村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2023年07月

巨人ブラックロックが動き、プライベートクレジットバブルに火がつく

ブラックロック「投げ売り銀行資産」投資拡大へ-混乱続くと判断

バブルはこれからブーストがかかる。

最近の株価上昇でこれはバブルだからここより上を買っていくのは危ないみたいな言説が増えているが、個人的には上記ニュースを見た時、いやいやバブルはこれからで、まさにバブルスタートのブーストが点火されたと感じた。
なぜそのように感じたかを書いていきたい。

これまで危機に瀕した米国の銀行・不動産企業が負債返済のための資産投げ売りについては、下記過去記事で書いた通り、これまでブラックストーンを始め、元からなんでもありなバーリトゥードを闘ってきた猛者達が買い漁ってきているが、金融市場の動きとしてはまだメインストリームではなかった。

【過去参考記事】

ハイイールドアセット争奪戦な米国シャドーバンキング


なぜこのプレーヤー達がこれほど投資ができるかというと、おそらくだがこれまで中国に投資されていた資金が、もはや中国には投資できないということで資金をじゃぶじゃぶに余らせており、こうした資金がプライベートクレジットファンドに流れ込んでいるようである。
その証拠に、特にここもとは中国投資で非常に痛い目を見たシンガポールのSWFであるGICやテマセクは、もう当面中国に投資ができない中で余らせた資金はどこかに投じてリターンを出さなければいけないということで、変動金利+スプレッドが取れるプライベートクレジットファンドで資金を投じていると報道されている。
これは最悪まだ少し米国政策金利が上がっても、変動金利連動であれば損をしないという打算に基づいている。

こうしたSWF・年金基金・生保の滞留資金がプライベートクレジットファンドへの資金流入は当初こそ一時的と見られていたが、とうとうどうやら継続的に流入しそうだということにみんなが気づき始めた。
これに気づいたプレイヤーこそが、上記の記事の通りブラックロックである。
巨人ブラックロックが、ついにプライベートクレジット投資を拡充すると高らかに宣言し、顧客行脚を始めたのである。
つまりファーストペンギン達の成功を見て、二匹目のどじょうを狙いに動き始めたのである。
巨人が動けば、もはやほかのプレイヤーもこれに追随するしかなく、これまで不安視されていた資産が丸ごと買われることは、もはや想像に難くない。
ここでいやいやまだ景気は危ないとか生ぬるいことを言っていたら、全ての高利回り投資をかっさらわれてしまうという焦りさえ生じているだろう。

そう、これはもうプライベートクレジットバブルが始まるのである。
この流れはもはや止めることはできない。
なぜなら投資プレイヤーは全員金融規制外のプレイヤーであり、行きつくところまで投資を行っていくだろう。
今はまだ景気不安があるから、プライベートクレジットファンドもかなり理性的な投資をしているが、景気不安がなくなればもうなんでもありな投資態度になることは確定的だろう。

というわけで、こうしたハイエナ的に高利回り狙いの投資が動いているのに、リスク資産に投資するのはびびってはいけないと思う。
ここは勇気を持って、さらにリスク資産価格が上昇するのに賭けていく方に分があると思う。

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迷走するオンライン広告ビジネスを主体とするIT企業

デジタル広告をめぐる争いが重要な局面に…メタがiOSの呪縛を逃れるためにすべきこと

オンライン広告頼み企業の先行きは厳しい。

ここもと相場は上昇傾向で、比較的色んな企業の決算状況を確認しても明るいところが多く、先行き不安を感じるセクターは体感的に比較的少ない。
しかし、その中で先行きかなり不安だなあと思うのがオンライン広告事業を主体としたIT企業である。

【参考書籍】

ウーバー戦記:いかにして台頭し席巻し社会から憎まれたか

上記書籍を読んでもらえればわかるが、ウーバーがアプリに過度に個人情報を収集するコードをしのばせてAppストアに繰り返しアップロードしていたことがばれて、これに対してアップルはどう対応するかで悩んでいた。
しかしアップルには「個人情報は当事者だけが持つべきものであり、他の誰もが操作することは許さない」というポリシーの下、当時役員であったティムクック氏(現CEO)がウーバーに対して不正を是正することを要求し、かつ次に同様な不正を行った場合はAppストアから永久BANすることを通告し、当時ウーバーCEOのカラニック氏はこれに屈するしかなかった。
これはアップルはいくらウーバーがアプリストアの中でキラーコンテンツであったとしても、 個人情報を脅かそうとする企業は断固として受け入れないという姿勢を見せたわけである。

では時計の針を現在に戻したい。
現在個人情報に対しる意識は以前より格段に強まっている。
そのため、アップルは既にiPhoneから収集できる個人情報を絞っていることはこれまでの報道でも明らかになっている。
この流れはおそらく遅かれ早かれAndroidでも同様な流れとなるだろう。
そうなるとアプリ経由で個人情報を抜いて精度の高い広告を配信しているIT企業はどうなるだろうか?
まず起こる問題は広告の精度が下がる。
広告の精度が下がれば、広告主は広告出稿を躊躇うことになる。
そうなると広告収入は従来より下がらざるを得ない。

これはメタなど既に十分なユーザーが集まっている企業ならまだ影響はましだが、小さいところになればなるほど、広告主は広告出稿を躊躇う確率が高まるため、影響は大きくなるだろう。
そうなるとSNAPとかPINSはどうなるだろうか?
そしてそれ以下の有象無象のプレーヤーはどうなるだろうか?
小さいオンライン広告主体のIT企業の株価を見てもらえればズタボロであることは明白である。

個人情報規制において禊が終わるまでは、小さいところを中心にズタボロな株価が回復することはないだろうと個人的には見限っている。

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なぜ植田日銀は無事にYCC修正にこぎつけたのか?

債券・株に日銀ショック 市場関係者に見通しを聞く

金曜日に市場参加者が想定するよりずっと早く日銀はYCC修正にこぎつけることに成功した。
しかも、YCC修正したにもかかわらず、株価や金利に対する影響についても、これまで市場参加者が想定していたインパクトよりもずっと影響少なくこぎつけられた。
(というよりかなりノーインパクトに近かった)

これまで日銀はいつも金融政策で一番後ろにいるので、日銀が金融引き締めに着手した時は、もう相場は崩れに崩れるという常識があるのだが、なぜ今回は無事金融政策修正にこぎつけたのか考えていきたい。

一般的に2000年以降では、常に日銀が金融政策において一番後ろに位置している状態であった。
そして金融の世界では中央銀行・政府・企業・個人のトータル資金供給量がプラスでないと経済は大崩壊する。
そして普通は中央銀行と政府の 資金供給量は連動するため、減る時は一緒に減る。
その時企業と個人に資金供給量増加を依存しなければいけないのだが、大体は行き過ぎてどこかでマイナスに転じて経済大崩壊というのが一般的な流れだ。
そして、日銀が金融政策で一番後ろにいるために、日銀が金融引き締めに動いてしまうと、世界中で資金供給してくれている中央銀行・政府がどこにもいなくなってしまい、経済が崩壊してしまうという流れだ。

そういうことで、今回YCC修正に日銀がこぎつけたことから、もうこれは相場はおしまいだと考える人がおそらくいるだろう。
しかし、よくよく熟考すると、実は金融政策で一番後ろにいるのは日銀ではないということに気づいた。
じゃあ誰が一番後ろにいるのか?
それは、やはり中国のPBOCである。
しかも既に中国は世界のGDP総額で2位の国であることを考えれば、PBOCが金融政策で一番後ろにいることは、他の国にとって非常に金融政策においてフリーハンドなことが多くなることが想定される。

これまで当ブログでは中国が信じられないレベルの愚策を行ったためにデフレに一気に突っ込んでいることを書いてきた。

【過去参考記事】
これから中国が長いデフレに苦しむ理由

そしてこの状況は容易に解消できないために、中国は今後財政支出と金融緩和という2つのツールを、おそらくは誰もがこれまで想定していなかったレベルで行う必要性に迫られている。
現在のPBOCは10bpsずつちょこちょこ利下げしているわけだが、到底現在の景気悪化に対して足りないわけで、思い切って下げないのであれば、今後もだらだらと政策金利を下げざるを得ないだろう。
さらに中国政府も財政支出面で思い切りが足りなく、だらだらと拡大させる流れに見える。

こうしたことから、実は現在の金融政策サイクルで日銀は一番後ろにいないため、大きなショックなしでYCC修正にこぎつけることに成功したと個人的には予測した。
さらに、相場は金融政策で一番後ろにいるプレイヤーが金融引き締めに走った時崩壊すると考えれば、それは中国PBOCが金融引き締めに動き始めた時だと思われる。
じゃあそれはいつか?
現在の中国景気動向を考えれば少なくとも来年引き締め着手するのは絶対に無理である。

そういったことを考えれば、今日銀は比較的市場にショックを与えずにフリーハンド的に金融政策を変更することが可能なのではないかと考える。
これまでの全く選択肢がなかった状態はPBOCに実質的に押し付けたのである。

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インフレにもデフレにもケアするような日銀の金融政策修正

日銀、金利操作を修正 長期金利0.5%超え容認

予想外で発表直後こそかなり動いたが、市場インパクトは薄れていくだろう。

ここまでFRB・ECBとほぼ無風で市場は通過していたのだが、注目の日銀金融政策決定会合で深夜に日経新聞で金融政策修正リーク記事が出てきたことに加えて、実際にYCCについての枠組みは一部修正されたということで、発表直後こそ市場は円高・株安・国債金利やや上昇とヒステリックな動きとなった。
しかし後場になって徐々に材料を消化したこともあり、落ち着いてきたということもあり、今回は何についてどう反応したいのかまとめていきたい。

今回の日銀の金融政策修正については、YCCについて10年国債を0.5%で連続指値オペをしていたものを、上限1%に引き上げた。
これによって、必ずしも10年国債0.5%で日銀は買い入れを行う必要性はなく、10年国債が1%到達すれば無制限購入しますよと、上限金利を変更してきた。
ただし、10年国債金利0.5%を中心値とし±0.5%を許容幅とするとしており、国債買い入れ量の枠は変更しておらず、0.5~1%の間においては臨時オペなどで随時日銀が適切だと思う範囲でコントロールを継続するという姿勢を示した。

市場は最初のYCC上限変更を見て、かなり過剰反応をした。
しかし、これは確かに先行きインフレが想像よりも伸びてしまった時の対処というのもあるが、同時にデフレに戻りそうになってしまった時も臨時オペをぶつけることによって10年国債金利を押し下げるオペレーションができるよう両建てな政策になっており、必ずしも日銀としては金融引き締め一辺倒というシグナルではないと個人的には考えている。
どちらかというと、全面的緩和とも引き締めとも捉えられないようにかなり注意深く決めたものという見方ができるだろう。
2023年インフレ率見通しは引き上げたが、2024年のインフレ率見通しを若干引き下げたことや2025年インフレ率見通しが変わっていないことからも、かなり微修正の範囲を逸脱しない修正だろうと思う。

この措置を見ると、外国人はすぐに日本国債ショートトレードを1%まで行うのではないかと考えている人もいるが、それはかなり難しい。
10年金利については0.5~1%の水準の間で、日銀が適切だと思うレベルでの推移をさせるという意味合いであり、問題は日銀はこの0.5~1%の間はどこが適切なのかというのは明らかにしていない。
今年1~3月にあったようなあからさまな外国人ショートが起きた時は、日銀が外国人がショートのために借り入れた国債の借入コストを締め上げることによって踏み上げ祭りを実行し外国人投資家に大損を食らわせる必殺技があるため、カレント銘柄で大規模にショートはできず、せいぜい先物でちょこちょこショートするしかない。
本当に10年国債利回りが1%に到達するには、邦銀勢のポジション削減売りが必要であるため、かなり距離があるように見える。

また為替についても円ショートトレード一辺倒のお祭りはこれにて完全終了となった。
ドル円140円で10年JGB利回り0.5%+欧米金利ピークという組み合わせだったところから、場合によっては10年JGB1%+欧米金利ピークという組み合わせまで可能なため、少なくともドル円145円より円安水準を攻めるのは非常にハードルが高くなった。
(140円で毎回円暴落煽る投資系インフルエンサーはいつも天井フラグ)
とはいえ、じゃあ過度に円高になるかというと、デフレもケアしながらの政策調整であることからもそれは難しく、為替介入後ひろゆき信者絶滅ラインである130円以下というのも難しく見える。
このことからドル円レンジは130円~143円程度の一定レンジで動くイメージ感でよさそうだ。
そういった意味では円安に依存したトレードは完全に旬が過ぎたと言えよう。

日本株は発表直後こそかなり激しい反応をしたが、上記で述べた通りインフレにもデフレにも対処可能な枠組みにしただけであり、これを持って当面政策変更の必要性がなくなったことを鑑みると、一通り間違って株を売っちゃった人達のポジションを飲み込んで大型・高配当・低PER・低PBR銘柄を中心に再度上昇していくものと見込む。
また、木曜日深夜はこの日銀の金融政策修正報道で米国株が調整したが、これも是正されるだろうと思われる。

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市場予想外の発表はなくなったFOMCとボラティリティの低下

FOMC声明要旨「米国経済は穏やかに拡大」

ボラティリティ低下は市場に良い兆候。

昨日注目されていたFOMCがあったので、記者会見動画も見ながらまとめていきたいと思う。

【FOMC記者会見動画】
https://www.youtube.com/watch?v=xAlDoqX3RFg&t=1136s

記者会見冒頭に述べている内容は前回とほぼ全く同じ内容となり、
また、今回はドットプロットについても特段変更がなく、この時点でもうなんか相場が荒れる感じというのはほとんどないと予感させる記者会見スタートであった。

【過去参考記事】

ドットプロットはタカ派で記者会見はハト派な米国FOMC


記者の質問に対する回答もさらっていきたい。
記者の先行き利上げはあり得るのかという質問に対しては、次回ミーティングまで2ヵ月あり、雇用とインフレデータは2回見ることができるので、全てはデータ次第で現状は何も決まっていないというのが正直なところなようだ。
雇用需給については冒頭ではタイトと言っているが、徐々に軟化していることも認めるような発言をしていた。
また、一部ツイッターではもう住宅価格について再度上昇する心配をする声も出ているが、パウエル議長は若干価格のピックアップが見えているが、金融引き締めによる高利率なモーゲージ金利によって、これはおさえられていると発言しており、現在の住宅価格動向程度で特段金融政策方針を変えるという観測は否定されたように思われる。
総じて利上げを追加するよりも、高めの政策金利水準を継続するに留めたいというニュアンスが強かった。

一番心強かったのは、記者からソフトランディングの自信はあるのかという問いについて、パウエル議長は個人的なビューとしたうえで、インフレ率を2%に抑えながら大きいショックを伴わないような着地を見出すことは可能だとはっきり言い切ったことにあり、これはこれまでの記者会見の中ではここまで自信のある回答はしてこなかったように思う雰囲気であった。
記者会見からは感じれることとしては、FRBにとっても先行き予見状況について、以前よりも確信度が上昇しているように思われる。
個人的にもソフトランディング路線で考え方は良いと思っており、下記過去記事を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
景気のハードランディングはどのように発生するのか?米国景気はハードランディングするのか?

総合的に見れば、ここから異常な雇用・インフレデータが出てこない限りは今回の利上げが最後と見るべきだろうと思う。
これに伴って、VIXはともかくとして、最後の弱気派閥が存在するMOVE指数が低下した。

【MOVE指数のチャート】
タイトルなし


昨日は金利も株式もこのFOMCに対する反応はかなり限定的で傍から見るとどっちつかずなのかなあという風に見えるが、MOVE指数の低下は米国債金利の居所について市場参加者の目線が揃い始めていることの証左であり、そうなるとあとはECBと日銀の金融政策決定会合が無難に通過すれば、年後半に向けて残りの悲観論者を置いてけぼりにするようなリスク資産価格の上昇が見られると思う。

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