村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2023年06月

中国人の不動産爆買いで上昇するギリシャ株

アングル:中国人、ギリシャ不動産の「爆買い」に走る訳

大貧民から貧民に上がる形での大穴狙いとしてはありなのかなあ。

ここもと投資環境は2010年以降では最も劇的な変化をしていると感じており、様々な資産に変化の予兆はないかと確認していたところ、個人的にひとつ目をひいたのがギリシャ株の上昇である。
下記の米国上場のギリシャ株ETFのチャートを見てもらうと、2023年に入ってから急速に上昇しているのが確認できる。

【MSCIギリシャETFのチャート】
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これは何が起きているのかを今回は考えていきたい。

ギリシャと言えば2011年に経済破綻して、2018年までは実質的に死んでいる国家としてずーっと扱われてきた。
しかし、これまでの緊縮財政が功を奏してきたのか2019年以降は10年国債の状態が明らかに改善していっており、足下の高金利政策状況でも10年ギリシャ国債は10年ドイツ国債に対して+130bps程度でしか推移していない。
これは地味にイタリア国債よりも対独スプレッドは小さく、現状色々グローバルな景気不安が叫ばれている中でもギリシャの国自体はそこまでファイナンスに苦しんでいるようには見えない。
というより、余裕に見える。

そして、そこに降って湧いたかのように飛び込んできたのが中国人の不動産爆買いである。
上記記事自体は2018年なのであるが、ギリシャでは財政破綻を背景に苦肉の策的に不動産を購入した人にはギリシャでEUビザを無条件で許可するといった大盤振る舞いをしている。
これに飛びついているのが中国人なわけである。
しかも習近平独裁政権爆誕とともに中国人の富裕層はEUビザを入手するためにギリシャ不動産の爆買いを加速しているようであり、下記不動産ブローカーの動画ではギリシャの不動産はこうした爆買いからここ数年で2~3倍になったと説明している。

【参考Youtube動画】
https://www.youtube.com/watch?v=qGhr9QKaK_4

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不動産が好調な国というのは、やはり株価も元気になりやすいというのが通例である。
そのことをストレートに反映され始めたのが、現状のギリシャの株価動向ではなかろうか?

そういったことを考えるとポートフォリオの主力とはなり得ないが、一つの大穴狙いとしてギリシャ株を狙うのは作戦としてはありではないかと考える。

しかし、ギリシャの経済については完全に問題がなくなっているわけではない。
最大の問題はあまりにも多額な経常赤字であり、これが現状対GDP比で9%の赤字と持続不能なレベルにある。
経常収支の考え方については下記を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
新興国経済を見る上で重要な「国際収支の天井」という概念

この事情をさっぴくと、ポジションを取るにしてもさっと入ってさっと逃げるという機敏さを求められるように思う。
ちなみに日本からだと米国ETFのGREKでエントリーするしかない。

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市場参加者によって割れている中国経済の先行き期待

ブラックロックCEO「日本株に資金シフト」 中国投資見直し、成長懸念

市場参加者によって、中国経済に対する見方は様々。

ここもと報道を見ていると、中国景気の最悪さはようやくほぼ全世界の投資家が知るところになったように思われるのが明確になってきており、下記過去記事で書いた通りの展開となっている。

【過去参考記事】

中国・習近平は追加景気対策を打つ以外の選択肢はない


一般的にここまで現況経済が最悪であるとなると、中国株・香港株は底打ちでここから上昇するのではないかと考えたくなるが、色々市場動向を見るとどうやら現況は最悪と見ているものの、先行きについてはかなり見方が分かれているように感じているため、今回はそれをまとめてみたいと思う。

株投資家から見た中国経済は現在も先行きも最悪に近い。
このことは既にこれまで過去記事で書いていた通りであり、習近平の独裁・米中摩擦・習近平が気に食わない業種への規制・不動産市場の崩壊というのに加えて、利下げはたったの0.1%としぶちんでこんなのに付き合ってられるかということで株をほぼぶん投げている状態である。

【過去参考記事】
中国の習近平独裁による集団指導制の崩壊と中国株式市場に与える悪影響

これから中国が長いデフレに苦しむ理由

一方で、債券プレーヤーの方は株とは中国経済に対する見方は異なっている。
確かに今現在の中国経済が最悪であることは認知しているものの、一方で景気対策を打たれることによってインフレ率が再上昇することを怖がっている。
その証拠に中国が利下げをする兆しが見えた段階で国債金利はそこそこ上に跳ねており、その見方を裏付けている。

【中国10年国債金利の推移】
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つまり、景気は悪いがまだ中国共産党の経済に対して良い影響を与える力はまだ残っていると考えているわけである。 

つまり、まだ市場参加者によって中国経済に対する先行きの見方が揃っていないわけである。
債券プレーヤーまでが予想外の中国政府の景気対策が出てきた時に債券金利高で反応しなくなれば、もう中国景気に対して誰も楽観的なプレーヤーはいないということで、中国株にもワンチャン強気になれると考えているが、現状債券プレーヤーがまだ習近平に希望を中途半端に持っていることが中国株がダラダラとした動きになっている原因となっている。
ただし、一方で売るべき人はほとんど売ったかなという感触があり、記事一番上のニュース記事の通りブラックロックCEOが中国を避けて日本株を選好する投資家が増えていると言及していることからも、中国経済に対して疎い欧米人でもさすがににぶちんな人以外はほとんどポジション調整は終わっていることがうかがえる。

以上から中国株・香港株はおそらくは下がりも上がりもしないという誰にとっても不幸な値動きになると予想している。
ただ、これは変に中国共産党が追加景気対策を止めてしまうことをガードしてくれるし、先進国がさらなる追加金融引き締めを躊躇される効果もあるため、これまで上昇を継続している先進国株をサポートしてくれる要因にはなってくれるだろう。

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上がる日本高配当株、上がらない米国高配当株

いよいよもろに差が出始めてきた。

日本株については日経平均を見ると先行きについてやや不安感が漂っているものの、高配当株を見ていくと順調に続伸していると評価できるチャートとなっている。

【1577日本高配当株ETFのチャート】
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これだけ見ていると高配当株さえ買っていればイージー相場なんだ!そうだ米国高配当株も投資しよう!となるかもしれない。
しかし、ここもと米国高配当株ETFの値動きを見てもわかるが、こちらは動きがあまり芳しくない。

【SPYD(米国高配当株)のチャート】
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日頃日本株を馬鹿にしている米国株信者は、きちんとグロース株掴んでいるのならともかく、米国高配当株中心に買い進んでいる人からすると精神が崩壊してしまうような状況である。
この差はどこから生まれているのだろうか?

この差は増配余地と先行き景況感で概ね説明ができると個人的には考えている。
米国というのは、以前からずっと株主最重視市場であり、少しでも株主還元余地があるならそれを全部還元として吐き出せとケツを蹴られ続けているのが現状である。
特に2021年までの低金利時代は金利が低いんだから、低金利を現金を借りて株主に還元しろというのがトレンドであった。
そのため、米国高配当株というのは既に限界まで還元しているというのが現状だ。
あとは現在米国は地銀不安から高配当株の中心セクターである銀行・不動産の雰囲気がメタクソに悪いという事情もある。

一方で、日本の高配当株は異なる。
これまで日本企業はデフレが続いてきたために、 低金利でも借金の相対的負担感が重たい上に、何が起こっても大丈夫なように現金をため込んできた。
しかし、いよいよデフレからインフレに経済が切り替わっていく中で、従来より現金をため込む必要性が減少し始めており、これまで何十年も貯めこんできた現金は株主に還元しても大丈夫だよねという雰囲気が醸成されつつある。
しかし、このトレンドはまだ生じてから1年も経っていない話であり、ようは日本高配当株はまだまだ株主還元を増加させる余地がたっぷりあるわけである。
四季報を読み込んでみていただいてもわかるが、配当利回りが3~5%あっても、まだ配当性向がたったの30%~40%しか出していない企業は多く、米国のように還元性向100%とか80%みたいな企業は未だ少なく、高配当狙い投資家から見たら宝の山のような状況となっている。

【参考書籍】

会社四季報 2023年3集 夏号

しかも日銀はどうやら拙速な金融引き締めをするわけではなく、安定した経済推移を望んでいるということもあり、米国で問題になっているセクターである銀行・不動産には何も問題が起きていない。

以上から、これまで当ブログで言及してきたように、高配当株狙いであれば今は米国株ではなく日本株が有利だろうという推理は正しい状況が続いていると思っている。
米国株を買うなら、やはりグロース系であり、米国を信じて高配当株に資金をつぎ込んでいる人は余裕で日本株にパフォーマンスボロ負けしている現状を直視することは難しいだろうと思う。

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大体ろくなことがおきないマザーズ指数の上昇

マザーズ指数が3日続落、続落ムード継続で主力株に売り=新興市場・26日

マザーズ指数が上昇するときって、大体末期。

2023年5月末より急速に上昇してきたマザーズ指数だが、先週水曜日をド天井として、現在連続で棒下げ陰線となっており、鼻息あらくマザーズ銘柄を買っていた個人投資家は全員悶絶している状況にある。
個人的にマザーズ銘柄なんてほんとうにごく一部銘柄を除けば、投資不適格な銘柄ばかりでありあんまり投資食指が働かないし、そもそもマザーズ指数が上昇するときほど相場にとって危険なことはないと個人的には思っている。
そのことにういて書いていきたい。

まずマザーズ指数というのはどういう性格のものなのかを捉える必要がある。
一般的には日本株の中での中小企業指数的な立ち位置で、かつ成長力の高い企業中心みたいな捉え方をする人がいる。
確かにそういう銘柄も一つまみはいるかもしれないが、実際のところ大半はクソ株である。
特に長期間に渡ってマザーズ市場でくすぶっているような銘柄というのは、中小企業のくせにもう成長できていないということで十中八九クソ株である。
そのクソっぷりもすごくて、黒字化見込みのない赤字を垂れ流しながら、そもそもこんなビジネスで上場すんなと評したくなるような銘柄も多い。

こうしたクソ株指数であるマザーズ指数だが、マザーズ指数が根本的に上昇するケースは二パターンである、

1、グローバルに流動性が拡大し、どんなクソ株でも上昇している時
2、 日本の大型株が高値になって相場に煮詰まり感が出てきた時

この1あるいは2のどちらか、あるいは両方がないと、クソ株の集合体指数などは基本的には上昇しない。
1の場合も2の場合も、真っ当な投資候補からはみでた投機的資金が流入しているだけなので、その潮が引けば単にクソ株という日照り続きの砂浜に打ち上げられるだけなので、当然の話である。
さて、ここでこれまでのマザーズ指数の上昇局面の相場はどこにあったか確認したい。

マザーズ指数が上昇した相場でいうと
・2012~2013年のアベノミクス(この時は1・2両方の効果)
・2017~2018年のトランプ減税相場(1の効果が大きかった)
・2020~2021年のコロナバブル(主に2の効果)

の3局面であった。
しかしいずれの相場も短期間で上がった後は、大体日本株市場ではろくなことが起きてこなかった。

【マザーズ指数の推移】
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そして2023年5月に、日本の大型株がどんどん上昇する中で蚊帳の外であったマザーズ指数にも、いよいよ大型株の上昇が煮詰まってきたということで資金がわっと集まったのか上昇を開始した。
個人的には日経平均に3万4000円に壁があると書いてきたが、ここに対する煮詰まりと併せてやぶれかぶれでマザーズ銘柄にも資金がわっと投機的に集まったのではないかと考えてきた。
このままマザーズがぶわーっと上がってしまうと、ぶっかかる冷や水の量が多くなってしまうのでいやだなあと思っていたのだが、先週の水曜日時点で上髭ド天井を付けた後は、大型株の調整に併せて倍近くの値幅を伴って下落していった。

このことから一旦日本市場にも健全な冷や水がぶっかかったと判断できそうである。
あのまま上昇していたら、さすがに市場参加者は冷静さを欠いていると判断できるが、かなり早い段階でマザーズ指数が下落に転じたことは、まだ大型株中心に資金が投下されている証拠であり、これまでのような速度違反のようなものではなくなるが、着実に日本大型株に資金が入っていくだろうということが期待できそうである。

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先進国通信ビジネスから排除される中国企業・漁夫の利を拾う先進国企業

EU、ファーウェイとZTEを5Gで排除 加盟国に要請

これまで中国企業に奪われてきた仕事を取り返すチャンス。

上記ニュースでは、ロシアのウクライナ侵攻前までは中国に対して比較的好意的な姿勢を見せていたEUが完全に態度を翻して、中国企業の通信インフラ事業への参入を排除する形で動いていると報じられている。

これは以前に下記過去参考記事で書いた通り、ロシアのウクライナ侵攻によって政治は「地政学リスクが起こる前提」で動かざるを得ず、積極的に中国とロシアを国家機密上重要な商売から例え安値受注を出してくれようが排除するという流れが生まれた。

【過去参考記事】
フラット化する世界の終焉とブロック化する世界

また下記書籍を読んでいる中で、やはり以前から中国企業が先進国の通信インフラ案件にかかわってくることについて、既に相当な警戒感を持たれていて、実際にそれが足下で大爆発していることが窺える。

【参考書籍】

通信地政学2030 Google・Amazonがインフラをのみ込む日

中国政府は抗議を入れているわけだが、そんなことは知ったこっちゃないし、EU側から見ればそもそも今回のロシアのウクライナ侵攻の際に、ロシアべったりな姿勢を見せてしまったがためにお前は敵国なのねと判断された時点で、いまさらそんな抗議入れてきたところでお門違いだし、顧客に向かって何楯突いてきてんのとにべもない態度しか取ってくれないのは当然の話である。

こうしたことを考えれば、中国企業が排除された分は先進国企業がこれまで奪われてきた分のビジネスを再獲得することになることは必然だろうと思われる。
そうした中で日本企業で恩恵があるのはどこだろうと考えると、上記参考書籍でも言及されているが、やはり通信インフラ関連でいうと、日本企業だとまず思いつくのはやはりNECである。
実際にNECの株価は上昇傾向で推移しているところを見ると、この中国企業排除による漁夫の利を日本企業が拾い始めてることが期待された値動きとなっていることはなんとなく感じるところである。

【NECの株価チャート】
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このように中国企業が特定分野のビジネスから排除されることによって利益を得られる企業はどこなのかと考えていくと、上手い具合に投資候補になる銘柄が見つかりそうな気がするし、その恩恵は主に日米欧の3地域の企業の誰かが利益を得ると考えて銘柄探しをすると良いように思う。

この中国企業に奪われていた仕事を取り返すという流れはフラット化が終焉しブロック化する世界では当面続く流れであり、下記概念を基に様々な投資アイデアをひねり出したいと思う。

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