村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2024年04月

絶対無敵に思えた半導体株も米国利下げ待ちのフェーズ

新光電工(6967)下方修正と TSMC 決算カンファレンスコール Q&A からのインサイト(2024/4/19)

半導体株も利下げ待ちかもしれない。

今の世の中は便利なもので、SNSや様々な情報発信ツールの増加と株投資人気ということもあり、大型指数の大型銘柄ぐらいなら誰かしらがうまい具合に決算をまとめてくれたりとかしていて、決算でどのようなことが示唆され、市場参加者がどのようにそれを捉えているかを、前提知識があればわざわざ当該企業のカンファレンスを聞いたりニュース記事を読まなくてもなんとなくわかる時代である。

特にTSMCの決算なんてものは、世界中の半導体株触っている投資家が虫眼鏡で舐めまわすように決算とカンファレンスを観察しているわけで、TSMCの決算数値とコメントをうわべだけなぞったところで、そこに市場に対するアドバンテージはほとんどないと思うので、もう一歩深い思考というのが必要だと考えている。

そういうのをぼんやり考えながら、TSMCの決算数値・コメント・市場反応を見ると、やはり相場がさらに上昇していくには米国の利下げが必要ではないかというところに思考がたどり着いた。
上記記事の内容を見てもらえればわかるが、TSMCの決算では引き続き生成AIや、それに伴うメモリ需要は好調であるが、その他は正直いうと回復が遅れててさっぱりというのが現状ということである。
つまり、絶対無敵に思えた半導体関連銘柄も、生成AIを除くと普通に高金利による景気鈍化の影響が長引いているということである。
そして足下の相場は生成AIの需要爆増を既に相当織り込んでいる上に、他の半導体も需要の大幅増加を織り込んでしまっている。
実際にTSMCの決算発表後にTSMCの株価が滑ったことを考えると、この考え方が妥当だろうと思う。

【TSMCの株価チャート】
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そうなると、ここから半導体株が上昇するにはマクロ経済の改善あるいはその期待が出てくる必要性がある。
ということは、やはり米国の利下げが必要ではないかと言う結論にたどり着くわけである。
そして今は、市場参加者が何を勘違いしたのか今年利下げがないだとか、再利上げをする必要性があるだとか全く現実が見えていない世迷言をマジで信じている人がいる始末であり、その流れにFRB理事メンバーの一部も引っ張られてしまっている。

しかし、当ブログでは細かく統計や企業決算コメントを見ていくと、いやいやそうはならんやろという結論に達していることは下記記事でも記載した。

【過去参考記事】

米国物流倉庫大手のプロロジスの決算を見る限り、利下げは近いと感じる

というわけで、一時的に半導体株やテック株を中心に反発を見せているわけだが、あくまで一部ショートカバーが出たに過ぎないし、さらに言えばこのショートカバーはインザマネーしたワンチャンコールオプションの利益確定のためにヘッジショートされていた部分のショートカバーに過ぎないと考える。
つまり、高値掴みしてしまったための損切売り・利益確定売り・金利高すぎ懸念からの新規ショートについてはまだ序の口という状況である。
そういうことを考えると、多少反発したとしても、まだ債券金利に関して世迷言が幅を利かせている状態の中で追加買いするのは、短期トレードが苦手で比較的長いスパンでポジションを保有する自分のスタイルには向かないと思い、ここは動かずにじっともう一発押すタイミングを待っている状態である。

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なぜ銀価格は金価格より価格上昇が遅れるのか?

金の高値続く中で注目される「銀」 投資目的での購入が増加も…

論理的に考えると遅れるのは必然。

ここもとの金(ゴールド)価格の上昇については非常に注目されているが、それとともに銀(シルバー)価格についてもここ数週間で上昇し始めており、やや注目が集まりつつある。

【シルバー価格のチャート】
タイトルなし

しかし、シルバー価格というのは毎回のことであるが、ゴールド価格に対して出遅れている。
金銀レシオが80倍オーバーで過去対比で相当割安となっており、これがシルバーの買いを喚起しているように思える。
しかし、過去の金銀レシオの動きを見ると、1970年以降は基本的にシルバーはゴールドに対して価格は出遅れていることがわかるが、それはなぜなのかというのを考えてみたい。

【参考ウェブサイト】
金銀比価(レシオ)とは?

これは買い手を考えればもはや構造的な宿命だと思っている。
ゴールドの買い手というのはまず誰なのかを思い出したい。
まあこんなのはググればいくらでも出てくる既知の話であるが、比較感のためにあらためて書いていきたい。
大体ざっと思いつくところとしては、宝飾関連・工業用・ETF・現物投資・中央銀行の外貨準備の4つが主流である。
特に最近は中央銀行の外貨準備として新興国(特に中国)が買っていることは周知の事実である。

一方でシルバーの方の買い手はどうだろうか?
シルバーの買い手というのは宝飾関連・工業用・ETFの3つである。
しかもETFについては米国以外のシルバーETFの残高は大して大きくない。
さらに言えば現物投資というのは銀というのは意外と難しい。
なぜなら金は1gあたり1.2万円とかするが、銀は1gあたりいまだに140円程度であり、銀は保管スペースが100倍必要なので、この差は埋めがたい。

このようにシルバーの需要というのはゴールドの需要から現物投資と中央銀行の外貨準備という大きな買い手2つが消えた劣化版コモディティということがわかる。
その上、上述したようにETFについても米国以外は残高がしょぼいため、ETFの買い需要も基本的にゴールドに劣後する。
そういったことを考えると、ゴールドは世界の市場流動性から受ける影響が大きいが、シルバーは米国の流動性オンリーという心もとないものを頼りにしなければいけない。

こうしたことを考慮しながらシルバーの長期チャートを見ると、ゴールドに常に遅れる形で動きながら、突然発作的に投機需要が盛り上がって爆騰したと思いきや泡となって消えるを繰り返すなんともクセのある資産だなと思われる。
さらに投機需要が盛り上がる時は、普通に考えれば米国投資家の影響が一番大きいので、米国流動性の伸縮で決定される、まさに「貧者の金」という位置づけであることは確かなのだろうと思う。

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米国物流倉庫大手のプロロジスの決算を見る限り、利下げは近いと感じる

Prologis shares dip as FY24 forecast cut post-earnings

思ったより利下げ前夜だと思う。

米国企業決算シーズンであるが、その中で個人的に注目した決算は米国物流倉庫最大手のプロロジスの決算だったので、それについてまとめていきたい。

これまでプロロジスは米国国内の物流倉庫需要の強さを背景に破竹の勢いで伸びてきた企業であり、決算の度に「物流倉庫の床需要は非常に強く、需給はタイト」と言ってきていたし、それに伴ってずっと家賃も引き上げを続けてきており、米国REITの中では最も優良銘柄と見られていた。

しかし、今回の決算について資料とカンファレンスコールを聞くと、少し様相が違った。
まず決算資料を見ると、引き続き既存倉庫は高稼働であるが、リース交渉が鈍っているように見えるし、家賃の伸び率が鈍化傾向となっている。
実際にカンファレンスを聞くと、業界全体で物流倉庫床需要が供給を吸収できなくなりつつあること、それに伴って新規募集家賃もあまり上昇していないこと、需要家側の先行き不安が強いことについて言及が多かった。

【プロロジスの決算資料抜粋】
タイトルなし


この内容から、これまでバキバキに需給が強かった物流倉庫の床面積需要が明らかに鈍ってきていることがうかがえる。
物流倉庫の床面積需要が鈍っていることは直接的にモノの需要に対してすぐに減少するかどうかはわからないが、少なくとも需要家側は相当現状に不安を抱いていることは確かである。
実際に株価はこの決算カンファレンス後にダダ下がりしており、明らかに物流倉庫需給に翳りが見えていて、現状プラス材料がないことを株式投資家側は認知したように思われる。

【プロロジスの株価チャート】
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物流倉庫の需要が想定以下・新規家賃もここもとフラット・物流倉庫側から見るとFRBの利下げ時期が不透明なことが需要家側の発注態度にも影響し始めているといった発言・決算発表後の株価の滑り方を総合的に見れば、既に一部FRB理事メンバーの米国景気は強いから年1回利下げで十分・追加利上げもあり得るという発言は株式投資家から見れば「あいつら馬鹿じゃないの!?」という感想が適当だろう。

債券投資家も遅かれ早かれ気づくはずで、そうなると長期金利を中心にFRB理事メンバーの発言を完全に無視してダダ下がりする展開は近づきつつあると考える。
さらに金利が下がっているにもかかわらず、株価も下がる形になり「ゴルディロックスになんでならないの!?」と高値掴みしたり中途半端なタイミングで買いエントリーした人達が苦しむ局面もイメージしやすいだろう。

そして最終的にはFRB理事メンバーが「ごめん!調子こいたこと言ってたけど、データ見たらやっぱり年3回利下げだわテヘペロ」といった発言が出るまでは株価は上がらないという前提で考えれば、足下の相場は上手く立ち回れるだろうと考える。
 
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足下の相場焦点は中東情勢ではなく米国金融政策の行方

米株価指数先物が下落、米国債に買い集まる-中東情勢緊迫

やはりFRBの迷走が相場変調の根本要因だと思う。

土日をかけてあらためて、足下の相場の一番重要ポイントはどこかというのを考えていた。
一部は昨日の記事ともかぶるが、もっとクリアにしておくべきだろうと思う。

まず単に目立ったニュースだけ見ると、中東情勢からの原油価格高騰リスクというのが下げのきっかけとされている。
しかし、中東情勢の緊張感は継続しているが、一方で原油価格は下がってきている。

【WTI原油価格のチャート】
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これはそもそも論アラブ諸国全員が原油輸出について遮断する意図は持っていないし、イスラエルの暴走的な側面が大きく、これだけで全面的に欧米に喧嘩を売るようなこともしたくないし、そもそもアラブ諸国全員が財政確保のために引き続き原油輸出を続けたいというイントが大きすぎる。
そのため、原油価格の動向は業者が上昇のヘッジがかけ終わっている雰囲気がある中で、ファンダメンタルズ的にも非現実的なペルシャ湾封鎖とか言われましてもねえという話である。
もちろん米国石油備蓄放出という要因はあるが、そこは米国当局は各ブローカーのトレード状況を総合判断してぶつけてきていることも考慮すれば原油価格の上昇はやはり鈍いと考えるべきだろう。
なので、やはり個人的には中東情勢は相場においては下げ要因になったが、これはノイズであり相場の本質変動要因ではないと思っている。

一方で、本当に足下の相場に影響を与えているのは米国金融政策の行方だと考えている。
具体的には利下げ回数うんぬんというより、既に市場は「FRBの経済の見方が軌道から逸れ始めている」と考え始めているということである。
本当に米国景気が堅調で利下げ回数を減らすというのであれば、米国の輸入金額は維持され続けるはずなので新興国通貨は下がらないし、実際ここまではメキシコペソをはじめその流れを汲む動きを優良新興国通貨は続けてきた。
FX各社の広告でメキシコペソを全面に押し出したものが大量に出てきたところからも、その人気トレードっぷりは注目するところである。
しかし、ここにきてメキシコペソのレートは急速に不安定になってきている。

【メキシコペソ(対米ドルレート)のチャート】
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その他新興国通貨も動向は相当怪しくなってきている。
つまり、これは米国金融政策について「お前ら判断間違ってるぞ!」と市場が警告を発しているのである。

ここで思い出したいのは似たような相場ケースは過去にあったかである。
思い出すのは2018年の利上げ局面であった。
この時もFRBがずんずん利上げを進めたが、途中で準備預金が市場流動性を満たせなくなって急速に相場が曲がり、FRBは結局その後利下げに転じた。
この時はS&P500で18%近く株価が下落し。この時と現在の状況はなんとなく似ていると感じる。

【2018年のS&P500のチャート】
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ただし、相違点としては既にパウエル議長はあの時の判断間違いを経験して今に至っているということと、そもそも利上げを継続するかどうかではなく利下げをどうするかという議論をしている状態である。
そのことを考えれば、2018年末の最後の余計な下げみたいな展開は生じないと想定する。
そうなると、やはりS&P500がピークから10%ぐらいの下落したところ付近が底と考えることが妥当なように思える。
さらにここからベータを考えると、ピークからナスダック100で15%・SOX指数で20~25%というのが妥当なところだと思う。
そして現在の下げ幅を見ると、やはり下げ6合目付近と見るのが妥当で、未だ慎重な立ち回りを意識すうことが重要だと思われる。
 
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ぐちゃぐちゃになっている相場を今一度振り返る

米国株式市場=S&Pとナスダック下落、ネットフリックス大幅安

相場の弱さを一時的要因に求めてはいけない。

今週の相場は非常にきなくさい動きが多く、実際に株価がそこそこ大きく下落したこともあって、まだ普通の投資スタイルの人は余裕があるが、高値掴みしたりレバかけたりクソ株触ったりという人は既に相当ダメージを受けていて悲鳴的なものがあがりつつある。
そのような中で金曜日にイスラエルからイランにミサイルがぶち込まれたとして一気にリスクオフとなり、日経平均が1000円レベルで下落したところで、Xを見ているとイラン・イスラエルはそこまで緊張感は高まらないのではないかとして値ごろ感から買い向かう人達が増えてきたのが観測された。
実際にイランが報復しないとして、一旦米国時間寄りぐらいまでに一定程度の回復が見られたが、結局米国時間引けにかけて再度ナスダック・半導体株を中心に爆下げする展開となり、厳しい値動きとなった。

【ナスダック100のチャート】
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思い出してほしいのは、このイラン・イスラエルの衝突前時点で、既に中東情勢関係なく株価はダダ下がりしていたことである。
主要米国企業の決算が発表されるたびに、ここもとは決算自体は市場予想はクリアしているが、株価はまるで決算がド滑りしたかのような動きをしていた。
このことから、そもそも現在の市況状況は上で捕まっている人+利益確定したい人が多すぎな一方で、上値をとことん買ってやるという人は少ないという需給バランスであることは明白だ。

その状態で、日本時間にイスラエルからイランにミサイルがぶちこまれたみたいなニュースが出て地政学リスク大爆発で、慌てて日本市場開いているうちに、下げ相場をヘッジするために日経平均先物売りとコール売りプット買いが炸裂したために、日本株が強烈に下落したのが金曜日の市況であった。

しかし、その後イランが報復しなさそうということで米国株が寄りに向かって回復したかと思ったら、結局場中からナスダック・半導体株を中心にバカ下げしていってたわけなので、そもそも中東情勢関係なく売りが優勢となっている展開になっているのである。
結局足下の相場の下落原因というのはこれまで調子のってワンチャン狙いのコールオプションが吊り上げた相場に対して、足下は逆にコール売りプット買いやらヘッジの先物売りが飛び交う形で上値が非常に重たいところに、イラン・イスラエルの中東問題と勘違いFRB理事メンバーの金融引き締め継続の2つが覆う形で売りが優勢となる相場になっているわけである。

【過去参考記事】 

移民ブーストで説明がつくようになってきた米国経済・相場動向

ちなみに、現在見えている悪材料はこの2つだが、ここに中国でのバンケデフォルト懸念+人民元切り下げ懸念も残存しているので、これが爆発するとこれを理由にもう一段ヘッジ売りで相場を押し下げる原因になりかねないぐらい。
つまり需給地合いが弱い中で、FRBの金融政策が迷走していることと中国のリスクが構造的に重荷になっている中で、中東イベントという突発的なものが加わる形で現在の下げを形成していると考えるべきだろう。

そういったことと相場の雰囲気を考えると金曜日の時点で相場の下げは現在6合目あたりであると考えている。
あと4合分の下げがありそうなわけなので、個人的にはまだ追加買いは早く、下げの8~9合目付近ぐらいから追加買いエントリーできるよう、しっかり待機をして機が熟すのを待ちたいと思う。
 
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