村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2025年02月

仮想通貨市場の悪化はビットコイン購入を開示する愚を犯す企業に原因あり

ビットコイン9万ドル割れ、昨年11月以来の安値-仮想通貨売り広がる

金融市場でいうと明らかにおかしい挙動なんだけど、そういうのを考えない人達ばかり。

ここもとビットコインがレンジを下回る形で下落しようとしているが、当ブログではビットコインが10万ドル付近で悪い大人の謎トークン発行による資金引き抜きや北朝鮮ハッカーによる大規模ハッキングなどで、過熱している仮想通貨から現金を抜き取る事態が横行していた。
さらに考えなければいけないのが、元々仮想通貨は一部為替の代替やマネーロンダリング目的のフロー需要が根本にあり、これが仮想通貨の価値を支えているわけだが、そこから現金を抜き取られているということはマネロン費用が高くつくとして、一旦皆が資金引き揚げに動いていることが現在の仮想通貨市場のメルトダウンを生んでいると思われる。

【ビットコインのチャート】
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しかし、単にそれだけでなく、これまで借金をしてレバレッジをかけて大規模のビットコインを購入してきた人達がクジラ化していたことも現在の需給の悪化に拍車をかけているように思う。
なぜそう思ったのかそれについて今回まとめていきたい。

仮想通貨全般ではないものの、ビットコインについては最近多くのプレーヤーがいくら資金を調達していくらビットコインを購入したかを嬉々として開示しており、上場企業は適時開示でその情報を出していたりする。

しかし、一般的にこれは投資市場では自分を不利にするだけの御法度所作である。
なぜなら自分の手持ち資金とレバレッジがバレている状態で分不相応の多額のポジションを特定市場で持っていると、あらゆるプレーヤーから逆のポジションを取られてしまい、小さな池の大きなクジラとなってしまい身動きが取れなくなってしまった挙句、追い詰められて全ポジションをアンワインドさせられることが往々にしてあるからである。
少なくとも小さな池の大きなクジラがのたうち回っているのを獰猛な市場参加者が見逃すはずがない。

これが長年株式市場や他の金融市場で多くの屍によって築き上げられてきた知識と経験である。
しかし仮想通貨市場ではそうではない。
ビットコインを購入するにあたって、ホールセールでいくらどのような手法で調達したかを公開した挙句、しかもいくら買っているかを買うごとに毎日公開しているのである。
最初はエルサルバドルやマイクロストラテジーが行っていたが、これをメタプラネットやgumiまでがやり始めている。
特に企業でビットコインを購入している人達は最近転換社債を発行してビットコインを購入し、それによってビットコインが上昇すればさらにその株価を利用して転換社債を発行してビットコインを買うという半ばポンジスキームに近い非常に雑な投資の仕方をしている。
傍からみればやぶれかぶれもいいところである。

では、なぜわざわざ開示しているのかというと、結局ビットコイン価格を吊り上げて目立つ形でワンチャン自社株の株価を高くしたいという誘惑が大きいからだろう。
実際にこの戦略によってマイクロストラテジーやメタプラネットは多大な恩恵を受けてきたわけである。
途中でこの戦略から手を引ければ成功であるものの、もう後戻りできないレベルで深入りしてしまっている。
もはや不安定な仮想通貨の価格変化に身を委ねるしかないし、キャッシュフローがないのでバリュエーションがはかりづらい金融商品で、自分がこれだけのレバレッジを利かせて大量のビットコインを保有していますと公表することは、小さな池の大きなクジラであることを大声で言っているだけで、ここもと各社ビットコインの追加購入をことあるごとに開示しているが、結局上がるどころか下がっているのは、他のプレーヤーが意図の有無は人によって違うが大きなクジラを苦しめる形で動き始めているということだと思う。

そう考えれば、まだまだ仮想通貨市場に対しては個人的には悲観的という考え方を維持するので良いと思う。

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単にリスクパリティ戦略で売られただけ疑惑の米国株

【マーケットを語らず Vol.121】リスク・パリティで考えるポートフォリオの資産保有比率と目先の変動性

債券と株の間で資金が動いているだけ感。

ここ数日米国市場では米国債券の金利が低下・つまり米国債券が買われる形で動いている一方で、その間比較的大きめに米国株が下落したとして、これは経済の先行きについて悲観的な見方が台頭しているのではないかという話が盛り上がっていた。
しかし、これについて単にリスクパリティ戦略で株売って債券買ってるだけの話なんじゃないの?という疑惑があるので、今回はこれについてまとめていきたい。

リスクパリティ戦略とは、元々レイダリオ氏が提唱・運用していた戦略で、債券と株を同程度のリスク水準になるようポートフォリオを構築し、何が起きてもいいように金融市場でポジションを維持し続けるために考案された戦略であった。(具体的な概要は記事一番上のリンクから確認してください)
このリスクパリティ運用は2021年からの強烈なインフレに伴う金融引き締めによって、米国債券がはちゃめちゃに売られてしまったために、ポートフォリオ全部がダメージを受けたことから一度は完全に死んだ運用手法となってしまっていて、しばらくその名前を聞くことはなかった。

しかし、米債金利については2月に発表されていった数値が関税駆け込み消費・仕入れの影響が大きいことが明らかになったことからそこまでもう上昇せんやろという見立てが台頭していっている中で、10年金利が4.5%近くある一方で、株はS&P500のPERが29倍と益利回り3.5%ぐらいとなっていることから債券と比較した時の見た目の割高さがあり、つまり債券は比較的投資妙味があるという見立てが台頭しつつあった。(実際は株はこれにインフレ期待分の調整を加えるべきだが、ここでは割愛)
その中で、ブラックロックの決算などでも言及されつつあったが、伝統的な株と債券をバランスさせたポートフォリオ戦略の復活が目前に迫っていた。

そういった中で、元々伝統的なバランスポートフォリオよりも高いリスクリターンが見込める戦略としてレイダリオ氏が提唱していた株と債券のリスク(変動率)を同程度組み込むリスクパリティ戦略がもしかすると再起動したのではないのではないかと色々報道やXのつぶやきなどを見ていると感じた。
リスクパリティ戦略をとると、債券75%+株25%の組み入れバランスになるので、株の組み入れ比率が大きい場合はかなり株を売る必要性がある。
これまで債券は2021年以降非常に毛嫌いされてきたわけで、多くの市場参加者のポートフォリオには組み入れが不十分であったわけで、2月からリスクパリティ戦略が再起動したとなると、それなりに大きい株から債券の資金シフトが起きるわけである。
さらに、2月末はエヌビディアの決算+月末フローも加わったせいで、ニュースフローは大したものがなかったはずなのにあれよあれよと米債金利低下+株下落の組み合わせが発生したのだと思われる。

【米国10年債金利のチャート】
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ただ、これはあくまで株から債券にシフトしているだけの話で、根本的に市場参加者がもう先行き厳しいから現金化して金融市場から撤退しているわけではなく、単に利益の最大化を狙っているだけなので根本的なリスクオフではないと思っている。

ここまで金融市場の戦略シフトで値が動いてきたと説明してきたが、そういう事情を知らない人から見ると、債券金利の低下と株下落の同時発生は景気懸念から皆が先行きに対して悲観的になっているので、これはいよいよ相場は危ないという感触を抱いた上に、報道などもそういう報じ方をしてくるし、こういう時は些細なネガティブニュースにも反応しやすくなるのできっとそうに違いないと感じてしまうことはなんとなく想像しやすく、そこらへんは特段ノイズとして気にする必要性ないし、基本的に株は金利が下がっていけば金融緩和期待でサポートされやすい地合いが続くと個人的には考えている。

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エヌビディア決算前にヘッジポジション構築が進む市場

Options Traders Line Up Hedges Before Pivotal Nvidia Earnings

エヌビディア株への取り組みは、オプション市場から見る限りは比較的皆理性的だと思う。

現在ご存じの通り、注目される米国株の決算の中でもエヌビディアはもう世界中の投資家がその決算動向に注目している。
単にプロの期間投資家だけでなく、個人投資家の注目度も一企業としてはありえないレベルの高さとなっている。

ただし、その注目度はどちらかというと警戒感的な側面が大きい。
まだ生成AI自体がビジネスとしてきちんと金になっているという実績が薄い中で、メガテック各社が設備投資を積極的にしているわけであるが、この設備投資が少しでも翳ればエヌビディアのPER51倍というのは正当化できないでしょという警戒感が非常に大きく、この警戒感は機関投資家から個人投資家まで幅広く持っている考え方だと思われる。
ここらへんは根本的な需要がマネロン需要しかない仮想通貨界隈のどんな草コインでも買いだみたいなテンションとは全く真逆と言えるだろう。

実際に投資家の警戒感が高まっているかどうかはインプライドボラティリティを見てもらえればわかる。

【エヌビディアの30日インプライドボラティリティの推移】
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https://fintel.io/siv/us/nvda

インプライドボラティリティはオプション市場でオプションの価格を決定する際に重要な指標であるが、これが高いほどオプション(コールもプットも)の値段が高くなる。
つまりオプションの需要が高まっているわけで、エヌビディアの株価が不安定なことを考えるとヘッジ売りのポジションニーズが全般的に高いことを意味する。

【エヌビディアの株価チャート】
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特に決算月にDeepseekショックが起こったところからインプライドボラティリティーは上昇したままで、決算が無事通過するとこを見るまではヘッジを組んでおかなければという機関投資家が多い様子がなんとなくうかがえる。
そしてこのヘッジ売りというのはエヌビディア株でやろうとするとインプライドボラティリティがめちゃくちゃ高いがためにコストが割高なので、ナスダック100などの代替物で行ったりしているために、他のハイテク株も巻き添えを食う形で下落していたりするのである。

しかし、これだけ生成AIというものが次世代技術として注目されている中で、みんな高PERにびくびくしながらあーでもないこーでもないと四苦八苦しているわけで、株価だけ見ると過熱感があるようにも見えるが、センチメント的にはあまり過熱感を感じない。
個人的にはエヌビディアの株価が本当に死ぬときは決算で死ぬのではないと思っており、なぜなら世界中のテック企業がエヌビディアのGPUを発注していて在庫がひっ迫する中で、その在庫のひっ迫度合いを見ている人はごまんといるわけで、在庫ひっ迫度合いに変化があれば真っ先にこの先に事情を知っている人達が一斉に売りに回るはずで、決算の数値しか見れていない人達が先手を取れるわけがないのである。
決算が無事通過すればヘッジ売りは順次アンワインドされていくことが期待できるわけで、そういった諸々を考えていくと、エヌビディア決算でどうのこうのという株価動向にはならないと思う。

ということで、市場を上下に大きく揺さぶるオプション市場から考えると、エヌビディアの決算後の反応はおそらく大したネガティブニュースにはならないと思っており、オプション市場から株価の考察の仕方については下記過去記事を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
株価が上にも下にも行き過ぎる現象をオプション市場から考察する



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今さらQT停止・縮小議論を開示してきたFOMC議事録

FOMC参加者、利下げ継続に慎重姿勢 1月議事要旨

それちゃんとFOMC当時の記者会見で言えよ・・・

1月FOMCの議事録が出たのだが、その中で一つ目をひいたものがあったので、それについてまとめていきたい。

1月のFOMC自体は金利据え置き確率は事前予想での確率100%ということで、特段政策金利において議論の余地がないということは当然であったが、一方でQT(量的縮小)について将来的な縮小・停止を示唆するために「議論した」という内容が開示されるのではないかと期待していた。
しかし、声明文でも記者会見でもQTに関する議論について何も述べられなかったことから、市場参加者には若干の失望があった。

しかし、あらためて1月のFOMC議事録には、この1月FOMCの時に多くの市場参加者が期待していた「QTに関する議論」というのが記載されていたのである。
もちろん議論内容はQTの縮小・停止であるわけで、おいいまさらそれ開示するんかという話になっている。
つまるところ、FRBは金融引き締めバイアスは一切なく、非常に緩やかであるものの金融緩和バイアスをどの時点で出すかというのをメインの政策議論にしているわけであり、2018年の時の無理くりQT・金融引き締めをしたところ、短期金融市場がクラッシュしてリスク資産価格がいきなり大幅下落したことに未だトラウマがあることが確定的になったのである。

以上を考慮すると、ここから金利が上昇することはFRBが想定する以上の景気鈍化を引き起こすわけで、それはFRBが望むことではないと思われる。
そして、雇用も騒ぐほど強くもない(弱くもないが)、インフレも弱くはないものの強まるという感じでもなく、そして現在の金利水準は本当にじりじりとだが景気を減速させていく効果のあるレベルであるというのがFRB内部の総意ということである。
こうした中で、QTを継続していくことによる追加的な流動性減少はリスクが高いという認識であるために、議論が開始されているわけで、現時点で議論されていることを開示していればもう今年の半ば頃にはQT縮小・停止の内容が決定することも概ね既定路線ということになる。

こうしたことを考慮していくと、まだトランプ関税リスクはあるものの、ここもとのトランプのぐだぐだ感を見ると容易に何かが決まる感じでもなく、米国債の金利上昇リスクはやはり剥げつつあると考えるのが妥当だろうと思う。

【米国10年債金利のチャート】
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というよりも、金利ロングしている人にとってもショートしている人にとっても、それ1月のFOMCでちゃんと開示せえよという話であったが、金利ロングしている人にとっては思いがけない朗報であったのではと思う。

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仮想通貨市場のセンチメントを変えるエポックメイキング的な事件になりそうなBybitハッキング事件

Bybit、史上最大規模のハッキング 仮想通貨相場が急落

エポックメイキング的な事件になりそうな予感。

上記記事はTrumpコインをいち早く取り扱ったとしてユーザーが一気に増えたBybitにて仮想通貨ではおなじみのハッキング被害にあって2000億円近くの仮想通貨を盗られたという事件の報道である。
背後はおなじみの北朝鮮ハッカーらしく、仮想通貨の最大の利益享受者は北朝鮮なのではと思えるような事態となっているが、今回この事件で思ったことをまとめていきたい。

過去仮想通貨は何回もハッキング被害にあっているわけだが、過去のハッキング被害を見ると下記のような内容と時期になっている(Chat GPTにて作成)

【過去の仮想通貨ハッキング事件の時期と被害金額】
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上記のように過去の被害発生時期を後から振り返ると、結果として仮想通貨の一旦の天井の時に発生していることがわかる。
実際にビットコインのチャートを見てもらいたい。

【ビットコインのチャート】
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では、なぜ巨額ハッキング事件の後に仮想通貨は一旦の天井をつけやすいのか?
理由はハッキングを狙う動機になる。
ハッキングを狙うとすれば、ユーザーが急拡大し、システム対応が追い付いていない仮想通貨取り扱い業者を狙うのが妥当である。
実際に過去のハッキング事件の時はマウントゴックス・コインチェック・FTXと仮想通貨市場が盛り上がったところでユーザーが急拡大したところで大体食らっている。
つまり、ハッカーは仮想通貨市場が盛り上がって、サイバーセキュリティーの脇が甘い企業を狙っているのであり、それは裏を返せば結局仮想通貨市場が過熱している時になるのである。
さらに言えば、市場が過熱している時でないとハッキングをしてまとまった金額を換金するのが難しいというのもあるので、往々にして相場ピークのところらへんでこういう事件が起こるわけで、熱局的バブルに見られるモラルハザードの一種だと思っている。

【過去参考記事】
熱狂的バブル相場の天井を捉えるために見るべきモラルハザード・不正行為とは?

そしてこうした巨額のハッキング事件を受けると、レバレッジを利かせて仮想通貨投資をしていた人達はハッキング被害を受けた場合に致命傷になりかねないため、一旦出金するわけで、レバレッジが逆回転して相場の重しになることも、下記過去記事の考え方をすればわかりやすいと思う。

【過去参考記事】
なぜ借金のサイクルが経済・株価にとって重要なのかを解き明かす

以上を考慮すると、仮想通貨についてよくわからない熱狂的買いが殺到している中で、単に詐欺的トークン出して出金しようとする輩から、犯罪行為で利益を得ようとする人までが現金化を目論んでおり、いよいよ闇鍋感が強まっている中で、なんとなく嫌なエポックメイキング的な事件が起きてしまったなと思う次第で、やはり一旦皆が売りたくなるような下落が起きる可能性の方が高いのではないかと思っている。

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