村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2022年10月

アルファベット決算から見る不況に弱い社内統制が効いていない会社の決算

アルファベットの7~9月、売上高6%増 市場予想下回る

社内統制が効いていない・コストコントロールができない会社は足下のような環境ではかなり厳しそうだ。

今日の朝一でマイクロソフトとアルファベットの決算が出てきたわけだが、前期はどちらも増収だったが販管費が増加してしまって減益となりましたと境遇が似ていたところから、マイクロソフトは売上伸び鈍化ながらきっちりコストコントロールしてきたことによって増益に転じた一方で、アルファベットはコストコントロールが全然できていないくて大幅減益となった。

全体として言えることは社内統制が緩い企業の業績が駄目と言える状態になってきている。 
特にIT系の企業でこれまで高成長を謳歌してきた企業は、とにかく人手をかき集めるのに必死でそのために従業員を好待遇で引っ張ってきていた。
しかし、逆を言えば不況や自分が所属しているセクターの業況が悪くなってきた時は膨大なコストの塊として業績を襲うために、途端に業績が悪くなる。
もちろん無能な社員を即刻クビを切れば問題ないのだが、問題はこの決断を経営者ができるのかできないのかというところがある。

特にアルファベットはそもそも論これまで少数の優秀エンジニアから出発した比較的若い会社で、これまで大規模なリストラなしでここまで会社運営が行われてきており、加えてオフィスには優秀な社員に働き続けてもらうための接待的なスペースが非常に多いことは有名で、下記を見てもらえればすぐわかると思う。

【参考動画】
もはや住めるレベル!シンガポールのGoogleオフィスが充実しすぎて笑えてきたw

下記Youtube動画を見てもらえればわかる通り、ジムがあって無料で社員が飲食できるものが大量に揃えられていて、シェフもいて無料でランチ・ディナーがふるまわれていて、シャワールームもあり、会社からシャトルバスも走らせていて、スパもマッサージ師もいるし、ゲームで遊ぶスペースがあり、卓球ができるスペースもある。
業績が良い間はこうした遊び心あるスペースというのが優秀な人を惹きつけて好業績を叩き出していると賞賛されやすいが、一度業績が悪くなると途端に外部から見れば無駄なコストだらけのスペースのように見える。

日本でもリーマンショック前にぶいぶい言わせていたワイキューブという人材系企業ではバーのスペースを作った会社もあったが、その後はお察しの通り派手にデフォルトした。

【過去参考記事】
私、社長ではなくなりました。 ワイキューブとの7435日

GAFAMの中でいうと、とりわけそういった無駄コストが非常に多いのはアルファベットとメタの2社だが、この2社はとりわけコスト管理が緩い会社として有名であり、それが会社文化の一つになってしまっているのは今回の相場の中ではかなりのマイナス要因となるだろう。
アルファベットはそもそも苛烈なリストラを行ってきた実績がなく、CEOであるピチャイ氏もそうした鬼のようなリストラを決断できる能力があるかどうか非常に疑問符であることもマイナスだ。
逆にマイクロソフトやアマゾンなど社内統制が非常に効いていて、コストコントロールの上手い会社(特にアマゾンは死ぬほどケチ)の方がしっかりとコストを抑制してきて業績目標を必達できる可能性が高いので、こうしたケチな企業の方が足元は優位だろう。

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米国時間に中国と中国関連銘柄が習近平独裁政権誕生で爆落


カントリーリスクでの銘柄選別の重要性が高まる展開。

 昨日は中国・香港株が習近平独裁政権誕生を受けて爆落したが、米国時間でもこの影響を一定程度受ける米国株があったので、諸々影響を見ていきたい。

・そもそも中国企業でADRで上場している企業群
まあもうこれはどうしようもない話だが、米国にADRで上場している中国企業銘柄は完全に投げ売りの展開となった。
その中でも特に悲惨だったのがインターネット銘柄で、ブル2倍のCWEBはバスケットETFなのに暴落と呼んでいいレベルの下落となった。
ツイッターでは久々に阿鼻叫喚のつぶやきだらけになった中国インターネット関連銘柄2倍ブルだが、いきなり寄りでマイナス20%というところから、おそらくは追証による強制売りでドミノ倒し的に寄ってから1時間程度は無差別売りとなり、瞬間風速でマイナス30%以上となった。
追証売りが1時間で止まったのかその後は一応多少反発したが、これから中国インターネット株に大きなポジションを持っている機関投資家売りが出てくるわけなので、上値は寄りを超えないまま死を迎えた。

・カジノ銘柄を中心としたツアーリズム関連銘柄
既に株価的には死んでいる銘柄が多いが、あらためてマイナス10%みたいな反応をした。
理由は簡単で、カジノのこれまでの収益成長のほとんどは中国人によるバカラであった。
バカラというのは大金を顧客が賭ける傾向が強いかつ勝負が速いということで、カジノ企業にとってはてっとりばやく稼げるギャンブルだが、中国人が当面ゼロコロナ政策で旅行できないということはバカラは鳴かず飛ばずがつづくということなので、売られて当然だろう。
また、これまでツアーリズムの世界では中国人旅行客の増加というのが成長ドライバーであったが、これがしばらくは十分見込めないということで目線は下がっている。

【LVSのチャート】
タイトルなし

・中国一般人の内需関連銘柄
中国一般人はこれから厳しい経済低迷が見込まれることや、場合によっては愛国無罪デモが起きて、中国国内で運営されている外国企業の事業運営に支障が出る可能性があるのではないかという懸念が生じている。
真っ先にその代表例として懸念されたのがスターバックスのようで、5%安と大きめの下落となった。
また、NIKEやタペストリーなど中国売上高比率が大きいブランド衣類品についても株価はパッとしない展開となった。

【スターバックスの株価チャート】
タイトルなし

・産業金属類中心に資源企業
中国の不動産市場の崩壊が長引く可能性は、今回の経済にほとんど詳しいメンバーがいなさそうというところから発想しやすい話だと思う。
特にその中で産業金属類で真っ先にやばいんじゃないのと思われるのが、やはり鉄鉱石と銅の2つだろう。
特に鉄鉱石は中国不動産内需と直結している話なので、米国ADR上場のValeはかなり厳しい株価下落となった。
銅も鉄鉱石ほどではないにしろ厳しい見込みになりやすいということで、ニューモントマイニングなども株価下落となった。
エネルギーもやや懸念が生じて下落はしなかったものの、ややS&P500に劣後した上昇率となった。

【ヴァーレの株価チャート】
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中国は新興国株の中でもウェイトの高い国で機関投資家の多くがポジションを持っているわけなので、今後顧客からの解約・投資配分の引き下げ・追証の対応などこれから対応にせまられる形になるので、一旦株価も見ずに投げるステージが発生したが、これから本当に中国に少しでも関連した銘柄については保有を続けるべきか売却すべきか選別されるステージになるので、個別銘柄では注意深く考えていく必要性がありそうだ。

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胡春華が常務委員から外されて習近平の永久皇帝が爆誕

胡春華・副首相が降格 政治局員から外れる

終わりだよ、二度と投資なんてできない。

中国の習近平政権3期目人事について土曜日時点であかん感じになっていたのは、当ブログ読者なら既知の話だろう。

【過去参考記事】

習近平3期目人事発表で集団指導体制の崩壊にリーチがかかる


この時点ではまだ胡春華が常務委員に入る可能性があり、入ればすくなくとも50代で共青団である胡春華が習近平を継ぐ人材として見られ続けることが可能であり、少なくとも中国の集団指導制の崩壊について崖っぷちではあるもののぎりぎり踏みとどまれるかもしれないという判断をしていた。
しかし、結果としては胡春華は常務委員に入ることができず、政権中枢メンバーから共青団はいなくなってしまい、実質的に全員が習近平派閥で占められる独裁政権となった。
さらに最悪なのが、ナンバー2に李強が就任していることにある。
この李強という人物は、ご存じの通り上海ロックダウンを強行した首謀者であり、ようは習近平の靴をぺろぺろ舐めれば、一切の経済合理性のない政策でも評価されることが露呈した。

このことが意味するのは、株の投資家にとっては中国・香港株ではエクストリームシナリオリスクが生じるわけである。
リスクシナリオとしては、ITのように投資していた企業から共同富裕としていきなり利益を収奪されるリスク・経済合理性のない意味不明な政策が発表されてセクター丸ごと死ぬリスク・独裁政権になったことにより米国との衝突が激化してサプライチェーンが寸断されるリスクと、もうリスクだらけである一方でリターンは限定的である。
そうなればリスク・リターンが見合うまで株のPERは低水準になるわけである。

これを踏まえて中国・香港株についてどうだろうか?
一部では暴落という人もいるのだが、香港ハンセン指数なんて既にピークから半減しているので、もう既に暴落は起こったわけなので、売るべき人はもう売り切っているものと思われる。
(と思ってたら今日は普通に大幅下落でした)

【香港ハンセン指数のチャート】
タイトルなし


なので、シャープに暴落するというよりは常にダラダラ売られ続けて、漫然としない状況が続くという方向になる可能性が高いだろう。
また、世界的に相場全体が上昇すれば中国・香港株についても一定程度上昇はあるだろうが、他国に比べて劣後するパフォーマンスしか出せないという形になるので、このありえない人事発表後に暴落しないんだったら底打ちしたんじゃないかとエントリーしたら置いてけぼりにされるリスクが非常に高いので、個人的にはやはり中国・香港株に投資する資金があるなら、普通に米国株買ってた方が断然いいよねという結論には変化ないと考えている。

とにかく、去年の7月から中国・香港株は大変なことになるという主張をこれまでし続けてきたし、以下のような重要な中国・習近平政権への考え方も書いてきたわけだが、これらについては紆余曲折はあったものの全て当たってきたということで間違いないだろう。

【過去参考記事】
中国の習近平独裁による集団指導制の崩壊と中国株式市場に与える悪影響

現状の段階で中国が米国に代わる世界の覇権国にはなれそうにない3つの理由

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「みんなのクレジット」賠償問題から見る詐欺られた投資資金の回収の難しさ

「みんクレ」1億円賠償にみる投資被害回復の困難

一度詐欺られた投資資金を回収するのがいかに難しいかがわかる。

このブログでも大分昔に取り上げた「みんなのクレジット」というソーシャルレンディング業者が募った出資案件が、実はそもそもこのみんクレのグループ会社であり、でたらめに資金を使ったために最終的には出資者が出資している案件企業は返済原資がなく金を返せませんとなり、行政処分もくらって正式に詐欺判定を受けた事件について、投資回収のために裁判を起こした人達22人が1億円の賠償金命令までこぎつけて回収目処がついたと思ったら、みんクレ側からはそんな金はなく、回収率10%で和解しなければ自己破産するし、責任者は外国に高飛びするという典型的な詐欺ムーブをかまして最終的に裁判で勝った人間もほとんど金を回収できないのではないかという事態になっている。
(ちなみに裁判しなかった人はもちろん回収率ゼロである)

【過去参考記事】

みんなのクレジットの詐欺問題および回収率の目安


このように企業に融資や投資をするのに対して、過去数年の決算諸表をまともに見れない上に直接コンタクトを取れない時点で、ほとんど目を瞑ってダーツを投げてるのと行為としてはほぼ同等であり、投資者が何も見ていないも同然であることをいいことに詐欺行為を働くインセンティブが非常に高くなる。
上場企業であれば少なくとも会計事務所が監査した決算諸表が開示されていて会社の状況推移がわかる、一方で未上場の場合などはPEなどは直接的に経営陣とコンタクトして情報交換することによって一次情報を得ることによって、こういった詐欺みたいな案件に引っ掛からないように努力している。
しかし、結局上記みんクレのように第三者が監査した資料もない・直接一次情報も得られないのであれば、得た金なんてのはどうやって迂回させて仲介業者が自分のポケットに入れるかという悪知恵に頭が回ってしまい、みんクレのような詐欺に至るのである。

今回のみんクレはほぼこの結末になることを前提とした詐欺スキームであったことも、これまでのみんクレの対応を見れば明らかだろう。
バックがSBIレベルで明らかにレピュテーションリスクが会社全体にとって損などの場合は、まだ出資者に対して真摯に取り組んだ方がトータルで見て業者側の方にメリットがあるorデメリットが少ないということでかなり損害補償される期待が高いが、経営者がどこの出自かもよくわからない上に、例え事業モデルが破綻しても失うものなどなにもないような業者は出資者から得た資金なんてのは踏み倒した方が得なので平気で上記のようなほぼ詐欺スキームだったのに回収率10%で和解しなければ自己破産するからという脅迫を厚顔無恥で行うので、普通の人の感覚からするとサイコパス丸出しみたいになる。

とにもかくにも、普通の個人投資家なんてものは大した資金を持っておらず非上場企業に対する出資や融資なんてのは一次情報が得られなくて騙される確率が99%なのだから、少なくとも仲介業者がレピュテーションリスクに対して敏感でいざとなれば補償する可能性が高いという算段がなければやめた方が良く、普通に第三者の監視が多方面で効いている上場企業への投資に限定すべきだろうと思う。
全額失っても良いという金額だけ投じても良いのではという人が時々いるが、値動き以外の理由で99%失うことがわかっている金を投じることは単なる馬鹿なので、そんなアホ丸出しの話を真に受けてはいけないし、大体そんなこというやつはそれに関連したアフィリエイトで稼ごうとしている人なので信じない方が良い。

さて次はエク〇アがフォーカスされるんだろうか?

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習近平3期目人事発表で集団指導体制の崩壊にリーチがかかる

習近平氏、 3期目実現への道

秋の人民党大会終わったら中国株良くなるとかいう一抹の期待が打ち砕かれかけている。

注目されていた人民党大会・習近平3期目の人事が注目されており、特にこれまでずっと中国株ポジションを頑張って維持してきた欧米機関投資家の多くが最後の最後まで期待していたイベントであったが、政治トップである常務委員から共青団メンバーが全員引退することが判明したことから、既に怪しい雰囲気が漂っている。

これまで習近平が経済政策において失策を重ねてきたために長老勢にお前の暴走は目に余るという叱責を受けて、人民党大会では一定程度習近平の暴走を抑える人事になるのではないかと言われていた。
現在政治トップである政治局常務委員の中で習近平派閥ではないのは、李克強(共青団)・汪洋(共青団)・韓正(共青団)・王コネイ(無派閥)の4名であるが、うち李克強は事前の会合などで引退予定をほのめかしていて、韓正も年齢的に引退の可能性が高いと見られていたが、この合計4名がどうなるかというのが焦点になっていた。

タイトルなし


そして常務委員の前に、常務委員の候補となる中央委員のリスト205名が発表されたが、その中に李克強・汪洋・韓正と既存共青団派閥は全員リストから漏れたために引退確定となった。


習近平派閥である栗戦書も引退となったが、これは年齢的なところがあるので引退する可能性が高いと見られていたこともあり、これは既定路線であった。
そのため、既存7名のうち、共青団3名引退・習派閥1名引退で、これに対して4名入れるのか、あるいはこれまでの7人体制を辞めて5名にする・ようは新しくは2名しか入らないという方向のどちらかというのが明日以降の発表で注目されている。

もし4名追加される場合は、一応共青団かつ時期トップとも目されている胡春華が入る可能性があり、これが入る場合はまだぎりぎり集団指導体制は崩壊しきっていないと見ることが可能かもしれない。
それでも李強・丁学祥・陳敏爾・李希のいずれかのうち2名ねじこめば習派閥が過半数を超えるので実質独裁政権達成みたいな形になる。
最悪のケースは7名じゃなくて5名にしてしまい、新規で入る2名が李強・丁学祥・陳敏爾・李希で占められることになり、共青団メンバーがゼロの完全独裁の可能性があり得る。
こうなってしまったら、もう集団指導体制は完全に崩壊してしまったと言っていいだろう。

まあいずれにせよ、常務委員のうち既存共青団メンバーが全員引退という時点でかなりネガティブであり、集団指導体制の崩壊リーチという状況に変わりはない。
そうなれば外国人は二度と中国株に資金を戻してくることはないので、やはり下記過去参考記事の推察で中国株は投資すべきではないという話は至極真っ当な話だと考えている。

【過去参考記事】
中国の習近平独裁による集団指導制の崩壊と中国株式市場に与える悪影響


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