村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2022年07月

ドイツ国債2年金利を見る限り、ECB金融引き締め路線は否定されている

欧州の国債金利はどこかの年限がミスプライスされているような気がするんだけどねえ。

足下ドイツ国債2年のチャートを見ていると、急速にECBの金利引き上げ動向に疑義が持たれ始めているように思える。

【ドイツ国債2年のチャート】
タイトルなし

上記を見ると債券投資家はECBの利上げ路線についてかなり懐疑的というよりは、既に言うことを真に受けていない状態にあるように思える。
本当に利上げ1%まで持っていけるのであれば、ドイツ国債2年が0.4%などという数値には本来ならないはずで、数週間前にあった1%という金利になるはずである。
利上げ1%まで瞬間的に持って行った挙句すぐに0.2-0.4%ぐらいの範囲にまで利下げしていくのか、そもそも最初から1%になんてなるわけなくて、せいぜい0.5%がせいぜいなんちゃうかという見立てになる。

この動向のヒントとなるFRBの政策金利可能性について確認したい。
現在FRBの利上げ可能性については7月75bps、9月50bps、11月25bps行って12月以降は利上げなしor利下げになっていくという見方に変更してきている。

【米国金融政策プロバビリティ】
https://www.cmegroup.com/trading/interest-rates/countdown-to-fomc.html
タイトルなし


しかしここ数日は米国の経済指標で軟調なものが発表されるといきなりピーク金利が3.5%が3.25%にダウンしている。
年内に政策金利はピークを迎えるというのが今の市場コンセンサスなのだが、それは11月であり、あと4ヵ月ある中で経済指標でさらに軟調なものが出てくるとさらにピーク金利が下がる可能性がある。
7月27日の75bps利上げはダンディールなので、影響があるとすれば9月からのものになる。
仮に9月25bpsしか上げられなければ、自動的にピーク金利は2.75%になるだろう。
そうなるとピーク金利は3.5%→2.75%になるわけである。
つまり75bpsもピーク金利が下がるのである。

ECBの場合一発75bpsの利上げは難しく、9月50bps、10月25bps、12月25bpsで最終金利着地点は1%というのが米国政策金利のピーク3.5%の時の予想であった。
しかしFRBの金利引き上げ幅が75bpsも縮んだ後に、果たして賃金インフレも大きく米国に劣後する欧州が1%のピーク金利が維持できる可能性は低く、普通にFRBが引き下げた分だけピーク金利は下がることになる。
つまり1%→0.25%という話になる。
そうなるとドイツ国債2年の0.4%という金利はその可能性を織り込んでいるというのが合理的な話になる。

しかしそうなると奇怪なのが、欧州金利のイールドカーブである。
米国の金利カーブは既に2年2.97%が一番高くそこから先は逆イールドになっているので、既に短期国債がほぼ金融政策を織り込んだ上で先々の金利引き下げを織り込んでいるので合理的なカーブになっている。
一方で、ドイツ国債のイールドカーブは3年0.45%、5年0.7%、10年1%と利上げも利下げも織り込みがなにもかも中途半端である。
もし利上げが最終到達地点1%となるならば2-3年の金利が限りなく間違っているし、一方で利上げ限界点は1%にいかないというのであれば7年以降の金利が間違っていることになる。
それとも長期はターミナルレート付近に居ついて、短いところは当面の金利ピーク付近になるというあまりにも都合が良い論理なのだろうか?

いずれにしろ欧州金利はどこかの年限が間違っていると考えるべきなのではなかろうかと考えている。
個人的にはやはり利上げ路線が基本間違っており、長期ゾーンがブルフラットする流れになるのではないだろうかと考えている。

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中国政府の不動産デベロッパー救済ファンドは焼け石に水

China plans to set up real estate fund worth up to $44 bln -source

ポジティブだが、所詮焼石に水。

中国にてバンバン不動産デベロッパーがぶっ潰れているわけだが、これによって未完工で放置されている住宅が急増してしまい、さらに住宅ローン契約者が支払いを拒否する事態が拡大する中で、中国政府もこのままだとリアルで民衆暴動が起きるのではないのかと警戒している。
中国ではGithubには既に住宅ローン不払い運動を起こしている物件について情報が集められており、その動きが大規模になりつつあることがうかがえる。
(なお中国からは既にアクセスできなくなっている)

https://github.com/WeNeedHome/SummaryOfLoanSuspension#%E6%95%B0%E6%8D%AE%E6%9D%A5%E6%BA%90%E7%BB%9F%E8%AE%A1%E4%BB%A5%E5%8F%8A%E5%8F%91%E8%B5%B7%E4%BA%BA-%E5%B7%B2%E8%A2%AB%E5%B0%81%E7%A6%81

とりあえず未完工住宅物件を減らすために不動産デベロッパー救済ファンドを立ち上げようという動きを上記ニュースのように見せている。

しかし、その規模は440億ドルと日本円でおおよそ6兆円である。
パッと見かなり大きい対策だと思えるかもしれないが、エバーグランデだけで負債は35兆円ある。

【参考ニュース】
中国「恒大集団」の経営危機に広東省政府が介入

さらに上記Githubで確認できる住宅ローン未払い抗議運動が起きているプロジェクトのうち25%ぐらいがエバーグランデ物件な模様で、未だ次々と中国不動産デベロッパーがデフォルトしていることを考えると、この範囲はさらに規模が大きくなると思われる。
これにシマオやらサナックやらカントリーガーデンといったでかい不動産デベロッパーのデフォルト分も加わってくるわけなので、6兆円ぽっちで現在の中国不動産市場の崩壊が止められると考えるのは浅はかだと思う。
やはり、長い時間と膨大な金をかけて解決するしかないわけで、どんどんおかわり不動産デベロッパー救済支援は行われていくだろうと思っている。
またその過程では金額が大きくなればなるほど政治的闘争やコンフリクトが大きくなるので、政治パワーのバランス変化なども生じる危険性がある。

さりとて6兆円というのは絶対金額から見れば少なくない金額である。
そういった意味ではこうした救済ファンドというのは市場流動性供給による中国における中銀バランスシートの拡大には寄与しそうだが、不動産市場の崩壊を根本的に解決して中国経済を本格浮上させるようなものにはならないと考えられるだろう。
つまり、引き続き中国株は先進国株に対してパフォーマンスは劣後する状態が続くということで良いだろう。
また、中国株が劣後し続ける限り、新興国株でウェイトの高い部分が死んでいるわけなので、引き続きパフォーマンスは先進国株>新興国株と考えることも引き続き妥当な状況が続くと思う。
というより、一切新興国株を保有する意味というのを感じない状況が続くだろう。

とにもかくにも新興国株は中国株次第ということなので、新興国株に投資したいと思っちゃっている人は下記記事を読んで再考してもらいたいところである。

【過去参考記事】
中国の習近平独裁による集団指導制の崩壊と中国株式市場に与える悪影響


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中国の住宅ローン契約返済拒否者に対する徳政令的な返済延長を認める事案は危険な兆候

China Weighs Mortgage Grace Period to Appease Angry Homebuyers

一歩間違えるとかなり危険な政策。

上記ニュースでは昨日のブログで中国にて住宅未完工物件の住宅ローン契約者が返済拒否したことに対して、なんと返済猶予期間を設けるという形で実質的に返済拒否を是認してしまったと報道されている。

これは一歩間違えると非常に危険な政策である。
これまで銀行はPBOCや李克強から住宅ローンを積極的に融資しろとせっつかれていたが、習近平派閥から不良債権を増加させたらクビあるいは死刑と言われており、不用意にローンを出したら不動産デベロッパーが死んで住宅未完工になって宙ぶらりんになる可能性があったので、融資を積極化させることはなかった。
ちなみに不良債権が増加したら死刑になることあるのかと言われると、過去Huarongという不良債権会社の元CEOは野放図に不良債権やハイイールド社債を買い入れまくったということによって大量の減損処理にせまられたことを理由に、表向きは他の罪状を被せて死刑ということで粛正した。

【過去参考ニュース】

中国の不良債権買取会社の問題は一旦火消しの方向


そのような中でいきなり住宅未完工物件の住宅ローン契約者の返済延期を認めるというニュースは銀行側にとっては青天の霹靂だろう。
今回住宅ローン返済拒否者は大規模な抗議活動を行うことによって返済延期を勝ち取ったわけだが、もしさらに住宅未完工物件についていつまでも完成しない場合はさらにゴネて住宅ローン契約自体を無効化させるよう要求することも視野に入る。
基本的に中国人はこうした契約について法的履行について人治国家ということもあり意識が希薄であり、もし困っている人が大量にいるのであればゴネることによって政府から何か譲歩を引き出そうというのは伝統芸であり、理財商品が焦げ付きそうになった時とかは何回も行われた芸当である。
今回の成功に乗じて、最終的に契約無効を勝ち取るための動きが出る可能性はさらに不動産市場の悪化が見られれば出ることも想定しなければいけない。

そして最大の問題はこの徳政令的なものに対して中国共産党は銀行に対してちゃんとサポートしてくれるのかということである。
具体的に言えば、不良債権認定の後ろ倒し・該当ローンの政府保証・穴埋め分の支援金などがそれに該当する。
政府サポートがなければ損は全て銀行が被ることになる。
今回損失を受けるのはしょうがないが、追加で損失を受ければ今度こそ自分のクビが飛ぶ可能性があることを考えると、銀行の住宅ローン貸出態度はさらに厳格化することが想定されるだろう。

なぜこのような頭の悪い政策が出てくるかというと、政策を全て決定している習近平とその直属のYesマンが全員馬鹿だからであり、その馬鹿に中国が今支配されているからである。
中国の銀行の株主の利益なんて全く考えていない政策であり、株主は再度このまま株投資ポジションを持っていてよいのかどうか決断にせまられることになるだろう。
引き続き中国習近平政権の愚かさについては下記考え方を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
中国の習近平独裁による集団指導制の崩壊と中国株式市場に与える悪影響
 
現状の段階で中国が米国に代わる世界の覇権国にはなれそうにない3つの理由


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米国中古住宅販売を見ると金融引き締め限界も目前

米6月中古住宅販売件数、前月比5.4%減の年率512万戸―市場予想下回る

中古住宅販売を見る限り、利上げストップは目前。

米国のインフレ率の中でも家賃に影響を与える住宅統計について、やはり住宅ローン金利がリーマンショック前の水準を超えているということもあり、住宅価格の上昇も相まって販売は市場予想を下回るしダウントレンドとなっている形が明らかとなっている。

【米国中古住宅販売推移のチャート】
タイトルなし


米国の住宅統計は米国経済の雰囲気を占う上で最上位レベルで重要なファクターであるため、中古住宅販売が鈍化していることは明らかに米国経済が減速していることを示していると考えることができるだろう。
この辺の米国経済についての観察の仕方は下記を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
投資の役に立つ統計から米国経済の状況を読み解く方法

単に販売が減少しただけでなくこれまでもう在庫がなくてしょうがなかった中古住宅在庫についても、足下販売が鈍ってきてくれたおかげでこれまで減少が続けていた在庫がようやく前年比イーブンぐらいまで増加してきてくれた。
こうしたことを鑑みれば、まず前年比+20%みたいな馬鹿げた住宅価格の伸びは大きく鈍化することになるだろう。
理想は給料の伸び率とインフレ率を考えれば5-10%ぐらいの範囲に落ちてくれれば経済にそこまで大きな悪さをしない範囲と認識されるようになるだろう。
そして住宅価格の伸びが鈍化して、タイムラグが生じて家賃の伸びも鈍化するので、インフレピークアウトを市場が織り込み始めることも予想しやすい。

ちなみにこんだけ中古住宅販売落ちるとこれってリーマンショックみたいなことが起こるんじゃないのと思う人がいるかもしれないが、今とリーマンショックの時で全然経済ファンダメンタルズが違うので、どこらへんが違うのか理解できないという方は下記記事を読んでもらえれば理解できると思う。

【過去参考記事】 
景気のハードランディングはどのように発生するのか?米国景気はハードランディングするのか?

最終的にこの住宅販売の低下がインフレ率鈍化に効き始めれば、FRBは中古住宅販売が過激に落ちない程度に政策金利を引き下げてバランスを取りにいくだろう。
いや、住宅ローン金利自体は米国債の5~20年ぐらいの年限を参照して決まるわけであるから、あるいは自然とマーケットが中古住宅販売が落ちない水準になるだろうと思われるレベルまで先んじて米国債金利が買われるという動きになり、それをFRBが後から追随するという流れになるストーリーの方がきれいかもしれない。

いずれにしろ金融引き締めのピークの兆しは既に観察できる範囲になってきていることは意識しておきたい。

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先行き予想を放棄して責任逃れに終始したECB金融政策決定会合

https://www.youtube.com/watch?v=j1SVcroPuQM
↑ECBの金融政策決定会合の会見ビデオ。

終始中身がなかったのと、お前ら役割放棄してないか?

注目のECBの金融政策決定会合が出てきたが、利上げは予想25bpsに対して50bpsの利上げを行い、とりあえずマイナス金利は辞めましたという形になった。
また9月の決定会合についても引き続きインフレ上昇が厳しいわけなので利上げ方向で見ていると述べられた。
イタリアソブリンなど一部脆弱国のソブリンが許容できないで売られる場合にはTPIというツールを駆使して買い入れを行うことによってそれを防ぐ手段を整備し、これによって50bpsの利上げを可能としたと説明(それおかしくないか?と思うが)
ちなみに会見段階では詳細はリリースされず、多分細かいところをつっこまれたくなかったんだろうなと思いながら、その後のリリースを見ると1-10年の国債・社債買い入れを実質的にはECBが好きな時に好きな量だけ資金投入できるという形になっていた。
何でもとは聞こえはいいが、ようは本当は使いたくないが変に売られるのは嫌なので口先介入以上に脅しをかけておきたいという話なのだろう。
そしてフォワードガイダンスについては今後は発表せず、柔軟にデータを見ながらどういう対応するかを決めると発表した。

個人的に会見を見ながら思ったことは、なんとも中身のない会見だったなあと思うばかりであった。
全てがふわっとしていて、インフレも見た目の数値の話しかされておらず、フォワードガイダンス撤廃も個人的にはECBのお偉方の責任逃れのように見える。
欧州内インフレの大半がエネルギー価格上昇などの外部要因がメインであり、ECBの金融政策ではコントロールできない範囲にインフレの原因がある。
米国のように自律的な家賃や賃金の上昇によるものではない。
このインフレに対してECBは金融引き締めという形で現在対応しようとしているわけであるが、インフレ率自体が相当な遅行指数であることから判断を間違えやすい可能性が非常に高い。
それに既に欧州はベースのドイツ国債金利がいきなりジャンプしたことから借入コストがここ数年では比較にならないレベルで上昇してしまっており、不動産関連にかなり圧力がかかっている。
つまり米国以上に激しい景気減速に見舞われそうな状況にある。
そのような中で強いフォワードガイダンスを示して判断を間違えればそれは責任問題に発展する。
そのような責任は取りたくない・予測不可能なんだから思い切ってフォワードガイダンスなんてもうなくして、毎決定会合でデータ次第で決めるってしておけばええやんというクソみたいな責任逃れの方便だと言えよう。

つまり、実質的にはOISや金利先物を見てどうするか決めますよーみたいなクソみたいな話で、いかにも責任を取りたがらない欧州貴族の人達仕草だなと思う次第である。

発表当初こそ欧州金利全体が上昇したが、その後米国でフィラデルフィア連銀景況指数が市場を大きく下回ったことから米債金利が大幅低下すると同時に欧州金利もイタリア債を除いて金利低下に転じて、完全に自主性がない動きとなった。
(イタリアは政変のリスクオフで金利上昇)
つまり、欧州はもう独自要素で動くことはなく、後は米国のインフレ・金利動向さえ見ればいいという段階になったということであろう。
つまり市場予想よりも基本的にタカ派になることはもう考えづらいということになると思う。

一連の流れからユーロ高ドル安となり、これまでドル高が市場の癌と見られていたものが少し和らいだことから米国株式市場の雰囲気は好転した。
引き続き以前のブログ記事に書いた通り個人投資家がぶん投げてしまったラインであるS&P500が4200のラインまでの速い回復を個人的には見越している。

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