村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2023年02月

ホームデポの決算から考える米国住宅不動産の確かさ

米ホーム・デポ株が大幅安、DIY需要鈍化で通期減益を見込む

米国住宅不動産について、とんでも悲観論者の言説は今のところ信用に足るデータはない。

一部悲観論者は、ここもとの住宅ローン金利の高騰・住宅販売の急落・住宅価格の下落を背景に米国経済崩壊みたいな言説や動画を嬉々として恥も外聞もなくリリースしたりしている。
確かに直近の中古住宅販売はリーマンショック後最低水準レベルぐらいまで落ちているし、現在の住宅ローン金利は30年7%みたいな数値は厳しそうみたいな印象を受けることは確かである。

しかし米国DIY小売りの大手であるホームデポの決算を聞くと、どうやら様相が異なることがわかる。
興味のある方はホームデポの直近決算カンファレンスを聞いてもらいたい。

【ホームデポIRページ】
https://ir.homedepot.com/

ホームデポの決算カンファレンスでは米国の住宅保有者のうち、現在90%近くは借金がないか、5%以下の住宅ローン金利で買っている
上に家計状態も良好ということである。
つまり、現在の米国住宅保有者はサブプライムショックの時のように住宅価格上昇を前提に返済する当てのない借入で住宅を購入しているわけではないのである。
サブプライムショックの時に起こった現象と現在の米国住宅保有者の現状は、その姿は大きく異なることがわかるし、そのような状態で差し押さえをくらって、自宅を強制売却を食らうという人も極めて少ないのではないかという想像はさほど難しくない。

確かに米国では住宅は一つの金融資産と見做されている節があるものの、かといって住宅価格が少しでも下がりそうだからといって、現在生活の基盤としている家を売却するだろうかというと答えはノーだろう。
基本的に家が投げ売られる時は、借金を返済できなくなり、差し押さえられる時である。
そして市場に大量に誰もキャッチできない在庫が出現することによって現金化できなくなることによってはじめてショックが発生する。
上記考え方は下記過去参考記事を見てもらいたい。

【過去参考記事】
 景気のハードランディングはどのように発生するのか?米国景気はハードランディングするのか?

もちろん住宅ローン金利の高さで当面需要は弱い・価格も調整がかかるというのはそうなのだが、言ってみればここからサブプライムの時のようになし崩しに状況が悪化するという見込みを立てることは、データから考える上では難しいということである。
以上から今のところサブプライム・リーマンショックのように住宅不動産からなにか強烈なシステミックリスクが起こると考えることは、ほぼ妄想に近いといって過言ではないと思っている。

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グロース株が冴えず、日本高配当利回り株に資金が集中

高配当利回り株物色の持続性

今一度今年のメインストリームの確認。

足元の日本の高配当利回り株ブームについて、以前のブログ記事で下記の通り記載していた通りである。

【過去参考記事】

日本の高配当利回り株がひたすら買われている理由


この流れについては未だ考えは変わっていない、いやむしろ個人的にはさらに確信度が高まっている。
それはなぜかというと、やはり日本大型グロース株がどうしても買う理由が見当たらないというところにある。

現状の日本大型グロース株の現状について説明したい。
基本的に日本のグロース株銘柄というのは海外での売上高比率が比較的高い銘柄が多いわけで、その中でも

問題は現在の景気先行きはどうなのかという話である。
先進各国で長引くインフレと高金利政策について、先行きはハードランディングなのかソフトランディングなのかノーランディングなのか、みんな喧々諤々と議論をしているところであるが、景気についてこのまますんなり上り調子になるという議論は基本的にあまりない。
現在みんなの景気目線は基本的に「どれだけ弱くなるのか」ということを念頭に置かれている。
そのような環境下で、日本大型グロース株のEPSはどうなるのだろうか?
簡単な話でグロース株のEPSは伸びない。
伸びるとしても、少なくとも米国のグロース銘柄のEPSが伸び始めて、海外経済の堅調さが確かになるという観測が出てからであろう。
そして、実際に特に外国人の売買比率が高いグロース株価が上昇するには、外国人投資家が米国外にも買えるグロース株がないかと探し始めてからなので、そこから日本のグロース株の上昇は一歩遅れたタイミングになる。
EPSが伸びないから、配当や自己株買いも基本的に増加することはないわけで、そうなるとただでさえ薄いグロース株の株主還元利回りが増えないのにPER30倍とか40倍の株を買う意味とはなんなのだろうかという哲学的な問いにぶち当たってしまう。
さらに言えば、そもそもPER30倍とか40倍という値付けさえあっているのかというさらに哲学的な疑問が浮かんでしまい、PER修正さえ食らいかねない。
これが現状日本のグロース株の株価が冴えない原因である。

一方で、低PER・低PBR・高配当利回りといったバリュー株の方はどうだろうか?
確かに世界景気は鈍化傾向であるが、個人的な基本目線はハードランディングはないという目線である。

【過去参考記事】
景気のハードランディングはどのように発生するのか?米国景気はハードランディングするのか?

ハードランディングしない中で、世界はモノの供給能力が足りなくてインフレに苦しんでいるわけであり、その辺も下記過去参考記事に記載している。

【過去参考記事】
デフレからインフレへなぜ世界は大きくレジームチェンジしたのか?

モノの供給能力が根本的に足りていないということは、言ってみれば昔から行われている事業については、確かに劇的な利益上昇は見込みづらいものの、利益確保の確実さはかなり高いというわけである。
さらに言えば、日本の大型バリュー株なんてのは基本的にキャッシュフローを余らせているわけである。
ここまで考えると、場合によっては株主還元を増やしてくるのではないかという発想にたどり着く。
さらに言えば、ここにきて東証から低PBR銘柄については改革をせよという圧力も加わっている。
こういうことを考えると、配当利回り4.5%とあとはいくらかの自社株買いが加わるのであれば、実質的な株主還元利回りは少なくとも6%、高ければ7%程度ぐらいは狙えるはずである。
グロース株がEPSが伸びない・PERに下方修正圧力がかかる中で、バリュー株は伸びずとも底堅い利益と株主還元利回り6~7%という数値はかなりフリーランチっぽい気配さえ感じさせる。
グロース株の株主還元利回りが1~2%としかないのと比較すれば、非常にシンプルでわかりやすい話だ。
こうした分厚い株主還元利回りがあれば、市場参加者はこの株主還元利回りが皆が買いたくなくなる水準まで買ってもいいだろうと考えるのもそこまで難しい話ではない。
EPSが横ばいでも、PERが現状から1.5倍・PBRが現状から1.5倍・配当利回りが2/3に最終的になるという話であれば、株価は50%も上昇するのである。
これが現状起こっている日本高配当利回り株を買うロジックである。
どこまで買われるかというと、1577の日本高配当株ETFの原資産としている指数の配当利回りが現在の4.5%から3.5%まで縮小するところまで引っ張れる可能性があるのではないだろうか?

【1577のチャート】
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日銀がどうYCC撤廃をするかは、2/28以降の国債品貸料で決まる

日銀、国債の品貸料引き上げ 空売りを抑制

これがどうなるかで、日銀が先行きどうしたいのかが見えてくるはず。

日銀も総裁が植田氏になるということで、新体制の下どのような金融政策を行うのか注目されている。
そして海外勢が考えていることは金融緩和修正にどうせ追い込まれるんだから、ショートすれば勝ち確だろうということでショートしているということにある。
これに対して日銀はどのようなアンサーを出そうとしているのかをここもとの日銀の動きから考えたい。

2月で最も日銀の動きの中で注目を集めたのは上記日経新聞記事に書いてある通り、国債の品貸料の引き上げである。
これは具体的に何をしようとしているかというと、細かいところは上記日経新聞記事に丸投げしてしまうが、日銀が大量保有してしまっているために市場に流通しておらず、投資家がショートをするためには実質的に日銀から国債を借りる必要性がある。
そのためにかかるコストが引き上げられているということになる。
ただし、カレント3銘柄について0.5%に達していない場合は指値オペをしないという通達も同時に行っており、これを2/27まで続けますよと発表している。
これはようは2/27まではショートを買い戻すチャンスをやるから、2/27までにショートポジションを解消しろよという意味になる。
2/28以降はショート勢に対して日銀はショートを買い戻すための国債手当はせんぞとも発表している。

この上記対応については一部では日銀のショート勢に対する最終通告とも見られている。
ショートについては外国人だけでなく、地方債や社債発行の際にカバーが必要な日本の業者も含まれているため、いきなりぶっ殺しにかかるようなムーブをすると、金融システミックリスクとなってしまうため、日銀はそれは避けたいと考えている。
そのため、この2月中旬から始めたカレント3銘柄に対する特別措置を2/27まで行うことによって、国内業者に対しては2/28になるまでにショートポジション解消しておけよと実質的に通告しているわけである。
2/28以降になって国内業者のポジションがはけたら、じゃあ品貸料・レポコストをもっと引き上げて、ショート勢がポジション維持したり買い戻そうと思ったらめちゃくちゃバカ高いコストを払わざるを得なくなるように追い込む可能性がある。

この品貸料・レポコスト引き上げが2/28以降どうなるか現状不明だが、これをどれだけ引き上げてくるかによって日銀のYCC撤廃の本気度がうかがえる。
もし大幅な引き上げをしてきた場合は、本気でYCC撤廃のために邪魔なショート勢を短期間で一気に全部綺麗にしてからYCC撤廃をして、YCC撤廃をスムーズに実施しようという意図があるため、数ヵ月内にYCC撤廃に着手することになる。
逆に2/28以降も対応が中途半端だと、まだ日銀は決めあぐねているということで、YCC撤廃はまだ先ぐらいの形になるだろう。

いずれにせよ、2/28以降の日銀のこのカレント3銘柄に関する対応でYCC撤廃のために日銀がショート勢一掃を狙っているかどうかを占う重要なものになるため要注目である。
一応JGBマーケットは既にこの雰囲気を国内勢はかぎ取っているのか、弱気な人は5年以下のYCC撤廃しようがしまいが関係ないところにポジションを寄せて、逆に強気な人は20年以降の超長期ゾーンのポジションを取りに行く流れになっており、既にJGBマーケットの不安定さは5~15年ゾーンだけとなっているので、実は既に緊張感はピークを越えていて、あとは国内のJGB陰湿村は日銀が海外ショート勢をスクイーズするの待ちなのではないかと思われる。

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リクルートの決算説明から考える米国雇用の先行き

https://recruit-holdings.com/ja/ir/
↑リクルートHDのIRページ

米国雇用統計は確かに中々減らないものの、金利を強烈に引き上げるほど強くないこともリクルートHDの決算を見る限り確かだろう。

足元で米国金利が高水準にあるのは、米国雇用統計が堅調ということが理由となっている。

【米国債10年金利のチャート】
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しかし、その考え方は本当に合っているのだろうかは検証していく必要性がある。
そこで、多くの市場参加者がヒントとして見ているリクルートの決算説明会内容を確認したい。
なぜ市場参加者がリクルートの決算説明会を確認しているかというと、リクルートは米国の就職あっせん会社大手のIndeedを子会社として持っており、直接的に米国雇用統計の現状を知る企業だからである。

決算説明会でもこのIndeedから見た米国雇用状況についての 質問が数多く殺到していたので、その内容を確認していきたい。

まず雇用の状況についてはピークを越えて平準化しつつあるという見解が述べられている。

【決算説明会書き起こし抜粋】
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加えて確かに求人件数自体はしっかりしているものの、有料求人広告数はマイナス33%と激しいマイナスになっているとのことだ。
これはレイオフが盛んに報道されていて、中小企業が強く景気後退懸念を感じている中、予算をかけてまで雇用はしないという話になっており、確かに統計上はまだ強く見えるが、明らかに賃金上昇させるような強さでないことは明白化しつつある。

次の書き起こしも確認していきたい。

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リクルートはJOLTS求人を見ながら見通しを述べているわけだが、まず今のJOLTS求人数1100万件という数値は持続はしないだろうとみているとのことだ。
過去の書き起こしなどを見ると、2~3年かけて700万件といった過去の水準に回帰するという見方がメインシナリオのようである。
そういった意味では何か金融ショック的なことが起こらない限りにおいては、労働の担い手である移民が少ない中で人手不足感は長期化しそうだという話を述べている。

以上から考えることは確かに米国雇用統計の雇用者数だけ見れば堅調なことは確かな一方で、高い給料を払ってまで積極的に雇う気はない程度には冷え込んできており、現状の金融引き締め水準で時間はかかるものの、雇用水準の正常化パスはかなり見えてきているという見解になるのだと思う。
いわゆるソフトランディングシナリオである。

この決算結果を受けてリクルートの株価は極めて軟調推移になっている。

【リクルートHDの株価チャート】
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つまり米国雇用統計については確かにダウンサイドは少ないものの、少なくともアップサイドもないと見られていると考えるのが自然だと思う。
もし、本当にFRBがさらに金融引き締めを市場がびっくりするレベルでやらなければいけないとなれば、現段階でこの株価の動き方はやや違和感があるように思う。
米国10年債金利についても一部でテクニカル分析だけで5%を超えていくような動きをするでしょうというてきとーぶっこいている投資インフルエンサーみたいなのがいるが、これを見る限りそうはならんやろという結論でよいと思うし、債券金利をテクニカルだけで話すのはまず間違っているという話については下記を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
債券金利をテクニカル分析だけで判断することにはほとんど意味がない理由

基本的には経済はソフトランディングに向けて動いているという前提で引き続き問題ないようには思うが、この辺は各々がどうなるか考えていってほしい。

【過去参考記事】
景気のハードランディングはどのように発生するのか?米国景気はハードランディングするのか?


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無難な日銀総裁所信表明で、日本高配当株の投資妙味に変更なし

【全文】日銀次期総裁候補・植田和男氏 国会で所信表明 日銀の金融政策「適切」

サプライズなしのテンプレ所信表明。

注目されていた新日銀総裁となる予定である植田氏の所信表明が行われていたので、念のためYoutubeでリアルタイムで見ながら、何か変なこと言わないかどうかを確認していた。

上記のリンク記事でも全文が載っているが、一応メイントピックだけ抜粋したい。
ーーーーーーーーー
金融政策は常に先行き予想に基づいて行われる必要性がある。
物価上昇率については、確かに2%を超える4%ではあるものの、メインはコストプッシュインフレという外的要因である。
(ようはコアは未だ2%以下であり、不十分だということだろう)
そのため、拙速的な金融引き締めは再度デフレを招くことになる可能性があることに言及。
現在大切なのは中小企業などをしっかりと金融緩和で支えていくことが重要だと考えている。
現在行っている日銀の金融緩和政策は適切。
足元で日本経済はコロナ禍から回復し、需給ギャップも引き締まって生きているものの、未だ予断は許さない動きである。
政府とも密接に連携していきながら、金融システムの安定性を鑑みながら金融政策を決定していく所存。
ーーーーーーーーー

結局今回の所信表明は極めてテンプレ的な内容しか述べられず、何か金融政策のフレームワークを劇的に変更する可能性は大幅に低下したといるべきだろう。
副作用しか起きていないYCC撤廃の可能性以上のものは現状織り込むことが難しいとみるのが妥当だろう。
まずマイナス金利解除や量的金融緩和の拙速な規模縮小自体の可能性は外国人投資家が思うようになることは基本的にないだろう。
YCC撤廃をするにあたっても、おそらく何かしらの手当を打ち出してくる可能性もあり、10年金利以外の金利が大幅に変な形で跳ねる可能性は低いように思う。
少なくとも20年以降の超長期ゾーンについてはOIS金利が国債金利を下回っていることから、20年以降ゾーンについては緊張感は既になくなっていると考えてもよいだろうと思う。
残っている緊張感は10年より手前側のOIS金利と10年金利の居所、しかもそこももはやあと25bpsあるかないか程度という目線が立ちつつある中で、おそらく5年より手前の金利と20年以降の超長期金利はもはやボラティリティ上昇余地は少ないと見るのが妥当であり、個人的に今年の日本株戦略の中核をなす高配当株戦略については特段変更する必要性はないだろうと感じた。

【過去参考記事】

日本の高配当利回り株がひたすら買われている理由


【1577(日本高配当株ETF)のチャート】
タイトルなし


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