村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2023年08月

急速に滑り始めた米国雇用関連統計

NY株ハイライト JOLTSに揺れた市場 米金利低下で買い広がる

ようやく金融引き締めが雇用に効き始めた。

今週になっていくつか来月雇用統計前に前座的に見物される米国雇用関連指標があった。
一つ目はJOLTS求人数だが、市場予想950万件に対して882.7万件と大滑りな結果となった。
市場予想より大きく下に滑ったが、これはIndeed親会社であるリクルートの決算コメントから、これだけ滑ったとしても不思議ではないなと感じる。

【過去参考記事】

米国の雇用需給緩和が続いていることを示したリクルートの決算

この統計結果はこれまで過度に米国債金利上昇におびえていた市場に安心感を与えて、米国株式市場の上昇に貢献してくれた。
また、単にJOLTS求人が滑っただけでなく、その後のADP雇用統計も滑った。

【ADP雇用統計ページ】
https://adpemploymentreport.com/

ADP雇用統計の滑り方は、市場予想19.5万人に対して17.7万人と、これまでは市場予想に対して上振れるケースが多かったが、久々に大滑りした。
ただしADP雇用統計はあまり雇用者数の数字自体は当てにならないと言われることが多いため、市場はどちらかというと精度の高いADP雇用統計で見れる給与の伸び率に注目していた。
Job-Stayers、つまり転職していない人達の給与伸び率はYoY+5.9%、Job-Changers、つまり転職した人の給与の伸び率はYoY+9.5%であった。
これは両者とも2022年9月に伸び率ピークを付けた後は着実にじりじり低下していることを示しており、ここもとは毎月YoYの伸び率が0.2~0.3%ずつ低下してきてくれている。
つまり、あと10ヵ月ぐらい現在の金利水準を続ければ、賃金インフレも2%台に押しとどめることができる。
これはCMEで見れる政策金利予想で、政策金利引き下げ開始が2024年6月という予想と整合性がある数字だと思われる。

雇用が下に滑り始めたのにも理由はいくつかあるだろう。
これまでFRBが一生懸命景気を冷やすために金融引き締めをしてきた中で、米国民の過剰貯蓄が尽き始めた・住宅ローン金利が高くて中古住宅が全然売れない・米国人給与が高すぎて輸入した方がよっぽど米国内生産よりコストが安いなどいくつか挙げられるが、これが複合的に絡み合って米国人を雇うコストがリターンに見合わなくなってきたために、新規雇用を手控えてきているということである。

そういった意味で、ここにきてようやくFRBの金融引き締め効果が目に見える形で効果が出始めていると評価でき、素直にソフトランディングシナリオのパスが見えてきたことから、米国債金利低下と株高が期待できる地合いになりつつあると思われる。

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中国政府が地方政府の債務問題解決のために財政拡張する可能性浮上

中国財政省、地方政府の債務リスクを防止・解消すると表明

ほう、これは少し面白い展開になってきた。

上記ブルームバーグ記事では、国営新華社が財務省が地方政府の債務リスクに対する言及を報道している。
その中で注目すべきなのは「財政省はまた、積極的な財政政策を強化・実施し、地方への支払い移転を改善する方針も示した。」と書かれている部分である。

これまで地方政府債務について、中国政府が監視を強化するみたいな報道は出ていて、これは中央政府は地方政府に対して「お前らの債務は自分で解決してね」という話でしかないと捉えられていた。
しかし、上記ブルームバーグ記事を見る限りでは、必ずしもすべてがそうではなく、中央政府が地方政府の債務について支払い移転を考えていると捉えられるような内容が短く書かれている。

もしこれが本当に地方政府債務を中央政府が肩代わりする、つまり地方政府債務が中央政府債務に移転されるのであれば、これは一つの財政支出拡張による景気対策であり、これまで当ブログで主張してきた財政支出拡大+金融緩和の組み合わせが、まだ絶対量は足りないもののパーツは揃う可能性が生じてきている。

そもそも2021年までの中国政府・習近平はこれまで株主をゴミみたいな扱い方をして好き勝手に投資家から資金を収奪する意味不明な経済政策を連発してきて、我が世の春を享受していた。
しかし2023年も後半になり、本土株の印紙税率を引き下げたり、ファンドに株を売るなと指導したりと、もはや毎日株価を見て一喜一憂している素人個人投資家と同レベルの感性を露呈させている。
こうした株価下落によって投資家から「景気対策を打たないなら用はないから」という圧力を習近平・中国政府はかなり感じているはずである。
CSI300ベースでも上から下まで40%も下落していれば、GDP世界2位の国のくせにという体たらくが世界中で喧伝されるのはやはり我慢ならないのだろうと思う。

【過去参考記事】
タイトルなし

カントリーガーデンデフォルト以降は、経済に対する緊張感は格段に高まっているわけで、総合的に考えれば中国政府・習近平がいくら馬鹿でも無策でいると考えるのは少し侮りすぎではないかと感じている。

【過去参考記事】

カントリーガーデンのデフォルトは中国追加景気対策開始の号砲

こうした点を考えると、中国政府がどれほど出すかは不明だが、市場からの財政支出拡張をさっさとしろという声を完全無視するのは難しく、ある程度は財政拡張的な経済政策は出てくるだろうと想定している。
特に火曜日の中国株・香港株の上昇はなんとなくこの可能性を織り込み始めている反発なように見える。

ここもとはやや米国株や日本株が軟調推移しているということもあり、さらに中国景気崩壊論を色々見てしまってリスク資産を持っているのは危ないと考える個人投資家は増えているように思う。
しかし、上記の通り中国政府の景気支援策の可能性が高まっている中で、中国景気やばいから持っている米国株や日本株を売却しなきゃと慌てて売るのはなんとなく置いていかれるリスクの方が高いんではないかと考える。

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全くあるべき方向と逆方向を向く米国と中国の財政政策

拡大する米財政赤字、際限見通せず-物価と金利高止まりの可能性

事情はわかるんだけど、なんで真逆を向くのか普通に考えるとよくわからない。

財政支出というのは支出した分の一定程度はGDP成長率に寄与する他、需要についても影響を与えるものであり、政府支出というのは経済成長を決める一要因である。
その中で現在世界では不思議な現象が起きている。

当ブログでは何回も書いてきたが、中国は財政支出拡大が最も必要とされている国である。
不動産バブルが崩壊して次々と不動産デベロッパーがデフォルトし、住宅ローンを抱えている人は将来の不安から住宅ローンを繰上げ返済し、外国人は習近平を全く信頼できない人物として対中国への投資を減らし、米国は中国との貿易依存を減らすための様々な政策を発動させている。
こうした中で中国の内側からも外側からも中国経済を活性化させるような自律的な力は存在するわけでなく、政府が内需喚起するしかもはや経済を立て直す手段がない。
にもかかわらずしばき上げ精神である習近平はどうにか財政支出をせずに済む方法を未だ模索しており、財政支出に踏み切れておらず、外国人投資家からは「なんであのくまのプーみたいな野郎はあんな頭悪いの!?」と信頼を失い続けている。
一方で、強烈デフレのため、国債はまだ世界各国で金利が高止まりしている中で、金利が上昇するリスクなんてほとんどないだろということや、銀行が貸し出せるところがないために国債を購入していることもあり、中国の国債金利は長いところから順当に切り下がってきている。

一方で米国は完全にこれと真逆である。
ご存じの通り、米国はコロナ禍でばらまいた過剰貯蓄とモノの供給の少なさから過剰需要になっており、これがインフレ圧力を生み出しているのはご存じの通りだ。
インフレ圧力に対応するためにFRBは必死になって金融引き締めをしているわけであるが、この努力を相殺するかのように米国政府は拡張的な財政支出を続けている。
もちろん脱中国のためにモノの供給能力整備のために、CHIPS法やらインフラ投資やらと色々政府補助金を出すような政策を出しているわけであるが、政府の赤字はGDP成長率に寄与してしまうため、これが一部過剰需要を続けさせてしまう要因になってしまっている。
特に上記のブルームバーグニュースにある通り、一般的に政府支出は景気が弱い時に支出が拡大されていたものであるが、昨今はまずまずの景気であるにもかかわらず、まるで不景気時かのような財政支出を続けている。

【米国財政赤字の推移(対GDP比)】
タイトルなし

一般的にはFRBが金融引き締め時は好況であるために、政府も財政支出は控えめにすることで素直にFRBの金融引き締め政策に効果が出るわけであるが、今回はそのケースに全くあてはまらない状態になっており、FRBから見れば「米国政府は本当にインフレとか気にしてるのか!?」と文句言いたくなる状況である。

このように現在世界ではGDP世界2位で財政支出すべき国が財政支出しておらず、GDP世界1位で財政支出すべきでない国が財政支出しているというあべこべな現象が起きている。
投資家の考える「べき論」と全く逆を向いていることは、投資家の「予想外」を生む結果となってしまっている。
これがこれまで中国に対する投資家の投資判断と米国に対する投資家の投資判断を狂わせてきた一要因として考えられると思う。

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個人投資家に過大評価されているBRICS

[社説]BRICS拡大を懸念する

意味ある組織に見えないのに、なぜか素人ほど過大評価しているように見える。

直近でBRICS会議があったということもあり、地政学変動が色々注目されている中で、このBRICSについても何か新しい地政学変動を起こす集団ではと見る向きが一部報道や個人投資家の間で注目されているように見える。
しかし、このBRICSほど過大評価されている組織はないんじゃないかなと思うので、今回はこれについて個人的にまとめていきたい。

まず過大評価されていると思う原因の1点目は、そもそもBRICSというもの自体が2001年にGSのジムオニールが成長が著しい国として挙げたのが初であるが、そこから何やら自分達は新興国の代表みたいな変な面しながら集まったという点がある。
このために、何かしらきちんとした大きな理念があるようには見えず、BRICS間のそれぞれに求めることというものの乖離が非常に大きいことが挙げられる。
このために、集まったところで何かまとめられるという雰囲気がしない。

BRICSという組織が過大評価されている点の2点目としては、集まり方の動機の中心である「反米」との度合いが非常に差があることにある。
基本的にBRICSという集まりは、単に「米国が嫌い」という反米チック的な思考の下に集まっている集団である側面が強い。
しかし、この「米国が嫌い」という度合いも非常にマチマチである。
ロシアのようにガチ反米みたいなところから、インド・ブラジルのように米国の指図は受けないが対等的な関係ではウェルカム的な姿勢を見せる国など、まだら模様感がある。
そのため、BRICSで何か実効性のある意見がまとまるという感触がしない。

3点目に、これは一番大きい話であるが、本来こういう国家間集団において絶対的に必要な事務局がないことにある。
一般的には国家間組織においては、トップ同士が集まって何かを決める前には水面下で事務局が調整をしていって、実効性あるものに落とし込んで、最後にトップリーダー同士がセレモニーで発表するという段取りとなる。
しかし、BRICSというのは実はこの事務局が存在しないのである。
そのため集まったところで、綿密な事前調整などされておらず、それっぽい大きなことを言った後は、その後各リーダートップが帰国すれば発表したことは綺麗さっぱり忘れているというほとんど意味のない集まりをしているに過ぎない。

こうしたことを考慮すると、BRICSの会議は集まったところで何か世界を変えるような発表が出てくるというのはまずありえないというのが国際情勢を見ているプロの人達の一般の見方である。
発表されたところで実行力がないので、どちらにしても意味がないというのもプロの一般的な見方である。
一方で、個人投資家は昔から馴染みのある次世代成長国として名前だけは聞いていることもあり、BRICSが集まり、なんかそれっぽい話が出てきそうとなるたびに、何やら意味のある投資テーマのように煽るというケースが多く、昨今の素人投資系Youtuberでもこれをテーマとして動画一本取る人間もいたりする。
(まあそういう人間は知識ない単なる素人ってことだけど)

というわけで、BRICSの集まりというのが何か新しい投資テーマや地政学の変動を起こすというのはまずありえないと考える前提でニュースをチラ見程度していればよいと思う。
 
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誰にも株価暴落が読めないという言説は大嘘

【参考書籍】

金融大狂乱 リーマン・ブラザーズはなぜ暴走したのか

株価暴落は必ず予想していた人は少数派だが存在する。

時々、様々な投資に関する迷信などを目にするが、その中で最も有害だなと思うものは「株価暴落は誰にも読めない」というものである。
これについては、自分も昔はそんなものと思っていたが、上記参考書籍を読むとそのような考え方は相場に真面目に取り組んでおらず、思考放棄しているのではないかという思いが非常に強くなったので、今回はこれについてまとめていきたい。

上記書籍はリーマンブラザーズで働いていた従業員の回顧録であるが、米国のサブプライムローンが詐欺のような商慣習を背景に拡大していた上に、リーマンブラザーズが明らかにそれに悪乗りする形でリスクを無視してのめりこんでいき、最後には大爆発していった経過を克明に描写されている。
その過程の中で、複数のリーマンブラザーズの幹部はこれはまずいことが起こると感じ、しかも単なるまずいことではなく、会社が大爆発するレベルの事態になることを予期して辞表を提出して会社を辞めている人がいることも書かれている。
これは下記考え方にもつながるものだろう。

【過去参考記事】
熱狂的バブル相場の天井を捉えるために見るべきモラルハザード・不正行為とは?

このことが示すことは、確かにサブプライムローン問題・リーマンショックによる大暴落は大多数の人間にとっては予想できなかったことであるが、大暴落を予想できた人はゼロではなく少数派だが確実にいたことを意味する。
しかも、上記書籍のケースではインサイダーにいたからこそ予見できたという側面が大きいように思う。
このようにバブル崩壊の爆心地に近い位置にいる人ほど、暴落というのは予想できる可能性が高い傾向にある。
こうした爆心地に近い人間が資産を売却し始めるために、この売りに押される形で資産価格は下落を始めるわけで、これが株価が先行きを予想して動く要因であったりする。

もちろん森羅万象を知っていて、全ての暴落を当てられる人間というのは一人もいない。
しかし、特定の暴落時期というのは、起こる前兆を知っていてあらかじめ売り抜けている人間は上記書籍を読む限り、必ず存在するのである。
特にその爆心地にいる人間であればあるほど、その予想は正確になるため、暴落を読めない人がゼロなんてことはあり得ないのである。

そういった意味で、投資系Youtuberの「誰にも株価暴落は読めない」という思考停止するのは間違いで、常に自分で組み立てたファンダメンタルズストーリーと株価動向に乖離がないかどうかを考え続けることは決して放棄してはいけないことだと思っている。
 
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