村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2022年09月

残りは労働者需給と家賃になった米国インフレの芽

米新規失業保険申請、前週から予想外の減少-5カ月ぶり低水準

ようやく労働者需給と金利水準が釣り合ったことを示しているように思われる。

昨日発表された米国統計で注目されていたのは労働者需給に関して速報性の高い新規失業者保険申請件数であった。
先週発表された数値は209Kと予想外に低下したことから金融引き締め加速を懸念した金利高が生じた。
そして昨日の193Kと新規失業者という点だけ見ると労働需給はタイトという数値となった。
しかし、これに対する金利反応はほとんどなく、英ポンドと英国債を巡ったドタバタ騒ぎで既に米国債が売られていたことで、十分金融引き締め効果が出ている分まで上昇していたものと思われる。
クビにされている人は少なくなっているものの、一方でコスト観点からは積極的に雇用している雰囲気も減退していることから次回雇用統計待ちという状態だが、新規失業者保険申請件数からはもう金融政策を変化させる材料は出てこないということになりそうだ。
一応は次回雇用統計で雇用者数の伸びが250Kと予想されており、今のところIndeedのJob Postingデータを見ていると、雇用者数の伸びが減速傾向であるのは間違いないと思う。

【IndeedのJob Posting統計】
タイトルなし

https://fred.stlouisfed.org/series/IHLCHGUS

総合的に見ると米国インフレはあとは労働者需給と家賃に限定されつつあるように思われる。

エネルギー価格は金利の大幅上昇によって期近を期先より大幅に高い水準で買うインセンティブが下がったことと、全体的な景気減速懸念から概ね異常な価格推移が見込みづらくなった。
欧州はロシアからのガス供給問題が生じているが、既にノルドストリームからの供給がゼロになっていて、はっきり言えばもう材料がない。
なのでエネルギー価格由来のインフレは概ね消える傾向が継続するのは間違いないだろう。
米国の貿易統計を見ていると輸入金額の減少も見えており、コンテナ港湾混雑といった物流面由来のモノインフレについても海運コンテナ船の運賃も大分下落してきていることからも沈静化が見えてきている。

なので、米国で残っているインフレの芽は労働需給と家賃インフレの2つに限定されつつあることが鮮明になってきている。
上記2つのインフレは一度起こるとスティッキーなインフレと言われており、いわゆる変化がゆっくりと生じるために金融政策で動かそうとすると相当タイムラグが生じるものとして有名なものである。
なので、現在の金利水準とインフレ動向はようやく釣り合いが取れた水準になってきたことを示していると思われる。
(問題は欧州の金利ではあるが・・・)

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結局為替を捨てて債券を守ろうと動いたBOE

Bank of England intervenes with temporary QE to stem sell-off

さすがイギリスの二枚舌は汚い。

先週からイギリスの債券と為替を巡るドタバタ劇が続いている。
そしてここに来てあれだけ通貨防衛のために利上げを断固として行うと大見え切ったBOEがしれっとやっぱり金利高耐えられないんで国債買い入れプログロム(QE)をやりますわと宣言し、お前なんだそれという形で再度英ポンドが再度売られる展開となった。
しかも長期ゾーンでやると言っているので、明らかに大減税に伴う国債増発の消化を狙ったものである。
結局大減税を行うための国債消化が現在中銀が外的インフレを理由に進めている過激金融引き締め下では為替を守りながら行うのは無理だという判断で一時的QEを行うという判断にいたったものと思われる。
もし米国のような内需起因インフレであれば金利高でも経済はOKという話になるので、外的要因で金利高に耐えられなくなったのはそりゃそうだという話である。

結局米国が過激な利上げをしている間は米国以外の国は債券を捨てるか為替を捨てるかの2択を迫られている形になっている国が多い。
あるいは実力が不足しているがために為替を守るために利上げしているはずなのに全然効いてなくて為替も死んでいるケースが多数存在している。
為替を捨てている代表格はトルコと日本だが、日本の場合はこれだけ為替を捨てた政策をしているにも関わらず、せいぜい為替は対米ドルで年初来25%安ぐらいで済んでいるのはまだ大分マシな方である。
隣の韓国はインフレを理由に利上げを2%近く進めたにも関わらず為替は20%安なので、その程度だとなんか実質的に意味あるんかその利上げみたいな形になっている。
あまり国際資本に金融経済を開放していない国は介入(口先含めて)をうまい具合に誤魔化しながらまぶして耐えている国もあり、これは中国・インドがその代表格である。
イギリスは一週間前までは為替を守るために債券を捨てようとしたのだが、結局あまりの金利高に耐えきれなくなって再度為替を捨てるかもみたいな意味不明ムーブをかます結果となった。
はっきり言うと欧州もそろそろ難しい決断を迫られ始めている。
EUの場合南欧諸国の金利動向がイタリアを始め5%みたいな水準に差し掛かり始めており、為替を捨てられない国がそんな金利で経済耐えられるんでしたっけという

全体を見れば米国の過激金融引き締めが米国外でいよいよのっぴきならない問題を起こし始めており、前回FOMCミーティングで語った以上の金融引き締めは国際金融システムに悪影響を与える前兆が出始めている。
既に米国では昨日の記事に書いた通り大幅に不動産減退が見えていることからWait and seeの体制に移行する理由付けもできるような段階に差し掛かりつつある。

【過去参考記事】

高金利化による世界的な不動産市場の低迷が鮮明化


よって、11月75bps・12月50bps・2月25bpsから利上げ幅は縮小できても利上げ幅を増やすことは難しいと思われる。
よって米国政策金利の着地点は最大で4.5-4.75%で決まりということで結論が出そうである。

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高金利化による世界的な不動産市場の低迷が鮮明化

米住宅価格指数、7月は過去最大の減速-市場の冷え込み映す

世界的に既に高金利なんだからそうだよねえという話。

世界的な金融引き締めによって、数年前まではデフレで金利がなくなってどうしようという世界から、気づけばあっという間に正常化した金利水準になっていき、これがこれまで雑ファイナンスで拡大してきた不動産市況に暗い影を落としてきている。

昨日の米国S&Pケースシラーの住宅価格指数はまさにそれを端的に示した内容であった。
市場予想は前年比17.05%の価格上昇・前月比では0.2%の価格上昇であったが、結果は前年比16.06%・前月比-0.44%と予想比下振れし、加えて前月比では既に価格下落に転じている。
7月のデータということは実質的に5月の住宅ローンが30年で6%・15年で5.5%という数字での話である。
なので、最新データだと住宅ローン金利が30年6.9%・15年で6.3%という世界では、より価格減速は目に見えている話だろう。
ケースシラーよりデータ速報性が高いREDFINのデータを見ても引き続き8月は7月と比べて価格下落しているし、Sale-to-Listの数値も100%を割っていることから、やはり住宅ローン30年6%以上の数値というのは基本的に需要を冷ますには十分な金利であることを示している。

【REDFINのデータ】
https://www.redfin.com/news/data-center/

これは米国だけの話だけではない。
欧州もこれまで大手不動産会社(住宅分譲中心や賃貸中心問わず)は長い間低金利による資金調達に慣れ切っていたために、各会社は平均負債コスト1%みたいなクソ安い負債コストでポートフォリオ拡大に爆進してきたわけだが、ドイツ国債10年金利2.2%みたいな信じられないレベルになってしまったことから、これにリスクプレミアム込みで+3%で新規負債調達コスト5%とかになってしまい、賃貸利回りを余裕で超える状態となってしまっている。
そうなると不動産会社は新規の負債調達ができなくなる・あるいは馬鹿高い負債調達コストでなくなく応じるかのどちらかになるわけで、その事態を避けるために物件売却を進める方向に舵を切っている。

こうしたことから、世界的に不動産業界は借入金利がほとんど変化していない日本を除けば完全に冬の状態となってしまっており、しかもピーク金利水準は来年いっぱいまでは少なくとも続きそうとなれば、不動産市況冬の時代は来年も続きそうということになる。
米国不動産関連企業は元々負債コスト3-4%みたいな数値であったことから、全部借り換えてもせいぜい負債コスト1.5倍とかいう数値だが、一方で欧州は1%が5%になるわけなので5倍の数値になるのでこれは米国より欧州の方が影響は甚大だろう。
こういうことからも欧州への投資は避けたいと思うばかりである。

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英ポンド炎上について配慮せざるを得なくなってきた米国政府

バイデン政権、ポンド安受け国際金融市場の動向監視-ホワイトハウス

先進国通貨に火の手が上がると、米国も一定程度配慮せざるを得ない可能性はある。

これまで先進国は全体として高インフレに対応するために利上げをして需要を下げることによって抑制していくために利上げをしてきていた。
しかし、ここにきてイギリスが先日のブログ記事で書いたが、大減税によるポンド急落を防ぐためにいくらでも利上げするという、いつの間にか通貨防衛的な理由に変わってしまった。

【過去参考記事】

矛盾したイギリスの金融・財政政策に投機筋が殺到


このままだとイギリスは通貨防衛のために11月に150bps、12月に50bpsとこれだけで200bps利上げみたいな無茶苦茶な金利パスになってしまっている。
新興国の一か国や二ヵ国の通貨がぶっとんだぐらいでは米国は金融引き締めコースを変えることは基本的にはない。
しかし、グローバルな流通通貨のうちトップ5以内に入る通貨のうち、ご存じの通り円買い介入が入り、さらに先日のブログに記載した通り英ポンドに問題が生じており、上記ニュースは米国の裏庭的な位置づけであるイギリスの通貨が炎上し始めていることについて、米国もまずいと認識し始めていることを裏付けている。

そして英ポンドは一度下げ始めると日本円ほど対応できる手段が限られていることが問題となる。
理由はイギリスが対した外貨準備高を保有していないことと経常赤字が大きいことにある。
東アジア諸国が異常に外貨準備高を蓄えているという事情はあるが、欧州は総じて見ると外貨準備高を東アジアほど蓄えている国というのは一ヵ国もない。
イギリスの外貨準備高はせいぜい日本の1/10しか保有しておらず、人口規模を考えると実質的には耐久度は日本の1/5しかないことを意味する。
これに加えてイギリスは先進国の中でもアホみたいに経常赤字が大きい国で、平気で経常赤字が対GDP比で4%ある国である。
なので、一度通貨売りアタックを食らうと緊迫した状態が続きやすい国のうちの一つである。
これに加えて日本のインフレ率はせいぜい2%後半という中で、イギリスはインフレ率10%という数値になっている。
米国みたいに基軸通貨でもないので普通に高インフレ・高水準経常赤字の組み合わせなので普通に為替は下落しているということになる。
(そういった意味では日本円の下落は金利差によるキャリートレード的な側面の方が大きいため、英ポンドの下落と相当程度要因が異なる。)
英ポンドは総合的にこうした理由から先進国通貨というよりは、やや新興国通貨的な側面が強く、結局足下の下落は下記要因と米国金融引き締めに起因している。

【過去参考記事】
新興国経済を見る上で重要な「国際収支の天井」という概念

これを踏まえると、現在市場で織り込まれている米国利上げ11月75bps、12月50bps、2月25bpsで打ち止めという路線からFRBがさらに過激化する芽は消えつつあると見込める。
 
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矛盾したイギリスの金融・財政政策に投機筋が殺到

英ポンドが最安値、追加減税方針でフラッシュクラッシュか

派手な矛盾行為やらかせばそりゃそうなるわなと。

これまで通貨でいうと円ショートが人気だったのだが、ここにきて他の先進国通貨も売ったろという流れが強まりつつある。
その中でも特に現在注目されているのがイギリスポンドである。
加えてイギリスでいうと国債のギルトも連日くそみたいに売られており、これは何が起こっているのかの解説が必要そうである。

まずイギリスは米国と同様に現在金融引き締めを続けている。
ただ欧州と同様にエネルギーインフレ主導であり、中身としては内需主導とはやや言い難いものの、見た目のインフレがすごく激しいということで金融引き締めペースは先頭を走っている。
最近では手持ちの社債売却にも踏み切るなど、QEも明らかにその場のノリで行っている雰囲気がある。

一方で、政府の方はエネルギー高に伴う景気減速に関して非常に警戒感を持っている。
ボリス氏が辞任して支持率を稼がなければいけない与党は大減税に踏み切ろうとしている。
大減税に踏み切るということはすなわち穴埋めのために国債を大量発行する必要性がある。

しかし、ここに大きな矛盾が生じてしまった。
政府が大量発行に踏み切ろうとしている中、中央銀行は見た目のインフレ抑制のために強烈な金融引き締めを行っている。
さらにいえばBOEはバランスシートを縮小させるために手持ち債券の売却にも踏み切っている。
中央銀行が金融引き締めもやっていて、手持ち債券の売却も行おうとしている中で、一方で景気減速やエネルギーインフレに対応するために減税政策を大規模に打ち込めば、それは市場に国債が大量にあぶれるので市場にショック的な金利上昇をおよぼしている。
きちんと市場に配慮する形で減税政策を打ちこむのであれば、少なくとも手持ち債券の市場売却というのは行わらずにやらなければいけないのに、それをガン無視して大減税に踏み切ろうとしたことから、これは矛盾をつけるということで英ポンド売り+ギルト売りという組み合わせが一気に人気トレードとなった。

そういった意味ではECBもそうなのだが、それ以上に大きな金融政策と財政政策で矛盾を抱えたまま突っ走っているのがBOE・イギリスの現状である。
これまでの投機筋のターゲットは円売りドル買いであったわけだが、円買い介入が入って来たことから米国政策金利ピークまで時間を稼がれてしまうと金利差要因で中々これ以上の大規模ショートはリターンが薄くなりつつあるように思われる。
なので、次なる投機筋のターゲットは英ポンド売りドル買い・あるいはギルト売りのどちらかに傾きそうな気配である。

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