村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2023年07月

インフレ時代は投資が必要になる時代

日本の物価伸び率、米国を8年ぶり逆転 賃金上昇は鈍く

投資は必要性に迫られて、一般世間に浸透するもの。

上記の通り、まあそのうち下回るだろうが、日本の物価伸び率が一時的にせよ米国より高いとして話題になっているが、こうした話題を見ていくと日本でも今後資産形成をするためにどのように投資を実践していかなければならないのかというのが世間一般に浸透していくだろうと感じたので、それを今回は書いていきたい。

インフレというのがどういうものなのかを考えれば簡単な話である。
インフレというのは「市場に存在するお金>モノ・サービスの供給力」によって生じる。
この時多くの人はお金を刷りすぎるからインフレになると脊髄反射で反資本主義的な言い方をするが、現在世界で起こっているインフレは一部はお金の刷りすぎにあるかもしれないが、主要因は下記で述べている見方をすべきだろうと思っている。

【過去参考記事】
デフレからインフレへなぜ世界は大きくレジームチェンジしたのか?

よって、インフレの時代というのはお金よりモノ・サービスの供給力の方が価値が高いということになるわけである。
そう考えれば、価値が高いものの方に人々の目線が移ることは確実であり、モノ・サービスの供給力が重視される時代になる。
モノ・サービスの供給力を拡大させるには投資をしなければいけないわけであり、投資というのはお金をモノ・サービスの供給力に移転する行為を指すわけである。
もうここまで書けば、インフレ時代は投資が必要になる時代だということが誰にでもすぐわかるだろうと思う。

逆に言えば、デフレというのはこの逆の現象である。
「市場に存在するお金<モノ・サービスの供給力」のためにモノ・サービスの供給力よりお金の方が価値が高いために、モノ・サービスの供給力が強制的に減少させられていたのである。
これまで日本で投資が進展してこなかったのは、デフレの時代であったからであり、現金の価値が高かったことによる。

しかし、この状況は30年間かかって、ようやく終わったのである。
今後日本でもどう投資をしていき、資産価値を維持していくのかを真剣に考える時代になったわけである。
そして投資の必要性が生じることによって、米国のような投資資産の拡充が今後はかられるだろう。
米国では万年インフレだからこそ、お金>モノ・サービスの供給力であり、あれだけ投資というのが世間一般に認知され、浸透しているのである。
特に401kなどの確定供出年金などはその類であるわけで、「必要は発明の母」とはまさに言い得て妙だと思う。

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中国政府の他人の金を当てにした経済対策は万策尽きる間近にある

中国が投資家懸念の対処に動く、世界のファンドと会合-関係者

中国共産党のの他人の金を当てにする経済対策は万策尽きるの間近で、自腹を切る経済対策へ移行するだろう。

上記ニュースではここもと中国経済の悪化が継続する中で、さらに投資がそれに比例する形で減少しているために、世界的なファンドを交えて中国規制当局が会談して、懸念払しょくに努めているという報道が出ている。
今回はこの報道を見て、自分の考え方をまとめていきたい。

現在の習近平・中国共産党の考え方は一貫している。
いかにして「自分の金やコストは負担せずに、経済を回復させるか」である。
これを中心に考えれば、現在の習近平・中国共産党の経済政策は合点がいくだろう。
現在は、そのために考えられる全ての方策を実施しているというのが現状だ。
こう考えると、どれだけ習近平・中国共産党が現在の経済状況がまずいのかと考えているのかもわかるだろう。

しかし、中国不動産のバブル崩壊はいずれ避けられない運命だったとしても、その他にこれまで習近平の愚策で大きく経済を落ち込ませてきたことも確かであり、こうした原因に対して解決策が「他人の金を当てにする」というのは、いくらなんでも虫が良すぎる話だろう。
そもそものここまでの中国経済の悪化は習近平が大半の元凶であり、当ブログ読者では下記過去記事で既に知っている話だろう。

【過去参考記事】
中国の習近平独裁による集団指導制の崩壊と中国株式市場に与える悪影響

しかも中国政治は縦割り行政が非常に厳格であり、この会談している規制当局に意見を言っても、それが一切不況の元凶になっている習近平に届かない。
そのような状況で上記のように外国人投資家に対して中国への投資に関する懸念についてヒアリングしても、外国人投資家から見たら「いや、お前らの国家リーダーが最悪なだけなんだけど」となるため、実質ゼロ回答なことは確実だろう。
さらに言えば、外国人投資家にアピールしている時点で、国内企業にはもはや現在の苦境を跳ね返す力を持っているところは残っていないと思われる。
もし、国内企業にまだその力が残っているなら、こうして外国人投資家に土下座をする必要性がないからであり、最悪米帝の手下として追放しても問題ない。

ここまで考えれば、もはや中国共産党の「自分の金やコストは負担せずに、経済を回復させるか」という戦略は最初から破綻している話であるのに、ギリギリまでこれを当てにしているために中国経済の回復は消え去り、再び悪化傾向で進んでいるのである。
さらにこの状況を見て、世間一般では中国経済はもう終わりという論調が急速に台頭したのである。
ツイッターやYoutubeの投資動画を見れば、もはや中国が有望なんて言っているアカウントは一切なく、どんなド素人でも中国景気は最悪という評価をしていることは疑いようがない。
しかし、中国には「なりふり構わず、自腹を切って経済対策をする」という手段が温存されている。
そして習近平・中国共産党の現在の切迫感を考えれば、もうそれしか手段がなければ自腹を切る選択肢を取るだろうし、市場は既にそれは間違いないと考えている。

だから現在中国株は下がりそうで下がらないし、中国国債は金融緩和を先んじて織り込む形で低下している。

【中国CSI300のチャート】
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よって、現在投資家が認識すべきことは目先の経済データや報道や妄言に惑わされずに、「中国では中央政府が自腹を切った経済政策カードを切り、景気は底抜けしない」というストーリーを中心に投資戦略を組むことにあると思う。
そう考えれば、中国景気悪化を理由に米国株・日本株は買うべきでないという言説は個人的には真っ先に除外すべき投資戦略であるし、さらに言えばそう考えている人がいればいるほど投資妙味は高いと感じている。

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市場を未だ悲観的に見ている人は誰なのか?

まだ市場を悲観的に見ているプレイヤーが残っている。

ここもと市場は総楽観ということで利益確定をしている人がちらほら見られている。
特にVIX指数が13台と2018年代のレベルまで低下したことから、これはまさに総楽観であり、バブルだと指摘している人もいる。

【VIX指数のチャート】
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しかし、市場では実はまだ悲観的に見ている人がかなり残っていることを示唆する指標がある。
それがMOVE指数である。

【MOVE指数の推移】
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このMOVE指数はこのブログで何回か取り上げているが、米国債版VIX指数と認識してもらえればよい。
MOVE指数が上昇すればするほど米国債の金利ボラティリティが高まることを意味しており、一般的にMOVE指数が上昇するときは金利が上昇・債券が売られているためにプットオプションが買われている状況の時を指す。

MOVE指数は2012年以降の相場を見ると、足下の数値は明らかに高止まりしてしまっている。
これが意味することは、米債の居所について多くの市場参加者の目線が定まっていないことである。
特に一度雇用統計関連で金融引き締めがさらに強化されるのではみたいな変な思惑が出たところで、米債10年4%を踏んだ瞬間にMOVE指数が大きく跳ねたのは、これまでこのラインに損切りラインを置いていた人があまりにも多かったために損切り祭りとなってしまい、無駄にポジションを切らされたという背景がある。
その後はCPI・PPIが統計結果から低下傾向で推移していることがわかったことから、再び4%以下の推移になってきており、それに伴ってMOVE指数も低下していることを見ると、未だ居所がつかめていないことがはっきりしている。
しかもこうした長期債に関する目線が定まっていないために、変動金利+スプレッドで貸し出すローン系商品に機関投資家はポジションを動かしているようで、そのせいもあってプライベートクレジットファンドの躍進ニュースを多く目にするようになった。

このようにベース金利に不安感を抱えているプレイヤーが多いことを考えると、リスク資産にフルベットしているとは言い難いだろう。
債券市場は株式市場より圧倒的に市場は大きく、特に銀行にとっては債券市場こそ金融市場の中心である。
そして、お金の流れというのは基本は債券市場からあぶれたお金が株式市場に流れるのである。
債券市場に資金を投入することを躊躇していることが観測されている間は、株式市場の伸びが限界とはまだ言えないと考えられると思う。
そういった意味ではMOVE指数が過去と同様なレベルにまで低下するまでは、基本的に押したら全て買いエントリーで問題なく、売りエントリーは無駄に神経をすり減らして時間を使うだけな上に損失を被る可能性が高そうなのでやめておいた方がいいだろうと思っている。

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「ウーバー戦記」から考える醜悪スタートアップ企業の実態

【参考書籍】

ウーバー戦記:いかにして台頭し席巻し社会から憎まれたか

PE・VCは過去のような投資スタンスは保てないだろう。

上記ウーバーの回顧録的な書籍を読んでいたのだが、今から考えると2010~2020年の低金利シリコンバレー起業バブルの功罪というのがわかり、これを読んで何を感じたかまとめていきたい。

顧客に価値を与えている自分達は神だから何をしても許されるといった文化がウーバーでは当初から根付いていた。
そもそもは既存タクシー業界の不便さを打破するべく立ち上げられた企業ということもあり、州の法律・規制を顧客拡充で政治的に却下できないように持ち込むという強引さで拡大してきた企業である。
これはビジネス自体の性格とCEOのカラニック氏の攻撃的な性格の両方が合わさってできたものであった。

この法律・規制を自分達の力で捻じ曲げるという成功体験は最終的に同社を苦しめる結果となった。
まず海外事業に進出した時に、同じように当地の法律・規制を捻じ曲げる形で強引にシェア拡大を狙ったものの、米国ほど他の国は寛大ではなく、ことごとく政治的な問題を引き起こして事業縮小あるいは撤退を余儀なくされた。
さらに同社はカラニック氏を実質神として経営が動き、かつカラニック氏の攻撃的政策を是とする文化であったことから、社内では出世競争に加えて、カラニック氏から気に入られればパワハラ・セクハラなど何をしても許されるというとんでもない巣窟となっていった。
そして企業が拡大していくとともにカラニック氏が乱痴気パーティーを開くとともに、さらに社員のタガは外れていき、外から見ればまともな人間は一人もいないんじゃないかと思えるような事態となっていった。

小さい企業のうちは衆人の注目には晒されなかったため許されていたが、企業が大きくなるにつれ徐々にその世間一般の目から見るとあり得ないようなカラニック氏・社員のスキャンダルは許されなくなっていった。
そして最終的にカラニック氏にとどめを刺した事件が、カラニック氏がウーバーのドライバーを起こしたひと悶着がドライブレコーダーで撮影され、これがリークされたことにあった。

なぜこのようなことが許されていたのかを考えていくと、低金利に基づいて高いリターンを求めたお金がPEやVCに流れ、PE・VCの過度な拝金主義が出資を受けるIT企業に対して儲かるなら何をしても良いという勘違いを許してしまったと考えることができるだろう。
そのピークにあった企業がウーバーであり、今から振り返るとウィーワークもそれに該当する話であった。

低金利自体が終わり、かつ2018~2022年にかけての醜悪なシリコンバレースタートアップ企業の爆死はこうしたPE・VCの雑投資が見直される転機となっただろう。
昨今のESG投資という観点でも、こうしたまるで人権を完全に無視したような企業文化はソーシャル面でもはや許容されず、投資される可能性も大きく下がってしまっただろう。
なのでやはり2018~2022年に醜悪な形で上場してきたスタートアップ企業については投資は避けるべき銘柄だろうというスタンスで行きたい。

【ウーバーの株価チャート】
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TSMC決算から考えるやや後ずれしそうな半導体市場の回復について

台湾TSMC4〜6月、約4年ぶり減収減益 PC・スマホ不振

やや先走った分が後ろ倒しになるようなイメージ。

木曜日に半導体セクターの先行きを占う上で一番重要であるTSMCの決算が出てきたので、数字と決算カンファレンスの内容を確認すると同時に、市場のリアクションと先行きどうなりそうなのかをまとめていきたいと思う。
ちなみに決算カンファレンスは下記から確認できるので、英語ができる人は聞いてみてもらいたい。

【TSMCのIRページ】
https://investor.tsmc.com/japanese/quarterly-results/2023/q2

売り上げや利益と言う数字面だけは市場予想数値よりは良かったということもあり、一応はコスト削減策や半導体需要の低下は底打ち間近という印象はあった。
しかし、決算コメントの中では、生成AI関連需要増加はあるものの、現状では半導体需要全体の弱さをオフセットするほどではない・中国向けが弱いというコメントから先行き回復ペースは、これまでSOX指数がウホウホ上がっていたことを前提としていた思惑とは齟齬がありそうである。
もちろんTSMCからは顧客の在庫調整は進んでおり、もう在庫調整完了は見えているという発言はあったものの、この長引く調整を背景に第3四半期の売上高見通しや今年の売上高見通しを少し引き下げたことが、やはりやや先走りしていた市場参加者からは嫌気された。
そのせいもあり、TSMCの株価はもちろんだが、その他の半導体銘柄も下落する展開となった。

【SOX指数のチャート】
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このようにやや市場が先走った半導体需要の回復について、一旦冷や水がかかったとして木曜日の米国時間は半導体銘柄がやや大きめに値を下げる展開となったが、少なくともSOX指数が最高値更新しかけていたことを考えると、先走っていたやつらが多いことを考えれば、まあそこらへんで調整かかるのはそんなもんじゃないですかねという内容であると思う。

少なくとも2022年1月の過熱していたところからコロナバブルの終焉による需要減少の開始・メモリの供給過剰による市況下落・金利上昇によるマルチプルの低下により株価が大幅下落していた時期と比べると、現在は半導体需要家の在庫調整の終わりは見えていること・金利はこれ以上上がらないこと・生成AIによる需要増加期待が見えている中では、揺れはあっても株価上昇が後ろ倒しになる程度と考えるのが自然だと思う。

まあそういったことを考えるとSOXLみたいな3倍レバ抱えている人はともかくとして、ノンレバで取り組んでいる人は他にもっと儲かる自信のある銘柄があるから乗り換えなきゃみたいな事情がなければのんびり待てばいいんじゃないのと思う。

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