村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2022年06月

米国債・イタリア債の金利上げどまりで相場に底入れ期待

米債券市場、「歴史的」な下落で見通しは改善-PIMCOが指摘

米国債・イタリア債の無節操利回り上昇にようやく天井感か。

足下でようやく先進各国の国債金利に天井感が出てきている。

まず一つ目はやはり米国債10年3.5%に天井ではないかという見立てが台頭し始めている。
この大きな要因はやはり30年住宅ローン金利の水準が6%に到達し、リーマン前まで遡らないとなかった金利水準になってしまっている。
これによって住宅需要が順調に冷えており、住宅価格高騰にようやく歯止めがかかったように思える。
2021年に住宅需要があまりにも好調で金利高という話をブログで書いた気がするが、今度はこれの逆パターンがようやく見えてきているということにある。
さらにブレークイーブンも3%以下に落ちてきており、前回CPI発表を全否定する動きになった。
米国債利回りとブレークイーブンの数値については自分の個人HPにまとめているので、参照してもらいたい。

【参考ページ】
https://muragoeinvest.com/ustmarket

もう一つはイタリア債をはじめ、欧州国債もECBに対しててめー勘違いしてんじゃねーよという動きが見え始めた。
イタリア債については以前ブログで書いたが、ECBが救済ツール作るといって一旦口先介入に成功し、7月にちゃんと発表するんですよねという待ちになっている。
また米国と違い欧州は賃金上昇は見られておらず、そのような中で1.5%のターミナルレート超えるような政策金利引き上げなんてできるわけねーだろいい加減にしろということで、OISで織り込まれてた来年2%超えの利上げが既に1.5%までバックしている。

これまでの相場の下落はリスクフリー金利の上昇による割引率の上昇から発生するPERの低下と、国債金利の居所が不安定なために社債市場がフリーズしてしまい思うように企業が資金調達できなかったことが下げの主要因であった。
国債金利の居所さえしっかりしてくれば社債市場では利払い能力的に問題がない企業は資金調達を再開してくるだろう。
資金調達が進むことは非常に良いことである。

【過去参考記事】
米ドル建てクレジット市場の構造と現実世界に与える影響についての基礎

一部では米国景気ハードランディングを見ている投資家もいるみたいだが、個人的にはリーマンショックと全くファンダメンタルズ背景が違うことを考えるとその考えは悲観的過ぎると見ており、そういった悲観的すぎる味方はしない方がよいと思っている。
ここらへんの考え方は下記を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
景気のハードランディングはどのように発生するのか?米国景気はハードランディングするのか?

以上を考慮するとようやく米国株については下げの大半を済ませたと考えられるように思うが、金利水準は以前と比べると高いことを考えると時間分散・余力を十分に取りながらの形で米国大型株限定で取り組むのが一番無難なように思える。
日本株でも大型株で選別すればそれなりじゃないかなと思う。

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コモディティにも選別色が強まり始める

週次コモディティ動向:景気後退への懸念が原油を下落させ、金は安定的に推移する可能性

コモディティも銘柄選別が働き始めてきた。

足下で世界的な景気減速懸念感があり、これまで超活況であったコモディティ群に価格調整が見られ始めている。
ただ、ファンダメンタルズを考慮すると下値余地などについてコモディティによって大きく異なるため、主要コモディティを確認していきたいと思う。

一番駄目なのはやはり鉄鉱石だろう。

【鉄鉱石の価格チャート】
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理由は明白でこのブログでは再三言及している通り中国の不動産市場が死んでて新規建設なんてこれっぽっちも進んでいないからである。
元々鉄鋼自体の需要が半分近く中国で、これの大きな割合が不動産建設で占められていたことを考えれば当然の話だ。
加えて中国政府も金欠状態であることからインフラプロジェクトも進んでおらず、鉄鋼需要なんて盛り上がるわけではなく、それに加えて米国景気も減速懸念なんて生じたら鉄鉱石いらんやろとなるのは普通の考え方である。
なのでコモディティ価格の中で調整を先導しているのは鉄鉱石という認識を持ちながら相場を見ると良いだろう。 

銅も同じように需要の半分近くが中国で、またインフラ建設に使われるという特性があることから、ここも米国景気減速懸念が生じた時点で価格調整が生じるのは鉄鉱石と同じ原理だ。
ただし、銅の場合はEV・スマートフォン需要があるということから鉄鉱石と比べると需要減少幅は小さくなる見込みなので、鉄鉱石ほどは下がらないだろう。

【銅価格のチャート】
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食料品価格はパーム油に引きずられている。

【パーム油の価格チャート】
タイトルなし


パーム油の輸出はほとんどがマレーシアとインドネシアで占められているのだが、ちょっと前にインドネシアで禁輸していたらどうやらマレーシアが増産してきてインドネシア内で在庫だぶつきが見えてきているらしく、これによってパーム油価格がまた価格水準の絶対値は高いものの調整がかかった。
これによって同じ植物油脂用途で使われる大豆・とうもろこしなどがひきずられ、小麦もそれに釣られるように調整している。

【参考ニュース】
パーム油先物、5カ月ぶり安値 輸出増の思惑で

食料関連は1年の中で複数回生産トレンドが変化したりするということもあり、中々予想が難しく、現在は食料は需給自体がひっ迫しているというより物流面の問題である側面が大きかったりするため、食料品に相場を張るのは中々難しいところがある。

最後にエネルギーである。
原油をはじめ、異常な先物カーブの開きが是正されている過程にあり、未だ相当程度期先と期近の価格スプレッドが大きいことを考えると単に行き過ぎの調整に過ぎないと考えている。

【原油価格のチャート】
タイトルなし


植物油脂の調整と米国景気減速懸念があるが、消費が特定地域にすごく偏っているわけではないため鉄鉱石・銅などの金属系コモディティに比べると下値余地はそこまでという気はしている。
逆に石炭は欧州で再び石炭火力が動くということで高値維持という見立てまである。
なのでエネルギーは金属・食品と比べると優位的な位置にいると考えている。

このように一口にコモディティといっても、ファンダメンタルズによって足下の調整具合にはかなり差が生じているので、コモディティに取り組むとなっても銘柄選別は重要なフェーズになりつつあり、ポジション的に良い順に言うと、エネルギー>食料品>産業用金属>鉄鉱石みたいな感じになると思う。

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金利のない世界から金利のある世界への移行はレバレッジに大きな費用を求められることになる

金利のない世界での投資しかやってこなかった人は金利の勉強が必要になりそう。

世界は長らく金利のない世界をずっと体験してきた。
個人的にも金利のある世界というのを体験したのは2008年が最後で、その後はずっと金利のない世界が続いていた。

今振り返るとこの金利のない世界というのは2008年までの投資過剰と中国の意味不明な採算度外視のモノの供給というセットが大きな要因だったように思う。
この二つがあわさったことによって、一部食料を除けばほとんどのモノが生産過剰に陥っており、ずっと低いインフレ率が続いてきたということにある。

しかし中国も財政的な余裕がなくなりこうした赤字生産をできなくなり、過剰投資もリーマンショックで懲りた人達が長い間投資をしてこなかったために引き締まり、最終的にコロナによるさらなる生産調整が今の事態を招いたということになる。

以上を考えると今後我々は日本を除いては金利のある世界に戻ろうとしている。
確かに2023年後半になってくればインフレ率が下がってきて、米国はともかくとして欧州はそもそも景気悪いやろということでゼロ金利に落ち着く可能性はなくはないが、今それを考えるのは不適切だろう。
金利のない世界の投資と金利のある世界の投資は異なることを認識しないといけない。
金利のある世界は常に自分の手持ち以上の資金を使おうとしたときは金利というショバ代を払うことになる。
まあもちろん長い年限で借入をする時はこれまでも金利を払ってきたわけだが、これまで短いところでタダ同然で得てきた資金は急にショバ代を求められることになる。
ショバ代を求められるようになると同時に、ショバ代を賄うことができなくなるようなプロジェクトには投融資されなくなる。
これによって今までどう考えても生活していく上で必要性のかけらも感じられず、どう考えても過大評価されてきた企業のバリュエーションは大きく減価し、回復見込みは立たなくなった。
今後はこれまでのような赤字垂れ流しまくりでいつまでたっても黒字化しないような投資は大幅に減少し、PE業界は突然冬の時代に巻き込まれたように思う。

まあとにもかくにも我々投資家が考えなければいけないことは、これからは自分の手持ち以上の投資をしようと思った時はエントリー料金が取られるということを意味するため、安易なレバレッジをかけることはなかなか適切なリターンにつながらないことを意味する。

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フォーサンのドル債価格急落から見る、未だ不況対策が足りていない中国経済

中国不動産セクターのストレス、復星国際に波及か-ドル建て債急落

底抜けは回避できているものの、アップサイドはやはり限定的。

当ブログでは以前に中国はこのままではGDP成長率が米帝以下になるというニュースに嫉妬した習近平がこれまでのしばきあげ政策から多少経済対策もしぶしぶ行うようになったと書いてきた。

これによって一旦香港株・中国株ともに無節操な底割れは一応止まり、一部セルサイドやバイサイドからは買いの好機と発言する機会も見れた。
しかし上記の復星国際(英語名:フォーサン)のドル債は3-4年債付近が80-90ポイントぐらいあったのがいきなり50-60ポイントみたいな、市場参加者はデフォルトすること前提みたいに捉えている動きをしている。

フォーサンはこれまで去年半ばから始まったエバーグランデをはじめ大量デフォルトしてきた住宅デベロッパー専業の会社ではなく、どちらかという幅広く投資を手掛けるコングロマリットファンドみたいな会社であった。
フォーサンのCEOは一時期は中国のウォーレンバフェットとも呼ばれるぐらいぶいぶいいわせていたこともあり、その投資の幅広さは容易に想像できるだろう。
しかし、2017年にあまりにも調子に乗りすぎたのか、いきなりCEOが当局に拘留されて行方不明になるという事態になったりと何かとお騒がせな企業でもあった。

【参考ニュース】
中国のバフェット率いる復星国際株が急落 「失踪」に戦々恐々

つまり、これまで不動産だけが死んでいたものが、その他にも波及してしまっていることを示している。
そりゃ民間不動産デベロッパーがほぼ全員デフォルトしそうなのに、習近平の頭が馬鹿なので輝かしい中国はちょろっと財政対策を出したり命令すれば状況の悪化を止められると思っているのか、はっきり言えば「Too small, Too little」な不況対策しか出ていない。
米国が大量にモノを輸入してくれているから外需企業が大丈夫なのが唯一の救いで、内需企業はひたすら状況が悪化している。
現在の不況を本気で止めようと思ったら中国は大幅な財政赤字を伴い財政支出・ゼロ金利・量的金融緩和・かなり大幅な人民元切り下げのうちどれかを採用する必要性がある。
しかしどれも採用されておらず、中国経済はひたすら習近平に殺されるという状態が続いている。
この辺の考え方は下記記事を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
中国の習近平独裁による集団指導制の崩壊と中国株式市場に与える悪影響

そしてフォーサンの件はそうした殺されている中国経済を如実に表したものであり、未だ中国内のクレジットクランチは止まっていないことも意味している。
クレジットクランチの概念については下記を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
株式投資において最も恐ろしいクレジットクランチとは何か?(リーマンショックなどの過去歴史の解説付き)

結局今の不況対策では米国への輸出一本足打法なことから香港株・中国株が暴騰するということは考えづらく、一時的にアウトパフォームするにしろ中長期的には世界の株の中ではアンダーパフォームする流れが続くだろう。

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現実に起こり得る欧州エネルギー危機

ドイツ、苦肉の石炭回帰 化学・ガラスで生産停止危機

一応今の欧州エネルギー危機の振り返り。

多くの人は知っていると思うが、現在の欧州はエネルギー危機の瀬戸際にある。
上記の通りドイツでガスが不足しているためにこのままではガスを使用する産業で操業停止になる可能性が現実的に見え始めており、これに対して原発は既に廃炉作業に入ってしまっていることから動かせず、古い石炭火力発電を動かしてなんとか間に合わせようとしている。

そもそもこのような事態に陥ったのはなぜなのか?
やはり大きなポイントは2011年の東日本大震災で欧州の多くの国、特に一番電力を使うドイツが原発を廃止するといきなり言い出して積極的な廃炉を行っていったことが大きい。
フランスでも大手電力会社EDFが原発比率を半分にするといった方向性を打ち出し、欧州全体として脱原発を進めていった。
そのような中で再生可能エネルギーを増やせたことは良かったのだが、それと同時にガス火力に頼る比率が上昇し、特にロシアからのガスに完全に依存してしまった構造がドイツ・イタリア・ポーランドなど複数の欧州国で見られる状態になってしまった。
またこの辺はロシアの戦略として下記書籍でもなぜ欧州はロシアのガス依存に陥ったのかわかるので読んでもらいたい。

【参考書籍】

プーチン 〔内政的考察〕

前回の冬はこれに加えて風があまり吹かなかったということで風力発電が大きく落ち込んだことからガス火力を大量に動員する羽目になった。
総じてみれば、再生可能エネルギーのコストが安くなったと能天気な拡大をさせたが、そのコストに出力が不安定になった時のバックアップ電源を用意するコストが含まれていないことで、風が吹かなくなるといきなり電力不足に陥る脆弱な構造に陥っている。
さらに欧州の場合は各国間で電力融通できるマーケットが構築できていることから、いざとなれば他国から電力を引っ張ってくれば問題ないという油断した体制構築をしていたら、全員がいきなり電力不足に襲われてどこからも電力を引っ張ってこれなくなった。
この辺の話も下記書籍を参考にしてもらいたい。

【参考書籍】

LNG 50年の軌跡とその未来

そしてバックアップ電源の役割を果たすガス火力を動かしていたらロシアに依存していたガスが確保できなくなりつつあり、既に冬のガス在庫確保が難しい状況になっている。
さらに米国LNG輸出がポートの事故で一部止まっており、悪い事態には悪いことがさらに重なるというぴったりなケースになってしまっている。
 
米国の場合は自国で相当エネルギーは凄惨できるということもあり、価格高騰はあるけど供給途絶リスクは低いという一方で、欧州は現実的に供給途絶リスクが生じている。
以上を考えるとツイッターで一部S&P500連動の投資信託にするかオールカントリーにするかみたいな議論があるが、米国より脆弱な欧州をポートフォリオに積極的に入れる理由なんてさほど存在していないように見えるため、米国株式インデックスオンリーでいいんじゃないのと思う次第である。

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