村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2023年12月

VIXとS&P500の株価の関係性をあらためて確認してみる

買いは半年ROMれ、売りは1年ROMれってのがもしかすると相場の常識なのかもね。

年末年始ということもあるので、大したニュースフローもないわけなので、最近はChat GPTを駆使して色々なデータを検証しているので、今回も簡単なデータ検証でわかったことについて書いていきたい。

株価動向の緊張感を見る上で、VIXの数値を見るというのは誰もがやっているごく一般的なものであるが、あらためてVIXの数値とS&P500のパフォーマンスについてどういう関係性になるのかというのをデータ化して見てみたいと思う。

まず横軸をVIXの数値、縦軸をS&P500の1年後パフォーマンスにしたデータを見てみよう。

【VIXと1年後S&P500のパフォーマンス】
タイトルなし
このデータを見る限り、VIXが高くなった時に買うべしという説は合っているように見える。
実際にVIX30以上で1年後パフォーマンスがマイナスなんていうデータは非常に少ないわけで、VIXが高くなったら株を買うべしという理論は合っているようだ。
一方で、これも意外であったが、VIX15以下の時の1年後マイナスリターンデータは数こそそこそこあるものの、マイナス幅は意外と小さい。
このことは以前の米国個人投資家サーベイでも書いたと思うが、VIXが低いという理由だけで相場は総楽観だからここでマイケルバーリの真似して全力ショートして儲けようと思うと、逆に相場の肥やしになって燃やし尽くされる可能性があるということをやはり示しているデータだと思われる。

しかし、今度はS&P500の1年半後のパフォーマンスデータを見ると少し様子がおかしくなる。

【VIXと1年半後S&P500のパフォーマンス】
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1年半後のパフォーマンスデータになると、VIXが低い位置からのデータでマイナスパフォーマンスになるデータが急に増加するのである。
つまり1年では総楽観からの夢から醒めないが、1年半後になると夢から急に醒めるということになる。

これが意味することは相場の総楽観は1年~1.5年が限界で、それ以上引っ張ろうとすると景気の過熱が懸念されるため、FRBが金融引き締め策を講じてくることによって逆金融相場に入っていって、株価が下落していくということを意味しているのだと思われる。

前回の米国個人投資家サーベイは、株価が暴落し始めたら半年ROMってから中銀が対応策に動き始めるのを観察してから動き出すべしというのが教訓であったが、逆にVIXからわかるデータは業績相場の総楽観相場は引っ張れても1年が限界なので、その先は超警戒しながらポジションを調整していって、次の暴落を待つべしという話だろうと思われる。
逆に言えばショートをするにしても、総楽観相場になってから1年は待つべしということなのではないかと思う。

ちなみに、今現在の 相場ステータスはFRBが利下げを開始しようとし始めたばかりということで金融相場なわけで、ここでおそらく俺は和製マイケルバーリだ!と勘違いしてショートすると丸焦げになる可能性の方が高いように思われることには留意が必要だ。

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ISM製造業景況指数と株価の関係をあらためて考察

ISM製造業景況指数と株価のパフォーマンスの関係は注目に値する。

世間一般ではISM製造業景況指数は50を境目にして景況感が判断され、50以下であれば不況・50以上であれば好況と捉えられている。
この字面だけ見ると、50以下の時は不況で危ないので株を売るべき・あるいは持たないべきであり、50以上の時に株を買うべき・持つべきという結論に陥りがちである。
Chat GPTに聞いても概ねその認識が世間一般の認知として説明されている。

【Chat GPTの回答】
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しかし、その結論は本当なのだろうか?
あらためてそれをデータで検証していきたい。

実際にISMの数値と半年後のS&P500のパフォーマンスを見てみよう。

【ISM製造業景況指数と半年後のS&P500のパフォーマンス】

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いやあ、さすがにこのデータはかなりはっきりしていると思われる。
一応ISM製造業景況指数が3ヵ月前より下の場合は青色・上の場合は赤色でプロットしているが、それをしなくてもデータとしては明白だ。
ISMは50を割っていた方が株価の上昇期待は高いし、一方で60以上の場合は株価が下落する可能性の方がずっと高いし良いパフォーマンスは一切でないことがわかる。
もうこれの原因は金融政策のサイクルという説明だけで片がつくもので、ISMが50以下になれば不景気でFRBが金融緩和に動いて株価爆騰・60以上になれば景気過熱でFRBが金融引き締めに動いて株価暴落というのは一目瞭然である。

念のため1年後の株価パフォーマンスと3ヵ月後の株価パフォーマンスも見ておこう。

【ISM製造業景況指数と1年後のS&P500のパフォーマンス】
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【ISM製造業景況指数と3ヵ月のS&P500のパフォーマンス】
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1年で見ても、3ヵ月後で見てもほとんど傾向は変わらない。
ISM製造業景況指数が引くければ低いほど株価パフォーマンスは高く、ISM製造業景況指数が高ければ高いほど株価パフォーマンスは悪いのである。
ちなみにISM製造業景況指数が50以下の時に1年後のS&P500の株価騰落率がプラスになる確率は84%もある。
つまり、世間一般のISM製造業景況指数と株価動向のイメージは全く見当違いであり、50以下の時ほど金融緩和を頼みとして積極的に株を買うべしという結論になる。

さて、今のISM製造業景況指数の数値はいくつか思い出したい。
最新数値は46.7である。
さらにFRBは利下げに傾いてきている。
これを総合的に考えれば、取るべき投資戦略はそこまで難しくなく、普通に現在ロングで持っている分は全部引っ張り、押し目があれば積極的に買っていくという結論になると思われる。

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米国個人投資家サーベイと株価動向の意外な関係を考える

きちんとデータを精査すると新しく発見できることも色々あるもんだ。

よく株の先行き動向を様々なセンチメント指数で見る人がいるが、はたしてセンチメント指数から本当に株価動向の先行きというのは当てられるのだろうかというのは常々個人的には疑問に思ってきた。

というわけで、今回はセンチメント指数の中でもかなり長期間のデータが取れる米国個人投資家サーベイのBull-Bearishの数値(1987年からデータがある)とS&P500のパフォーマンスから一般的に思われている「個人投資家が弱気の時は買い」「個人投資家が強気の時は危険」などの説が合っているのかどうかを検証していきたい。

【米国個人投資家サーベイのデータ】
https://www.aaii.com/sentimentsurvey/sent_results

米国個人投資家サーベイは相場が下がれば皆弱気になっていってBull-Bearishの数値は下がっていき、逆に相場が上がっていく時はBull-Bearishの数値は上昇していくという、極めて個人投資家っぽい動きをすることで有名である。
相場が下落している時というのは、基本的に逆金融相場・逆業績相場の最中ということであるわけで、普通に考えるとBull-Bearishの数値はどんどん下がっていくということになる。
そして一般的なイメージだと、この数値が小さい時ほど個人投資家は弱気なんだから買いだというのが世間一般のイメージある。
しかし、それを裏切るデータとして半年後S&P500の騰落率と米国個人投資家サーベイのBull-Bearishのプロットデータを見せたい。
横軸が米国個人投資家サーベイのBull-Bearishの数値で、縦軸がS&P500のパフォーマンスである。
まずは半年後のパフォーマンスからデータを見たい。

【米国個人投資家サーベイとS&P500の半年後パフォーマンス】
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これを見ると、個人投資家が弱気の時にS&P500の半年後パフォーマンスも悪いというデータが見て取れ、個人的にかなり意外な結果と感じ、世間一般の「個人投資家が弱気の時は買い」という説と矛盾する。
これは9ヵ月後パフォーマンスのプロットデータではなくなっており、おそらくこの6ヵ月後前後のパフォーマンスの時だけ現れるようだ。

【米国個人投資家サーベイとS&P500の9ヵ月後パフォーマンス】
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これはなぜだろうと考えると、やはりヒントは逆金融相場・逆業績相場はどのように解消されるかというメカニズムにつながってくるのではないかと思われる。
一般的に逆金融相場・逆業績相場が終わるには中央銀行が金融緩和に転じる必要性がある。
しかし、中央銀行が金融緩和に転じるのは逆金融相場・逆業績相場が開始してしばらく経ってからである。
そう、逆金融相場・逆業績相場が始まっても中央銀行は少なくとも半年は金融引き締めをやめないのではないかということである。
そう考えると上記プロットデータに納得がいく。
そして9ヵ月後のパフォーマンスになると、今度は個人投資家が弱気であればパフォーマンスが良いという結果になる。
このことは中央銀行が金融引き締めを行い、逆金融相場・逆業績相場が起こってから半年後~9ヵ月後の間に金融緩和に転じていき、そして相場は上昇していくということを意味しているのだと思う。
そう考えれば、相場が中央銀行の引き締め策で下がり始めた時というのは、まずは買いは半年待ち、どんなに早く買い出動するとしても相場が下がり始めてから6~9ヵ月後から実施すべきということだと思う。

また1年後パフォーマンスを見ると、確かに個人投資家が弱気の時に買うとパフォーマンスが良いというデータが見えるが、超強気の時でもパフォーマンスが良いというデータも見ることができる。

タイトルなし

一応一番パフォーマンス悪いのは中途半端に個人投資家が強気になっている時(0-30の間)なので、「個人投資家が強気の時に株を買うと負けるのは嘘」という極論にはならないが、個人投資家が強気だからという理由だけでフルレバでショートをかけると死ぬ可能性もかなり高いことがわかると思う。
ただ、1年以上保有していくと米国個人投資家サーベイがどんな数値だろうが、プラスリターンになる可能性が高まっていくこともわかると思う。

そういった意味で、今回のデータ調査で示唆できることとしては
・下落相場はどんなに早くても下落を始めて半年以降から買い始めるべし
・個人投資家が強気だからといってショートすると意外と死ぬ
・ただ、一般的に個人投資家が中途半端に強気の時はパフォーマンスが悪いことは確か
・一方で、1年以上保有すると個人投資家がどう思おうがプラスリターンになる確率は高まっていく

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FICOを見ている限り米国経済のソフトランディング確率は高い

リーマンショック煽りおじさんは物事表層でしか見れていない。

ここもと米国経済が徐々に悪化していることを背景に、2023年3月のSVBなど米国地銀破綻時にわーわー言われてきた金融危機について再度起こり得ると解説する人達が増えてきたように思う。
今回はそうはならんやろというのをFair Isaacという会社の株価から説明していきたいと思う。

このFair Isaacという会社は、いわゆる米国でFICOスコアといって個人が金を借りる時に参照される与信クオリティのスコアを算出している会社で、米国内でクレジットスコア算出企業として実質独占企業として君臨している。
過去にはこのFICOスコアが660未満しかない人達のことをサブプライム層と呼び、これに無節操に住宅ローンを供給して巨大な金融危機を引き起こしたのは記憶に新しい。

リーマンショックの時は下記の通り、個人の借入姿勢が壊滅することを予期したのか、FICOの株価は本格的な金融危機が起こる前から既に暴落していた。

【FICOの株価チャート】
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しかし、今回はどうだろうか?
FICOの株価は暴落するどころか暴騰している。

【FICOの株価チャート】
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本当に金融危機が起こるというのであれば、個人が金を借りれるわけがなく、FICOスコアの参照が壊滅するはずなので、こんなところの株価なんて真っ先に撃墜されてしかるべきである。
しかし、暴落どころか暴騰しているのである。
これが意味することはマイルドインフレ+財務クオリティが良い個人は引き続き借入を続けるということで、FICOスコアの参照回数+金額は増えるということを意味している。
ようは、金融危機が起こるなんてこの辺に投資している人は微塵も思っていないのである。
本当に金融危機が起こるのであれば、既に内部者による売りで崩れているはずなので、逆にFICOの株価上昇は金融危機が起こると言っている人達をあざ笑うかのように投資家は米国ソフトランディング前提で動いているということである。
まあ当ブログではそもそもインフレ経済になっている中で、過去30年のデフレ時代の金融危機と構造は違うでしょうというのは言い続けている話なので、そこらへんの話は下記過去記事を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
デフレからインフレへなぜ世界は大きくレジームチェンジしたのか?

こういうきちんと本当に過去の金融危機と現状進行していることは同じかどうか精査すれば、リーマンショックの時と現在を比較することはいかに滑稽であるかがすぐにわかるわけで、表層でしか物事を見れない投資家を出し抜けるチャンスがまだまだたくさんあるなと思う次第である。

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習近平のあらゆる政策を全否定する株式投資家

一度失った信用は容易には取り戻せないことを体現。

当ブログ読者はご存じの通り、中国株・香港株は今年世界各国の株価パフォーマンスでもほぼビリというレベルのワーストパフォーマンスを叩き出している。
しかもその深刻度は日に日に深くなっており、足下の相場動向を見るとさらに状況は深刻化しているのでそれをまとめていきたい。

【CSI300のチャート】
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日に日に深刻化していると感じるのは、全く米国の金利低下に反応していないことにある。
一般的に、新興国株は金利が低下するとプラスのパフォーマンスになりやすく、実際に11月は数多くの新興国の株価は上昇したし、米国中小型株どころか、クソ株集合体のARKKでさえ上昇しているわけで、ほぼ株式市場は総上げ的な形であった。
それにも関わらず香港ハンセンは習近平独裁政権爆誕から景気刺激策期待で上昇した分を全て吐き出しかけているし、CSI300に至ってはもう吐き出しきっている状態だ。
これが意味することは外部環境がどうのこうのと言えないレベルで習近平政権および現在の中国は投資家にとって二度と投資したいと思えない政権であることを意味する。
 
まあこれまでの行いを思い起こせば、中国株にこれまで投資してきた投資家は2021年以降裏切られ続けてきた。
その裏切り方も、機関投資家などプロであるほど落胆・失望する裏切り方であった。
それについては下記過去記事を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
これから中国が長いデフレに苦しむ理由

中国経済の低成長を招いた原因と再成長に必要な要素についての考察

中国の習近平独裁による集団指導制の崩壊と中国株式市場に与える悪影響


これだけ裏切ってきて、のうのうと習近平がトップとして居続けている時点で、いくら中国側から投資を呼びかけたところで、機関投資家から見たら「もう二度とお前は信用しないから」という意見しか出てこない。
それに仮に投資をして余剰的な資金が出れば、おそらくだがその資金は不動産バブル崩壊の後始末や地方政府の財政補填に使われることは容易に想像できるわけで、そんなお人よし馬鹿はごく一部いたとしても大半の機関投資家はそんなことはお見通しであり、だからこそ中国からリスク試案を引き抜き続けているわけである。
機関投資家の信用を取り戻すためには、市場が予想するレベルをはるかに上回る景気刺激策を打つ必要性があるだろう。
財政支出は対GDP比で5%以上・金融緩和でゼロ金利ぐらいのインパクトぐらいは必要でなないかと思う。
少なくとも市場予想レベルの景気対策では、これまでの愚行を考えれば信用を取り戻すことは難しいわけで、その範疇に景気刺激策が留まるのであれば、ひたすらダラダラと中国・香港株は下がり続けるだろう。

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