村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2023年06月

個人投資家が我慢・耐えられる投資期間は半年

投資期間は無制限なのに、個人投資家の耐えられる期間は意外と短い。

当ブログのような個人が好き勝手に相場観語ってるようなブログにもちょくちょくブログコメントが来るようになっているが、その中で「もう株は懲り懲り」というコメントが見られた。
このコメントは個人的に非常に示唆に富む内容だなと感じたので、今日はこのコメントがブログに投稿された時に自分がどう相場を捉えたか考えたい。

まず「もう株は懲り懲り」と言っているが、保守的な運用をしていれば今回の下げ相場というのは円建てベースでいうと意外とダメージは少ない。
例えば個人的に一番安全牌で保守的な運用の代表格であるS&P500のここもとの下げ相場の推移はどうだったのか確認したい。

【円建てS&P500ETF(2558)のチャート】
タイトルなし


S&P500の円建てベースのパフォーマンスを見ると、現地通貨ベースでピークをつけた2022年1月からどれだけ下げたかというと、せいぜい-9%である。
(しかもその後は結局円建て最高値を普通に超えている)
-9%なんていうのは長い間積み立てしていたり、値段安いところでしっかり仕込めている人にとっては、まあ時々そんなことあるよねぐらいの値幅であり、保守的に運営している普通の個人投資家にとては円建てS&P500でも-20%ぐらいを叩き出した2020年のコロナ暴落や2015年の人民元ショックの時の下落の方がきつかった。

ナスダック100ベースでも、円建てベースで-24%ぐらいだが、これも2020年のコロナ暴落の方が下落幅が大きかったし、2015年の人民元ショックと同程度に過ぎない。
(こっちも円建てベースだと既に最高値更新)

【円建てナスダックETF(1545)のチャート】
タイトルなし


しかし、現実としてたったこれだけの下げと少し長い停滞期があるだけで「株は懲り懲り」というコメントが出てきている。
確かに、もし投資先がレバナスであれば-50%を超えるし、一部投資インフルエンサーが煽ったハイグロ(笑)銘柄に集中投資していればもっとパフォーマンスは壊滅的である。
そういった人が通常より多いというのはありつつも、それにしてもわざわざ「もう株は懲り懲り」と言わしめる程個人投資家の投資センチメントは冷え切っている。

以上から考察すると、個人投資家の許容度は値幅というよりは期間にあるように思われる。
かなり感覚的であるが、ナスダック100がドピークになってレバナスブームが最熱狂した2022年1月から下火になっていった。
そして風〇氏の悪魔的リターンが稼げる米国レバナス投資というしょうもない書籍が出版されたのが2022年10月であったが、この時は個人投資家はびっくりするほど悲観的・下目線になっていた。
そこから導き出せる個人投資家が耐えられる期間は半年ぐらいと考えるのが妥当と思われる。
少なくとも三四半期(9ヵ月)は耐えることができないという考え方が妥当なように思われる。
機関投資家は四半期ごとに厳しくパフォーマンスをチェックされるということもあり、投資に時間制約があるわけであることは常識であるが、本来こうした投資期間に制限がない個人投資家でも意外と我慢できる期間というのは短いように思われる。

こういったことを考えると、個人投資家の間で話題沸騰になった投資先が下落していった時に、中途半端な下落を狙うのではなく、半年ぐらいROMるというのは一つ重要な投資判断なのではないかと思う。

日々金融市場で思ったことや金融データをつぶやいている村越誠のツイッターはこちらのリンクをクリック

アストラゼネカの対応から見る先進国企業の中国リスクに対するヘッジ方法

AstraZeneca drafts plan to spin off China business amid tensions

中国でいかにリスクヘッジしながら商売するかと皆苦心している様が見える。

上記記事では英国成約大手アストラ是根かが中国ビジネスについて、アストラゼネカチャイナを別途設立して、これを香港市場にIPOさせる方向であるというのが報じられている。

個人的には、これは昨今の中国リスクをなんとかヘッジしながら、中国向け売上高を維持していきたいと考えている先進国企業が苦心しながらその方針を決めていることが窺える内容となっている。
そのことについて今回はまとめていきたい。

なぜアストラゼネカは中国法人を別途法人立てる形でカーブアウトさせようとしているかというと、不測の事態が起きた時にいつでもしっぽが切れるようにするためである。
習近平独裁リスクはめちゃくちゃに高いものの、腐ってもGDPが世界2位の国であることから、その内需の量は膨大である。
上記のようにカーブアウトさせれば、米国の対中制裁に巻き込まれた時は容赦なく切り捨てることにより本国法人にまで影響を与えるようなことにならないようにできるし、知的財産については中国法人に残さずに本国法人とのライセンス契約にすることによってリスクヘッジが可能だ。
そうであるならば、中国国内には単なるマーケティング部門を置いたり、あるいは知財関連は全て本国本社が握り、中国法人とはそのライセンス契約だけを行い、何か没収リスクがあればそのライセンス契約を無効にしてしまうという形式をとるのが一番無難な選択肢になる。

この流れを見ると先進国企業の中国に対する姿勢は概ね明確になったように思う。
コストの面を考えれば中国国内で研究開発までできるのがベストなわけであるが、没収や粛清リスクを考えれば「コストでは割り切れない」自体として目をつぶる流れとなっている。
また上記FT記事にも書いてある通り「他にも同じようなことを考えている会社は多い」とコメントしていることからも、どうせみんな同じこと考えているんだったら、些細なコスト・速さ競争でビハインドすることはそんなにないだろうと考えているということだと思う。

総じてみると、こうした流れは先進国企業の中国ビジネスの進展はスピードを最優先するのではなく、リスクヘッジを常にかけながら売り上げをどう出していくかという流れになるため、中国には没収されて困るような資産は残さないという強い意志が見え、やはり先進国企業の中国投資は基本的に減退方向と見て間違いないだろう。
これは中国景気にはやはりマイナスであり、この分を穴埋めする形で習近平が追加景気対策を決め込まない限りは中国株・香港株については特段投資妙味はないと判断できるだろう。

日々金融市場で思ったことや金融データをつぶやいている村越誠のツイッターはこちらのリンクをクリック

外国人投資家の日本株投資は個別選別ステージへ移行





日本株は指数ベース勝負ではなく、個別選別色が強くなるステージへ。

上記は6/21に東証が開示している日本株主体別売買動向なのだが、これまで日本株を爆買いしてきた外国人投資家について、動きが変わってきた。
これまでは外国人は先物も現物も爆買いしてきたわけであるが、ここにきて先物は売り越しに転じたのである。
一方で、現物は引き続き爆買いが続いていて、ネッティングするとプラマイゼロみたいな形になっている。

数字だけ見ると、これはいよいよ外国人の日本株投資がストップするかとかいう人がいるかもしれないが、個人的にはそうではないと考えている。
これはこれまで外国人投資家がどう考えて日本株ポジションを構築してきたかを考えれば、ヒントが浮かんでくると思う。

確かに外国人投資家は日本株のポジションを一気に動かす時は、まず先物を使ってポジションを動かすことは確かである。
日本株のポジションを増やすのであれば先物を買い、減らすのであれば先物を売るという構図である。
これだけを考慮すると、外国人の先物売りは日本株が天井だと考えて売っているという行動に見えるかもしれない。

しかし、今回考えたいのは外国人投資家は日銀の粘り強い金融緩和・デフレからインフレへの転身・日本製造業の復権を背景に一気に日本株への見方を変更していることにある。
この辺の考え方は下記を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
デフレからインフレへなぜ世界は大きくレジームチェンジしたのか?

フラット化する世界の終焉とブロック化する世界

これまで長らく日本株をアンダーウェイトしてきたがために、個別銘柄への知見が薄くなっていた上に、急に状況が劇的に変化したことから個別銘柄をちまちま買う時間がなく、まずは大慌てで日本株のポジションを確保するために先物を大人買いしたという事情がある。
しかし、先物だとロールするたびにコストがかかることから、最終的にはこれを個別銘柄に切り替えていきたいわけである。
この過程では個別銘柄を少しずつマーケットインパクトが起きないように買っていきながら、確保した先物ポジションを売っていくというオペレーションになる。

こうした動きを考えると、6/22に公表されている日本株の外国人売買動向において個別株はまだ大幅買い越しな一方で先物が大幅売り越しになっていることが理解できると思う。
これまでは外国人投資家による先物大人買いで日経平均銘柄が株価上昇を牽引していたわけだが、今後は先物売り個別銘柄買いというオペレーションになるため、日経平均に占めるウェイトの高い銘柄は上昇しにくくなり、逆に本来は投資妙味が高いはずなのに出遅れていた銘柄が買われていくことになるだろう。
そういった意味で以前に当ブログでは3万4000円に壁があると言及してきたが、指数ベースではこの壁にぶつかると同時に、個別銘柄の選別色が強まり、これまでなぜ上がらないのかと首をかしげてきた真っ当な銘柄が上昇するステージへ移行していくものと考える。

【過去参考記事】

日経平均に3万4000円コールオプション買いの壁出現


日々金融市場で思ったことや金融データをつぶやいている村越誠のツイッターはこちらのリンクをクリック

米国ではシャドーバンキングが地銀の穴を埋める

カーライル、銀行に対抗-ファイナンシング事業拡大へ

今は相場にプラスだが、遠い将来の火種になる可能性があることは頭に入れておきたい。

上記はカーライルが米国地銀が昨今のSVB破綻をきっかけに当局検査が入ったり、規制強化される観測があることから融資を絞る中、そこをビジネスチャンスと捉え、地銀が貸し渋った先に高金利で金を貸し出すビジネスを拡大していきたいという記事になる。
これを読んだときこれこそがまさに米国のダイナミズムだと感じると同時に、引き続き足下の相場には積極的姿勢で臨むことが正当化されるニュースだと思った。
それと同時に遠い将来は、これが金融システミックリスクの火種になる可能性も考えておかなければと思い、これについてまとめていきたい。

上記ニュースが意味することは銀行規制外で融資分野において貸出に回るプレーヤーがわんさかいるということである。
しかもこの銀行の隙間をぬって金を貸そうとしてくる人達は、現在の景況感の悪化をビジネスチャンスと捉え、積極的に仕掛けていこうとしていることにある。
これが本当の金融システムショックだった場合は、誰も金を貸すことができず、全員がそのまま沈んでいくわけで、逆に言えば誰か金を貸し出す余裕がある限りはそういった大きなショックは起きないということがわかる。
これ一つとっても、結局金が回っている限り資産の投げ売りをする必要性はないわけで、いかに相場が暴落すると考えることが馬鹿らしいのかがわかると思う。
この辺の考え方は下記を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
株式投資において最も恐ろしいクレジットクランチとは何か?(リーマンショックなどの過去歴史の解説付き)


一方で、この話は近い将来でないが、遠い将来この分野から問題が起こる可能性は高そうだと予感させるものである。
こうしたプレーヤーはいわゆるノンバンクと呼ばれている人達であり、よく中央銀行の金融システミックリスクペーパーで出てくるシャドーバンキングと呼ばれる人達である。
規制外のためどこかから資金を調達してそれを市場に投入してくるわけだが、これがあまりにも行き過ぎるとでたらめな貸出をしていくことによって、どこか一つがこけると連鎖的に影響していき、金融システミックリスクに発展しかねない。
あるいは、雑融資をしてくるプレーヤーが大幅増加することによって、特定の業種が雑に資金を借り入れることによって、ひとつのつまづきが連鎖式にメルトダウンする形で経済全体の足を引っ張っていくことも考えられる。

とはいえ、現段階では上記のマイナス要因は相場を考える上ではあまりにも遠い話であるため、現状時点で相場に織り込む必要はなく、逆に米国金融不安を過度に心配する必要性はないというプラス材料と考えて相場を考える材料としたいと思う。
少なくとも現在米国のM2マネーサプライは前年比マイナスであり、誰かが過剰に融資しているなんてことはないので、遠い将来の火種として頭の片隅においておけばいいと思うぐらいの話である。

日々金融市場で思ったことや金融データをつぶやいている村越誠のツイッターはこちらのリンクをクリック

中国・ロシアからの生産設備引き上げで、ニアショアリングが活発な欧州

Demand for Europe factory space rises 29% amid ‘nearshoring’ rush

ウクライナ戦争の影響が時代を変えたと言ってもいいだろう。

上記FT記事では欧州では金融引き締めで需要が鈍化している一方で、欧州での工場建設ラッシュが進んでいることから本来は景気鈍化であばばーのはずが労働市場や生産動向は比較的堅調に進んでいると記事になっている。
FT記事内では「ニアショアリング」と書かれており、いわゆる地産地消的な工場建設が続いているということである。
これについては、一体何が起きているのかをまとめていきたい。

欧州の場合、これまで工場移転というのは主に2つ選択肢があった。
一つは中国で、もう一つはロシアである。
しかし、ロシアはウクライナ侵攻で実質断交してしまっている状態であるし、ロシア内に資産を保有していた欧州企業は強制的に自国政府やロシア政府によって投げ売りさせられてしまった。
しかも、ロシアーウクライナの戦争は当面終わる気配はなく、新しくロシア内に工場を作るわけにはいかなくなってしまった。
またウクライナ戦争に地理的に近い東欧についても、やはりテールリスクを考えると工場を置きづらいということも少し考えればすぐに思いつく話である。
そういった意味ではロシア~東欧での新規工場設置はできない。

じゃあ中国はという話になるのだが、米国だけでなく、欧州についても中国に対する姿勢は引きつつある。
一番の理由はこれまで当ブログで書いてきたゼロコロナ政策でいきなり生産をシャットダウンさせられたことや、習近平独裁政権で資産没収されかねないからという理由がメインである。
しかし、欧州はそれに加えて今回のウクライナ戦争で中国がロシア寄りの姿勢を示したことが大きい。
ようは明らかに欧州の人達に危害を加えているロシアに対して中国は融和的な姿勢を見せてしまったことから、欧州政治家・経済人から全く信用ならない国で、いつ同じように対立状態になるかわからないという不透明さが急速に拡大してしまった。
よって欧州は中国はこれまでの経済では固い友情で結ばれているという状態から、信頼のおけないプレイヤーに変化してしまった。

以上からこれまで原料が安いとか人件費が安いという理由で進めていた欧州の水平分業体制についても見直しの必要性に迫られてしまった。
中国・東欧・ロシアで生産を拡大できない分というのをどこかで穴埋めしなければいけない。
この穴埋めもコストは一定程度無視して、高くてもいいから生産しなければいけないという類のものになる。
この辺の考え方は下記を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
デフレからインフレへなぜ世界は大きくレジームチェンジしたのか?

インドという選択肢はあるが、現状そこまでインドに受け入れ余地があるわけではないようである。
ということで「ニアショアリング」という形で自国あるいは自国に比較的近い同盟国で生産するという流れになっている。

これが欧州含め、先進国で金融引き締めで需要が本来鈍化しているはずなのに、比較的インフレが高めで推移しているかつなぜか労働市場が堅調な理由となっている。
欧州の株高というのも基本的にはこれで説明がつくものと思われる。

【STOXX600のチャート】
タイトルなし


日々金融市場で思ったことや金融データをつぶやいている村越誠のツイッターはこちらのリンクをクリック

記事検索
アクセスカウンター
  • 累計:

プロフィール

村越誠

投資に関して気づいたことのメモをしていく。 ご連絡の取りたい方は、makoto.muragoe★gmail.comまで(★を@に変換してください)
ツイッターで更新情報配信