村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2022年12月

日銀の金融政策先行きは賃金上昇率を確認する基本分析に戻る

焦点:JGB売り維持する海外勢、さらなる日銀政策修正を視野

市場参加者でもかなり疑心暗鬼な状況だが、基本に立ち返った分析を心掛けたい。

日銀がYCC変動幅を拡大させて以降、まだ目立った形で債券市場機能が回復しているとは言い難い状況が続いている。
特に今足元日本債券市場を動かしているのは日本円OISである。
日本円OISを順に見ていくと、2年0.278%・5年0.52%・10年0.82%と10年より手前側のゾーンにて金融引き締めを催促するような形で動いている。
(一方で20年以降はJGBの方が金利が高いので、そこまで行くと催促されているわけではない)
これは外国人投資家が催促参戦しているということに加えて、日本勢がこれまで低い金利で日本国債を買ってきたことから動きづらくなっており、こうした外国勢主導の売りに対して積極的に買い向かえていないという事情がある。

そういった意味で、日本国債金利についてほぼ10年ぶりぐらいにきちんとインフレ率と賃金上昇率を真面目に見る必要性が出ているという状態に推移しつつあるように思う。
諸外国を見れば、他の先進国中央銀行も「重要なのは単なるインフレ率ではなく、賃金インフレ率である」と言っているわけで、単にインフレ率が2%を超えているから自動的に金融引き締めをするという話ではない。
日銀は金融引き締めについては繰り返し「持続的な賃金上昇率2%」というのを金融緩和解除条件としている。
まだ賃金上昇率1.5%やんけということで、米国のようにすでに賃金インフレ率の居所変わっているわけでもない中で、後ろ側ならともかく手前側金利を動かす動機は見えづらい。
(ただし、世界全体でモノの需給ひっ迫度合いが強いことから、日本でも一定の賃金インフレが見える可能性が出てきていることは確か)

また緩和解除についても、解除の順番がどうなるのか考える必要性がある。
外国ではあまりにもインフレターゲットから外れた賃金上昇率となったことから、量的金融緩和縮小やバランスシート自体の縮小を利上げと同時に行い始めるという形で、かなり順序を無視した金融引き締めをしていった。
日銀の場合、これまでリーマンショック以降利下げ→債券購入によるQE→株・JREIT購入によるQE→マイナス金利→YCCという順序で来ており、現在YCCの変動幅修正から動いてきているので普通に考えるとYCC解除・マイナス金利解除までたどり着かないと「事実上の利上げ」という単に長期金利動いてるだけやんという話で、本当の意味での利上げ(政策金利の引き上げ)にはたどり着けない。

以上から、ヘッドラインインフレだけでなく、賃金上昇率を丁寧に見ていく必要性があるという、ここ10年ではやはり日本の債券市場では見てこなかった事態になりつつあるように思う。
なので賃金上昇率がもっと上昇するかどうかで投資の方向性は変わってくると思う。

なお、色々報道を見ると賃金インフレするけど金融緩和を継続するという意味不明論理を展開する人と、賃金上がらないって言っているくせに金融引き締めが起こると言っている人がおり、これは全くの意味不明と言わざるを得ない。
賃金インフレが起きて金融引き締めが起こるか、賃金がやっぱり上がらないのでそんなに金融緩和は過激には修正されないかの2つであることは認識するべきで、賃金上昇をなしにしてはそもそも銀行勢の貸し出し増加率が預金増加率を下回っている環境下では日銀に積極的な金融引き締めをするインセンティブはないと思われる。

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今年最後の米国失業保険統計は、緩やかな雇用環境緩和を引き続き示す

米国経済指標【新規失業保険申請件数】

2018年の利下げ水準が失業保険継続受給者数1800kだったのを考えると、かなりその水準に近づきつつある。

米国の金融引き締め水準は引き続き雇用状況のタイトさが緩和されるかどうかにかかっているということで、毎週木曜日の新規失業保険統計が市場参加者の間ではずっと注目されてきている。

そして昨日今年最後の失業保険統計の発表がされたが、内容としては引き続き新規失業者は225kとあんまりクビになっている人は劇的に増えていないなあと思う一方で、失業保険継続受給者数は1710kとまだタイト水準であるものの、こちらはじわじわ増えている。
つまり、今雇っている人はあまりクビにはなっていないものの、新しく雇う意欲はそがれつつあり、失業者が職を見つけにくい状態がほんとうに緩やかであるが進みつつあることがうかがえる。

失業保険継続受給者数の推移をみると、一番タイトだった水準は2022年5月の1300k台で、そこから約5か月程度この非常にタイトすぎる水準が続いてきた。
きちんと金融引き締め策の効果が出てきたのは10月初めからで、現在失業保険継続受給者数は月に100kずつ増えていると計算できる。
そのままの比較ができるわけではないが、2018年に金融引き締めから利下げに転じたラインが失業保険継続受給者数1800kだったことからも、あと1-2か月でその水準に達して金融引き締めは止まる可能性が高いだろうということも想定しやすいと思う。

これまで住宅市場については4月時点の住宅ローン金利30年5.5%というライン、つまりあらゆる年限の米債金利が3%らへんで効き始めたことは以前に記事にさせてもらった。
雇用に効き始めたのが10月の金利水準ということであらゆる年限の米債金利が4%を超えたところとなる。
もちろん雇用は最遅行指標であるわけなので、手前側はともかくやはり長い年限のところで4%という水準はどう考えてもやりすぎという評価になるだろう。

【米国10年債金利推移】
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以上から引き続き長い年限の米債金利が再び4%を上回る可能性は限りなく低いということになると思う。
ただ一方で米債長期金利3%というのは様々な経済活動を抑制させる最低水準レベルということも既にわかっているので、10年でいうと3.5%を挟んでの攻防というのが当面続く流れだと思う。
最終的にはコロナ禍でばらまいたマネーサプライを回収しきるまでこの金融引き締めが続くというわけであるが、やはり金利ネタが尽きてしまっていることから、引き続きドル円は以前のブログで記載させてもらった通り狭いレンジでの動きになるものと思われる。

【過去参考記事】

ドル円は当面新しい材料なしで130円前後の狭いレンジ入りか



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テスラさえも許されない反高PER銘柄地合い

米テスラ株、年間で過去最大の下落率記録へ 中国需要などに懸念

テスラレベルの会社でも高PERは許されないという地合い。

ほんの一年前までは400ドルという株価をつけていたテスラが気づけば100ドル近辺ということで、ピーク時価総額から75%も失っていることが話題となっている。

【テスラの株価チャート】
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下げ材料としてはEV需要への不安とかファンダメンタルズうんぬんというのもあるのが、やはり一番の要因は単純に高PERが許されなくなったという話である。
さすがに今のテスラの状態であれば、他の自動車会社よりも高いPERであることは正当化できるものの、普通の自動車会社のPERが10倍であることを考えると40倍のPERをつけるのはやはり難しいという話になる。
特にこの1年は金利上昇による高PERの遠いキャッシュフローの割引率が高まっていることから、やはり40倍以上は本当によっぽどの理由がない限りは認められないと、2021年とは完全に相場環境は変化してしまった。
現在のテスラのPERが33倍で、来年EPSで26倍というのを考えると、テスラ自体は他のクソ株とは違ってきちんとキャッシュフローが出ている会社ということもあり、テクニカル的にも3年移動平均線からも-44%ともう一声で来年のEPSベースで20倍っていう数値なら比較的悪くないのではないかと思う次第である。

足下でも出来高が膨らみつつあり、追証っぽい投げが出てきていることは確かで、そろそろボトムアウトを期待したいと思うものの、単に出来高という観点だけでみると2020年-2021年のバブルの中で2020年後半以降に株を買ったふわっと勢は全部駆逐されたものの、30-150ドルの間で参入した真面目な機関投資家勢の防衛ラインに引っかかっている割には出来高が少ないという見方があり、真面目な機関投資家が投げないという前提で考えるのかこれから投げが起こるのかと考えるかでボトムアウトの水準は変わってくるだろう。

またこのテスラ株の暴落で影響があるのはEV銘柄全体のバリュエーションである。
テスラでさえこうなるんだから、わけわからないEV専業メーカーの株なんて価値があるかどうかも不明ということでテスラ以外のEVメーカーの株価の底はどこなのか全くわからなくなってしまった。
もう一つは老舗自動車メーカーがやろうとしているEV部門だけを別途上場させるIPOの延期があげられるだろう。

また今回のこのテスラ株の暴落のせいで、キャシーウッド氏が率いるARKシリーズファンドは完全にその存在を否定されてしまっており、特に旗艦ファンドであるARKKのETF価格は2017年半ばぐらいまでの価格水準に戻ってしまい、ピーク価格から81%の下落とこの2年では断トツワーストパフォーマーとして、その権威は失墜してしまい、ARKKが象徴として輝いた世界的な高PER・小型ハイグロース株バブルはその幕を閉じたのであった。

【ARKKのチャート】
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2021-2022年に雑な買収をした企業はまだのたうち回る展開

セールスフォース、株価急落で幹部たちが続々と離脱

過度なヒーロー志向に基づいたM&Aは株価に大きなダメージを与える。

ここもと厳しい株価動向が続く中で、特段株価がひどいところとして、2021-2022年に安易な買収をしてどつぼにはまってしまっている企業であろう。
その代表格はやはりセールスフォースであろう。

【セールスフォースの株価チャート】
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もう覚えていない人が多いだろうが、セールスフォースは2021年に唐突にスラックの買収を決断し、2.9兆円ものお金を払った。
しかし、その時にはスラックは後ろからマイクロソフトのTeamsが強烈な追い上げをしていて、もうスラックがオワコンになりつつあった時期であったことは、誰の目から見ても明らかであった。
買収当初はまだ相場が良かったこともあり、このスラック買収という愚行はしばらく許されていたが、その後FRBの急速な金融引き締めとともにコロナバブルがはじけたことから、スラックの買収時の投資回収キャッシュフローの計算が狂った・買収のための資金コストが今後増加していく・経済落ち込みとともに余計な人員削減が必要になるという3つの逆境に遭うことになった。

こうなってしまっては基本的に株価はどうしようもないと言わざるを得ないだろう。
これに加えて祖業も足元のITセクター全体の落ち込みからダメージを受けており、祖業のダメージ+買収によって余計な赤字が生まれていることから、株価はピークから60%下落と正直な動きとなった。
さらにこうした事態から元々役員陣にはストックオプションでの報酬払いが多かった中で、付与していたストックオプションが行使価格以下になってしまって一円にもならなくなってしまったということもあり、セールスフォースでは幹部がどんどん流出しているというわけで、人材面で逆噴射している状態にある。
(こういう時は現在のトップがどれだけ人望あるかどうかに鍵がかかっているが、ベニオフCEOの強権がどれだけゆるされるだろうか・・・・)

これはセールスフォース以外でも当てはまるもので、例えば旧SquareのBlockがこれに当てはまるだろうことは、以前のブログにも書いたと覚えている。

【SQの株価チャート】
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どうも米国企業はM&Aについてしばしば自分がヒーローになりたいという願望の下、なぜそのタイミングでそんな企業を買収するんだよというのをやってしまうわけで、こうした事情は下記書籍に記載がある。

【参考書籍】

危機にこそ、経営者は戦わなければならない!

そしてこうした過度なヒーロー志向に基づいた買収というのは上記書籍を読めばわかる通り百害あって一利なしということで、株価としては断罪されざるを得ないだろう。

2021-2022年に誰の目から見てもなんでその買収したんだよっていう策を実行してしまった企業については基本的にまだしばらく株価はのたうちまわるステージが続くだろうと思われる。

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説明責任なしで決死のコロナウィルス大量感染で経済リオープンに向かう中国

中国、コロナ感染の日次データ公表中止-地方の発表と食い違い

最終的にはリオープンしそうで相場的にポジティブだが、国内の人達にとってはたまったものではない。

11月まであれほど習近平が固執していたゼロコロナ政策については完全に放棄する流れが続いている。
世界ではコロナウィルスワクチンが出てくるまでに経済制限をかけ、感染者を抑えている間にワクチンを開発するというのが基本的な流れで、中国もこれにのっとった流れのゼロコロナ政策であった。
しかし、世界は欧米が開発したワクチンを積極的に使うことによって乗り切るという合理的な選択肢を取った一方で、中国は国内でワクチンを開発してそれしか使わないという間違った決断をしてきたことで、決定的なミスをしてしまったことは承知の通りである。

有効性の高い国産ワクチンがいつまでたっても開発できない中でいつまでたってもゼロコロナ政策を解除できず、結局国民の経済に対する不満が大爆発する形で政府側は「弱毒化した」というなんとも苦しい言い訳とともになし崩し的にゼロコロナ政策を解除していった。

結果は承知の通り、集団免疫が全然できていない中で感染が大爆発している。
しかし、もうこれは経済正常化のためにもう避けられないプロセスとなっていることはすでに世界中が体験した話で、中国はまともなワクチンがないという条件の中、これから決死の大量感染による集団免疫獲得をすることになってしまった。

結局はコロナウィルスについては誰しもが一度はかかる・ワクチンでどれだけ症状を軽くして乗り切るかというのがすでに中国以外の世界ではコンセンサスになっていた中で、ようやく中国もこの流れに乗っかる形になったということである。
有効性の低いワクチンしか打てない中で、大量の死者を出しながら経済リオープンへの道筋が今後見えてくる形になるだろう。
来年末ぐらいには中国もおそらくは国際往来の自由化が期待できるところまでいけそうなので、それによって完全にコロナウィルスによる経済の影響というのが完全になくなるし、市場はすでにそれを相当程度織り込んだ動きとなった。
しかし、色々報道を見ても現地入りしている各メディア陣容が欧米製ワクチンの輸入について可能性はどうなのかという質問に対して「正直わからない」というコメントしかできていないということで、結局中国国民全員が実質的にはノーワクチンでコロナウィルスにかかっていって、最終的には一番死亡率が高い形で乗り切るしかないというところに、結局習近平政権というのはなんであんなアホなん?という外国人投資家の評価は続くものと思われる。
結局は合理的判断より自分の政治メンツがすべて・独裁政権であるがゆえに説明責任で意味不明な方向に振り切るという、引き続き投資家にとってはクソみたいな話が続くというわけである。
その考え方については下記を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
中国の習近平独裁による集団指導制の崩壊と中国株式市場に与える悪影響

中国リスクを取るんだったら、あくまで中国を一消費地として活躍している先進国企業株を買う方が無難だろうと思う。
下記信越化学の金川氏の言うように、生産地ではカントリーリスクはとらず、一消費地と捉えた商業をやっている形の企業が習近平政権時代に考える中国関連銘柄の取り扱い方だと思う。

【参考書籍】

危機にこそ、経営者は戦わなければならない!

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