村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2022年12月

来年の経済予想(新興国)

前回のブログに続いて、来年の予想シリーズで新興国バージョンをまとめてみたい。

①中国は低成長に甘んじる形で低迷が継続
2021-2022年はこのブログではエバーグランデがデフォルトしてからずっと書き続けているが、まさに中国リスクが大爆発した年であった。
約1年半近くにわたって外国人投資家を裏切り続けた上に、科学合理性のないゼロコロナ政策を続ける習近平独裁政権爆誕で、株の外国人投資家はもう二度と投資するかと完全に見限ったことに加えて、製造業の直接投資においても、もうこれ以上中国は頼れないということで中国への投資を止めてインドに振り向け始めているなど新しい動きが見え始めている。
さらに不動産市場の崩壊もいまだ改善目処が立っていないことから総合的に見ると来年も中国は底割れせずともさっぱりしない状況が続くだろう。
この辺の考え方は下記を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
中国の習近平独裁による集団指導制の崩壊と中国株式市場に与える悪影響

②資源も製造業サプライチェーンも持たないドベ新興国はデフォルト連発の危機
一口に新興国といっても上と下の差は非常に大きい。
資源を持っているとか製造業サプライチェーン上重要な国というのは、新興国の中でも非常に優良な部類に入る一方で、数としては大半の新興国は輸出するものもない・観光資源頼みみたいな状態で、出稼ぎ労働者の送金とツアーリズム収入が外貨収入の全てみたいな国は多い。
さらに言えば内戦ばっかりでツアーリズム収入さえなくて、IMFや中国からの融通資金頼みみたいな国(パキスタン)などもいる。
こうした国は以前の低金利時代にドルで国債を出して借りまくっていたが、完全にこの戦略は破綻しており、今後デフォルトが相次ぐ可能性がある。
ただし、世界経済全体から見ると非常に規模が小さい国ばかりなので、該当国のドル債以外については影響は限定的だろう。

③資源を持っている新興国は比較的良い立ち位置
これまで①と②では悪い部類を述べてきたが、一方で資源を持っている国はロシアを除けば比較的その立ち位置は現在良好だ。
理由としては資源バブルが2014年に崩壊して以降、資源は7年間に渡って価格低迷し、かなりドル建てソブリン債は揺れ続けたが、今回は全面的な資源高ということもあり外貨収入が潤っている。
そのため経常収支が健全な数値になっており、足下の米国金融引き締めでも特段信用懸念が生じているような兆候はない。
中国株が触れないので資源国にポジションを振りに行っている投資家は相当いるだろう。

④製造業サプライチェーンを持つ新興国は米国景気の安定化まで耐え忍ぶ展開 
微妙な立ち位置なのが資源はないけど製造業サプライチェーン上にいる国で、主にアジア各国がこれに該当する。
具体的な国名を挙げていくと韓国・台湾・タイ・インドがこれにあてはまる。
これらは資源は輸入する立場にあるので、足下の資源高が苦しいのと、輸出先の米国・中国が景気鈍化が輸入量が減少していることから輸出量の減少に伴う外貨収入源が生じている。
米国の景気鈍化さえ止まれば先行き期待はあるのだが、それまではしばらく我慢せざるを得ない時間が続きそうだ。

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YCC変更に関して日銀は金融引き締めではないことを強調

日銀が緩和縮小、黒田総裁「市場機能の改善はかる」

このタイミングっすかー。

年末でもうおとそ気分になりかけていたところで、これまで当ブログでも日銀のYCCの修正懸念については書いてきたが、市場参加者が想定しているよりずっと早いタイミングで今回YCCの変動幅を0.5%に広げるという内容を決定した。

【過去参考記事】

日銀はどうイールドカーブコントロールを修正するか


発表当初は完全にサプライズであったため、各種市場はぐっちゃぐちゃになっていたわけだが、とにかく記者会見を見ないことには何をどこまで日銀は意図しているのかわからないので、記者会見を見てから色々判断しようと思い、記者会見を見ていた。

会見を見る限りでは、今回の体裁としては

・金融緩和姿勢には変更はしていない
・YCC変更についてはあくまで市場流動性の回復を狙ったもので、金融引き締めを意図したものではない
・買い入れ目標金額については変更なし

というスタンスを取った。

特に10年国債の歪みのせいで、10年程度の様々な金融商品(社債とかそういったもの)が発行しづらくなっていたということから、そこに最大限配慮した形で、決して金融引き締めではないということをとにかく強調したいという記者会見内容となった。
ということで、かなり「事実上の利上げ」というニュアンスも捉えようだなという内容であり、単に金融政策について長い金利のところへの影響を金利水準じゃなくてQEに戻すというだけのように見え、実際に本当の意味での政策金利引き上げによる利上げというのはまだはるか遠くとしか思えない内容であった。
ただ、実際に10年国債の位置はこれまでの0.25%から0.5%に張り付く形になりそうという形であることは、それだけ10年での資金調達コストは上昇するので、そこの分の悪影響は多少ありうるかもしれないが、地味に国債買い入れ金額を増やしてきていることもあり、実はYCC強化なんじゃないかという意見もあるぐらいである。

問題は今回多くの市場参加者がYCC変更するなら黒田総裁辞めてからと思っていたのが、いきなりこのタイミングということもあり、否が応でもまだこのYCCや資産買い入れペースについて修正がかかる余地を考えざるを得ない。
少なくともYCC10年の変動幅が0.75%ぐらいまで拡大する可能性はスイスの国債金利の居所を見るとないとは言い切れないところである。(いつかは不明だし、市場動向次第だが)

そのことを考えれば以前のブログでドル円のレンジについて上値144円奪回は無理と言っていたのが、137円奪回は無理というところまで圧迫されてしまった。
そのためドル円140円以上でフルレバロングみたいな人はもう追証待ったなしだし、もう基本レンジが130円前後ぐらいに定着しそうなことを前提にドル円為替は考えていかなければいけなく、まあドル円全力ロングで大損した人は藤巻健史に石でもぶつければいいんではないかなと思う。

ちなみにツイッターでは「事実上の利上げ」という言葉に踊らされて住宅ローンの変動金利がすぐ上がるみたいな間違った言説も見られているが、住宅ローンの変動金利は政策金利によって動く短期プライムレートに変動しているため、未だYCCが残っている中で政策金利なんて上げられるわけもなく、特段変動金利で借り入れている人になにか影響が出ることはない。

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投資家に対して非常に不誠実な内容であったECB金融政策決定会合

ECB、利上げ幅0.5%に減速 来年3月から資産圧縮

空気読めてねえええ。

FRBは比較的想定範囲内の金融政策変更であったが、ECBは随分空気よめてないなあという政策決定会合内容となった。

FRBの時は、以前にブログで記載した通りインフレ率見通し上方修正でピーク金利が5.1%中央値とドットチャートを見せたものの、債券市場は誤差としか認識しなかった。
また米国では来年は国債発行量が減少するということも中長期債にとっては安心材料となり、そこまで変動しなかった。

一方で、ECBは利上げ幅自体は市場予想通り50bpsへ引き下げられたものの、先行きについてはインフレ率見通し上方修正で先行きについてまだ50bps以上利上げを複数回する可能性を示唆した。
もう一つ問題としてはここにきてQTの再投資減速幅について150億ユーロ/月と市場予想の100~110億ユーロ/月と市場予想以上の再投資減速幅を示してきた。
さらにいうと、欧州ではエネルギー高騰に対する補助金支出によって、来年は国債増発が予想されている。
この国債増発予想+予想以上のAPP再投資減速+金利引き上げ幅上方修正が直接的に欧州国債の金利上昇の引き金となり、債券市場に冷や水をぶっかける流れとなり、これがその他リスク資産にも波及してしまったといえる。

さらに言うと、FRBは先行き景気見通しについてはマイナス成長は2023年1Qだけで2Qからは成長回帰と見ている一方で失業率についてはそこそこ上昇する見通しをきちんと示した。
一方でECBは失業率上昇もわずか・リセッションは軽微かつ短期間で終わると米国と比べてそもそもデマンドベースインフレじゃなくてエネルギー価格高騰という外的ショック初のインフレであったことを考えれば、どういう分析したらそういう判断になるんだよという話になっている。
昨今でも化学会社が先進国では欧州での需要減少幅が大きいという話を決算説明会でも複数社で確認できていることから、米国より強い経済見通し自体がどうもきちんとした分析がなされていないのではないかという疑念を投資家にもたれた。

まあそもそも論で、どうもECBはどこに主眼を置きたいのかはっきりしていないことも問題だ。
人によってはまるで為替安を食い止めたいかのような発言をするし、かと思えばすでに資源価格ピークアウトやサプライチェーンボトルネックの緩和でPPIも下がってきているはずなのにまだ強気の利上げ路線を主張する人が多かったりと判然としないことが、やはり複数国のインフレ事情が異なる国が集まってできた中央銀行組織の欠陥と言わざるを得ないだろう。

総合的に見れば、非常に投資家に対して不誠実と捉えかねられない金融政策決定会合ということで、これが相場全体の足を引っ張っているとして、以前にも相場の癌はFRBよりECBにありそうと書いた記憶があるが、これが当てはまってしまった内容といえるだろうと思う。

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金利環境激変で岐路に立たされる欧州事業劣後債市場

Hybrid bonds pose dilemma for borrowers and debt investors

劣後債市場で一番厳しい立場にいるのは実は欧州。

以前のブログ記事で日本の劣後債市場が日銀のYCC修正懸念で芳しくないという動きをしているというニュース記事が出ていることには言及させてもらった。

【過去参考機記事】

払拭できない日銀のYCC修正観測と各種資産への影響


上記のように日本の事業劣後債についてたった50bpsの金利上昇で大騒ぎしているわけだが、日本の場合は債券投資家と企業のつながりが密接ということと、LIBORからの切り替えスキームが判然としないことから、いくらあれだからといってコールしないわけなかろうというのが現状の日本の事業劣後債市場のコンセンサスから変化していない。

よっぽど劣後債の市場として崩壊しているのは欧州であろう。
欧州では2016年ごろぐらいから低金利を背景に投資家が高利回りを求める中、そこに対してハイブリッド債で借入を行えば借入の金額に対して50%を資本算入できるので格付けを維持しながら金を借り入れられるのではないかという算段で金を借りる事業会社が増加した。
(ここでいう事業会社とは金融会社を除いている。金融会社が劣後債を発行する理由は金融規制対応で、事業会社とは全く借入理由が異なる。)

事業会社で劣後債を発行するパターンは主に2つで

1、事業環境の激変に対して、株式での調達によるさらなる株価下落を嫌気してのハイブリッド債での調達
2、事業拡大を指向するが、株式での調達で株価を落としたくないのでハイブリッド債での調達

のうちの2つである。
1で発行している事業会社はリスクオフ時に無理やり調達している傾向が強く、そのために発行時スプレッドが分厚いために、比較的現在でも再調達コストはそこまで激変しているわけではなく、比較的コールが期待できる企業が多い。
主には原油銘柄や電力会社が多い。
一方で2のパターンは主に低金利で攻めの姿勢を取っていた不動産会社であり、これは発行時もスプレッドが低く、今ではベース金利が全然変わってしまって環境が激変したことから、普通社債でさえ以前はスプレッド100bpsちょいで調達できていたのが、今では250bps以上払わないとみんな再調達できない。
なので劣後債もこれ以上の再調達コスト上昇が見込まれるわけで、不動産会社は劣後債を多く発行している企業が窮地に立たされている。
そういった中で、ドイツのオフィス不動産賃貸を中心に事業を行っているAround Townという会社が来年1月に初回コールを控えている劣後債についてコールをスキップすると明言した。
このことによって、多くの不動産会社で手元資金の維持のために劣後債のコールをスキップする可能性があるのではないかと懸念が全体に広がっており、上記記事内でも言及されている通り、不動産会社が発行した劣後債の単価は落ち続けている。

劣後債市場が新規で発行できないという状態にあたっては投資家に対して物件を売却して有利子負債を返済する資金を作りますという誠意を見せる必要性があるために、基本的に欧州での不動産市場の信用は縮小傾向で当面推移するということがうかがえる。

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日本の中古マンション市場状況(2022年11月)

http://www.reins.or.jp/library/2022.html
↑レインズデータライブラリーのアーカイブ

毎月恒例のやつです。

毎月恒例のレインズデータライブラリーで見る日本の中古マンション市場の状況について確認していきたい。

【中古マンション市場概要】

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基本的な流れは引き続き成約数は前年比ベースで二桁%のマイナスが続いているが、価格は前年比10%ちょいプラスという流れが続いている。

【成約数】
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成約数は満遍なく前年比マイナスとなった。
前年は住宅ローン控除の枠が縮小されるというかけこみもあったように記憶するが、全体として物件価格上昇もあって全体として成約数はパッとしない状況が続いている。
日銀の金融緩和修正懸念も、昨今住宅ローン契約が変動金利中心になっていることから成約数に多少なりとも影響があったように思う。
(ここ連日テレビ・新聞・雑誌でも住宅ローン変動金利に対するご意見的な報道が多くなったように思う)
成約数の本格回復には物件価格下落か、足元のインフレに伴う賃金上昇のどちらかが必要そうな展開である。

【成約価格】
タイトルなし

埼玉と千葉の値動きがやや芳しくないが、一方で再度東京が元気になっている他、神奈川県が強く、ニュータウンよりも昔からある街が人気という展開となった。
東京については明らかに山手線内の価格上昇が強く、買える人は買う・高級であればあるほど買うという展開になっている。
成約数が弱い状態なのにこれだけ価格が強いことは、需要以上に供給が弱い状態であることを意味していると思われ、不思議なバランスが続いている状態といえるだろう。

【在庫状況】

タイトルなし

タイトルなし

在庫状況については引き続き緩やかな上昇が続いていて、在庫価格の伸び率が落ちてきていることから、段々と需給がつり合ってきているように見えるものの、まだ在庫と成約価格に差がある状態である。
現在の需給環境からいえば、もう少しこの在庫と成約価格の差が縮小しないと物件価格の天井は見えないという状態だと思う。
ただ在庫価格と成約価格が一致するまでにはまだ時間がかかる・その間に賃金インフレが起きてしまうと再度成約数の回復が見られて価格上昇しかねないというシナリオもあるので、全体としてはもうしばらく一旦の中古マンション市場の価格天井を見るまでに時間がかかりそうな気がする。

昨今の世界の不動産が激しい金利上昇で停滞していることを考えると、日本の不動産価格も下落するとすれば金利がトリガーになると思われるが、果たしてYCCの修正による金利上昇だけで本当に下がるのかどうかというのが現状皆が気にしているところだと思う。
(しかもこれは結構未知数で自分もどうなるかよくわからない)

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村越誠

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