村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2023年05月

王道テーマ以外の投資関連書籍が出版される予定ができると相場は曲がる


2030年すべてが加速する未来に備える投資法

KADOKAWAとプレジデント社から投資書籍が販売されると曲がる。

自分は色々な投資関連書籍や経済書籍を読んでいるが、その中で上記リンクの書籍が個人的には衝撃であった。
それは内容が衝撃的であったからではない。
上記書籍は2020~2021年に大流行りした米国・中国新興銘柄バブルのテーマに沿ったビジネスがこれから大活躍すると豪語している内容であった。
そしてこれが2022年1月に発売されている。
つまり出版計画されたところらへんで、この書籍で言及されている銘柄の株価はドピークを迎え、そして発売したころはその崩壊のど真ん中にいて、この書籍の内容を鵜呑みにして投資したら多額の損失を被るといった話である。

こうした逆神的な書籍を時々見かけるが、どうやったらこういう事象に気づけるのだろうか?
個人的に注意したいのは、どこの出版社が発売している書籍なのかというところにありそうと思う。
例えばこれが日経や東洋経済とかだと、まだぎりぎり救いようがある。
なぜかと言えば、彼らは経済関連情報を主として扱っており、出版元もちゃんとした調査機関であったり、当事者であったりするため、まだ一般に認知される前から技術的な解説をしてくれる書籍だったりするため、逆に相場の手がかりになったりする。

一方で、駄目なのはこうした経済関連情報を主として来ていない出版社からの投資書籍が出版されるケースである。
最近だとその筆頭格はKADOKAWAとプレジデント社である。
どちらもまともに経済情報や相場がわかっていない編集者が、多くの人が気づいて人気沸騰なネタに基づいて何を出版するか決めるため、出版が決まったところがそのテーマのドピークであったりする。
そして出版する頃には既にそのネタが終了して相場が崩壊している状況で出版されて、低評価が付きまくるという構図になる。
KADOKAWAは単純に編集者の経済に対するセンスのなさというのがあるが、プレジデント社はメイン読者層が低収入層であるため、下手に相場に取り組んでいる人もいて相場ドピークで破産するような投資ポートフォリオ組んじゃう人に合わせているのでより厄介だったりする。

 今回ブログ記事の最初にリンクを貼ったプレジデント社から出ている書籍は2022年1月に発売されたものだが、ものの見事にこうしたまだ金になるか不明・あるいは絶対に金にならない新ビジネスに取り組んでいる新興銘柄バブルの相場が崩壊しているど真ん中での発売となった。

その他、KADOKAWAから発行された悪名高き風〇氏の悪魔的投資リターン(棒)が得られるレバナス投資書籍について、本人が「書籍販売が決定しました!」とツイッターでうきうきにつぶやいたところがレバナスのドピークで、結局発売した時はレバナス信者全員が資産の半分を失った段階であったことは記憶に新しい。

【参考書籍】

米国株「レバナス」投資 月1万円の積み立てから狙う“悪魔的リターン”

米国株積み立て投資ぐらいの内容だと、投資の中では王道中の王道ということであまり曲がらないのだが、こうした特殊なテーマの書籍刊行が予定された段階で、その相場テーマは既に旬が終わっており、危険であることに気づくべきであり、特にKADOKAWA・プレジデント社・幻冬舎あたりから出てきた時はかなり危険なんではないかと考えるべきだろう。

ちなみに、KADOKAWAからはこれまで相場暴落でナスダックショートが大正義と豪語してきたYoutuberが8月に投資書籍を発売すると言っているので、このショートのテーマが曲がり続ける可能性は相応に高いだろうと思われる。

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政府支援なし・人員削減なしで両手両足縛られる形で沈む中国IT企業

アリババ、1.5万人を今年採用すると発表-人員削減報道を否定

こんなん株価上昇なんて無理に決まっている。

5/25の日本時間深夜頃に上記アリババが人員削減報道を否定して、今年1.5万人を採用しますと発表した報道を見て、これまで中国テック株への投資について否定的だったが、この報道を見る限り中国IT企業がもはや投資対象候補にもならないことを意味しているなと絶望感を感じた。

それは昨今の米国IT企業の株価上昇は何が一番の要因だったか思いだしてもらえればすぐわかる。
足下の米国IT企業の株価上昇はリストラによるコスト削減を発火点としており、景気が鈍化する中でリストラをすることは景気悪化度合いが大きい国では必須である。
その中でも特に足元で景気状況が最悪なのが中国であり、この辺は下記を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
これから中国が長いデフレに苦しむ理由

デフレが深刻化していく中では、とにかくコストカットは企業の業績立て直しでは最重要項目である。
そのためこれまで中国IT企業関連のニュースではリストラを何人するかといった報道が常々流れていた。
しかし、昨日は日本時間24時頃にアリババがこれまでの人員削減報道を否定して、1.5万人採用しますと発表したわけである。
これを境に、米国上場中国テック株は一気に雪崩を打つ形で下落してしまった。

【CQQQの株価チャート】
タイトルなし

なぜこのような事態になったかというと、普通に考えれば若年層の失業率の高さ・大卒の無職者が多すぎて社会問題になり始めている中、中国共産党から「リストラとかふざけんな!中国のためにきっちり若者を採用しろ!」と命令を受けて、これまで計画していたリストラ策をひっくり返された挙句、無駄な余剰人員を抱えることになってしまったということである。
ようは、この発表を受けて市場は「業績立て直しに必要なリストラを中国共産党によって無効化されるどころか余計な人員も抱え込む必要にまで迫られた」と情報を受け止め、共同富裕の名の下に引き続き中国共産党によって政治的目標達成のために好き勝手に利益を収奪されているということが明らかになったのである。

つまり、株価にとって重要かつ根源的なものである利益を増加させるための努力を中国共産党によって阻害されているのである。
しかも、さらに言えば先ほどの過去参考記事にあった通り、個別企業の活動を阻害しているだけでなく、マクロ経済においてもでたらめな経済政策を行っているがために、さらに追い打ちをかけるように中国企業は追い詰められている形になっている。

このように助け船がないどころか、泥船を沈められる形で妨害されており、これでは下記過去参考記事に書いてある通り、株価が底を打つための人間の努力という力を発揮することはできない。

【過去参考記事】
なぜ株価は傍から見れば最悪な経済状況・タイミングで底打ちするのか

こうしたことをきっちり観察できていれば、中国テック株に投資するなんてことは自殺行為以外の何物でもないことがすぐわかると思う。

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米国債務上限引き上げが政治ショーになった歴史的背景と今後の考え方

米債務上限合意で円安・株高継続か リスク志向強まる

単なる政治ショーの終了。

日曜日の日本時間午前の段階でこれまで相場の重しになっていた米国債務上限について、原則合意の方向で5/31に妥結するという報道が出てきて、金曜日時点で米国株大幅高だったのに、月曜日になってさらに先物ベースで上昇する形になった(月曜日は米国株休場)。
今回のドタバタ騒ぎを見ると、そもそも債務上限問題ってなんでここ数年クローズアップされているのか・今後債務上限で合意できないというケースが生じる可能性があるのかというのを、過去の経緯からきちんと検証しておく必要性があると思うので、今回はそれについてまとめていきたい。

そもそもこの米国債務上限問題は、1917年に債務上限を定める法律が制定され、新しく債務を増やす際に議会を通す必要性があるという形になって以降は、1960年以降は過去80回にわたって引き上げを繰り返してきた伝統行事的な側面がある。

しかし、この債務上限問題については2011年以降に度々相場を揺るがすトピックスとして挙がってきている。
その背景としては、リーマンショックを機会に政府債務・税金という部分が政治的な問題に発展していることに起因している。
リーマンショックの時は巨額の税金を使って巨額報酬をむさぼってきた金融機関を救済してきたということもあり、この税金の使い方についてティーパーティー運動という政治問題に発展する運動が2009年より勃発した。

【参考ページ】

ティーパーティー運動 - Wikipedia




リーマンショック以前はこうした運動が起きていなかったことから、債務上限の際には特段政治ショーをする必要性がなく、債務上限引き上げについて特段問題は起きてこなかった。
しかし、リーマンショック以降はティーパーティー運動を発端として、債務上限引き上げ時には野党が債務上限引き上げに抵抗を見せることによって政治的パフォーマンスを見せて票を稼ぐという手段が有効となってしまった。

このことが2011年以降債務上限期限が近付くにつれどたばた騒ぎが米国で起きる原因である。
特に、小さな政府をめざす共和党が野党の時は民主党の拡張的な財政政策に対して期限ぎりぎりまで反抗して、支持者にアピールするというインセンティブが高く、今回も御多分にもれずそうした流れとなった。

ただし、2011年に変に政治ショーとして見せてしまったことからS&Pが米国債を格下げする米国格下げショックなるものが生じてしまったことは皆が知るところである。
この時は債務上限が政治問題に発展した初めてのケースということもあり、格付け会社と米国政府間でのコミュニケーションが十分でなかったと考えることができるだろう。
今回の債務上限問題でも多くの個人投資家が再び同様なことが起こるのではないかと危惧しているのはツイッターを見れば一目瞭然であった。
しかし、過去に犯した過ちをもう一度無防備に起こすほど米国政治家は馬鹿ではない。
想像するに、おそらく債務上限が近付いてきた時は格付け会社とコミュニケーションを取り、いつまでに債務上限を引き上げなければいけないかというデッドラインについてコミュニケーションを取っているはずである。

こうしたことを考慮すれば債務上限問題については政治ショーの範疇を超えることは今のところなく、VARなどで損切ラインがシビアな機関投資家ならともかく、単月どころか年単位で投資パフォーマンスを気にする必要性がない個人投資家がこんなしょうもない材料を不安がっていてどうすんだという話である。
特に一般人が心配するレベルである内容を米国政治家がみすみす愚行を犯すという考え方自体が、さすがに米国政治家を見くびりすぎという話だろう。
びびって利益確定したり、買いそびれたり、はたまた間違えてショートを入れた人などは目の前に転がっていた押し目を拾い損ねたと評価できるだろう。

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ごく一部銘柄が相場をけん引するのは相場末期だけではない



一部の銘柄が相場を引っ張るのは、相場末期だけではない。

エヌビディア決算の号砲からの相場押し上げが続いているが、ここにきて論調として
「ごく一部の銘柄しか上昇しておらず、その銘柄が売り込まれれば再び相場は暴落する」
と言う人が非常に多くなったように思う。
確かに足元の相場はかなりセクターの偏りや銘柄の偏りがある形で上昇していることは確かである。
しかし、投資家のポジション構築手順を考えると、それだけを理由に相場は再び暴落する可能性が先行き高いと論じることは間違っているのではないかと個人的には考えている。
それを今回まとめてみたいと思う。

相場がどん底にある中で、仮にロングオンリーで年間の投資達成ノルマがあり、かつ手元に豊富に資金がある機関投資家を想像した時に、一体どういうポジションを構築するだろうか?
相場が非常に暗いということもあり、大きいリターンが狙える一方で銘柄を間違えると一発で死ぬみたいな状況の中にいるならば、普通に考えれば絶対この銘柄なら間違いないという銘柄を中心にポジションを組むだろう。
一方で、こうしたド底値狙いでガッツのある投資家以外は様子見姿勢的なプレーヤーが多いことも、ここもとの相場周りの様子を見ればわかるように思う。
つまり、相場初期というのはごく一部のプレーヤーがこの銘柄ならここからなら多少下がってもいいから買ってもいいという信念に基づいて投資行動を起こすので、ごく一部の銘柄しか上昇していかないのである。

そして段々と相場がどん底から回復していき、経済回復についても自信を持ち始められるような材料が出てくると、その時点では先導株が高くなっているわけなので、段々と出遅れ・割安銘柄に資金はシフトしていく。
また、それまで様子見を決め込んでいた人達も段々とポジションをそろそろ取るべきと考えていく割合が増えていく。
こうなっていくことによってこれまでごく一部の銘柄が上昇する局面から広範な銘柄の株価上昇へシフトしていくのである。

広範な銘柄が上昇していくと、全ての銘柄が徐々に割高になっていき、段々と投資家の投資行動は先鋭化していく。
単なる出遅れ・割安ではなく、誰もこれまでまともな投資判断をすれば手をつけてこなかったような銘柄に資金を集中させるために、時にクズ銘柄に信じられないような資金が集中して、高騰劇を見せていくことになる。

しかし、こうした投資行動が過熱していく中で、徐々に金融当局や中央銀行による景気抑制策が発動されていく中でクズ銘柄が死んでいき、相場全体も上昇する銘柄が減少していく。
そして最後には相場初期に上昇していた有望銘柄が最後の頼みの綱として注目され、そこが最後の一上げした後に全銘柄が下落する流れになる。

こうした流れになるというのは下記書籍に記載があるため、興味のある方は読んでもらいたい。

【参考書籍】

石井独眼流実戦録―かぶと町攻防四十年

つまり、ごく一部の銘柄が上昇するのは2パターンあり、相場がド底から脱する初期と、相場がド天井から下落する末期である。
なので、今ごく一部の銘柄しか上がっていないので、これは相場はいずれ暴落する合図だと思ってみていたら、最終的に広範な銘柄に株価上昇がシフトしていき、機会損失になる。

以上から現在の相場をド底の初期と捉えるか天井の末期と考えるかによって正解となる投資態度は大きく異なるが、間違えると手ひどい目に合うため、本当に自分の考えている局面はどちらかを精査すべきだろうと思う。
なお当ブログは相場をド底初期であることを前提としてお祈りしているので、最終的に読者はどちらのスタンスを取るべきかは読者次第ということにしたい。

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「お金2.0」を読んでわかる、後から見れば傲慢であった新興銘柄の経営姿勢

【参考書籍】

お金2.0 新しい経済のルールと生き方

よくよく考えると投資家の金で遊ぶなという話。

図書館で新しく勉強するために色々本を漁っていたら、ひと昔前に話題になったメタップス元CEO(出版当時は現CEO)が出版して話題になっていた書籍が図書館にあったので、借りてパラパラと呼んでいた。

全体として歴史的な観点みたいな随分高尚なことを書いてたりするが、歴史的事実から自分のビジネスを語る際に非常に自分の都合のいいように解釈していたり、そもそも図で「有機的なシステム」と言いながら永久機関の図をのっけたりなど、かなり粗がきつい書籍であるといった感想が正直なところだ。


そして読み進めていく中で、この書籍の著者の本当に言いたいところ・気持ちというのが垣間見えたのが、以下の小見出し文章タイトルである。

・「お金」のためではなく「価値」を上げるために働く 
・お金にならなかったテクノロジーに膨大なお金が流れ込む(今まで「儲からない」という理由で投資を受けられなかった最先端のテクノロジーへの投資加速)

ここらへんは普通に考えると普通の株式投資家から言わせれば噴飯ものだろう。
株式投資時代は今持っているお金を投じることによって、その後にプラスのリターンで返してくれることを期待して行うシステムである。
それに対して、メタップスCEOは「お金ではなく、違う尺度で評価してね」「今はうちは儲からないけど、そういうブームだからねテヘッ」みたいないい加減さ・IPOで金を投じた人達を小馬鹿にしたような言説がちらほら見えている。
適切なリターン(お金)で返す気がないなら、上場すべきではないし、上場してお金を得たからこういう書籍を得意気満々で出版するというのも、株主投資家から見れば狂気の沙汰ではないという評価ができるだろう。

そして結局その後どうなっただろうか?
日本株はメタップスIPO当時はひふみが主導した中小型株バブル相場で、ド赤字でIPOで無理やりイグジットしたが、ひふみピークと同時に株価はひたすら下落。

【メタップスの株価チャート】
タイトルなし


コロナ禍の過剰流動性を背景に一時的には株価回復が見えたものの、その後の世界的な金融引き締めを背景に、負債コストが急上昇する中で、今現在利益を出していないに数年内に利益を出す見込みもない企業については鼻紙ティッシュほどの価値もないとして株価はゴミクズのような動きをしていき、メタップスはその代表格的な動きとなった。
そして最終的には現CEOによるMBOで、上場して以降に投資した人はほぼ全員損失を被って終了となった。

このようにまともなリターンを出せないくせに、大言壮語だけ立派で、かつアフターコロナでの金融引き締めが始まる前までの過剰流動性相場で上場できただけで、その後は会社IRリリースや出版物でお金を稼いで投資家に返すという意識が希薄だとしか思えない言説をする企業に対して、自分の大事なお金を預けてしまうと好き勝手使われて終了という形になる良い例・かつ投資してしまった人達にとっては高い勉強台になったと思う。

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