村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2024年01月

日経平均3万8000円越えは今年中旬~後半な雰囲気



もう今年中旬以降の話かよというクレームはなしで。

今年に入ってから絶好調な日経平均であるが、現在3万6000円前後でうろうろする展開で、上にいくのか下にいくのかというので多くの人がやきもきしているというのが現状だろう。
そのため、ここであらためて現在日経平均の価格レンジはどの程度で、ここからどう動くのかを自分なりにまとめてみたいと思う。

まず日経平均が3万6000円になった段階で下記過去記事に書いた通り、日経VIの上昇からコール買いでやや雑投資が増えてきたというのは確かだろうと思う。

【過去参考記事】

日本株急騰の小天井を示唆する日経VIの上昇


さらに上記Xのつぶやきからもわかる通り、どうやらスケベロング勢は3万8000円にワンチャンあると考えているようで、このコールが腐る可能性は相当程度高いと思われ、ここが去年の中盤に上昇の壁になったように、同様に小天井として立ちふさがる障害となるだろう。
一方で、以前のブログ記事で書いた通り、3万4000円の腐ったコールの壁はぶちぬいたので、ここを下抜けることはまず考えづらいし、ここにわらわらとプットで保険をかけているやつが多すぎて、そこにストライクして利益が出るというのも、いくらなんでも安易すぎる。
そういったことを考えると、3万8000円の腐りそうなコールの壁を乗り越えられるまでに日経平均は3万5500~3万7500円あたりをしばらくうろうろする展開になりそうだ。
そして前回は3万4000円の腐ったコールの壁を越えるのに半年かかったので、同様にそれぐらい時間がかかると考えると、今年中盤以降に3万8000円の壁を越える可能性が高そうなように感じる。

【日経平均のチャート】
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じゃあもう日本株のポジション売っちゃえばいいかというと、それは結構難しい。
理由は以前の記事にも書いたように日本株の上昇は突然発生する。
しかも、それは何のきっかけもなしで起こるわけで、その時点で大体ショートしていた馬鹿を一気に踏み上げながら、一切の押し目無しで上がるわけで、それは既に1月前半にみんなが体験したわけで記憶に新しいだろう。
そういうことを考えれば、ここまで上手く引っ張れて利益が出ている日本株ポジション(特に日経平均とかTOPIXのインデックス)は引き続きキープしながら、指数がちゃぶつく中で個別株でワンチャン狙うというのが戦略的には一番妥当なように思う。
じゃあどんな個別株がいいのかは、ようわからないので各自で判断してもらいたい(投げっぱなし)

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FRBのDOTSは市場との約束ではない

【参考書籍】
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21世紀の金融政策 大インフレからコロナ危機までの教訓

FRBのDOTSはあくまで参考で約束ではない。

当方では様々な金融関連書籍を読んで、良いものについては随時Xやブログで紹介しているが、その中でも上記参考書籍はまだ今年始まったばかりであるが上記の前FRB議長であるバーナンキ氏の最新の中央銀行の在り方について書かれた書籍は、ここもと読んだ書籍の中で最も学びの多い書籍だと感じた。

この書籍の中では他の金融書籍のように過去のFRBの金融政策の歴史を振り返るといったチープなものではなく、リーマンショック以降にデフレを克服するためにこれまでの中央銀行のコミュニケーションの在り方についてどう変えて市場に対して影響力を与えてきたのかを振り返っている。
具体的にはQE1に関する言及から始まり、その後量的金融緩和効果を高めるためのフォワードガイダンスによる時間軸効果への狙い、さらにFRBと政治はやはり切っても切れない関係な上に、リーマンショック以降は世間一般でもFRBの動向が注目されるようになったことから、これまでの市場参加者にだけ伝わればいいというコミュニケーションスタイルから世間一般にも伝わるように工夫をしていることなど、FRBのコミュニケーションスタイルがどう変わってきたのかが書かれていて、非常に参考になる部分が多かった。

その中で、FRBが公開しているDOTSについても言及があった。
DOTS(ドットプロット)とはFRB各メンバーが将来の政策金利の位置を予想したものをプロットしたデータであり、当ブログでも何回か言及してきた。
今年末、来年、再来年、中長期という4つの時期の政策金利を各メンバーがプロットしているものを年に4回開示されている。
このDOTSについてバーナンキ氏はデルフォイ型のコミュニケーションであると述べている。

デルフォイ型のコミュニケーションとはなんなのか?
上記書籍ではFRBの将来金融政策に対するコミュニケーションについてはデルフォイ型とオデッセイ型の2通りがあると述べている。
オデッセイ型というのはQE1・QE2にあったような、声明文の中に「2013年半ばまで量的金融緩和を続ける」と盛り込むことを指しているようだ。
これは「市場に対する約束」であり、絶対にFRBが守り抜くものであると書いている。
一方でデルフォイ型については「あくまでその時点で集まったデータを基にFRBメンバー各自が予想したもの」であり、これはオデッセイ型の「市場に対する約束」とは違うものであると書いてある。
つまり、DOTSはいつでも大幅に変えられる可能性があるのである。
バーナンキ氏もDOTSは市場に対する約束ではないので、いくらでも急変すると書いているし、これが市場に混乱を生み出すこともあると書いている。
しかし、開示しないより開示する方がより透明性の高い金融政策を実施できるとして、デメリットよりもメリットが上回るとして是であると述べている。

つまり、去年9月にタカ派芸人が調子に乗ったDOTSが開示されだが、これが12月にFOMCで完全に裏切られてピボットしたのは記憶に新しい。
しかもDOTSも9月に2024年2回の利下げ予想が12月には2024年3回に増えている。
去年9月のDOTSをまるで市場との約束だと思い込んで米債ショートしたり株ショートしたりした市場参加者はその後丸焼けになったのは記憶に新しい。

そういうことを考えると、今年6回利下げの可能性がまだ市場を織り込んでいる中でこれは今までのFOMCから考えれば織り込みすぎだと思っている人が多いが、1月FOMC・3月FOMCでいくらでもその思いは裏切られる可能性があると考えられる。

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米国のインフレ率2%ターゲットは既に達成されている

Fed’s favorite inflation gauge rose 0.2% in December and was up 2.9% from a year ago

FRBのインフレターゲット2%は既に達成されている。

先週金曜日に注目されていた米国PCEデータが発表されていたのでそれを今回はまとめたい。
統計データとしてはPCEコアデフレーターは市場予想前年比3%に対して結果2.9%、前月比では0.2%予想に対して0.2%であった。
前月比については小数点が丸められているため、実際の数値は0.17%となっている。

PCEコアデフレーターについては前年比では確かに2.9%とまだ2%に達していないように見える。
しかし、これはまだインフレ率が高かった1~5月の数値を含んでいる。
下記データがFREDから元数値を入手して前月比を計算したデータになる。

【PCEコアデフレーターの前月比】
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https://fred.stlouisfed.org/series/PCEPILFE

これを見ると1~5月のまだインフレが残っていた時期の数値がすさまじいことがわかる。
ではインフレが正常化した6月からの数値を掛け算していき、7か月分を12ヵ月に換算するとどういう数値になるのだろうか?

【計算結果】
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結果は1.88%である。
インフレターゲット2%をクリアしているのである。
さらに言えば、木曜日に発表されていたGDP発表におけるコアPCE価格指数の四半期の前年比データも2%であった。
これらを総合すれば、やはりFRBが金融政策において最大の指標としているインフレ率は2%に既になっており、スティッキーもくそもないし、ラストワンマイルなんてものもなかったのである。
これこそFRBが待ちに待ったものではないか。
それに12月の前月比+0.17%という数値も2016~2019年と同じ数値である。
そしてここで思い出してほしいのが、この2016~2019年で同じコアPCEデフレーターの数値であった時の政策金利の数値はいくらであったかといえば、2.5%なのである。
いわゆる、FRBメンバーの大多数が予想している中立金利なのである。

そう考えると、もうFRBはいつ利下げしようかおかしくないわけである。
ただし、CME開示のOISによる政策金利予想を見ると、市場では利下げは前年比の数値自体が2%になる5月を100%としており、まだ3月については50%程度と見ている。
しかし、3月までにさらにもう一回PCEコアデフレーターの発表があるが、そこでもし下ブレしてしまった時に、伝統を重んじるFRBが1月FOMCで利下げ議論に入っていると言及しないと3月に利下げができなくなってしまう。
そう考えれば1月FOMCにおいて利下げ議論を始めていると言及する可能性は非常に高いと思う。
それさえ入ってくれば、利下げ開始時期が3月だろうが5月だろうがリスク資産にはほとんど関係ない話である。
また、上述したように2016~2019年程度のインフレ率に戻ってるとすれば、その時期の10年米国債金利3%前後であったことを考えれば、米国長期金利は3%に近づいていくだろうと思う。

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投資が怖ければ、とりあえず個人向け変動国債10年に突っ込んでおこう

個人向け国債、高まる存在感 12月発行分11年ぶり高利率

否が応でも資産防衛を考えさせられる時代。

当ブログでは基本的にはリスク資産への投資をすることを前提に書いており、 ブログ読者のほとんどが株式投資をしている人だろうと思う。
昨今の積み立て投資ブーム、心理的ハードルの低下、さらに日本社会がデフレから脱却しつつある中でインフレから資産を守るための投資の必要性が生じているということもあり、確実に株式投資人口が増えているとは感じるものの、一般世間から見るとまだマイナーな部類に入るものと思われる。

特にリスク資産の価格変動が嫌だと言う人はやはり多いわけで、自分の資産が上下10%以上動く値動きに耐えられないという人は多いと思う。
そういう人は株は嫌だ、為替も嫌だ、不動産も嫌だということで基本的に円預金に固執しているわけである。
ただ、現実的な話として日本の総合インフレ率は足下で2%以上あるわけで、金利がつかない円預金では資産金額は購買力的には目減りしてしまうわけで、何かしらの対処は必要になってしまう。

個人的には、そういった人は最低限個人向け変動国債10年に投資すべきだろうと思う。

【個人向け国債の利率】
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この個人向け変動国債10年は数ある投資資産の中ではリスクは非常に低い。
理由として、本来債券に投資した場合に受ける金利変動を受けず中途解約ができることにある。
説明書きを見ると、中途解約はいつでも可能で、しかもきちんと当初元本がそのまま払い出される。
ただし、手数料として過去2回分の利払いは没収されてしまうことには留意が必要だ。
またこうした特典があることから、この個人向け変動10年国債の金利は、本来の10固定年国債金利より低めに設定されていて、10年固定国債金利×0.66で計算される。

それでも足下の10年国債金利で0.6%の金利が受け取れるわけである。
さらに国債金利がまだ上昇するのであれば半年ごとに利率が改定されるので、受け取り利率が上昇する可能性もある。
(まあ逆に金利下がって受け取り利率が下がる可能性もあるわけだが)
少なくとも金利がつかない円普通預金よりはずっとマシな選択だろうと思う。
いくら投資嫌いだからといっても、現実としてインフレ基調で推移しているわけなので、いかに資産を防衛するかは常に考える必要性がある時代になったと考えるべきだろうと思う。
(というより何も工夫せずに資産防衛ができていたデフレの時代が異常事態だったというわけでして・・・)

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中国当局による空売り制限は意味なし

中国最大の証券会社が空売りを制限、相場急落後-関係者

現在売っている主体を考えればほとんど意味なし。

中国株の下落が続いているが、これに対して中国当局もかなり危機感を抱いているようで、国家隊出動させて買い支えしたり、上記のように空売りを制限する方向で動いていたりする。
今回はこの空売り制限、あるいは売り禁というのは意味があるのかどうかをまとめていきたい。

【CSI300の株価チャート】
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普通に考えれば空売り制限をかける時というのは大体相場が強烈に下落している時である。
この相場が強烈に下落している時に、ヘッジファンドが大量空売りしているせいで下がっているみたいな妄想を当局は持ってしまうことが多いし、よくXでも持株が強烈下落すると「これは悪の機関によるショートで下落している!」という妄言を叫んだままずるずると下落を食らっているのがよく見られる。
しかし、個人的には実際は大半の空売りは純粋に株価下落に賭けて儲けようとするプレーヤーのものではないと考えている。
なぜなら、ネイキッドショート、いわゆる純粋に空売りポジションだけ持つのは無限に踏まれる可能性のあるリスクがあり、よっぽどの確信がないとできないし、そんなリスクを大量に取ることができるプレーヤーもそんなに多くはない。
実際には空売りの多くはロングポジションをヘッジするためのものである。
特に機関投資家の場合はロングをヘッジするためにショートを活用するなんてことは日常的な話で、これが円滑な市場流動性を保っているのである。

しかし、全面的に空売りを禁止してしまうとどうなるだろうか?
保有しているロングポジションをヘッジする手段が奪われてしまうため、そうなるともう手持ちのロングポジションを投げ売るしかなくなるのである。
特に有利子負債の返済が迫っていて、現金を確保しなければいけない時に売り禁されるとどんな値段だろうが関係なく投げ売るしか手段がなくなる。
今のところ完全禁止になっているわけではないが、これからさらに制限される方向になると市場参加者が予想すれば、もうなりふり構ってられず先んじて現物売りに回るしかない。

ここまで読んでもらえればわかるだろうが、ロングポジション保有者が苦しい時に売り禁しても結局売られるのでほとんど意味がないのである。
悪質ショートを締め出すのであればアップティックルールぐらいしか正直有効な手段がない。

というわけで、不動産バブルが崩壊し、過大な有利子負債を返済するためにあらゆるプレーヤーが保有資産を売って現金化しなければいけない時に売り禁にしてもほとんど意味がなく、これで中国株の下落が止まると思うのは浅はか以外の何物でもなく、ロングポジション保有者が有利子負債返済のための資産投げ売り現金化を止める手立てを打たなければ引き続き中国株は下落を続けるだろうと思われる。

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