村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2022年08月

BASFの株価から見る欧州ガス不足の深刻さ

ロシアのガス供給減と干ばつに苦しむドイツ経済、世界最大の化学企業も「工場停止の危機」

ガス不足はじんわりと欧州企業をむしばむ。

ここもとずっとロシアのノルドストリーム1経由でのガス供給がずっと減らされていて契約量の20%しか供給されておらず、もし冬に全供給遮断とかされた場合には現状はガス在庫をかなり確保しているが1月時点で在庫が尽きる懸念があるという話が続いている。

そのような中で欧州各国はガス使用量を20%~25%の範囲で削減する必要性を強調しており、大口使用者にはガス使用量を減らせと指導して回っている。
今回このガス使用量削減の最大の被害者はドイツの世界最大化学メーカーであるBASFであり、BASFの株価を見る限り相当悲観的な状況だと思われる。

【BASFの株価チャート】
タイトルなし

まさかのコロナ暴落を割れそうというところまで追い込まれている。
もちろんライン川の水量低下という複合要因もあるが、本命は冬に相当程度精製工場の稼働を落とさざるを得ないだろうと思われていることにある。
BASFは化学をやっている人なら常識中の常識である空気中の窒素を固定化する「ハーバーボッシュ法」を発明したことを起源とした会社で有名だ。
そのことからもわかる通り、BASFは事業の多くを天然ガスに頼っており、欧州域内のガス使用量では相当量を占めている。
なので、ドイツ政府も細々とした消費者の指導をしていたって埒があかないので、ガスの使用量が最大級に大きいBASFに対して何がなんでもガス使用量減らせと勧告し、BASFはそれに従わざるを得なくなっており、今年前半はともかく後半から来年頭までのBASFの決算はかなり悲惨なものになりそうだと思われる。

ただ、これは景気全体の落ち込みを示しているのではなく、欧州企業に代わって他の化学会社が高いマージンを取るチャンスだと言えよう。
特にその恩恵にあずかれるのは自国でガス調達ができる米国と産油国(ロシア除く)である。
原料を確保できるだけで、いくら原料が高くてもそもそも製造にさえこぎつけない会社がいるわけだから高いマージンが取れることはかなり確率としては高いだろう。
それを考えると欧州株が本来上昇してしかるべき分の幅は他の国に取られるということは火を見るより明らかだろう。

このことからも基本的に欧州株というのは現状買う必要性をあまり感じるものではなく、日本株・米国株以外にも欧州株はどうなのか・S&P500オンリーではなくオールカントリーで投資信託積み立てする必要性があるのではないかと考える人には、まあそんな難しいこと考える必要ないよねという回答になると思う。

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長年観察してきたGE帝国の崩壊についての所見

【参考書籍】

GE帝国盛衰史――「最強企業」だった組織はどこで間違えたのか

GEを長く観察していた身としては、ジャックウェルチ時代から歯車は狂っていたのではないだろうかと思える。

まだ上記書籍は読んでいないが、上記GE凋落の書籍が発売されていた、自分はGEをかれこれ10年近く観察していたということもあるので、GEがなぜこんなひどい惨状になったのかというのをあらためて書いていきたいと思い、今回この記事を書くことにした。
直接的な損害的な理由は2つある。


・後始末が完了してなく、不正会計が発覚した金融事業
ご存じの通り、GEというのはリーマンショック前までジャックウェルチの指導の下、金融事業を成長の柱として金融事業を急拡大していった。
その金融事業も何か専門というわけではなく、いわゆる総合投資銀行のようにありとあらゆる融資商品や保険事業に手を広げていった。
そこにリーマンショックがぶつかり、ホールセール資金調達に依存しきっていたGEキャピタルはAIGが潰れた後にGS・モルスタに次いで潰れるだろうと言われるまでに追い込まれた。
リーマンショックを超えた後は金融規制が強まる中で、GEキャピタルも規制強化の対象になるということでGEは金融事業の縮小に舵を切った。
しかし、あまりにも複雑かつ巨大すぎたことに加えて、元々祖業が総合金融事業ではなかったことから途中で不正会計が発覚し、とんでもない損失が出ていることが発覚し、リストラをしなければもうどうにもこうにもならないといった事態にまで追いつめられた。

・金融事業の成長終焉の穴埋めのためにM&Aに頼り切った実業回帰
金融事業が成長の柱として使えないということでジャックウェルチの後任であったジェフイメルトが製造業回帰として祖業である製造業に成長を求めた。
方向性としては正しかったと思うが、そのためにじゃあ実際にしたことというのが巨額のM&Aであり、これがいけなかった。
ジェフイメルト氏が進めたM&Aの中でもとりわけ大失敗だったのがアルストムの事業買収であった。
このアルストムの買収においては脇からシーメンス・三菱重工連合とフランス政府の介入が入ったために買収金額が吊り上がってしまった。
特にフランス政府からの介入はすさまじく、急激にM&Aの金額が吊り上がってしまったことに加えて、買収できる範囲も限定的となってしまった。
本来であればこの時点で止めるべきであったのだが、GEは買収金額引き上げと妥協によって買収を完了させてしまった。
しかしこれが大失敗で、その後のエネルギーバブル崩壊によってアルストムの買収は完全なお荷物となってしまった。
その後もベーカーヒューズの買収も大きな金額で行ったが、これもエネルギーバブルの崩壊で全くの無駄金となり、GEの財務基盤は大きく崩れることとなった。

大きくGEが凋落した原因は上記2つなのだが、この顛末となってしまった大きな原因はGEの成績不良者を一定割合でクビを切る会社風土が原因になったのではないかと思う。


成績不良者を一定割合自動的にクビ切りするシステムは一見すると成績優秀者から見たら合理的に見えるかもしれないが、このシステムを長い間継続するといつ自分のクビを切られるかわからない疑心暗鬼に陥っている従業員が増えていき、従業員が意見を述べなくなり会社が間違った方向に暴走するという事態が往々にして起こるようになる。
エンロンでもこの構図は全く一緒であった。

(ちなみに上記の内容は下記書籍を参考)
【参考書籍】

エンロン崩壊の真実

そういった意味では持続不可能な会社制度という基盤の上にメインとしていた事業の大幅な環境悪化+M&Aによって大きく傷を広げた+不正という複数のコンボが加わったことによって今のGEの惨状が生まれたものと認識している。

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ボルカー回顧録を読む限り、現代の高インフレと1970年高インフレは性格が大きく異なる

【参考書籍】

ボルカー回顧録 健全な金融、良き政府を求めて

ボルカーFRB議長時代と現在の経済環境をあらためて比べると、やはり色々前提は違うよねと。

なかなかインフレ上昇に伴う金融引き締めによる景気低迷というのが相場テーマとしては続いているということもあり、あらためて1970年代のボルカーFRB議長時代の厳しい高インフレ時代はどうたったのかというのを、上記ボルカー回顧録に書いてあることを中心に色々確認していた。
確認したところ、やはり相当経済の前提としている条件は異なり、比較した形1970年型のいつまでたっても高インフレが続くというのはなんとなくやりすぎな考え方なんじゃないかなあとあらためて思うことになった。

その根拠の一つ目としては、当時の高インフレの問題としてはいくら金利を引き上げてもマネーサプライが落ちてこなかったという話が合った。


マネーサプライという観点から見ると確かにボルカー時代はマネーサプライの代表格であるM2の伸び率を見ると10%近くあり、これがいくら政策金利を引き上げても中々落ちないという悩みがあった。

【米国M2の推移】
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そして今回のケースではコロナ不況によるなりふりかまわぬ財政政策と金融緩和策が強烈にM2伸び率を押し上げ一時期前年比25%みたいなめちゃくちゃな伸び率となったが、これについては現在一気にFRBが金融引き締めを行っている効果もあり、7月の数値時点で前年比5.2%まで伸び率は鈍化している。
8月はさらに鈍化していることは想像しやすいので、ほぼマネーサプライという観点から見るとインフレ率はそのうち下がるでしょという素地は出来上がりつつあるように思う。
これからQTもあるわけなので、M2の年率伸び率は一桁前半台にまで落ち込むことはあと数ヵ月内で訪れそうだということも容易に想像できる。
ボルカー氏は基本的にインフレはマネーサプライと連動する可能性が高いと述べていることを考えれば、遅かれ早かれインフレ率鈍化はもう目前に来ているんではないかと思う。
ちなみにボルカー時代の当時なんで不景気でいくら金融引き締めやってもマネーサプライの伸びが一向に鈍化せずインフレ率が高い状態が続いていたのかというと、ボルカー氏もわからないと書いてあったので、ボルカー氏がわからないならまあわからんわなということで理解を諦めた。
(諸説ニクションショックとかベトナム戦争による過剰需要とか財政支出とかそういう話はあるものの・・・)

また金融市場がなぜ現在米国の利上げが今年いっぱいでほぼやりきるだろうという予想から動いていないかというと、やはりこのマネーサプライの伸び率がもう縮小すべきところまで縮小しているからだという帰結だからではないかと考えている。

加えて基本的に米国の景気サイクルは住宅建設と在庫の積み増しにあるとボルカー氏は述べており、個人的にもやはりそこだよねと思う次第である。


今回のサイクルではどうなっているかというと、過剰な住宅建設と在庫積み増しが起こる前に需要が低金利によって爆発し、そして積み増す動きが出る前に急激な金融引き締めで需要が低下していった。
なので過剰な住宅建設も在庫積み増しも発生しないまま一サイクル終わってしまっているということになっている。
ここらへんの米国景気指標の見方については下記過去記事を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
投資の役に立つ統計から米国経済の状況を読み解く方法

以上を考えると、その他の米国経済ファンダメンタルズを考えると今の見た目のインフレ率だけでぎゃーぎゃー不安を煽り立てているのはやはりどうにもしっくりこないと思う次第で、とりあえずショートを焼いた株価V字回復が一旦終わったこの後はEPS成長にしたがってじりじりと株価がじれったい形で上昇する展開を前提としたいと思う。
(まあ外れるかもしれないが)

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中国のLPR引き下げでは市場参加者は満足せず

中国利下げ22年で3度目 振るわぬ景気、ゼロコロナが壁

市場の認識に対して出遅れているので無駄。

昨日中国が昨日LPR(最優遇貸出金利)について1年物0.05%、5年物0.15%引き下げたということで、FRBの利上げ終着点が大分見えてきている中で、加えて中国な壊滅的に内需が駄目になっていることから一応金融緩和姿勢を見せている。

しかし、中国本土株・香港株を見る限り、引き続きほとんど効果はなさそうだというのが既に市場コンセンサスになっている。

【香港ハンセン指数のチャート】
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なぜ利下げしても効果が出ない可能性が高いかというと、利下げして資金供給しても地方政府・銀行が市中に貸出という形で金が出回るほど誰もリスクテイクできない状態だからである。
なぜリスクテイクできないかというと、やはり全て習近平が悪いの一言に尽きるわけで、この考え方については下記過去参考記事を読んでもらいたい。

【過去参考記事】
中国の習近平独裁による集団指導制の崩壊と中国株式市場に与える悪影響

現状の段階で中国が米国に代わる世界の覇権国にはなれそうにない3つの理由

しかも時間が経てば経つほど経済悪化に伴い、必要な経済対策措置のハードルが上がるわけで、現状中国資本市場からどんどん市場参加者は減っていると考えるべきだろう。
じゃあどうしたら経済V字回復・株をがさっと買えるほどリスクテイクできる良い相場環境に中国はなるのだろうか?
それについても書いていきたい。

現在の中国で景気がV字回復するには中央政府がなりふりかまってられないと覚悟を決めて自腹を切った対応策を出すしかない。
具体的にどういう政策が必要かというと、不動産開発業者ローンを中央政府が保証することである。
こうすれば地方政府・銀行は喜んで融資・住宅ローンの提供も再開するはずだが、もちろんとういった不動産開発業者なら中央政府保証をつけるのか、どれぐらいの期間行うのか、モラルハザードの心配はないのかといった制度設計について細心の注意を払わざるをえない。
加えて、中国では政治派閥争いが激しいわけで、この議論をする中で激しい政治バトルが繰り広げられるのでそう簡単に決まるということを予想するのは難しい。

なので、たしかに上記日経新聞の記事の通り今年になって3回利下げやっているのだが、内需経済減速に対して引き続き有効策とはなっていない・ 中央政府が責任回避を続けるようなやり方が続いている間は、こんなちまちました金融緩和では先進国対比でアンダーパフォームする展開が続くだろう。

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S&P500の下値目処を4150~4200と予想

下値目処がどこらへんかを予想することが目下重要だろう。

当ブログではこれまで一旦S&P500の天井は4270~4370の範囲、特に4300の部分までぐらいがV字回復目処になろうと書いてきて、概ねそこにきっちり到達してきた。

【過去参考記事】

S&P500のV字回復目処は4270~4370を想定


ここまでの株価上昇エンジンは一つは狼狽した個人が投げたことによってそこまで下がらなくてもと思われるところまで株価が下落したことと、NAAIM指数でもわかる通りショートや株のアンダーウェイトをふっていた機関投資家がポジションを戻してきたことによるものということがわかっている。

【過去参考記事】

NAAIM指数から見る足下のリスク選好度別投資家のポジション推移

クレジットでもハイイールドが利回り10%・投資適格が利回り5%みたいな数値を叩き出してきたことから、クレジットものについてもこれまで市場参加者がフリーズしていたのが、この辺なら手を出しても良いだろうという動きが見えたことも大きいだろう。

そのエンジンがNAAIM指数を見る限りは一旦尽きてしまったし、多くの人から見えている抵抗線による跳ね返しや集中していたオプションのところが剥げて天井となり、一旦調整するという形になった。
新規建設許可件数の予想より強かったことから、見た目の住宅統計は弱いものの在庫が少ないことから少しでも金利が下がれば商売をしてやろうと考えている人がわんさかいることが証明されたことにより、金利低下が見込みづらくなっている。
ここまでが概ね相場が一旦の天井を打った原因となった。

さてでは今考えなければいけないのは下値目処である。
個人的には下値目処を4200ちょい下らへん、チャート的に見えやすいところでいうと4150までを下値目処と考えている。

【S&P500のチャート】
タイトルなし

理由としては、結局下値で怖くなって投げ打ったりベアETF買ったような個人が許されるようなところまで戻るほど皆がかなり警戒感が強い中でなることはないだろうと思うことが一つである。
二つ目にバカスカ売られていた優良グロース銘柄について明らかにここならとりあえず買い向かっていいんじゃないのと考えて資金を入れている長期投資家がいるような出来高が数多くの銘柄で観測されていることから、やはりこの個人投げ売りゾーンでは長期投資家が玉を積極的に拾いに来る確率が高いだろうと思える。
三つ目にファンダメンタルズ的に買える材料がないという人がいるが、そういう人に限って今現在米国の多くの企業がリストラモードに入っていることを理解していない。
このまま利益が目標達成できない状態が続くと米国企業はトップが無能としてクビを挿げ替えられる可能性が高く、グーグルなどでも利益目標必達ということで生産性の低い社員のクビを切る可能性について言及してきている。
つまりここからさらに経済の雰囲気が悪くなるならリストラを急加速するわけで、さらにそうなるとこれまでFRBが雇用ひっ迫を理由として進めてきた金融引き締めもその正当性を失う。
そのため、意外と金利上昇を理由とした下げ恐怖はそこまで大きくはないのではないかと思う。

【過去参考記事】

クビ切りと労働賃金の伸び率低下が米国株価上昇のカタリスト


以上から4150~4200のラインからゆるやかに再度株価は上昇に転じることが期待できると考える。
ただし、その上昇ペースはこれまでの急角度の回復ではなく、じんわりとした皆半信半疑での動きになることからみんなが一気に興奮するような感じになならないと思われる。

【S&P500株価推移のイメージ図】
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個人的にはこの4150~4200のラインでもう少しポジションを足していきたいと思うので、ゆったりと構えながらポジション積み増しを行いたいと考えている。
まあ上昇は理性・下落は恐怖で動くので、どうしても下落は行き過ぎることがままあるわけで、引き続き余裕を持った投資態度が求められると思う。

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村越誠

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