村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2024年04月

日銀の拙速利上げを否定する財務省の為替介入

一時1ドル=160円台突破も一転154円台に…為替介入か 神田財務官「ノーコメント」

やはり利上げはなるべく巡航速度でやりたいというのが本当のところだろう。

GWも真っただ中であるが、先週金曜日の日銀金融政策決定会合からドル円が160を一気につけにいく展開となったが、160円に達してから一定程度達成感が出たところでドバっと円高になり、財務省から為替介入が入ったのではないかとなった。
(ただし、実際に為替介入があったのか、その規模はどれぐらいかというのは5月末の統計にならないとわからない)

【ドル円のチャート】
タイトルなし


個人的にはロンドン時間入ってからやるんではないかと思っていたが、日本が祝日の市場が薄いところでしかけにきたというのは驚きであったとともに、これ自体が日銀は為替のために利上げはせんぞという断固たる決意があるものだと感じた。

世間では為替がちょっと円安になったところで利上げを今すぐすべしという人が数多く報道やXでは見受けられるわけであるが、こう発言する人は総じて負債を抱えていない人達である。
日銀が利上げをすると、多くの人が影響があるのはタワマン買っている人達の住宅ローンの金利上昇でタワマン破綻とか煽るわけであるが、この時点でほぼ世間知らずもいいところである。
というよりも現状住宅ローン組んだ人はこの2年のベアで給料が5%以上は底上げされていることを考えれば、金利が0.25~0.5%上がったところで大した話ではない。
どちらかというと影響が大きいのは、同じように短期プライムレートで資金を借りている中小企業なのである。
これまで30年間のデフレの中で、中小企業は苦境に遭いながらもここまで生き残ってきたわけであり、今後賃金上昇の好循環を続ける上ではここで梯子を外してはいけないと日銀の植田総裁は考えているわけで、前々回の金融政策決定会合でも中小・地方企業の実状についてヒアリングをしていると発言していたところからも、相当地方・中小企業に配慮して金融政策を動かさなければいけないと考えているわけである。

通貨危機とか言う人もいるが、別に円から対ドルでの調達金利に変な揺らぎが起きているわけではないので、根本から売られているような話ではなく、相当程度が投機筋のキャリートレード的側面が大きいわけで、これに釣られて利上げした日には歴史的な汚点もいいところである。
本当に金融危機の場合は短期金融市場で対ドルの調達金利がばーっと上に跳ね上がるわけで、そういうのがない時点で所詮今の円安というのはそういうタイプのものである。

また為替介入についても韓国をはじめ、多くのアジア新興国がドル高がきついという発言がでていたことも思い出したい。
円というのは単に日本国民に関係するだけでなく、その流動性の高さからアジア通貨への影響力も大きいわけで、過度に円が売られたり金利が上がったりすると、たちまちアジア通貨もそれに巻き込まれるわけで、その辺も含めて既にイエレン氏にはアジア各国から相談済みというのが実情だったのだろう。

アメリカ側からしてもかなり無理して高金利を維持していて、これから対中国で結束してもらわないと困るアジア各国において多少の為替介入についてはよしとするというところもあるだろう。
ドル高に対する為替介入という点でもドル安に対する為替介入と比べればハードルは低いということもあっただろう。

そういうわけで、今回の為替介入で対ドルで5円ほど押し下げに成功したが、このままアメリカの利下げまで時間を稼げるかどうかが焦点だろう。
前回の為替介入もそうだったが、少なくとも短期間ですぐに剥げないようにマーケットのポジション動向や金利動向の先行きなどの内部情報を考慮してやっているはずなので、まだ今回の為替介入は水準以外に理由(例えば実は市場予想よりもFRBはハト的姿勢だとか)があるかどうかも考えておきたいと思う。

なお、個人的には短期トレードが下手な上に、さらにFXは下手くそなので傍観していただけで、特段エッジの効いた取引はできなかった(泣)

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貨幣経済崩壊論者の農作物・農地投資信仰の不思議

必ず上がると信じて「FIRE」を目指した人の末路…森永卓郎が勧める「バブル崩壊に強い資産」が「農地」である「納得の理由」

どこに納得できる理由があるのか?

昔から投資関連書籍や報道を見ると、時々現代経済の崩壊に対してどう対処するのかという議論になった時に、最終的な結論が「農地」という結論を出す人がいる。
上記森永氏の言説だけでなく、10~20年前なら船井総合研究所の創業者の書籍もそのスタンスだったし、世界三大投資家(自称で恥ずかしくないの?)のジムロジャーズも農作物コモディティと同様なスタンスなように思う。
しかし、個人的にこのDoom(末期世界)的観測というのは貨幣経済を異様に神様が作ったものとして捉えることによる過大評価と、人間という存在をあまりにも軽視している非常に邪悪な考え方であると考えている。
今回はこれについてまとめていきたい。

個人的にはこうした一見すると正しそうに見えるが、よくよく考えると全く見当違いともいうべきこういった人間社会において貨幣経済がぶっ壊れて物々交換に戻るような考え方で構築された意見というのを「原始社会原理主義者的思考」と捉えている。

まず、大体この最終的に農地と言い出す人についての論拠言説はこうである。
貨幣経済が壊れるために、貨幣でしか取引をしていない人は食料を買うこともできなくなるので、食料を生産するための農地を得ている人(あるいは農作物自体)が最強という論理である。
しかしちょっと待ってもらいたい。
そういうことを言及している人は現代の農業というのが複雑なサプライチェーンで構築されていることをご存じないのだろうか?
農地で農作物を栽培するために必要な農業機械はどう調達するのか?
肥料はどうするのか?
種子や農薬はどうするのか?
栽培した農作物はどう保管して輸送するのか?
これだけでも農業機械・肥料関連の化学産業・種子ビジネス・農薬ビジネス・輸送ビジネス・保管・物流と高度産業が関わっている。
そしてこれら産業は貨幣経済を前提として組まれている。
これら産業なしで現代農業は上手くいかないわけであるが、原始社会原理主義的思考をしている人達の論拠から考えるとこれら産業も崩壊するわけで、この時点で論理が破綻している。

こういった産業を一切無視して鋤や鍬で畑を耕して農作物を生産するのか?
それをスターリン時代とか毛沢東時代にやって多数の餓死者が出たのではなかったのか?
そんな事態になるぐらいなら通貨を一度ハイパーインフレさせて借金帳消しにして全てを仕切り直せば良いのである。
貨幣経済が一度リセットされたところで、これまで構築されてきた高度産業は形として残っているわけであり、再スタートはいくらでもできる。
貨幣経済自体がそもそも人間が構築したものであり、神様でもなんでもなく、いくらでも再スタートを切れる。
しかし、貨幣経済がどうなろうが、どうやったら社会をよくする形で金儲けできるかを考えて前に進もうという人間はいくらでもいるわけで、原始社会原理主義者的思考者の根源には人間という存在自体を軽視していて、制度というものを神格化しすぎな、どこかズレた思考をしている人間だと言えると思う。

そういった全くもって間違った社会の構築され方を考える人の意見なんていうのがはたして投資の役に立つのかどうかと考えれば、少し考えればすぐわかるものだと思われる。

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FX界隈で人気のトラリピが相場急変動で大損続出



どんな金融商品にも弱点がある。

金曜日は日銀の金融政策決定会合を受けて一日で相当な値幅で円安が進んだ日であったが、上記Xのつぶやきの通り、どうやらトラリピで大損してしまった人が複数散見されたので、この件について少しまとめてみようと思う。
(GW中のお茶濁し的な)

このトラリピというのはなんなのかというのは具体的にはググったり、下記を読んだりして確認して欲しいところだが、単純に言えば事前に何個もFX取引においていくつかの通貨組み合わせで買いと売りのレートを事前に複数(相当な数を一気に)決めておくことによって相場の上下変動を利益に変えようという戦略である。

【参考記事】
はじめての人にちょうどいい、特許取得済みFX、トラリピ

個人的にはこのトラリピというものは名前だけは聞いていたが、具体的にどんなものかは知らなかったので、あらためて色々見ると思うところがある。
戦略としては限りなくマーチンゲール取引に近いものがあり、マーチンゲール取引に類似したものとわかれば弱点も明らかである。
自分が設定したトラリピ注文に対して逆に一気に向かうと、連続して新規建玉発注が行われてしまい無制限に損失が拡大してしまうことにある。
そして金曜日の日銀金融政策決定会合で植田総裁が現状の円安はインフレ率への影響は少ないと発言したことから円安容認発言と捉えられ、一日で対ドルで2円近くの円安となった。

【ドル円のチャート】
タイトルなし


その過程で安易なドル円・クロス円で円安に向かった時に円買い・外国為替売り注文を複数設定していた時はあっという間に続々と新規建玉が発注されてしまい、引き返せないレベルで全ての玉で大損が発生してしまったということである。

そういった意味で、このFXのトラリピという商品はVIXショートやコールオプションとプットオプションを同時に売るショートストラドルに限りなく類似している。
あとは個人投資家にとっては悪名高きEB債などもこのタイプにあてはまるだろうと思う。
相場が落ち着いているときはチャリンチャリンと少額ずつだがチリ積もで儲かるというものだが、相場が一方通行で動くと大きな損失を被る性質がある。

トラリピ自体はそこまで難しくないシステムだし、流動性の高い為替で相場に方向感がない中でチャリンチャリン儲かるとして、これに嵌る人もいるし、Xでは昔から高額アフィリエイト案件として実践しながら宣伝している人が多い商品でもあった。
実際に試しにやってみた人の中には相場に方向性がなくてもそれなりに儲かっておいしい思いをしたことから、トラリピに資金を大きく振り向けた人もいたのではないかと思う。

しかし、実際は上記のように相場が短時間で一方通行に動くと、設定の仕方によってはあっという間に破産レベルの損失を被ることがあるわけで、どのような金融商品にもリターンに対するリスクがあるわけで、自分が投資している金融商品は一体どのようなリスク(あるいは弱点とも言うべきだろうか)があるのかを常に把握しておく必要性がある。

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米国CPIとPCEのまた裂きをどう市場は捉えるのか

Breaking: US PCE Inflation Soars 2.7%

PCEとCPIのまた裂きについて市場は何も消化できていないのでは?

PCE・コアPCEについて、前月比ベースでは小数桁1桁目までは市場予想と合致した+0.3%、前年比ベースではPCEの方は市場予想+2.6%に対して+2.7%、コアPCEは市場予想+2.7%に対して+2.8%となった。
若干前年比ベースで市場予想より上振れたものの、再利上げとか年1回しか利下げできないとなるような数値かと言われると、そうではないのではという数値というのが正直なところだろう。
さらに言うと、コアPCEベースだと2月の数値と比べて、小数2桁目まで見ると若干低下しており、コアCPIが2月より前年比ベースの数値が上昇したのと比べるとその非対称性が際立つ内容となった。
それにコアCPIが前年比+3.8%に対してコアPCEが+2.8%とその差は1%にもおよびはじめており、しかもこのままパラレルに進むと金融政策の判断基準である2%をまたぐ形の差が生まれ、そのいびつさが目立つようになる。

この差は何を意味しているかと言うと、都市部とそれ以外で相当景況感が異なるということを意味している。
これについては下記過去記事で書いていたので読んでもらいたい。

【過去参考記事】

米国インフレ率は拙速で単純な結論に飛びついてはいけない


さらに、じゃあなぜ都市部とそれ以外で景況感が異なるのかということを考えると、その答えも下記過去記事に書いてある通り移民の要因が非常に大きいと思われる。

【過去参考記事】

移民ブーストで説明がつくようになってきた米国経済・相場動向

移民は何が何でも職について金を稼がなければいけないわけで、そうなると自然と都市部に行くわけであり、移民が都市部に入って消費をするがために都市部の家賃・物価動向が強い状態が続くというわけである。
一方で移民が入っていない地域は、ただ単に高金利影響を受けて景気が弱まっているということである。

つまりこの流れが継続することは都市部は移民流入効果による景気の堅調さは続いているが、それ以外は相当弱いということを示すデータになる。
もちろんFRBはこれまで重視するのはPCEだと再三主張してきているわけだが、これに対して市場は「そうは言ってもCPIとPCEこれだけ差があって、PCEだけ見て政策を決めるのははたして妥当なのかキリッ」みたいな変なことを言い出した上に、それを勝手に市場に織り込ませに行く流れになる可能性は相当程度あると思う。

そうなると、現在市場参加者のポジションと併せて考えると、不協和音が生じるのではないかと個人的には危惧している。

具体的にはこうだ。
株の方はCPIとPCEの乖離の前に、もしかするとFRBが米国全体で見ると景気が弱まっているのに現在の金利水準を継続するのではないかという不安感が生じて株を売り払ってしまうがために株価が下落する。
一方で債券投資家の方は既に年1回しか利上げしないだとか再利上げがあり得るといった大まぬけな予想を勝手に織り込んでいるがために、PCEの低下の仕方を考えるとあまりにも調子こいた利下げ回数の無さは正しくないのではないかと金利は下がる方向に動く。
そのため、大人気な米債ショートトレードは逆をつかれる。
このような流れになると、これまでコンセンサスであった金利が下がれば株価は上昇するという相関が瓦解し、市場参加者にとって最もペインである金利低下+株価下落という組み合わせが生じる。

そうなると、安易に株を高値掴みした人・調子こいて米債ショートしていたヘッジファンド・金利低下+株上昇あるいは金利上昇・株下落でプログラム組んでたクオンツの全員が盛大にポジションが巻き戻されるために想定外に相場はボラティリティが上昇することを頭に入れておく必要性があるのではと思っている。
最終的にこの市場に自爆的な混乱は、FRB理事メンバーが「年1回利下げとか再利上げもあり得ると言ったな。あれは嘘だ」みたいな発言の引き出しが必要になるかもしれない。
  
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アジア新興国通貨を売る形でFRBの金融政策にNOを突き付ける投資家

インドネシアが半年ぶり利上げ 東南ア、通貨防衛に躍起

市場がFRBにNOを突き付け始めている。

多くの市場参加者はドル円動向にだけ目が行きがちで、対ドルレートが155円になってわーわー言っているわけだが、実はその裏でもっと厳しい動向になりつつある通貨群がある。
それがアジア新興国通貨全般である。

例えば上記インドネシアではルピアがラマダン明け休暇にべらぼうに売られて追い詰められてしまったがために、慌てて利上げする羽目になってしまった。

【インドネシアルピア(対ドル)のチャート】
タイトルなし



インドネシアについては過去に通貨の変動で利上げしなければいけないほど追い詰められたのは2013年以来である。
(2022年は普通にインフレ率上昇で利上げした)
しかし、インドネシアにおいては2013年の時の経済状況と2024年の経済状況は大きく違う。
具体的に何が違うかと言うと、2013年の時はフラジャイルファイブと呼ばれ、持続不可能なほどの経常赤字(対GDP比で3%近く)を抱えていたために、外貨繰りが大きく狂ってしまい一気に追い詰められた。
しかし、2024年においては経常赤字は対GDP比1%程度に過ぎず、一般的に対外直接投資の量を考えると十分抑制された健全な水準である。
にもかかわらずルピアは利上げするまでに追い詰められた。
ちなみになぜ新興国の経済の健全度を見る上で、経常収支を重視するのかは下記記事を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
新興国経済を見る上で重要な「国際収支の天井」という概念

しかもインドネシアルピアについては、円のように大幅なマイナス実質金利ではなく、普通にプラスの実質金利でこれを食らっているので、より事態は深刻である。
これが意味することは市場がFRBにNOを突き付けたと考えるのが妥当だと思われる。
一般的にアジアの外貨獲得は中国・米国への輸出によって成立しているわけで、さらに中国の輸出先を考えれば、結局は米国の需要がどうなんでしたっけという話になる。
この時、FRBが経済を殺しかねない金利水準を継続させた場合に、単に米国金利の方が投資妙味が高くなるからという理由で資金がアジア投資から引き揚げられたりというのはあるが、究極的に言うと米国が金融引き締めによってモノの需要が落ちて、アジアからの輸入金額が減るためにアジアの輸出金額が減少するために、外貨獲得量が減るためにリファイナンス難易度が上がってしまう。
そして投資家はそれを先回りする形で動くために、現在のFRBの金融引き締め策が長すぎるというのを直接的にアジア通貨を売ることによって市場参加者が表明していると考えるのが妥当だと思われる。

何も現在売られているのはインドネシアルピアだけではない。
韓国ウォンもタイバーツもフィリピンペソも人民元も売られ始めている。
日本は十分な金融資本の厚みと耐久性があるため、これぐらいの円安で利上げに追い込まれるわけではないし、国民生活への影響度合いも薄い。
しかし、新興国通貨はそうはいかず、ちゃんとプラス実質金利なのに金融資本の厚みがない中で売りが殺到するとどうしようもなくなってしまう。
しかも今回はどの国も比較的健全な状態である中で売られるのは、やはりFRBの金融引き締めの延長はどう考えても間違っているというのが市場の本音ということだろう。

つまり、このままFRB理事メンバーが年1回しか利下げしないとか再利上げがあり得るとかそんな間抜けなことを言って米国景気が本格的に鈍化してアジアからの輸出金額減ったらそれこそ金融ショックやでという脅迫を市場参加者は金融取引を通じて示唆しているのだと思う。
それにFRBが気づき、さらに自分達の発言が間違っていたと反省するまでは相場は一時的に反発したとしても、基本的には調整を続けると考えるのが妥当だと考える。

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