういうフェーズでは金融緩和が相当程度進んだ段階にならないと本格的な回復は難しいと思われるので、ここからは財務諸表からいくらぐらい自社株買いを追加でできる余裕があるのかを見ながら投資を選別していくことが重要だろうと思う。

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