村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2025年03月

ヤマワケエステート問題から考えるリテール小口不動産投資という闇

ヤマワケエステート償還延期で投資家騒然、人気の不動産クラファンに何が《楽待新聞》

トルコリラと同じように、なぜ人は学ばないのか・・・

不動産クラウドファンディングで高利回りでバンバン資金を集めていたヤマワケエステートがプロジェクトの一部で償還延期(つまり元本を返済できない状態)になり話題になっているが、もうこれは過去15年ぐらい何度も見てきた光景である。

あぐら牧場・HOPEラブホテルファンド・ソーシャルレンディング・みんなの大家さんと例を挙げればキリがなく、決まって資金の使い方がずさん・あるいは詐欺でどこかに消えてしまって、結局出資者はほぼ全損で終了という流れである。
これらに共通する内容については下記の通りである。

・匿名組合出資契約
大体こういう投資案件は匿名組合出資契約となっている。
この匿名組合出資契約とは流動性が低い案件に投資をするときに低コストで行う際にメリットがある投資形態で、投資を受ける側もカウンターパーティーが最終的な投資会社一本に絞られるので、投資家とのコミュニケーションコストが安く済む。
しかし、匿名組合出資契約の場合、基本的に資金の使い方について出資者は口出しできず、事業者が勝手に資金使途を決められるし、それを出資者に報告する必要性もない。
いわゆる全くチェックされる体制が存在しないのである。
そのため、不動産業者と癒着してあり得ないバリュエーションで不動産購入をしたり、最悪のケースの場合出資金を別のプロジェクトの支払いに使ったりと、その不正的な使い方には枚挙に暇がない。
この投資形態自体がかなり性善説に基づいたものであり、悪だくみを考えている人にかかればちょろいにも程がある。

・不自然な高利回り
この匿名組合出資契約の不都合を臭いを消すために高利回りという餌をぶらさげるのである。
普通に考えればまともな案件ならもっと低金利で銀行とかが金を貸すやろという話を当然思いつくはずであるが、高利回りというニンジンを目の前にぶらさげられると匿名組合出資のリスクを忘れて全力で資金を突っ込んでしまう人が後を絶たない。
また、じゃあ不自然じゃない利回りだったら良いのかというとそういうわけでもなく、結局一般的な貸付や債券と比べて高利回りという餌で釣っているわけで、しかも信頼させるために何件かは正常償還させて「今まで元本を毀損したことはありません!キリッ」というのを謳い文句にして馬鹿を釣るのである。

総じていえば、個人的にはまず匿名組合出資という投資形態で小口リテールで金を募っているものは大体がやばい案件だと思うべきだろうと思っているし、そもそもその制度が悪だくみを考えている人にとってはあまりにも都合が良く、いくらでも詐欺を働ける余地のある投資スキームである。
これが本当に名が知れている大企業の場合は、償還されなかった資金についてレピュテーションリスクを考慮して補填がありえる(実際にSBIソーシャルレンディングの時はSBIが補填した)が、わけのわからない新興企業の場合は補填される可能性はほぼゼロで、さらに言えば目ざとい人はさっさと訴訟して回収しに行くので、ぼんやり待っている人は回収率ゼロでフィニッシュするのが終わるのが通例である。(棒)
 
日々金融市場で思ったことや金融データをつぶやいている村越誠のツイッターはこちらのリンクをクリック
 

投資という行動を起こせる人は、そもそも生い立ちが恵まれているという話

【参考書籍】
事実はなぜ人の意見を変えられないのか

投資を考えられるだけで、実は多くの人より金融的な立ち位置では有利。

上記書籍を読んでいる中で、投資というもの自体が心理的にできる人とできない人でかなり大別されるということが理解できたので、それについてまとめていきたい。
昨今は日本もデフレからインフレに転じてきていて、資産運用というもの自体について真剣に考える時代が来ているわけであるが、なぜそうなっていても資産運用について何も考えられない人が多くいるのかという謎について、このまとめを読めば理解が深まると思う。

上記書籍では、とある実験について書かれていた。
子供達に机の上にマシュマロを一個置き、しばらく待てればマシュマロをもう一個追加すると言って部屋を出て、子供達がどれだけ待てるかという実験を行った。
この時に子供によって待てる時間に大きな差が生じた他、子供によってはすぐに机の上にあるマシュマロを食べてしまうというケースもあった。

文字面だけ見れば、待てばマシュマロを追加でもらえるのに、すぐマシュマロを食べた子供はなんと愚かだと思う人がいるかもしれない。
しかし、その考えは大きな前提を見落としている。
大人が待てばマシュマロを追加するという言葉について、子供が信じてくれるか子供の行動に大きな差を生んでいるのである。
例えば子供が大人の言葉について一切信用していない場合は、マシュマロを追加でもらえるどころか机の上にあるマシュマロでさえ取り上げられるのではないかと考え、そうなるとさっさと目の前のマシュマロを食べるのが合理的という判断をする可能性があるのである。

そこで、実験ではさらに追加でこの実験をする前に、子供に対して別のお菓子をあげる約束をして、実際に約束通りにあげたチームと約束を破ってお菓子を渡さなかったチームで分けて実験を再度行ったところ、約束を破ってお菓子を渡さなかったチームは有意に待てる時間が短くなった。

このことが意味することは、投資という行動自体が自分の人生において選択肢にある人とない人で大きく分かれるということである。
生い立ちが悪い人というのは、基本的に大人が嘘ばっかりを子供に言うために、大人の言葉は信用できず、未来についても非常に不確実であり、そうなると目の前の短絡的な満足感を優先するのが合理的になってしまう。
しかし、投資と言う行動は目の前の短絡的な満足感を先送りし、将来の喜びのために行動を起こすという未来を信じる人にしかできない行動である。
ということは生い立ちが悪い人・境遇が悪い人はそもそも投資という行動を考えること自体が不合理であり、選択肢の俎上にあがらないのである。

そういった意味で、投資をきちんと行って資産配分をどうするかと考えられる人は、これまでの生い立ちを含めて非常に恵まれた環境であり、きちんとギャンブル的なやり方ではなく真っ当な資産運用を行うだけで十分に将来に備えることができるものだと個人的に思う次第である。

日々金融市場で思ったことや金融データをつぶやいている村越誠のツイッターはこちらのリンクをクリック

米国消費者の財布の紐が固くなっていることを示したPCE統計

米PCE統計、支出わずかに増加-コア価格指数は予想上回る

関税かけこみ終了とトランプ政権の不確実性で消費性向減っぽい感じ。

月末恒例の米国PCE統計が出てきたので内容を確認していきたい。

PCE自体は概ね市場予想で、若干上振れたものの誤差っぽい内容だったと思われる。
市場予想がPCE総合が前年比+2.5%に対して合致、コアについては市場予想+2.7%に対して結果は+2.8%と若干上振れたが、そこまで目くじらを立ててこれでスタグフレーションだという話でもないだろう。

どちらかというとフォーカスされたのは前月の発表でもそうだったのだが、今回も実質個人支出が注目された。
実質個人支出は市場予想前月比+0.3%に対して+0.1%と非常に低かった上に、前回分も-0.5%から-0.6%にリバイズされた。
一方で個人所得は市場予想前月比+0.4%に対して+0.8%と市場予想を上回り、その上前回分も+0.2%上方リバイズされているわけで、収入面にマイナスは見られていない。
単月ならともかくとして2ヵ月続くとこれはたまたまというよりはトレンドと考えるのが妥当だろうと思う。
つまり、米国民は所得は増えているものの、関税駆け込み分の購入はもう終わっているし、クレジットカードの債務返済に回っている可能性があり、所得が消費ではなく債務返済や貯蓄に回っているということになる。

つまり、この個人消費の減退はトレンド化しつつあるということである。
そういったことを考えると、いよいよFRBの利下げ回数というのは年2回ではなく年3回が妥当でしょうという話になると思われる。
スケジュールとしては6月から四半期ごとに1回ずつ行うと大体そういうスケジュールになる。
さらにいうとトランプ政権のあまりにも拙速な無理くり政策によるひずみで、皆が先行き不透明で自分の身は自分で守るしかないという貯蓄性向の高さがトランプ政権下では続くことを考えると、今年だけで利下げが済むということにはならないだろう。

以上を考えると、以前の記事で書いたが、10年債4.4%を背にして債券投資を戦うのはリーズナブルな考え方であり、実際に金曜日の米金利低下は10bpsにもおよぶ形になった。

【米国債10年金利のチャート】
タイトルなし

金融緩和が長期間続きそうな算段はついたものの、最大の問題は株価だろう。
関税のドタバタ騒ぎで金融緩和と消費減退のエアポケットで足下グダグダになっているという考え方が正しいだろうと思う。

【S&P500のチャート】
タイトルなし

色々なセンチメント指数系はかなり弱気であることを示しているのを考えるとてきとーに追加購入していれば大丈夫だろうとは思うが、もう一段下というのも十分あり得るわけで、一定程度下に行くことを覚悟の上でちょこちょこ買い足していくのが良いのではないかと思う。

日々金融市場で思ったことや金融データをつぶやいている村越誠のツイッターはこちらのリンクをクリック

〇〇不足ってニュースが流れたら関連銘柄買えばいいのかも

「卵が10分足らずでなくなった!」アメリカでも卵不足と価格高騰深刻化…レストランではオムレツ“2800円” 年内で4割超の値上げ予測も

とにかく反射神経で動けばいい疑惑。

最新の四季報が発売されたので、いつも通り全銘柄を見ているのだが、その中で序盤に出てくる1384のホクリョウの株価が暴騰していて、理由は卵不足だからということが理由に書いてあった。

【ホクリョウの株価チャート】
タイトルなし


確かにニュースでアメリカで鳥インフルかなんかで卵不足になっているというニュースはそういえば見た記憶があるが、日本で卵不足になったのは去年の話であり、今年の話ではなかったし、さすがに日本からアメリカに卵輸出するわけないだろと思っていたりしていたので気にしていなかったのであるが、アメリカの卵不足ニュースが出たあたりからバーッと株価は上昇していて、今年に入ってからあっという間に+50%という数値になっている。

なんか一見すごそうな最先端技術とかやっている企業より、単なる採卵養鶏場運営している会社の株の方が上昇していることは、下記過去記事に書いたように、デフレからインフレの世界になってしまったことが非常に要因として大きいのではないかと思う。

【過去参考記事】
デフレからインフレへなぜ世界は大きくレジームチェンジしたのか?

特に今まで多くの人から使用量は多いにもかかわらず需給がだぶついていたために儲からないとして馬鹿にされていたオールド商品を扱っている企業ほど現在このデフレからインフレへレジームチェンジした世界で立場が強くなっているわけである。
2022年以降、こういった様々なオールド商品で需要に対して供給が不足しているというニュースはずっと続いているわけで、長く続いたデフレが今度はインフレを招くターンになっていることがよくわかる。

ということを考えると、やはりニュースで「〇〇が不足しています!」っていうニュースが出たら何も考えず関連銘柄にとりあえず投資するという姿勢が重要なのではないかと思う。
しかも、それが日常生活においてなくてはならないものであればあるほど、多くの投資家の認識がひっくり返る事象であり、そういうニュースが出てきたらとりあえずチンパン連打買いすればいいのではないかと自分が書いたnote記事を見ながらやっぱりそうだよなあと思う次第である。

また、この事象から考えられることは、基本的にそういう事象が発生しやすいのは新しい企業より老舗で高シェアを保持している企業であり、そういうことを考えると伝統的に供給体制について責任をしっかり果たす意識のあるバリュー系日本企業は株価的に非常に有利な立ち位置にあるのではないかと思う。
(逆に言えば、新興の一体誰にとって必要なのかよくわからない未知数企業は今のところおよび出ない可能性が高い)

日々金融市場で思ったことや金融データをつぶやいている村越誠のツイッターはこちらのリンクをクリック
 

単なる高配当というだけの日本株銘柄の限界を考える

【三ツ星ベルトの株価チャート】
タイトルなし

配当増加余地がない+中堅企業だとこんなもんなのかなと。

これまで低PER・PBR銘柄は大幅増配をかますことによって株価を上昇させてきたわけで、個人的にその中で強烈な印象を持っているのは自動車部品メーカーの三ツ星ベルトである。
下記過去記事ではじめてそれについて言及したわけであるが、もう2年前の話なのである。

【過去参考記事】

三ツ星ベルトの株価から考える高配当株の潜在的上昇ポテンシャル

しかし、今回最新号の四季報をばーっと確認する中で、あらためて三ツ星ベルトの株価を見ると5000円手前をピークにじわりと下落している。
(もちろん増配前よりはまだ十分に高い位置ではあるが)

三ツ星ベルト自体はメイン自動車部品メーカーということで、言ってみれば足下でこれ以上すぐに増益して増配される見込みがない銘柄である。(場合によっては米国関税でマイナス影響が出る可能性もある)
そういった中で、既に一株当たり利益と比較した時にほぼ限界レベルで配当を同社は出しているわけで、これ以上の増配はなかなか見込みづらい。
こういった事情を総合的に勘案すると、現在同社の配当利回りは5%ぐらいなのであるが、増益増配期待が薄い銘柄で中堅企業みたいなのになると、配当利回り5%より低いバリュエーションは中々積極的に手掛けづらいよねという話なのだと思う。
例えば、米国の石油大手のエクソンモービルがPER15倍・配当利回り3%+自己株買いのセットがあるわけなので、これと比較した時にどっちに投資したいかという天秤があるわけで、その境目的なところにいるのだと思う。

四季報全体を見ていると、このようにオールド中堅銘柄で配当利回りは4~5%あるが、一株当たり利益と一株当たり配当金額の差が既に増配によって差が縮んでおり、さらに業績ネタがあんまり芳しくない企業はほとんど同じようなチャートになっており、大体そういう銘柄のPERはぎりぎり二桁(11倍とか)みたいなラインが多く、この配当利回り4~5%・PER10倍以上というのが業績アッパーポテンシャルがない無名銘柄の限界だなと感じるようになってきた。

ということで日本株はこれまでこのような東証改革による増配期待で押しあがってきたバリュー銘柄がわんさかあるわけであるが、概ね増配すべき企業は増配してきた中で、外国人からの認知度が薄い中堅企業以下になると株価上昇できる追加ネタがないと増配しきった銘柄をさらに上攻めするのは難しいわけで、単に増配期待が高い・配当利回りが高いという理由以外も見出していかないといけないなあと思う次第である。

日々金融市場で思ったことや金融データをつぶやいている村越誠のツイッターはこちらのリンクをクリック
  
記事検索
アクセスカウンター
  • 累計:

プロフィール

村越誠

投資に関して気づいたことのメモをしていく。 ご連絡の取りたい方は、makoto.muragoe★gmail.comまで(★を@に変換してください)
ツイッターで更新情報配信