村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2024年11月

米国PCEは一旦反発だが、タカすぎる債券市場では普通に金利は低下

米PCE価格、10月前年比+2.3%に伸び加速 インフレ高止まり

もっと債券市場全体はタカ派なので、市場予想通りの数値でもポジティブ。

木曜日は米国市場は祝日で動いていなかったが、FRBが金融政策を決める上で最重要な統計の一つであるPCEが発表された。

統計内容は全く市場予想と合致し、PCE価格指数は市場予想が前年比+2.3%に対して結果は同じ、コアについても市場予想が前年比+2.8%に対してこちらも結果は同じということで内容自体はノーサプライズであった。
コアPCEについては2020年以前のデフレ時代は1%台後半であったが、足下のインフレ時代では一旦2.6%まで低下したものの一旦2.8%に反発する結果となり、引き続き昔のデフレ時代には戻らんよねという内容であることは確かだろう。
ちなみになぜデフレからインフレに世界がなったのかは下記過去記事を読んでもらいたい。

【過去参考記事】
デフレからインフレへなぜ世界は大きくレジームチェンジしたのか? 

総合PCEは前年比+2.3%と2020年以前のデフレ時代でもその程度の水準はあったが、足下では原油価格が前年比ベースで下落している分があるわけなので、それを考慮するとまあまあそんなもんですなぐらいの話である。

しかし、米国休み明けの相場ではじりじりと米国債利回りは低下基調での推移となり、東京時間こそ小幅な低下が、米国時間に入ると5bpsぐらいの金利低下と幅は大きくなっていった。
これはやはり債券市場がタカすぎることが要因だと思う。
FRBが政策金利のロンガーラン見通し2.9%ぐらいと言う中で、OISでは来年末時点で3.8%ぐらいまでの利下げしか織り込んでいない上に、さらに2~3年債は4.2%も金利がある状態で実際の債券市場ではさらに利上げ織り込み回数が少ないという異常なタカ派状態となっていた。

現在のPCEが前年比+2.3%で一応この数値自体は2020年以前のデフレ時代でもぎりぎり到達していた時期もあることを考慮すると、2020年以前のデフレ時代の10年債金利のピークと比較すると債券市場のタカっぷりが目立つ。

【米国10年債金利のチャート】
タイトルなし

なんとなくの感覚だが、トランプ政権の財政赤字がいくらか債券タカ派プレーヤーの目論見から下回る金額しか出なかった場合はタームプレミアム含めて利下げ織り込み回数が一定程度復活すると思っている。
そうなると、10年債でいうとデフレ時代の金利ピークのレベルぐらいは意外と見えるんじゃないかと思っている。
その水準は2018年12月の3.25%という数値で、利下げ回数織り込みが復活してタームプレミアムが剥げれば最終的にはこの数値ぐらいまでいくんではないだろうかと思ったりする。

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じりじり上昇する失業保険継続受給者数と利下げ織り込みの足らなさを考える

NYの視点:米失業保険継続受給者数は3年ぶりの高水準、今後の労働市場の冷え込み示唆

クビにしてないけど、雇ってもいないような。

米国景気の占う上で、大体市場参加者が見ているものは毎月頭に出てくる雇用統計と毎週出てくる失業保険関連統計で、その中でも新規失業保険申請件数と失業保険継続受給者数は毎週発表されていて毎月の雇用統計を待つより速報性が高いということで、2022~2024年秋頃の局面ではこの数値だけで金利が上に行ったり下に行ったりと大きく金利を動かす材料になっていた。

しかしここもとはあまり市場予想から大きく上にも下にも外れるような数値にならないことから、段々と市場参加者の関心も薄くなっていて、米国の利下げ織り込み回数は気づけばほぼノーランディングに近いような今年あと1回・来年2回程度という程度になっている。

しかし、個人的にはどうも失業保険継続受給者数の数値推移を見ていると、本当にそんな利下げ織り込みでいいのかと思うところがある。
新規失業保険申請件数については21.3万件と通常レベルの水準であり、確かにこれだけ見ると問題はない。
一方で失業保険継続受給者数はじりじり悪化しており、足下で190万件という数字になってきている。
この悪化については2024年6月頃から始まっており、6ヵ月程度で10万件増えている計算になる。

【失業保険継続受給者数の推移】
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クビ切りは行われていないものの、米国での雇用コストがあまりにも高いために企業側が新規雇用について非常に慎重になっていると言わざるを得ない状態となっている。
過去の失業保険継続受給者数を見ると、200万件というのが一つの目安となっており、200万件まで増加するとここ10年ぐらいの動きでいうと2017年ぐらいの状況までバックしているということになる。
 2017年頃から利上げが進んだことを考えると、失業保険継続受給者数200万件というのは政策金利の先行きを占う上で重要な数値ではないかと思う。

そういった意味で失業保険継続受給者数が200万件より上で推移している場合は連続的に利下げを行っていく必要性が生じる可能性がある。
今の悪化ペースが続くと来年4~6月頃にこの件数は200万件を上回っていく可能性もかなりある気がする。
そうなると、利下げの効果というのは1年~1年半程度のラグを持って効果が出ることを考慮すると、2025年もそれなりの回数利下げをしていく必要性があるわけであるが、現在のOIS織り込みは半年に1回で合計2回分しか織り込まれていないわけだが、さすがにそれは少なすぎるのではないかと直感的に思うところである。

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ベッセント氏の米国財務庁長官指名で矛盾した動きをした米国株

次の米財務長官は「財政タカ派」 金利低下・株高が加速

財政出すから株価上昇してたんじゃないの? 

トランプ政権の重要人物指名が続いているが、その中でも注目されていた財務長官についてベッセント氏が指名されたというニュースが市場に大きな影響を与えている。

このベッセント氏というのは上記日経新聞の記事にもある通り、ヘッジファンドの出自で金融市場に詳しく、財政支出についても穏健派であり、財政赤字については対GDP比3%ぐらいにすべきといった主張をしている人物であるようだ。
金融市場に詳しいので、あきらかに金利マーケットをぶっ壊すようなことをしないだろうという安心感もあり、日曜日にベッセント氏指名が報じられた翌日の月曜日から米金利はラリーが続いている。
個人的にも米金利については概ねこの動きは妥当なものだと思っており、ファンダメンタルズをきっちり織り込む債券市場らしい動きだなと思った。

【米債10年金利のチャート】
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一方で解せない動きをしているのは株の方である。

確かに規制緩和するというプラス効果はあるだろうけど、規制緩和をしたとしても実際にGDPに波及するまでには時間がかかるわけで、一方で財政が出ないのは直接的にGDPにマイナスに効くわけである。
米国大統領選で株価が上昇したのは共和党が上下院が占めるオールレッドになり、減税などの財政拡張策によって景気が盛り上がってノーランディングになるからというものを先どって動いていたはずである。

しかし、ベッセント氏が実際に財政についてはきちんと管理可能な範囲でしか出さない(おそらくそれが対GDP比で3%という数字なのだろう)となると、財政拡張で景気大盛り上がりという話とは大分違うとなるはずである。
実際に米債金利は即座にそれを反映して順繰りに金利が下がっているわけであるが、米国株については本来ネガティブな話であるのが安定感があるとして上昇したりとかなり都合の良いように考えている節がある。
OISの金利予想もこの財政拡張を一部反映して織り込み回数が減っていたはずで、財政支出拡張せずに景気指標落ちたらみんなびっくりする可能性があるのではないかとふと思った次第である。

まあもちろんその時はFRBが積極的な利下げに動けばよいわけで、FRBはデータ次第と言い続けていることと整合性も合うので、一応頭の中では大統領選後の期待だけで上昇した分ぐらいはいつ剥落してもおかしくないでしょぐらいに思いながら相場を見ている次第である。

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中国株の楽観が消え、インド株の楽観が復活

アジア株 インド株大幅続伸、モディ首相率いるインド人民党がマハラシュトラ州で圧倒的勝利

あっという間に中国株の賞味期限は終了して、再びインド株が盛り上がりそう。

よくDCやインデックス投資で新興国株インデックスファンドがあるわけで、投資候補の一つにあがるが、中身は下記の通り大体主に9か国程度で構成されていて、うち中国(香港株)・インド・台湾・韓国で大体75%が構成されている。

【新興国株式指数の国別構成比率】
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https://www.nikkei.com/nkd/fund/portfolio/?fcode=02312101

ここ2~3ヵ月は中国が景気刺激策を連発させたことからにわかに盛り上がってきたわけであるが、あまりにも景気状況の落ち込みが厳しく、毎月連発できるわけもなく11月に入ってからは投資家のおねだりに中国政府も応えられなくなり、ド高値で捕まった中国本土の個人投資家の信用買いが積まれたまま香港株はじりじり割れる展開となってきており、PDDの決算ミスもあり全戻しが見え始めてきている。

【香港ハンセン指数のチャート】
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こうして中国の楽観が消えてきたわけであるが、そうなると自然と外国人投資家は再び中国株をアンダーウェイトするしかなくなる。
そしてアンダーウェイトした分の資金はどこかに移さなければいけない。
では実際に資金を移す候補を考えるとどうだろうか?
台湾はTSMC単独で10%引っかかるような限界持っているケースが多いし、TSMC以外だとあとはせいぜいメディアテックかクアンタコンピューターぐらいしかない。
韓国もサムスンかSKハイニックスぐらいしかなく、なんとかぎり現代自動車が候補になるぐらいだと思うが、大体サムスンもSKハイニックスも多分限界まで入れている。
あと残っている新興国だとブラジル・南アフリカ・サウジアラビア・メキシコなんてのは資源があるだけの政治が腐敗しきった国で、株の利益が収奪されやすい国で非常にやりづらい。
となると、投資候補が多い国としてインドしか実質的に選択肢がない。

インドであれば、現在経済成長が好調推移する中で金融銘柄も触りやすいし、インフラ関連銘柄も触りやすいし、IT系もあるわけで、バランスよく投資が可能である。
となれば、中国株が再び期待できない状態に陥ればインド株に再び資金がシフトするのは想像しやすいだろう。
実際に香港株の底抜けと反比例する形でインド株が再び上昇を始めている。

【インドSENSEX指数のチャート】
タイトルなし

インド株のPERは22倍ぐらいと香港株の10倍と12倍も高いわけであるが、うちインフレ率の差だけで5%ぐらいあることを考えれば個人的には十分正当化できるバリュエーションじゃないかなと思っている。
少なくとも民営企業を活躍させる気がない南米・アフリカ、2~3銘柄ぐらいしかまともな銘柄がない韓国・台湾と比べればインド株はカジュアルに資金を振り向けやすいステータスなので、香港株が案の定期待外れで終わり始めている中で、やはり新興国株ならインド株一択だろうという見方に再び回帰し始めていると個人的には思う次第である。
  
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米ドルMMFに待機している資金は米国債に資金移動していくだろう

米MMF、残高1000兆円と過去最高 利下げ鈍化観測で

利上げが当面ない中で、MMFより利回り高くなれば米債需要は高まるだろう。

大統領選挙以降もオールレッドに伴う財政支出懸念もありなかなか米国債利回りは長期債を中心に下がらない状態が続いている。

【米国10年債金利のチャート】
タイトルなし

この状態であることから、米国債金利についててきとーな落書きテクニカル勢がこのまま米国債金利は上に行くとかいう言説が再び復活し始めているのが観察されてきている。
しかし、FRBがじりじりと利下げを進めていく中で、資金需給を考えるとそれはないのではないかと個人的には考えているのでまとめていきたい。

なぜ米国債需給はそこまで悪くならないと考えているかと言うと、米国債へ投資したいと思っている人達は潜在的には米ドルMMFに資金を待機させており、最終的に米国長期~超長期債の利回りのアンカーとなっているのが、米ドルMMFに待機している資金だと思っているからである。
現在米ドルMMFの利回りは概ね4.2~4.6%ぐらいの範囲で推移しているわけであるが、今後この利回りはFRBが利下げしていくとじりじり下がっていく。
今のところCME開示のOISで見れる範囲だとFRBの利下げはとりあえず3.75%までぐらいはいくんではないかと見られている。
そうなると、MMFの利回りも大体その辺ぐらいになると思ってもらえればいい。

これら資金が待機しっぱなしであるわけなので、少しでもリスク対比で有利な投資先があれば、そこに資金を移していく可能性が高い。
ここで重要なのは、単に期待リターンが高いという話ではなく、リスク対比でリターンが高いというところにある。
MMFは確実性を求める資金ということもあるので、実際に資金が移動するとすれば債券へシフトする可能性が高い。
さらに債券と言えば、その移動先は米国債になる可能性が高い。

現在政策金利は下限4.5%であるわけだが、ここから25bps×2回利下げされれば、その時点で政策金利は4%で、MMF利回りも大体4%ぐらいの利回りになるだろう。
この時に米国10年債金利が4.4%・30年債金利が4.6%というのを見れば、かなり魅力的な投資先になるのではないだろうか?
少なくとも、10年債金利であれば、先々2年ぐらいはISM製造業指数が50割っている中で、そう簡単に政策金利引き上げにはならんでしょとなると、10年間4.4%が手に入れられるならMMF利回りの低下も込みで考えるとかなりお得だと考える人もそれなりに多いだろう。

というところを考えると、直近インフレ率は徐々に落ち着きながらも、雇用市場が堅調でなんとなくFRBが利下げを連続して行うにあたっての決定打が少ない中でも、利上げをするわけではないので十分MMFから米国債に資金を移動させる根拠になるし、それが米国債利回りを押し下げる要因になるだろう。

というわけで、概ね今の米国債金利水準は目先のピークだと考えている。
一部では未だにファンダメンタルズを知らない人がチャートにてきとーに線を引いてさらなる10年債利回りの上昇があるとか言い出しているが、個人的にはそうはならないと思うし、債券を落書きだけで判断しているような人は何もわかってないんだろうなと下記過去記事を読みながら思う次第である。

【過去参考記事】
債券金利をテクニカル分析だけで判断することにはほとんど意味がない理由

 
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